最判令和2年7月21日裁判所website(リツイート事件上告審)

目次

追記(2020/10/17):田村先生の評釈を読み、「リツイート事件最高裁判決を語る」(2020年10月14日、明治大学知的財産法政策研究所シンポジウム)を聞いたので、いくつか記述を追加しました。

 

前提知識

著作物、著作者

「著作物」を創作した者は、「著作者」となり、(財産権としての)「著作権」と、「著作者人格権」を取得します。

「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいうとされます(著作権法2条1項1号)。著作権侵害が問題となるとき、著作物性は一つの大きな問題となることが多いのですが、写真(リツイート事件で問題になっている)については、基本的に認められます(否定されるのは、スキャンのように忠実に写した場合―表現方法(撮り方)に選択の幅が小さく、個性を発揮する余地がないため、創作性を欠くと評価されます)。なお、「著作物」は無体物であり、それが化体している物(有体物)とは区別されます。

「著作物」を創作した者は、原則として「著作者」になります(著作権法2条1項2号)。職務著作は大きな例外ですが(同法15条。使用者が著作者になる)、今回は関係ないので置いておきます。

 

著作権著作者人格権

「著作者」は、(財産権としての)「著作権」と、「著作者人格権」を取得します(著作権法17条1項)。

著作権」は、複製権、上演権・演奏権、公衆送信権・公衆送信される著作物の公に伝達する権利、口述権(言語の著作物のみ)、展示権(美術の著作物のみ)、頒布権(映画の著作物のみ)、譲渡権(映画の著作物以外)、貸与権(映画の著作物以外)、翻案権等(同法21条〜28条)の総称です。言い換えると、「著作権」とは、これらの権利(支分権)の束です(特許権とは異なり、単一の権利ではありません)。これらの権利によって独占されている行為を、「法定利用行為」あるいは「利用」と呼びます(これに対して、「使用」は著作物が化体した有体物について、その効用を享受するといった意味で使われます)。

著作者人格権」は、公表権、氏名表示権、同一性保持権(同法18条〜20条)の総称です。著作物の創作は人格の発露としての側面があり、著作物の利用については創作者の(財産的保護だけでなく)人格的保護が必要と考えられたことから、特にこの3つの権利が規定されています(なお、これら以外の人格権法上の保護が排除されるものではありません)。

著作権には、私的使用のための複製など、多くの権利制限があります(著作権法30条以下)。もっとも、権利制限規定は、「著作者人格権に影響を及ぼすものと解釈してはならない。」とされています(同法50条。これでよいのかという問題はあります)。

 

氏名表示権

リツイート事件最高裁判決で問題になった氏名表示権は、著作者人格権の一つです。その内容は、「その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利」とされます(著作権法19条1項)。つまり、①実名で提供するか、②ペンネームなどの創作上の名義で提供するか、③無名で提供するかを選択できるわけです。

ただし、すでに公表されている場合には、原則として「その著作物につきすでに著作者が表示しているところに従つて著作者名を表示」すればよいとされ(同条2項)、また、「著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができる」とされます(同条3項)。

 

著作権著作者人格権侵害の効果―差止請求と損害賠償請求

著作権著作者人格権も、侵害された場合、差止請求(著作権法112条1項)および損害賠償請求(民法709条)の対象となります。

差止請求の相手方は、「著作者人格権著作権…を侵害する者又は侵害するおそれがある者」とされています。ここには、物理的な利用行為の主体に加えて、規範的に利用行為の主体と評価される一定の者が含まれます(最高裁判例として、最判昭和63年3月15日民集42巻3号199頁[クラブキャッツアイ]、最判平成23年1月18日民集65巻1号121頁[まねきTV]、最判平成23年1月20日民集65巻1号399頁[ロクラクII])。

なお、差止請求については、相手方の故意・過失は必要ありません。

  

プロバイダ責任制限法

インターネット上で名誉毀損著作権侵害などの権利侵害が生じた場合、媒介者(特にTwitterはてな、5ちゃんねるなどのコンテンツプロバイダ)は、被害者から、(共同)不法行為責任を追及される可能性があります。一方、被害者(と称する者)からの削除等の要求に安易に応じれば、ユーザーから債務不履行責任を追及される可能性があります。

