複雑訴訟のツリー

複雑訴訟のマップみたいなものが作りたかった。

 

既存当事者のイニシアティブ

  • 訴訟係属前=原始的複数
    • 原告
      • 同一人に対する複数請求:請求の客観的併合(136: 同種の訴訟手続)
      • 複数人に対する複数請求:共同訴訟*1(38: ①権利義務の共通、②同一の事実上・法律上の原因、③権利義務が同種かつ事実上・法律上同種の原因)
        • 複数請求が非両立の場合:主観的予備的併合(解釈)、同時審判申出共同訴訟*2(41: 法律上非両立)
        • 合一確定の必要がある場合:類似必要的共同訴訟、固有必要的共同訴訟(40)
    • 被告:手段なし*3
  • 訴訟係属後=後発的複数
    • 原告
      • 被告に対する請求の追加=当事者を追加しない:訴えの変更(143: 請求の基礎の同一性)
      • 三者に対する請求の追加=当事者を追加する:主観的追加的併合*4(解釈)
    • 被告
      • 原告に対する請求の追加=当事者を追加しない:反訴(146: 請求・攻撃防御方法との関連性*5
      • 三者に対する請求の追加=当事者を追加する:主観的追加的併合(解釈)
  1. 通常共同訴訟は常に請求が複数なので、請求の客観的併合の通常共同訴訟の違いは、複数の請求が同一人に向いているか、多数人に向いているかの違いということになる。
  2. 主観的予備的併合、同時審判申出共同訴訟はいずれも通常共同訴訟の類型。
  3. 訴訟が提起されていない以上、そもそも被告は存在しない。「被告となろうとする者」(被告とされようとしている者)はありえても、その者は通常そのことを知らない。言い換えると、被告は訴状の送達=訴訟係属によって被告となり、同時に、自らが被告とされようとしている者であったことを知る。
  4. 主観的追加的併合というと、最判昭和62年7月17日民集41巻5号1402頁が想起されがちだが、これは明文がない場合についての判断であり、明文がある場合もある。訴訟承継による訴訟引受け(義務承継人について50条1項、権利承継人について51条)はその例。
  5. 訴えの変更と反訴はいずれも相手方当事者に対する請求の追加なのに、後者のほうが緩いのは、原告は緩い要件の下に(原始的)客観的併合ができるのに対し、被告はそれができないことを前提に、バランスを取るため。

 

三者のイニシアティブ

  • 請求が立つ場合=当事者適格がある場合
    • 参加すれば必要的共同訴訟になる場合:共同訴訟参加(52: 合一確定の必要性)
    • 詐害的訴訟追行をしている場合、権利が非両立の場合:独立当事者参加(47)
      • 非両立の権利が承継関係にある場合:訴訟承継による訴訟引受け(権利承継人について49.1、義務承継人について51。手続は独立当事者参加(権利主張参加)による*1
  • 請求が立たない場合=当事者適格がない場合/請求は立つが合一確定の必要性・詐害的訴訟追行・非両立のいずれもない場合*2補助参加(42: 利害関係)
    • 既判力の拡張を受ける場合*3共同訴訟的補助参加(通常と手続は同じ*4
  1. 独立当事者参加(権利主張参加)と訴訟承継とでは、結局、訴訟状態承認義務が生じるかという違いしかないことになる。それすら否定してしまえば、「訴訟承継論よ、さようなら」である(新堂幸司=山本和彦編『民事手続法と商事法務』(商事法務、2006)378頁以下に収録されている新堂による同名の論考を参照)。
  2. 補助参加と独立当事者参加は、一般的には後者のほうがより強い地位(当事者としての地位)が要求される一方、より強い利害関係が要求されると考えられている。諫早湾訴訟(開門反対派による開門差止請求訴訟)では、一審で国側に補助参加していた開門派が、国が和解した(これは開門派によれば既に彼らが得ていた開門を命じる判決と矛盾するものであり、詐害的でありかつ同時に実現できないという意味で非両立だった)のに対し、独立当事者参加を申し立て、控訴を提起したということがあった(学説も含めて、次の記事の後半を参照:諫早開門訴訟:福岡高判平成30.7.30(請求異議)、最判令和1.9.14(請求異議上告審)、福岡高判平成30.3.19(独立当事者参加)
  3. 既判力の拡張を受けるにもかかわらず請求が立たない例として、債権者代位訴訟における債務者が挙げられる。すなわち、債権者代位訴訟は、債権者が第三債務者を被告として提起するものであるが、通説によれば法定訴訟担当であり、債務者は被担当者として民事訴訟法115条1項2号により既判力の拡張を受ける。なお、そもそも被保全債権を争う場合、債務者は独立当事者参加または共同訴訟参加ができる(民法改正の民事訴訟法への影響)。
  4. 判例によれば、共同訴訟的補助参加の要件を満たす者が補助参加した場合には、その者が共同訴訟的補助参加として取り扱うべき旨を申し出なくても、裁判所は当然にその者を共同訴訟的補助参加人として扱わなければならない(最判昭和40年6月24日民集19巻4号1001頁)。