今週のメモ(2020.6.14-6.20)

美容関係の広告、令状電子化、サービスポイントと独禁法セクシャルマイノリティを理由とする解雇についての連邦最高裁判決、コロナアプリ、マイナンバー違憲訴訟、河井被疑者の携帯のGPS、発信者情報開示の脱裁判化、花粉を水に変えるマスクの課徴金、入管法改正、違法収集証拠排除による無罪判決、買収防衛、はんこQ&A。

 

YouTube「外見蔑視」広告に抗議の署名運動 体形・体毛など漫画で...発起人「人を傷つけることにもなるとわかって」: J-CAST ニュース【全文表示】

  • 人格権侵害につながりうる広告。(営利ではあるものの)表現の自由に関わるので、基本的には倫理の問題として扱うべきだろうと思うが、例外的な場合には法的にも捉えられないかと思った。
  • 消費者契約においては、[1]一方当事者である事業者が、消費者契約の締結について勧誘をするに際し、[2]他の当事者である消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、[3]容姿、体型その他の身体の特徴又は状況に関する重要な事項に対する願望の実現に過大な不安を抱いていることを知りながら、[4]その不安をあおり、[5]裏付けとなる合理的な根拠がある場合その他の正当な理由がある場合でないのに、[6]物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該願望を実現するために必要である旨を告げたことにより、[7]困惑し、[8]それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができるとされている(消費者契約法4条3項3号ロ)。
  • もっとも、困惑類型というのは、強迫による契約の取消し(民法96条)を拡張したものであり、あくまで意思決定を歪める事情がなかったかという、契約法の文脈の中にある(事業者と消費者という非対称な関係に着目してバランスを少しずらしているだけで)。容姿・体型も、人がコンプレックスを感じやすいゆえに、意思決定が歪められやすいことから規定されているにすぎない。

 

捜索・逮捕令状を電子化 政府・最高裁検討 :日本経済新聞

  • 教科書にあまり書かれていないので(当たり前過ぎるから?)、刑訴を勉強し始めてから1年くらいして初めて知ったのだが、先生から「警察官が車で深夜に裁判所まで行って、疎明資料を提出して、令状をもらったら今度は現場に出向いて執行している」と聞いたときの衝撃が忘れられない。
  • 違法な実質的逮捕を減らすためには、違法収集証拠の排除により違法捜査のインセンティブを剥奪することと並んで、手続コストを減らすことが重要だと思う。その意味ではよい方向だと思う。疎明資料として写真や動画も送れるようになれば、審査の実質化にもつながるのではないか。
  • 令状請求手続が迅速化するのであれば、準抗告(を含む不服申立手続)も迅速化できるはずで、やるべきだと思う。逮捕も準抗告の対象とすべきだと思う。裁判官が足りないなら、増やすべきだろう。

 

共通ポイント、競争抑制排除 消費者の利益向上へ初の調査―公取委:時事ドットコム

  • (令和2年6月12日)共通ポイントサービスに関する取引実態調査について:公正取引委員会独占禁止法上の課題として、①他の共通ポイントサービスの導入の制限のおそれ等、②優越的地位の濫用のおそれ、③不当なデータ収集・活用のおそれを指摘する。
  • 他の共通ポイントサービスの導入の制限のおそれ等
    • 「共通ポイントサービスは,間接ネットワーク効果が働いており,特定の共通ポイントサービスに集中が進みやすい傾向にある市場構造である。また,小売等事業者からすれば,コストや取引慣行等の理由から複数の共通ポイントサービスを導入することが困難である場合もあると考えられる。そうした中で行われている加盟店獲得競争において,ある運営事業者が,市場支配力を有している場合には,例えば,他の共通ポイントサービスの導入を制限するなど,その市場支配力を反競争的行為に用いる可能性がある。」
    • 他の共通ポイントサービスの導入制限(排他条件付取引等)、加盟店獲得時における契約条件の優遇(排他条件付取引,差別対価,取引条件等の差別取扱い)。
  • 優越的地位の濫用のおそれ
    • 「共通ポイントサービスでは,中小の小売等事業者は規模の大きくなった運営事業者と取引することとなる。また,中小の小売等事業者からすれば,顧客対応等の理由から当該運営事業者と取引をやめることが困難である場合もあると考えられる。こうした両者の関係を踏まえ,運営事業者が中小の小売等事業者に対して,優越的地位の濫用を行う可能性がある。」
    • 運営事業者主催のキャンペーンに係る費用負担、加盟店契約の一方的改定、端末設置工事における設置端末又は施工業者の指定、システム変更に伴う費用の負担。
  • 不当なデータ収集・活用のおそれ
    • 「共通ポイントサービスでは,運営事業者がデータの収集,蓄積や,その利活用を行っている。消費者から見れば,個人情報等の利活用の範囲が,運営事業者や加盟店以外の第三者にも及んでおり……,また,小売等事業者から見れば,運営事業者に送信した商品・サービスの取引情報について,運営事業者がそれを基に競合する事業を行うリスクや,競合する小売等事業者にそれが渡るリスクも存在し得る。運営事業者がこうしたデータの収集・活用をする中で,小売等事業者及び消費者の意思に反して,不当にデータが収集・活用されるといった問題が生じる可能性がある。」
    • 加盟店からの取引情報の収集(優越的地位の濫用)、加盟店への情報提供(取引拒絶)、消費者からの個人情報等の収集・活用(優越的地位の濫用)。