しかし、侵害の成否に関する判断は必ずしも容易ではなく、媒介者に常に正しい判断を要求するのは酷です。そこで、プロバイダ責任制限法は、プロバイダ(「特定電気通信役務提供者」。同法2条3号)の損害賠償責任を制限しました(「セーフハーバー」。同法3条)。

同時に、プロバイダ責任制限法は、被害者が発信者(同法2条4号)に対して直接に責任を追及することができるよう、プロバイダに対する発信者情報開示請求権という実体的な権利を付与しました(同法4条)。

なお、「プロバイダ」には、コンテンツプロバイダ(Twitterはてな、5ちゃんねるなど)だけでなく、経由プロバイダ(NTTドコモKDDIソフトバンク(モバイル/Yahoo! BB)、ニフティSo-net、OCNなど。ISP)が含まれます(最判平成22年4月8日判時2079号42頁。そうしなければ発信者情報開示請求権を認めた趣旨が没却される)。

 

発信者情報開示の手続

発信者情報開示請求権は実体的な権利なので、基本的には仮処分(仮の地位を定める仮処分。民事保全法23条2項)と民事訴訟によって行使することになります。

プロバイダ・発信者が全面的に争った場合、次のような流れになります:①コンテンツプロバイダに対する仮処分でIPアドレスを開示してもらい、経由プロバイダを特定する。②経由プロバイダに対する仮処分でアクセスログの削除を禁止してもらう。③経由プロバイダに対する訴訟でアクセスログに紐付けられたユーザー(発信者=侵害者)の情報を開示してもらう。④発信者=侵害者に対する訴訟を提起する。

リツイート事件は、(仮処分事件ではなく)訴訟である点で通常とは異なりますが、①の段階に当たるといえます。

 

発信者情報開示請求権の発生要件

発信者情報開示請求権の発生要件は、次のようになっています(プロ責4条1項)。

  • 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときに限り、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し、当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の開示を請求することができる。」
  • 「一 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。」
  • 「二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。」

太字の用語は、次のように定義されています。

  • 特定電気通信…「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信…の送信(公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信を除く。)」(プロ責2条1号)。なお、「電気通信」は電気通信事業法上のもの。
  • 特定電気通信設備…「特定電気通信の用に供される電気通信設備」(同条2号)。なお、「電気通信設備」は電気通信事業法上のもの。
  • 特定電気通信役務提供者…「特定電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者」(同条3号)。
  • 侵害情報…「特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者」がいる場合に、「当該権利を侵害したとする情報」(同法3条2項2号)。

リツイート事件上告審では、権利侵害要件(その中身が氏名表示権侵害)と、その権利侵害が「侵害情報の流通によって」生じたとの要件を満たすかが問題となりました。

 

事案の概要等(判決文による)

(「インラインリンク」というのは、ある画像をimgやiframeのようなタグで表示することを、aタグでリンクを張ることと対比してそう言っているようです)

