外国人どうしの同性婚は日本においても有効か?

近時ヨーロッパを中心に、同性婚を認める国が増えており、東アジアでも、昨年台湾が同性婚を認める立法をするに至りました(台湾、同性婚を合法化 アジア初 :日本経済新聞。2017年に司法院大法官会議が同性婚を認めないことは違憲とする決定を行っていました)。

そうすると、日本法では同性婚は認められていないけれども、日本の裁判所が同性婚の有効性の判断を迫られるケースが生じうることになります。例えば、次のようなケースです(台湾法には詳しくないのですが、簡略化のため、台湾法における「同性婚」は当事者の性別を除いて異性間の婚姻と同等のものであると仮定します)。

AとBは、1995年、台北で台湾人の両親のもとに出生し、台北で育った(国籍は中華民国)。2020年、台北で台湾法に従って婚姻を行った。2023年、AとBは東京に移住し、東京で働くようになった(国籍は台湾のまま)。2025年、Bは、東京でC(東京在住)の運転する自動車との接触事故により死亡した。Aは、Bから損害賠償請求権を相続したとして、Cを被告として、東京地裁に損害賠償請求訴訟を提起した。

 

管轄

管轄は比較的単純です。国際裁判管轄・土地管轄については、いずれも「原告は被告の法廷地に従う」原則(被告住所地原則)が妥当するので(民事訴訟法3条の2第1項、4条1項)、管轄が認められます。

 

準拠法

本件における法律関係は、①交通事故による損害賠償請求権の(Bの下での)発生・効力、②AB間の婚姻関係、③損害賠償請求権の相続に分けられます。なお、未承認国の法律が一般的に準拠法となりうるかという問題がありますが、さしあたり、なると解することとします。

①損害賠償請求権の発生・効力については、通則法(法の適用に関する通則法)17条の不法行為と性質決定できます。不法行為の準拠法は、原則として結果発生地法だから、日本法です(交通事故なので、Bがよほど無茶な動きをしたのでない限り、ある程度の額は認められると思われます)。

②AB間の婚姻関係については、固まった解釈があるわけではありません(林貴美「日本国際私法における同性カップルの法的保護の可能性」国際私法年報14号2頁(2012)参照)。とはいえ、台湾法における「同性婚」は当事者の性別を除いて異性間の婚姻と同等のものであると仮定したので、さしあたり、通則法25条の婚姻の効力の問題と性質決定できると思われます。そうすると、準拠法は、第一次的には婚姻当事者の共通本国法です。AとBについては、台湾法がそれに当たります(特に瑕疵はなかったという仮定なので、認められるでしょう)。

③損害賠償請求権の相続については、相続準拠法と不法行為準拠法の累積的適用とする裁判例があります。批判がありますが、さしあたりそれに従っておくことにします(日本法は相続を認めているので、台湾法が相続を認めているかにかかることになります。台湾法は日本法をある程度継受しているし、認められる…?)。

そうすると、請求は認められそうなのですが、問題は、②婚姻の効力です。

 

公序

通則法42条は、「外国法によるべき場合において、その規定の適用が公の秩序又は善良の風俗に反するときは、これを適用しない。」と規定しています。その典型例としてしばしば挙げられるのが、一夫多妻婚です。

大村先生の家族法の教科書には、同性カップルの保護と一夫多妻婚の保護が、「異性性の消滅」「一対性の消滅」として並べて言及されています(大村敦志家族法〔第3版〕」(有斐閣、第3版)285頁以下)。このように考えると、同性婚も一夫多妻婚と同様に、公序に反するということになると解釈する余地もあるように思います。実際、スイスではそのような判決がされたことがあったようです(林・前掲6頁。なお、その後、立法により承認することとしたようです)。

林・前掲20頁は、「現時点において,同性カップルのための制度が実質法上認められていないとしても,向性カップルの関係は日本において公序に反する関係ではなく,法的保護を受け得る対象であると考えられている」とし、注で次のように述べています。

婚姻が伝統的に生殖と子の養育を目的とする男女の結合であることや,憲法24条の「両性の合意」という表現,また民法731条の「男」,「女」という表現や750条以下の「夫婦」という文言を用いていることからこのように解されている……。もっとも,このような解釈から同性間の関係が一般的に公序に反すると解されることはなく,当事者間の契約や養子縁組により同性間の関係も一定の法的保護を受け得る対象であることを認めるものが多い。より明確に,憲法24条は,異性カップルのみに婚姻を保障する規定とはいえず,民法で向性婚を認めたり,登録制度を設けることは憲法に違反しないと述べるものもある……。

しかし、公序は必ずしも憲法とは関係がありません。最高裁も、代理出産の事案で、生物学上の母(卵子提供者)と子の間に実親子関係を成立させることについて、次のように述べたことがあります(最判平成19年3月23日民集61巻2号619頁。本件で問題となっているのは、民訴法118条3号の公序ですが、同号の実体的公序と通則法42条の公序は同質です)。

実親子関係は,身分関係の中でも最も基本的なものであり,様々な社会生活上の関係における基礎となるものであって,単に私人間の問題にとどまらず,公益に深くかかわる事柄であり,子の福祉にも重大な影響を及ぼすものであるから,どのような者の間に実親子関係の成立を認めるかは,その国における身分法秩序の根幹をなす基本原則ないし基本理念にかかわるものであり,実親子関係を定める基準は一義的に明確なものでなければならず,かつ,実親子関係の存否はその基準によって一律に決せられるべきものである。したがって,我が国の身分法秩序を定めた民法〔注:憲法ではない〕は,同法に定める場合に限って実親子関係を認め,それ以外の場合は実親子関係の成立を認めない趣旨であると解すべきである。以上からすれば,民法が実親子関係を認めていない者の間にその成立を認める内容の外国裁判所の裁判は,我が国の法秩序の基本原則ないし基本理念と相いれないものであり,民訴法118条3号にいう公の秩序に反するといわなければならない。このことは,立法政策としては現行民法の定める場合以外にも実親子関係の成立を認める余地があるとしても〔注:上記民法の「趣旨」を外れるような立法を憲法が許容しているとしても〕変わるものではない

そうすると、民法は、婚姻は二人の男女がするものと位置付けていることは明らかなので、理論的には必ずしも同性婚が公序に反しないとは言えないのではないかと思います(政策論としては全く反対ですが)。

 

追記(2020/10/14):平成30年人事訴訟法等改正(国際裁判管轄規定の新設)に関する部会の第2回会議において、裁判官委員が「まず類似の法律関係である離婚として国際裁判管轄を検討し,国際裁判管轄がない場合はそれを理由に却下する。国際裁判管轄がある場合には,通則法27条によって,準拠法の決定をし,準拠法に同性婚がある場合には,更に通則法42条によって,その規定の適用が公序良俗に反するかどうかを判断することになると考えられます。」と述べており(法務省:法制審議会国際裁判管轄法制(人事訴訟事件及び家事事件関係)部会第2回会議(平成26年5月23日開催)の1頁)、やはり当然に公序良俗に違反しない言えるわけではないと考えられているようです。