独禁法には競争法と異質なものが入っている

村上先生の新書に「競争法」と「不(公)正競争法」という言葉が区別されて出てくるのですが、自主ゼミで公正競争阻害性について話していて気になったのでメモ。

 

公正競争阻害性

独占禁止法上の「不公正な取引方法」は、公正競争阻害性を効果要件とするが、その内容は、①自由競争減殺、②不公正な競争手段、③自由競争基盤の侵害に分けられる。各行為類型との対応は、次のようになっている。

  • 不当な差別的取扱い、不当対価取引、事業活動の不当拘束…①自由競争減殺
  • 欺瞞的顧客誘引、不当な利益による顧客誘引、競争者への干渉…②不公正な競争手段
  • 抱き合わせ販売等、競争者の取引妨害…①自由競争減殺、②不公正な競争手段
  • 優越的地位の濫用、取引相手方への干渉…③自由競争基盤侵害

 

自由競争減殺

自由競争減殺は、私的独占・不当な取引制限の効果要件である「競争の実質的制限」と同質であり、その差異は競争制限効果の強さという量的なものにすぎない(禁止時期の早期化という点で、危険犯や未遂犯と共通する)。その結果、「一定の取引分野における」という文言はないが、その判断には市場画定が必要である(競争法)。

 

不公正な競争手段

不公正な競争手段は、市場における競争は価格・品質・サービスに関する効率性によるべきであることを前提に、それを逸脱する競争手段を問題とするものである。つまり、このタイプの不公正な取引方法は、競争(市場の機能)が制限されることを問題とする競争の実質的制限とは異質である。そのため、当該行為それ自体の性質が問題となり、市場画定は不要である(不公正競争法)。

一方、「事業者間の公正な競争…を確保」することを目的とする不正競争防止法とは、趣旨において共通する。誤認惹起(不競2条1項20号)は欺瞞的顧客誘引(独禁法2条9項6号ハに基づく一般指定8項)とほぼ重複するし、他の類型*も、他の事業者の築き上げた信用や、他の事業者が作り上げた創作物にフリーライドすることが、事業者間の競争の公正さを害するとされているのである。独禁法に書かれていないのは**、単に公正取引委員会によるエンフォースメントが必要とは考えられなかったからにすぎない***。

*他人の商品等表示の冒用、携帯模倣、営業秘密侵害、限定提供データ侵害、技術的制限手段を無効化装置の販売等、ドメイン冒用、競争者の信用毀損、代理人等の商標冒用。

**はっきり書かれていない類型も、比較的包括的な類型の解釈を頑張れば、独禁法違反だと言えるかもしれない。公取委は忙しいし、民事でやるなら(不公正な取引方法の差止請求じゃなくて)端的に不正競争防止法上の差止請求権を主張すればいいから、そんな判断がされる日は来ないだろうけど。

***ちなみに、不正競争防止法にはけっこう刑罰規定があるので、いきなり警察がやってくるという意味で、必ずしも不公正な取引方法よりも悪質さが劣るとされているわけではない。公取と警察・検察の能力なども考慮しているのだろう。

 

自由競争基盤侵害

自由競争基盤の侵害は、積極的に定義しようとするとよくわからないが、不公正な競争手段との違いは、取引相手方に何らかの形で作用して、その自由な意思決定を妨げる点にある。ちなみに、優越的地位の濫用の公正競争阻害性の中身が自由競争基盤侵害であるというのは、必ずしも確立した解釈ではなく、議論がある。