1 本件は,第1審判決別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)の著作者である被上告人が,ツイッター(インターネットを利用してツイートと呼ばれるメッセージ等を投稿することができる情報ネットワーク)のウェブサイトにされた投稿により本件写真に係る被上告人の氏名表示権(以下「本件氏名表示権」という。)等を侵害されたとして,ツイッターを運営する上告人に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,上記投稿に係る発信者情報の開示を求める事案である。
2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1) 被上告人は,写真家であり,本件写真の著作者である。上告人は,ツイッターを運営する米国法人である。
(2) 被上告人は,平成21年,本件写真の隅に「©」マーク及び自己の氏名をアルファベット表記した文字等(以下「本件氏名表示部分」という。)を付加した画像(以下「本件写真画像」という。)を自己のウェブサイトに掲載した。
(3) 平成26年12月,原判決別紙アカウント目録記載「アカウント2」のツイッター上のアカウントにおいて,被上告人に無断で,本件写真画像を複製した画像の掲載を含むツイートが投稿された。これにより,本件写真画像を複製した第1審判決別紙流通情報目録記載2(2)の画像(以下「本件元画像」という。)が,同目録記載2(2)のURL(以下「本件画像ファイル保存用URL」という。)の画像ファイルとしてサーバーに保存された。
(4) その後,原判決別紙アカウント目録記載「アカウント3~5」のツイッター上の各アカウント(以下「本件各アカウント」という。)において,それぞれ,上記(3)のツイートのリツイート(第三者のツイートを紹介ないし引用する,ツイッター上の再投稿)がされた(以下,それぞれのリツイートを「本件各リツイート」といい,これにより投稿されたメッセージ等を「本件各リツイート記事」という。また,本件各リツイートをした者を「本件各リツイート者」という。)。これにより,不特定の者が閲覧できる本件各アカウントの各タイムライン(個々のツイートが時系列順に表示されるページ)に,それぞれ第1審判決別紙流通情報目録記載3~5の各画像(以下「本件各表示画像」という。)が本件各リツイート記事の一部として表示されるようになった。本件各表示画像は,本件元画像の上部及び下部がトリミング(一部切除)された形となっており,そのため,本件氏名表示部分が表示されなくなっている
(5) 本件各アカウントの各タイムラインに本件各表示画像が表示されるのは,本件各リツイートにより同各タイムラインのウェブページ(第1審判決別紙流通情報目録記載3~5の各URLのウェブページ。以下「本件各ウェブページ」という。)に本件画像ファイル保存用URLの本件元画像ファイルへのリンク(いわゆるインラインリンク)が自動的に設定されるためである。
 すなわち,本件各リツイートがされることによって,自動的に,上記リンクを指示する情報及びリンク先の画像の表示の仕方(大きさ,配置等)を指定する情報を記述したHTML(ウェブページの構造等を記述する言語)等のデータ(以下「本件リンク画像表示データ」という。)が,本件各ウェブページリンク元のウェブページ)に係るサーバーの記録媒体に記録される。インターネットを利用してウェブサイトを閲覧する者(以下「ユーザー」という。)が本件各ウェブページにアクセスすると,自動的に,1本件リンク画像表示データが,本件各ウェブページに係るサーバーから同ユーザーの端末に送信され,2これにより,同ユーザーの操作を介することなく,本件元画像のデータ(リンク先のファイルのデータ)が,本件画像ファイル保存用URLに係るサーバーから上記端末に送信され,3上記端末の画面上に当該画像が上記指定に従って表示される。上告人が提供しているツイッターのシステムにおいては,リンク先の画像の表示の仕方に関するHTML等の指定により,リンク先の元の画像とは縦横の大きさが異なる画像やトリミングされた画像が表示されることがあるところ,本件においても,これにより,本件各表示画像は,上記(4)のとおりトリミングされた形で上記端末の画面上に表示され,本件氏名表示部分が表示されなくなったものである。

 

最高裁の判断等

多数意見

第2 上告代理人中島徹ほかの上告受理申立て理由第3の2について[氏名表示権の侵害が認められるか=「権利が侵害された」(プロ責法4条1項)か(積極)]