 

性的少数者だからと解雇するのは違法 米最高裁が初の判断 - BBC News ニュース

  • 同性愛者・トランスジェンダーであることを理由に解雇することは、性差別に基づく解雇であるとしたもの。
  • トランプは、保守的な裁判官を指名してきており、現在、9人の最高裁判事のうち、5人が保守、4人がリベラルである。今回、リベラルの4人に加えて、ロバーツ長官(ブッシュにより指名)とゴーサッチ裁判官(トランプにより指名、法廷意見の起案者)が賛成した。
  • ところで、極めて保守的なカトリック教国として知られるポーランドでは、昨年IKEAホモフォビア的コメントを社内サイトに掲載した従業員を解雇したことについて、ボイコットが行われ(Ikea Risks Boycott in Poland After Firing Anti-LGBT Employee - Bloomberg)、先月になって司法大臣の指示を受けた検察により人事部長が「宗教上の理由により被用者の権利を制限した」として起訴されている(Prosecutors charge IKEA manager (Warsaw Business Journal))。
  • 日本において、性同一性障害を理由とする解雇(=ジェンダーアイデンティティに従った容姿で勤務することが服務規律等に違反するとして行われた懲戒解雇)が直接的に問題になった事案として、東京地決平成14年6月20日労判830号13頁がある(解雇無効を前提に給料の仮払いを命令)。
    • 労働者が使用者に対し,従前と異なる性の容姿をすることを認めてほしいと申し出ることが極めて稀であること,本件申出が,専ら債権者〔労働者〕側の事情に基づくものである上,債務者〔使用者〕及びその社員に配慮を求めるものであることを考えると,債務者〔使用者〕が,債権者〔労働者〕の行動による社内外への影響を憂慮し,当面の混乱を避けるために,債権者〔労働者〕に対して女性の容姿をして就労しないよう求めること自体は,一応理由がある」。
    • しかし、当該事案では、「債務者社員が債権者〔労働者〕に抱いた違和感及び嫌悪感は、……債権者における上記事情を認識し,理解するよう図ることにより,時間の経過も相まって緩和する余地が十分あ」り、また、「債務者〔使用者〕の取引先や顧客が債権者〔労働者〕に抱き又は抱くおそれのある違和感及び嫌悪感については,債務者〔使用者〕の業務遂行上著しい支障を来すおそれがあるとまで認めるに足りる的確な疎明はな」ない。
    • また、「債務者〔使用者〕において,債権者〔労働者〕の業務内容,就労環境等について,本件申出に基づき,債務者〔使用者〕,債権者〔労働者〕双方の事情を踏まえた適切な配慮をした場合においても,なお,女性の容姿をした債権者〔労働者〕を就労させることが,債務者における企業秩序又は業務遂行において,著しい支障を来すと認めるに足りる疎明はない」。
    • なお、疎明とされているのは仮処分であるため(証明より低くていい)。

 

照会書や本人の同意なしに警察へ感染者情報を 警察庁の依頼で厚労省が自治体や保健所に通知 「人権侵害では?」との反発も

  • 記事は区別していないようだが、次の記述からすると、警察庁厚労省は捜査(司法警察活動)上の必要性ではなく、行政警察活動上の必要性に基づいてこのような動きをしているのではないか。刑事局ではなく官房企画課長名義であることも、このことに整合的である。
    • 警察庁:「「警察は、新型コロナウイルス感染症対策について、『新型コロナウイルス 対策の基本的対処方針』に基づき、『空港、港湾、医療機関等におけるトラブル防止のための警戒警備』や『混乱に乗じた各種犯罪抑止と取締りの徹底』に取り組んでいるほか、各都道府県の知事部局等からの依頼に応じ、必要な協力を行っているところです」」、「警察の責務を果たすための警察力維持を図る必要がある」
    • 厚労省:「警察官が事案等で対応した個人について、警察官から職務上、当該個人 のPCR検査結果等の情報に係る照会があった場合であって、当該情報を利用することについて相当な理由のあるときには、捜査関係事項照会書の交付がない場合であっても、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)第8条第2項第3号に該当し、本人の同意がなくとも、その職務に必要な範囲で当該情報を提供することができるものと考えられます」
  • もっとも、それだけのことなら、捜査関係事項照会書が不要である理由を聞かれた場合、単にそう答えればいいはずである。ところが、厚労省は「平成26年にも旅館の宿泊者名簿を照会書がなくても個人情報保護条例の範囲内で出してあげてくれと通知を出しています。前例に則って今回も出しました」とよくわからないことを述べており、そこまで検討したのかよくわからない。
  • いずれにしても、行政機関個人情報保護法8条2項3号が適用されるのであれば、その要件を満たすか検討しなければならない。
    • 同号は、「[1]他の行政機関…に保有個人情報を提供する場合において、[2]保有個人情報の提供を受ける者が、法令の定める事務又は業務の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し、かつ、[3]当該個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。」と規定する。
    • 厚労省は、(「PCR検査結果等」の外延について) 「明文化したものを作っているわけではありません。警察庁からそういうお話があって、その文書をそのまま使っているだけです」、「我々としては差別や偏見の歴史は十分わかっていますし、それを助長するようなことは考えていません。その上で必要な情報については出して行かなければいけない」と述べているが、あまりにナイーブなのでは。「感染症に関する情報がセンシティブであることはその通りだと思います。一方で、警察が正当な理由があって情報が必要だというのももっともだと思います」と述べているが、これではセンシティブであるとはどういうことなのか理解していない(「センシティブ」というラベルが貼られていることを認識しているだけだ)と言わざるをえない。通達を出すなら条件を具体化すべきである。
    • 具体的には、どのような事務・業務が必要性を基礎付けるのか、類型化された各事務・業務についてどのような情報の利用が「必要な限度」内だといえるのか、「必要な限度」に留めるためにどのようなシステムを設計するのかどうか(そこには警察側の管理体制も含まれるし、捜査関係事項照会書ではないけれども書面を要求するということも検討すべきだろう(そもそも捜査関係事項照会書だって刑訴法自体が書面を要求しているわけではない))といったことが考えられる。
  • 記事には曽我部先生のコメントが載っている。

