早稲田大学法科大学院入試:ステートメントの書き方

早稲田大学法科大学院では、ステートメントの提出が要求されます。志望動機などを書くものですが、ある程度配点がされているようなので、できるだけよいものを出したいところです。この記事では、内容・形式の両面について、書き方の一例を紹介します。

 

目次

 

内容

課題は、既修と未修、既修についてはさらに、(1)社会人としての経験がある者、(2)学部または大学院で法律学以外を中心に学修・研究した者、(3)法律学系の学部または大学院出身者で異なります。

このセクションでは最も受験者が多いと思われる、法律学系の学部または大学院出身者をターゲットに説明します。

 

課題の把握

課題は次のようになっています。

あなたが法律を学んだ中で[1]どのようなテーマや問題に関心を持ち,どのように学修・研究してきたかについて記述してください。そのうえで,あなたは,[2]どのような理由で早稲田大学大学院法務研究科において学び,法曹をめざそうと決意したかについて述べてください。もし,[3]法曹をめざすことを決意した要因が法律の学修・研究以外にもある場合には,それについても述べてください。

[1]と[2]が必須、[3]は任意だということになります。

そもそもステートメントの趣旨ですが、自分がいかに早稲田大学法科大学院を経由して法曹となるにふさわしいかをアピールする場だと考えて書くのがよいと思います*。

*このことは、既修者の経歴(1)〜(3)について、「経歴の選択(1)~(3)に際しては,志願者自身の職務経歴(内容・年数)や出身学部・学科による制約はありません。 判断に迷う場合は,自らをアピールする上で最適であるものを,志願者の判断で選択してください。」とされていることからも読み取ることができます。

 

[1]どのようなテーマや問題に関心を持ち,どのように学修・研究してきたか

この質問は、[1.1]どのようなテーマや問題に関心を持ったかと、[1.2]そのテーマをどのように学修・研究してきたかに分けられます。

 

[1.1]では、適当なテーマを選択し、その社会的な意義を説くことになります。[1.2]との関係で、ゼミなどで扱ったテーマを広げて書くのがやりやすいと思います。

早稲田大学法科大学院を卒業者は、東大や慶應と比べると一般民事を扱う事務所に就職する人が多いですが、早稲田大学法科大学院卒者の中で見るとどちらが多いというわけではないので、企業法務でもよいと思います。

私は学部ゼミは民事訴訟法でしたが、倒産つながりでファイナンスを中心とする企業法務に関心があると書きました(翌月に投資銀行インターンに行ったのでそういう気分だったのだと思います)。

 

[1.2]では、アカデミックな経験、特に他者と議論したことが積極的に評価されると言われています。一つの書き方として、個人的に基礎的な勉強をしたことに加え、ゼミなどでそれを応用する経験を積んだとした上で、後者でやったことを具体的に書いていくことが考えられます。

私は次のように書きました。

[a]学部3年次には、私に与えられた課題は、ディーラー・クレジット会社・購入者が関わる自動車の所有権留保付割賦販売において、第三者弁済によってディーラーに法定代位したクレジット会社は、倒産手続において自己を所有者とする登録がないまま別除権を行使することができるとした裁判例(札幌高判平成28年11月22日金法2056号62頁)に賛成するというものでした。[b]当時この裁判例は前年に出されたばかりであり、評釈がない中で、私は、[c]前提となっている判例最判平成22年6月4日民集64巻4号1107頁)や、それについての判例評釈、適用条文についてのコンメンタール、同様のテーマに関して書かれた論文などを読み、また、同様の事案についての裁判例を検索し、これを分析して、[d]判例の射程や判例・裁判例の結論を分けたメルクマールを探り、これらをもとに[e]2年生から4年生までの4人の共同発表者と議論し、それらを整合的に説明する規範と、それを説得的に根拠付ける論証を考えました

[a]が具体的なエピソード(、[b]が状況の説明)、[c]-[e]がやったことです。[c]-[e]では、[c]今までの議論・実務の調査・分析→[d]今回の問題の検討→[e]チームメイトとの議論という手順を紹介することで、アカデミックなリサーチができ、かつ、グループワークもできることをアピールすることを試みました。