1 所論は,1本件各リツイート者は,本件各リツイートによって,著作権侵害となる著作物の利用をしていないから,著作権法19条1項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」をしていないし,2本件各ウェブページを閲覧するユーザーは,本件各リツイート記事中の本件各表示画像をクリックすれば,本件氏名表示部分がある本件元画像を見ることができることから,本件各リツイート者は,本件写真につき「すでに著作者が表示しているところに従って著作者名を表示」(同条2項)しているといえるのに,本件各リツイートによる本件氏名表示権の侵害を認めた原審の判断には著作権法の解釈適用の誤りがあるというものである。
2(1) 所論1について[著作物の「利用」にあたらない行為(リツイート)が氏名表示権を侵害しうるか(積極)]
 著作権法19条1項は,文言上その適用を,同法21条から27条までに規定する権利に係る著作物の利用により著作物の公衆への提供又は提示をする場合に限定していない。また,同法19条1項は,著作者と著作物との結び付きに係る人格的利益を保護するものであると解されるが,その趣旨は,上記権利の侵害となる著作物の利用を伴うか否かにかかわらず妥当する。そうすると,同項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」は,上記権利に係る著作物の利用によることを要しないと解するのが相当である。
 したがって,本件各リツイート者が,本件各リツイートによって,上記権利の侵害となる著作物の利用をしていなくても,本件各ウェブページを閲覧するユーザーの端末の画面上に著作物である本件各表示画像を表示したことは,著作権法19条1項の「著作物の公衆への・・・提示」に当たるということができる。
(2) 所論2について[Twitterの仕様により氏名表示部分が非表示とされることが氏名表示権の侵害になるか(積極)]
 前記事実関係等によれば,被上告人は,本件写真画像の隅に著作者名の表示として本件氏名表示部分を付していたが,本件各リツイート者が本件各リツイートによって本件リンク画像表示データを送信したことにより,本件各表示画像はトリミングされた形で表示されることになり本件氏名表示部分が表示されなくなったものである(なお,このような画像の表示の仕方は,ツイッターのシステムの仕様によるものであるが,他方で,本件各リツイート者は,それを認識しているか否かにかかわらず,そのようなシステムを利用して本件各リツイートを行っており,上記の事態は,客観的には,その本件各リツイート者の行為によって現実に生ずるに至ったことが明らかである。)。また,本件各リツイート者は,本件各リツイートによって本件各表示画像を表示した本件各ウェブページにおいて,他に本件写真の著作者名の表示をしなかったものである。
 そして,本件各リツイート記事中の本件各表示画像をクリックすれば,本件氏名表示部分がある本件元画像を見ることができるとしても,本件各表示画像が表示されているウェブページとは別個のウェブページに本件氏名表示部分があるというにとどまり,本件各ウェブページを閲覧するユーザーは,本件各表示画像をクリックしない限り,著作者名の表示を目にすることはない。また,同ユーザーが本件各表示画像を通常クリックするといえるような事情もうかがわれない。そうすると,本件各リツイート記事中の本件各表示画像をクリックすれば,本件氏名表示部分がある本件元画像を見ることができるということをもって,本件各リツイート者が著作者名を表示したことになるものではないというべきである。
(3) 以上によれば,本件各リツイート者は,本件各リツイートにより,本件氏名表示権を侵害したものというべきである。これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。

 

第3 上告代理人中島徹ほかの上告受理申立て理由第4について(権利侵害は「侵害情報の流通によって」(プロ責法4条1項1号)生じたか(積極))

1 所論は,本件各リツイート者による本件リンク画像表示データの送信については,当該データの流通それ自体によって被上告人の権利が侵害されるものではないから,プロバイダ責任制限法4条1項1号の「侵害情報の流通によって」権利が侵害されたという要件を満たさず,また,本件各リツイート者は,被上告人の権利を直接侵害する情報である画像データについては,何ら特定電気通信設備の記録媒体への記録を行っていないから,同項の「侵害情報の発信者」の要件に該当しないなどとして,本件各リツイートによる本件氏名表示権の侵害について,上記の二つの要件が同時に充足されることはないのに,これらが充足されるとした原審の判断にはプロバイダ責任制限法の解釈適用の誤りがあるというものである。
2 前記事実関係等によれば,本件各リツイート者は,その主観的な認識いかんにかかわらず,本件各リツイートを行うことによって,前記第1の2(5)のような本件元画像ファイルへのリンク及びその画像表示の仕方の指定に係る本件リンク画像表示データを,特定電気通信設備である本件各ウェブページに係るサーバーの記録媒体に記録してユーザーの端末に送信し,これにより,リンク先である本件画像ファイル保存用URLに係るサーバーから同端末に本件元画像のデータを送信させた上,同端末において上記指定に従って本件各表示画像をトリミングされた形で表示させ,本件氏名表示部分が表示されない状態をもたらし,本件氏名表示権を侵害したものである。そうすると,上記のように行われた本件リンク画像表示データの送信は,本件氏名表示権の侵害を直接的にもたらしているものというべきであって,本件においては,本件リンク画像表示データの流通によって被上告人の権利が侵害されたものということができ,本件各リツイート者は,「侵害情報」である本件リンク画像表示データを特定電気通信設備の記録媒体に記録した者ということができる。以上によれば,本件各リツイートによる本件氏名表示権の侵害について,本件各リツイート者は,プロバイダ責任制限法4条1項の「侵害情報の発信者」に該当し,かつ,同項1号の「侵害情報の流通によって」被上告人の権利を侵害したものというべきである。所論の点に関する原審の判断は,是認することができる。

