倒産法、民事保全・執行法の基本書、演習書等と使用法(2020年11月最終更新)

信託法は分離しました:金融法の基本書等と使用法

 

目次

 

分野の概要

倒産法と民事執行・保全法は、いずれも民事手続法(広義の民事訴訟法)に含まれます。

民事執行法(法律名)は、次の4分野からなります。

  • 強制執行…一般債権者が、債務名義に基づいて、債務者の不動産を競売したり(金銭執行―不動産執行)、債務者が有している債権を差し押さえて取り立てたり(金銭執行―債権執行)、建物の明渡しを強制したり(非金銭執行―不動産の明渡しの強制執行)する。
  • 担保執行…担保権者が、債務名義に基づかずに、担保物権に含まれる換価権に基づいて、担保物権の目的となっている不動産を競売したりする。
  • 形式的競売留置権に基づく競売、商事売買における競売など。
  • 財産開示強制執行の準備のために債務者の財産を調査する。

民事保全法(法律名)は、判決手続の簡易版である保全命令と、強制執行手続の簡易版である保全執行について規定しています。保全命令には次の3種類があります。

  • 仮差押え…金銭執行に備えて競売したい物の処分を禁止する。
  • 係争物に関する仮処分…不動産の明渡しの強制執行などに備えて、明け渡させたい物の処分を禁止する。
  • 仮の地位を定める仮処分…何でもあり。新株発行差止めの仮処分、代表取締役の職務執行停止・代行者選任の仮処分、解雇された労働者の地位保全・賃金仮払いの仮処分、コンテンツプロバイダに対する発信者情報開示の仮処分・アクセスプロバイダに対する発信者情報の削除禁止の仮処分などが有名。

倒産法(分野名)は、次の4つの法律からなります。民事執行法(のうち強制執行法)が個別的執行手続であるのに対して、倒産法(特に破産法)は包括的執行手続としての性質を持ちます。包括的である(その前提として倒産局面=財産が足りない場面である)ゆえに、多数の関係者の利害を調整する必要があり、より複雑になっています。

  • 破産法…倒産手続の一般法。破産手続開始決定・破産管財人選任→破産管財人による債務者財産の管理・換価/債権の届出・調査・確定→配当。清算型(倒産した債務者の財産を全て換価し、比例弁済する)かつ管理型(原則として破産管財人が選任され、破産者は財産管理処分権を失う)。
  • 民事再生法…再建型倒産手続の一般法。再生手続開始決定(管財人は選任されない)→再生債務者による財産の管理・経営の再建/債権の届出・調査・確定→再生計画の議決・認可→計画に従った弁済。再建型(倒産した債務者の経営を再建し、そこから生まれるキャッシュフローによって弁済する)かつDIP型(原則として管財人が選任されず、再生債務者は財産管理処分権を維持できる)。
  • 会社更生法…民事再手続の強化版。
  • 会社法2編9章2節「特別清算…株式会社法上の清算手続の強化版であり、かつ、破産手続の簡易版。

司法試験科目「倒産法」では、破産法民事再生法が出題されます。

 

倒産法

倒産処理法入門

倒産処理法入門 第5版

倒産処理法入門 第5版

 

入門書。倒産3法(破産法、民事再生法会社更生法)と特別清算ADR、国際倒産について説明しています。破産法だけなら70ページくらい。

ある程度高度な話まで詰め込まれており、しかも「です・ます」調なので、普通に読んでいると「読み終わったのに何が書いてあったかわからない」ということになりやすい気がします。そのため、六法で構造を確認したり、ノートを取りながら読んだりするとよいと思います。

(2020年6月最終更新)

 

ストゥディア倒産法

倒産法 (有斐閣ストゥディア)

倒産法 (有斐閣ストゥディア)

 

これも入門書。こっちは司法試験科目の破産法、民事再生法中心です。ストゥディアシリーズは民訴・会社がわかりやすかったですが、これも安定してわかりやすいです。

私が倒産法を勉強し始めたのは学部3年次(2017)だったので、倒産処理法入門しか選択肢がありませんでしたが、今始めるならこっちもありだなと思います。

(2020年6月最終更新)

 

倒産法概説

倒産法概説 第2版補訂版

倒産法概説 第2版補訂版

 

基本書。まず実体法について説明し(沖野先生。量的には全体の半分くらい)、それから手続について説明しています:破産(山本先生)、民事再生(笠井先生)、会社更生(中西先生)、国際倒産(同)、ADR水元先生)。