 

[2]どのような理由で早稲田大学大学院法務研究科において学び,法曹をめざそうと決意したか

この質問は、[2.1]どのような理由で法曹をめざそうと決意したか[2.2]そのために、どのような理由で法科大学院を経由することとしたのか、[2.3]どのような理由で早稲田大学を選んだのかに分けられます。

 

[2.1]は、まず法曹としてやりたいことを書きましょう。いろいろあるのが通常だと思いますが、[1.1]で書いたテーマと何らかのつながりがあるものを選ぶと説得力が増すと思います。例えば弁護士の場合:

  • 憲法訴訟で社会を変えたい
  • 刑事弁護を通じて被疑者・被告人を国家権力の不当な行使から守りたい
  • 夫婦や親子など人々の幸福に直結する業務を扱いたい
  • 企業に対して圧倒的に弱い立場にある労働者が権利を行使するのを助けたい
  • 企業取引から生じるリスクへの対処を法的側面からサポートしたい
  • ファイナンスを通じてクリエイティブな事業を支えたい
  • 情報化という新たな時代を迎えた社会でルールを作っていきたい

など。対国家関係や、民事でも紛争はいかにも弁護士の仕事という感じですが、弁護士法72条との関係で法的側面からサポートしたいと言えば基本的に法曹になりたい理由を説明したことになるので、困ることはないと思います。

裁判官や検察官はなろうと思ったことがないので分かりません(想像で書いても説得力がないでしょうから黙っておきます)。

 

[2.2]は、基本法についての深い理解が得られる志を同じくする仲間と勉強できるみたいなことを書くことになると思います(実際それらはロースクールのよいところの一つだと思います)。このとき、[2.1]で書いたやりたい業務との何らかつながりを説明すると説得力が増すと思います。

私は次のように書きました。

[a]最近私が興味を持った事象として、仮想通貨と倒産の問題があります。ビットコイン交換所を運営していたMt.Goxが破産した事案で、破産手続開始後に価格が上昇しましたが、破産手続においては債権の金銭化がされ、その基準時は破産手続開始時とされているため、債権者はその利益を手にすることができません。そこで、債権者らは、まず取戻権を主張しましたが、ビットコインは所有権の客体たる「物」にあたらないとして認められず(東京地判平成27年8月5日LEX/DB 25541521)、今年に入って、金銭化が生じない民事再生手続を申し立て、認められました。[b]この一連の事件は、ビットコインという、2010年代に入って実用化された、先端的な技術に基づく経済活動に関わるものですが、[c]それを追う中で、そのような先端的な事象であっても、まずは既存の法や法理の解釈・適用によって解決がされているということが分かりました。[d]もちろん解釈には限界があり、どうしても妥当性を欠く帰結が避けられない場合には、立法的解決が要請されることになりますが、その場合でもやはり既存の法体系を前提にすることになります。[e]このように、私が将来弁護士として扱いたいと考えている先端的な業務には、今すでにある法についての深い理解が不可欠であると考えています

[a]が具体的なエピソード、[b]-[e]が上で書いた「基本法についての深い理解」がなぜ必要なのかを説明する部分です。

私の場合、[2.1]で(ファイナンスを中心とする)先端的な業務を扱いたいと書いており、「基本法についての深い理解」とは必ずしもつながらないものでした。そのため、[b]でそのことを認めた上で(実質的な問題提起?)、[c], [d]でそれでも上記理解が必要であることを(解釈、立法のそれぞれの場面との関係で)説明して、[e]でその結論を確認しています。

なお、このあと法科大学院ではまさに自分求める教育を受けることができる、みたいなことを書く必要があるのですが、それは[2.3]とかぶるので、まとめて書きました。

 