 

第4 結論

 以上のとおりであるから,論旨はいずれも採用することができない。よって,裁判官林景一の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官戸倉三郎の補足意見がある。

 

裁判官戸倉三郎の補足意見

 私は,多数意見に賛成するものであるが,事案に鑑み,若干補足して意見を述べる。
1 本件各リツイート者は,本件写真画像が無断で掲載されたツイート(以下「本件元ツイート」という。)リツイートしたところ,ツイッターのシステムの仕様により,本件各アカウントの各タイムラインに本件各リツイート記事の一部として,本件写真画像(本件元画像)の上下がトリミングされて本件氏名表示部分が表示されなくなった本件各表示画像が表示されたものである。本件元ツイートに掲載された画像も,同様にツイッターのシステムの仕様により,本件写真画像(本件元画像)の上下がトリミングされて本件氏名表示部分が表示されなくなった画像として表示されたものではあるが,本件各リツイート者は,本件各リツイートにより,新たに本件各アカウントの各タイムラインに本件氏名表示部分のない本件各表示画像を表示させ,本件写真について被上告人がしていた著作者名の表示をしなかった以上,本件氏名表示権を侵害したものといわざるを得ない。
 もっとも,このような氏名表示権侵害を認めた場合,ツイッター利用者にとっては,画像が掲載されたツイート(以下「元ツイート」という。)リツイートを行うに際して,当該画像の出所や著作者名の表示,著作者の同意等に関する確認を経る負担や,権利侵害のリスクに対する心理的負担が一定程度生ずることは否定できないところである。しかしながら,それは,インターネット上で他人の著作物の掲載を含む投稿を行う際に,現行著作権法下で著作者の権利を侵害しないために必要とされる配慮に当然に伴う負担であって,仮にそれが,これまで気軽にツイッターを利用してリツイートをしてきた者にとって重いものと感じられたとしても,氏名表示権侵害の成否について,出版等による場合や他のインターネット上の投稿をする場合と別異の解釈をすべき理由にはならないであろう。
 そもそも,元ツイートに掲載された画像が,元ツイートをした者自身が撮影した写真であることが明らかである場合には,著作者自身がリツイートされることを承諾してツイートしたものとみられることなどからすると,問題が生ずるのは,出所がはっきりせず無断掲載のおそれがある画像を含む元ツイートをリツイートする場合に限られる。また,元の画像に著作者名の表示がないケースでは,著作者が当該著作物について著作者名の表示をしないことを選択していると認められる場合があるであろうし,元の画像に著作者名の表示があってリツイートによりこれがトリミングされるケースでは,リツイート者のタイムラインを閲覧するユーザーがリツイート記事中の表示画像を通常クリック等するといえるような事情がある場合には,これをクリック等して元の画像を見ることができることをもって著作者名の表示があったとみる余地がある(そのような事情があるか否かは,当該タイムラインを閲覧する一般のユーザーの普通の注意と閲覧の仕方とを基準として,当該表示画像の内容や表示態様,閲覧者にクリック等を促すような記載の有無などを総合的に考慮して判断することとなろう。)。さらに,著作権法19条3項により,著作者名の表示を省略することができると解される場合もあり得るであろう。そうすると,リツイートをする者の負担が過度に重くなるともいえないと思われる。
2 他方,本件各リツイートにより,本件各アカウントの各タイムラインに本件元画像の上下がトリミングされて本件氏名表示部分が表示されなくなった本件各表示画像が表示されたのは,ツイッターのシステムの仕様がそのような処理をするようになっているためであり,本件各リツイート者が画像表示の仕方を変更することもできなかったものである。そうすると,今後も,そのような仕様であることを知らないリツイート者は,元の画像の形状や著作者名の表示の位置,元ツイートにおける画像の配置の仕方等によっては,意図せざる氏名表示権の侵害をしてしまう可能性がある(そのような仕様であることを認識している場合には,元ツイート記事中の表示画像をクリックして元の画像を見ることにより著作者名の表示を確認し,これを付記したコメント付きリツイートをするなどの対応が可能であろう。)ツイッターは,社会各層で広く利用され,今日の社会において重要な情報流通ツールの一つとなっており,国内だけでも約4500万人が利用しているとされているところ,自らが上記のような状況にあることを認識していないツイッター利用者も少なからず存在すると思われること,リツイートにより侵害される可能性のある権利が著作者人格権という専門的な法律知識に関わるものであることなどを考慮すると,これを個々のツイッター利用者の意識の向上や個別の対応のみに委ねることは相当とはいえないと考えられる。著作者人格権の保護やツイッター利用者の負担回避という観点はもとより,社会的に重要なインフラとなった情報流通サービスの提供者の社会的責務という観点からも,上告人において,ツイッター利用者に対する周知等の適切な対応をすることが期待される。