 

コロナ接触追跡「アベノアプリ」が始まる前から失敗間違いなしの理由 | Close Up | ダイヤモンド・オンライン

  • 依田先生へのインタビュー。
  • 「プライバシー保護への配慮は徹底されています。端末が記録する情報も匿名化され、個人が特定できない形式です。個人情報とは個人を特定できる情報を意味します。ですから、この接触確認アプリでは個人情報は使われていないわけです。」「だとすれば、日本の個人情報保護法に従えば、個人の同意を取る必要はなかったはずで、スマホOS(基本ソフト)のアップデートに伴って、APIとアプリも込み込みで全ユーザーにプレインストールさせるという仕組みも考えられたはずです。そうなれば、もっと実効的なアプリになったでしょう。 」「(Apple/Googleについて)本当にコロナを防げるものなのか、サービス開発の企画段階でユーザーに使ってもらえるのかというデザイン的発想が必要でした。」

 

地裁マイナンバー違憲訴訟退ける|NHK 福岡のニュース

  • 原告も被告も住基ネット判決の上で勝負している?(あとで判決文を見る)

 

GPSで場所、日時特定 河井前法相の現金配布―買収容疑、捜査大詰め・検察当局:時事ドットコム

  • 河井夫妻のスマートフォンは捜索差押許可状に基づいて差し押さえたもの。
  • スマートフォンは有体物としての価値よりも、情報(無体物)としての価値のほうがはるかに高いのだから、そこへのアクセスは別に強制処分にすべきでは?首相が大嫌いな溝手議員を落とすために案里議員を立てて金を配ったんだし、刑訴法を適正化して守ってやれよ。
  • なお、現行法下で強制処分性を争った場合、GPS事件の最高裁判決からすると、任意提出では物理的侵入(13条ではなく35条的なプライバシーの侵害)がないため、任意処分とされる可能性がある。

 

匿名の刃:SNS暴力を考える 裁判なき発信者開示を検討 総務省有識者会議・曽我部真裕座長 - 毎日新聞

  • 有料記事だが、契約しているデータベースからだと見れなかった。かなしい。

 

消費者庁、「花粉を水に変えるマスク」に課徴金857万円 - Impress Watch

 

退去命令拒否の外国人に罰則提案 弁護士ら批判「支援者も共犯に」 収容長期化対策 - 毎日新聞

 

「違法な検査」と無罪判決 覚醒剤密輸事件で千葉地裁 - 産経ニュース

  • 「男性は税関でスーツケースを解体して検査する同意書への署名を拒否。税関職員は同意や令状のないままカッターなどで破壊し中から覚醒剤を見つけた。」
  • 違法収集証拠排除法則の発動自体が珍しい気がするが、その上無罪にしたもの(多くの場合、証拠自体は排除しても、他の証拠から犯罪事実は認められるとすることが多い)。捜査のタイプ的に、令状制度が整備されているのに(cf. GPS捜査)、それを無視したことが大きかったのかも。

 

買収防衛策、新たに7社が導入: 日本経済新聞

 

新型コロナ:「契約書のハンコ不要」、政府が見解 対面作業削減狙う: 日本経済新聞

  • 内閣府・法務省・経産省「押印についてのQ&A」(毎回思うけどなんで新聞社はリンクを貼らないのか)
  • 二段の推定ルールはあるわけで、結局、「はんこを押させるリスク>立証コスト(×訴訟になる確率)」にならないとやめないんじゃないか。
  • せっかく出すなら、印鑑のために出社させるのは安全配慮義務違反になりうるみたいなことをほのめかしてみればよかったのに。