[2.3]は、早稲田のWebサイトにある教育理念的なものを引用して*、それが[2.1], [2.2]にマッチすることを書けばいいと思います。あれはキャッチコピーみたいなもので、受験者の多くもそれで選んでいるわけではないということは審査する側もよく分かっていると思うので、多少飛躍があっても構わないと思いますが、Webサイトを読んでそれにマッチすることをアピールしようと思う程度の熱心さは積極的に評価されると考えられ、そうであるならば、一応そうしておくことが合理的です。

*ちなみに早稲田の教育理念は「挑戦する法曹」の養成らしいです。個性を発揮する前にまずはローを出れば半分以上通るっていうローとしての基本的な部分を達成してほしいよね…

 

[3]法曹をめざすことを決意した法律の学修・研究以外の要因

医学部受験では小さい頃生命を救ってもらったというのが鉄板ですが、弁護士については必ずしもそういうエピソードはないでしょうし、あったとしても文字数がきつくなったり、ステートメント全体としての自然なストーリー展開を損なわないために考えることが増えるので(特に[1.1], [2.1]との関係)、高校生以前に何か劇的な経験があって法曹を目指して、学部でもそのために勉強してきたといった事情がない限り書かなくてよいと思います。

 

形式

研究科からの指示に「手書き,PCは問いませんが,PC使用の際は文字の大きさを10.5ポイント以上とし,指定用紙に直接印字してください。別紙に印字したものを貼付してはいけません。」とあるので、Wordにテンプレを取り込んで、その上から記入して、印刷するのがよいと思います。

 

PDFのダウンロード・加工

まず、研究科の提出書類のページからテンプレをダウンロードしましょう。

テンプレはPDF形式で、1ページ目に課題等の用紙が、2ページ目に記入用紙が入っています。WordはPDFを貼り付けるとき、自動的に1枚目が貼り付けられてしまって、2枚目以降を選べないので、適当な方法で1ページ目の課題等の用紙を削除して、記入用紙を1ページ目にしておく必要があります。

Macの場合、「プレビュー」アプリで開いて、サイドバーで2ページ目以下のサムネイルを選択して、Command+Deleteキーを押すだけです。

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Windowsの場合、OS付属アプリのレベルではそういう機能はないので、適当なアプリを使う必要があります。ここでは、ブラウザで使える「PDF 分割ウェブサービス - Split PDF」を紹介しておこうと思います。

 

リンクを開くとこういう画面が出るので、研究科のページからダウンロードしたPDFをアップロードしましょう。

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抽出するページを選択します。ここでは2ページ目。

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「ページを抽出」を選択して抽出。

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2ページ目だけになったPDFをダウンロードすることができます。

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Wordへの挿入・調整

Wordにドラッグして挿入しましょう。ただ、この時点では小さいサイズで表示されており、拡大しようとしてもうまくいきません。

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サイズを調整するしましょう。PDFをダブルクリックして、「図の書式設定」リボンを表示させると、「文字列の折返し」に関する設定というのが出てきます。なんでもいいんですが、さしあたり「テキストの背面へ移動」を選択しましょう。これで拡大することができるようになります。

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こういうふうに。

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ステートメントを書く 

それができたら、「ホーム」あるいは「挿入」リボンから「テキストボックス」を挿入しましょう。ちなみに、テキストボックスはデフォルトで白の塗りつぶし・黒の枠線が設定されていますが、邪魔なので、「図形の書式」リボンから塗りつぶしなし・枠線なしを選択しましょう。

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本文もテキストボックスで作成しましょう。見栄えを良くするポイントとして、さしあたり、次のことに気をつけるとよいと思います。

  • MS明朝を使わないこと。游明朝でいいと思います。
  • 見出しはゴシック体を使うこと。
  • ちゃんと字下げすること(段落設定からやります。ぐぐってください)
  • 行間を適当なものに設定すること(同前)

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おわり。 

 

それでは、みなさんのご武運をお祈りしております。

なお、もはや2年前なので役に立つかはわかりませんが、私が早稲田を受験したときの記事として:2019年度早稲田大学法科大学院入試(再現答案へのリンクあり)