 

裁判官林景一の反対意見

 私は,多数意見と異なり,本件各リツイート者が本件各リツイートによって本件氏名表示権を侵害したとはいえず,原判決のうち本件各リツイート者に係る発信者情報開示請求を認容した部分を破棄すべきであると考える。その理由は以下のとおりである。
1 原審は,本件各表示画像につき,本件写真画像(本件元画像)がトリミングされた形で表示され(以下,このトリミングを「本件改変」という。),本件氏名表示部分が表示されなくなったことから,本件各リツイート者による著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)の侵害を認めた。しかし,本件改変及びこれによる本件氏名表示部分の不表示は,ツイッターのシステムの仕様(仕組み)によるものであって,こうした事態が生ずるような画像表示の仕方を決定したのは,上告人である。これに対し,本件各リツイート者は,本件元ツイートのリツイートをするに当たって,本件元ツイートに掲載された画像を削除したり,その表示の仕方を変更したりする余地はなかったものである。
 また,上記のような著作者人格権侵害が問題となるのは著作者に無断で画像が掲載される場合であるが,本件で当該画像の無断アップロードをしたのは,本件各リツイート者ではなく本件元ツイートを投稿した者である。
 以上の事情を総合的に考慮すると,本件各リツイート者は,著作者人格権侵害をした主体であるとは評価することができないと考える。
2 ツイッターを含むSNSは,その情報の発信力や拡散力から,社会的に重要なインフラとなっているが,同時に,SNSによる発信や拡散には社会的責任が伴うことは当然である。その意味で,画像そのものが法的,社会的に不適切であって,本来,最初の投稿(元ツイート)の段階において発信されるべきではなく,削除されてしかるべきであることが明らかなもの(例えば,わいせつ画像や誹謗中傷画像など)については,その元ツイートはもとより,リツイートも許容されず,何ら保護に値しないことは当然である。しかしながら,本件においては,元ツイート画像自体は,通常人には,これを拡散することが不適切であるとはみえないものであるから,一般のツイッター利用者の観点からは,わいせつ画像等とは趣を異にする問題であるといえる。多数意見や原審の判断に従えば,そのようなものであっても,ツイートの主題とは無縁の付随的な画像を含め,あらゆるツイート画像について,これをリツイートしようとする者は,その出所や著作者の同意等について逐一調査,確認しなければならないことになる。私見では,これは,ツイッター利用者に大きな負担を強いるものであるといわざるを得ず,権利侵害の判断を直ちにすることが困難な場合にはリツイート自体を差し控えるほかないことになるなどの事態をもたらしかねない。そうした事態を避けるためにも,私は,上記1の結論を採るところである。

 

ノート

いろいろ

 

プロバイダ責任制限法との関係

  • 評価にあたっては発信者情報開示請求事件であることの考慮が必要(谷川(2020)参照)。権利侵害が「侵害情報の流通によって」生じたとの要件をクリアするために実体法の解釈が歪められている(札幌地判平成30年4月27日D1-Law 28262904[ペンギンパレード]、東京地判平成31年2月28日裁判所website[たぬピク]。なお、発信者情報開示請求権は実体法上の権利とされているが、実質は手続的なもの)。
  • 今回の事案では、トリミングはTwitterの仕様によって生じているわけですが、そのことをTwitterが主張した場合、本案における自己の責任を認めることになりかねないという利益相反関係があり、民事訴訟における事実の主張には弁論主義が妥当し、法的判断も(裁判所の専権ではあるものの)事実がどのような文脈で主張されるかに大きな影響を受けることを併せて考えると、射程の判断の検討にあたっては、上記利益相反関係を十分に考慮すべき。

