著作権法令和2年改正について

改正の概要

  • インターネット上の海賊版対策の強化
    • リーチサイト対策(113条2項〜4項〔みなし侵害の追加〕、119条2項4号、5号、第120条の2第3号等〔罰則〕)…リーチサイト等を運営する行為等を、刑事罰の対象とし、また、リーチサイト等において侵害コンテンツへのリンクを掲載する行為等を、著作権等を侵害する行為とみなし、民事上・刑事上の責任を問いうるようにする。
    • 侵害コンテンツのダウンロード違法化(30条1項4号、2項〔私的複製の例外〕、119条第3項2号、5項等〔罰則〕)…違法にアップロードされたものだと知りながら侵害コンテンツをダウンロードすることについて、一定の要件の下で私的使用目的であっても違法とし、正規版が有償で提供されているもののダウンロードを継続的に又は反復して行う場合には、刑事罰の対象にもする。なお、音楽・映像は改正前でも違法。
  • その他の改正事項
    • 写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大(30条の2)…・写り込みに係る権利制限規定について、生配信やスクリーンショットを対象に含めるなど対象範囲の拡大を行う。なお、録音・録画は改正前から権利制限の対象。
    • 行政手続に係る権利制限規定の整備(地理的表示法・種苗法関係)(42条2項)…権利制限の対象となる行政手続として、種苗法・地理的表示法(GI法)の審査等に関する手続を規定するとともに、これらに類する手続を政令で定めることができることとする。なお、特許手続は改正前でも対象。
    • 著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入(63条の2)…著作権者等から許諾を受けて著作物等を利用する権利について、その著作権等を譲り受けた者その他の第三者に対抗することができることとする。なお、特許法では平成23年改正で導入済み。
    • 著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化(114条の3)…裁判所は、書類の提出命令の要否を判断するために必要があると認めるときは、書類の所持者に当該書類の提示をさせることができることとするとともに、当事者の同意を得て、専門委員(技術専門家)に対し、当該書類を開示することができることとする。なお、特許法では平成30年改正で導入済み。
    • アクセスコントロールに関する保護の強化(2条1項20号、21号、113条7項〔みなし侵害〕、120条の2第4号〔罰則〕)…著作物等の不正使用を防止するためのアクセスコントロール技術について、最新の技術動向を踏まえて保護対象の明確化を行うとともに、これを回避する機能を有する不正なシリアルコードの提供等を著作権等を侵害する行為とみなし、民事上・刑事上の責任を問いうるようにする。なお、不正競争防止法では平成30年改正で対応済み。
    • プログラムの著作物に係る登録制度の整備(プログラム登録特例法4条、26条等)…①プログラムの著作物に関し、著作権者等の利害関係者が、自らの保有する著作物と登録されている著作物が同一であることの証明を請求できることとする。②国又は独立行政法人が登録を行う場合の手数料の免除規定を廃止することとする。

 

コメント

実践的に意味がありそうなのは、リーチサイト対策、侵害コンテンツのダウンロード(全面)違法化、写り込み、利用権の当然対抗、アクセスコントロールあたりでしょうか。理論的に大きな意味がありそうなのは、当然対抗でしょう。これについては後に別にコメントします。

113条には、リーチサイト対策の2項〜4項、アクセスコントロールの強化(簡単にいうと不正なシリアルコードの公衆送信等です)の7項が追加されました。その結果、現行法制定時には2項だった名誉声望を害する利用は、なんと11項になります。

権利付与法は取引の対象にしやすい代わりに柔軟化できないと言われますが(cf. 行為規制法としての不正競争防止法)、みなし侵害で限定的に捕捉していくというのは、権利付与アプローチの相対化という感じがします(113条各項だけ見ると、不正競争防止法2条1項各号みたいですよね)。

なお、改正法律は1条でインターネット上の海賊版対策の強化、2条でその他の改正事項を規定しており、新旧対照表が2箇所に分かれているのでご注意ください(1条の表の113条にはリーチサイトの規定しかなく、2条の表にはアクセスコントロールの規定しかない。最終的な条文番号は後者です)。

本改正に全面的に対応した研究者による基本書等はまだないと思いますが(実務家によるものだと岡村先生のものがありますね)、島並先生ほかの『著作権法入門』が年度内に改訂予定と聞いています。

 

当然対抗

63条の2 利用権は、当該利用権に係る著作物の著作権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。

著作権法には、特許法における専用実施権のような物権的利用権が規定されておらず、債権的な利用権を許諾することしかできません(出版権という限定的なものはあるのですが)。

特許法では、同様に債権的利用権である通常実施権を許諾した場合、利用権者は当然に譲受人などの第三者に対抗できるようになっています(平成23年改正以後。それ以前は登録が要件でしたが、誰も登録していませんでした)。これに対して、著作権に基づく利用権には、登録制度も当然対抗制度もなかったので、譲受人等に対抗することができず、また、権利者破産時の破産管財人等による解除(破産法53条、56条。民事再生法等にも同様の規定があります)を免れることもできませんでした。

そこで、立法論としてはかねてから特許法と同様に当然対抗とすべきと説かれてきたのですが、これを採用したものです。

なお、譲渡(を含む移転)を第三者に対抗するためには登録が必要であり(77条1号)、このことに変更はありません。

 

資料