一票の格差をなくすとどうなるか

アメリカ大統領選挙Winner-takes-allルールに関して、日本の一票の格差問題を思い出し、衆議院参議院小選挙区・選挙区部分を完全に人口比例で割り振るとどうなるかを計算してみたのでメモ。条件は次のとおり。

 

  • 人口は2020年4月1日現在のものです。
  • 現行法で、衆議院小選挙区の定数の合計は289、参議院の選挙区の定数の合計は148です。
  • 人口比例の議席数は、[現行法の定数の合計×当該都道府県の人口÷全国の人口]を小数第1位を四捨五入して計算しています。その結果、定数の合計は衆議院で288(現行法-1)、参議院で146(現行法-2)となっています。
  • 参議院において鳥取県島根県徳島県高知県はそれぞれ合区(2県で定数2)とされていますが、下の表には各県定数1として記載しました。

f:id:Haruwas:20201105232552p:plain

 

一票の格差人権問題として語られていますが(現行法下ではそうすることでしか最高裁の判断を引き出せないのでそれ自体はやむを得ない)、実質的には地方で支持されている政党=自民党を有利にするもので、ゲームのルールとして不公正です。

しかし、法律(公職選挙法)を変えるのはそれによって選出された自民党議員なので、これが是正されることはありません。表現の自由の優越的地位に関して、政治過程の基盤となる権利であるから一度規制されると政治過程によって回復できないということが説かれることがありますが、選挙のルールも同じだというわけです。

もちろん自民党は都市部でもそれなりの支持を得ているので、人口比例に忠実な構成にしてみたところで自民党がすぐに負けるようになるかというとそうではないと思います*。しかし、都市と地方で人々の生活は全く異なり、求める政策も異なると思うので、政策の決定にはかなり影響があるのではないかと思います。

*このことからすれば、自民党議員としては改正に反対するそれほど強い動機があるわけではないようにも思われます。しかし、自民党全体としてはそうでも、選挙区が減る地域の議員にとっては死活問題です。そのような議員が都市部に転出しても勝てるとは思えませんから、彼らは改正に熱心に反対するでしょう。それに対して、選挙区が増える地域の議員は、彼らの選挙民にとってはよい改正である一方、彼ら自身にとっては影響力の低下につながる改正なので(ここではエージェンシー問題が生じています)、それほど熱心に反対するわけではないものの、積極的に賛成もしないでしょう。

なお、以上の議論は全て、衆議院の定数は465人、そのうち小選挙区が289人、比例代表(ブロックごと)が176、参議院の定数は248人、そのうち選挙区が148人、比例代表(全国)が100人という現行法の枠組みを前提としています。しかし、個人的には、いずれも中途半端だと思っています。改正するなら、衆議院は全て小選挙区参議院は全て比例代表(その上で衆議院の権限を強化する)とすればよいのではないかと思います。そうすることで、衆議院はより二大政党制化し、参議院はシングルイシュー候補を含む多様な意見を反映するという役割分担もできるのではないかと思います。