 

リツイートの特性について

  • 多数意見は、「事案の概要」の中で、リツイートを、「第三者のツイートを紹介ないし引用する,ツイッター上の再投稿」と説明している。
  • これ自体は間違っていないが、伝統的なメディア(出版や放送)、あるいはSNSより前から存在するWebメディア(掲示板、ブログなど)における紹介・引用と異なり、リツイートには、ツイート者がツイートを削除すれば、そのリツイートも存在しなくなるという特性があり、この特性はわりと重要なのではないか。

 

氏名表示権侵害・表現の自由

著作権法19条1項(氏名表示権侵害)

  • 著作権著作者人格権では保護法益が異なるので、氏名表示権侵害が成立するためには侵害行為が利用行為(著作権の支分権によってカバーされる行為)に街灯する必要はないという判断は妥当である。
  • もっとも、トリミングはTwitterの仕様で、しかもどこでトリミングするかはTwitterアルゴリズムによって、ユーザーの意思の介在なしに決まるので(しかもそのアルゴリズムがしばしば変わる)、ユーザーは本当に非表示の主体と言えるのだろうか(最高裁が判断していない同一性保持権侵害においてよりクリティカルだが)。

 

著作権法19条2項(すでに著作者が表示しているところに従った著作者名の表示)

  • 判決は、サムネイルをタップしなければ氏名が見えないのであれば表示したとは言えないとするが、同じ場所に表示されなければならない(「一覧性」?)と解釈する必要はないのではないか。
  • 上野先生が言われていたが、論文の場合には後注でもいいと考えられている。サムネイルをワンタップするのと後注を探すのではどちらが大変だろうか。

 

著作権法19条3項(著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがなく、かつ、公正な慣行に反しない場合の省略)

  • 判例は、プライバシー侵害や名誉毀損では表現の自由との利益衡量を行ってきた。著作権法19条3項は、まさに利益衡量のフィールドを提供するものであるのに、最高裁はこれについて何ら判断を示していない。
  • しかし、氏名表示権の侵害にも程度というものがあり、一方、リツイート機能にもそれなりの合理性があるのだから(情報流通に役立つ)、利益衡量をすべきだった。
  • 発信者情報開示請求という事件の性質や、上告理由の拘束から、ただ沈黙しているだけという可能性もあるが、戸倉裁判官の説教からすると、多数意見は19条3項には当たらないと考えているのではないか。
  • 戸倉裁判官は、確認の手間を単なる「負担」として片付けているが、あまりにナイーブではないか。表現の自由に関わる問題である以上、萎縮効果を検討すべきである。

 

プロ責法の改正について

  • 4月から改正が議論されており、中間とりまとめ案が出されたところ。非訟手続で迅速に判断する方向のよう(総務省|発信者情報開示の在り方に関する研究会|発信者情報開示の在り方に関する研究会)。ちなみに研究会メンバーがすごい(こなみ)(「発信者情報開示の在り方に関する研究会」構成員)。
  • アメリカでは被告を特定せずに侵害訴訟を提起し(John Doe Lawsuit)、裁判所の証拠収集手続(特に罰則付きの召喚令状Subpoena)を使って被告を特定するという方法が可能であるよう。日本には証拠収集手続として文書提出命令等があるが、相手方を特定しなければならない。
  • なぜ相手方を特定しなければならないかというと、そのことが、防御の機会を与える前提であるからである。民事訴訟において防御の機会を与える上で最も重要な訴状送達の不備は、再審事由にすらなることがあるし(民事訴訟法338条1項3号の解釈)、外国判決については承認拒絶事由にあたる(同法118条2号。本来3号の手続的公序に含まれるところ、特に重要なものとしてくくり出されたもの)。

 

レファレンス

論文・評釈はオープンアクセス・WLSのアカウントでアクセスできるものを中心に。