実体法部分を通読しましたが、正直読みにくかったです:

  • 一文が長い。
  • 一段落が長い(段落を改めずに1ページを埋めることも…)。
  • 括弧書きが長い。
  • 接続語を省略しがち。
  • 何らかの命題を述べる際に、論理的に必要だが知識があれば補える前提条件を省略しがち(こっちの知識が足りないのはよく分かっていますが、知識が足りないからこそ教科書を読もうしているわけであり…)。
  • 過渡期の教科書にありがちだが、法改正があった箇所について、改正により従前の議論が実益を失っている(減殺されている)にもかかわらず、そのことに言及しないで従来の議論を説明し、後から取って付けたように改正の話をしがち(会社法2014年改正。破産法自体に関しても、初版(2006年)の2年前に新法が制定されたこともあってか、旧法についての原稿をベースにしたと思われる箇所が多い)。
  • 議論がある箇所について、Aと考えればA'となる、Bと考えればB'となるというところまでは説明してくれるものの、最終的にどっちが正当と考えるのかを書かないことが多い。

最後の問題については、リークエ民事訴訟法のはしがきの「見解が鋭く対立している問題や議論が複雑に絡み合っている問題などについて…客観性という名の下に判例や学説の羅列に止めたのでは、いたずらに読者の混乱を招くばかり」という記述が刺さります。執筆者的に内容が信頼できることは明らかなので、文章をもうちょっとなんとか…という感じ。

私は、①本書の記述を整理し、②重判で最近の判例を補い、③必要なものについては論文などを読んだものをまとめたノートを作ろうかと思っていたのですが、たまたま履修した倒産法の先生(神)が全く同じコンセプトのレジュメを作っており、それをもらうことができました(時間的にも正確さの点でも本当に助かりました)。

(2020年6月最終更新)

 

伊藤・破産法・民事再生法

破産法・民事再生法 第4版

破産法・民事再生法 第4版

  • 作者:伊藤 眞
  • 発売日: 2018/12/22
  • メディア: 単行本
 

司法試験の過去問を解き始めたので満を持して紹介。民事訴訟法の1.5倍のページ数(今まで買った本の中で一番厚い)。

スタイルは基本的に民事訴訟法と同じです:

見出しはそれほど親切ではないので、体系が頭に入っていないと迷子になります。また、脚注が長いです(ほぼ脚注で埋まっているページも…)。1998年の初版以来、立法などで本文が全く使えなくなった場面を除いて、基本的に脚注で補充するようにしているのではないかと思います(セルフ芦部憲法状態)。伊藤先生の執筆ペースを考えると、それが合理的なのかもしれませんが。(伊藤・民事訴訟法

基本書にするにはオーバースペックなのですが、司法試験では、『倒産法概説』には言及すらなく、これの脚注でやっと言及されるレベルの論点がたまに出るので、辞書的に使っています(が、そのレベルのものはどうせみんな分からないまま書くことになるので、読むとしても過去に出たものを確認する程度でよく、例えば本書を脚注まで読もうというのはリソースの配分として非効率だと思います)。

 (2020年8月最終更新)

  

基礎トレーニング倒産法

基礎トレーニング倒産法

基礎トレーニング倒産法

 

サピックスの何かみたいな名前の演習書。

ひとりで学ぶ会社法』と同様に、どちらかというと初学者の段階で条文を引きながら読むと理解に役立ちます。私は学部3年次の定期試験前に読みました。誤字脱字がめちゃめちゃ多いのが玉に瑕です(基礎トレーニング倒産法|日本評論社)。

(2020年9月最終更新)

 

倒産法演習ノート

演習書。『倒産法概説』の執筆者5人+他2人で書かれているので、『倒産法概説』との相性がよいです(と出版社のページにも書かれています)。

結構レベルが高く、司法試験的にはオーバースペックだと思いますが、倒産は実務でもかなり使うようなので、これくらいやっておいてもよいのかもしれません。論点解説集として使うのもあり。

なお、2020年の前半に平成29年民法改正に対応した4版が出ると聞いていましたが、今のところその気配はないですね…

(2020年10月最終更新)

 

ロースクール倒産法

ロースクール倒産法 第3版

ロースクール倒産法 第3版

  • 発売日: 2014/03/31
  • メディア: 単行本
 

15のUnitからなり、各Unitは、設例、Questions、資料からなっています。一度倒産法選択に決めたのですが、演習で指定された本書があまりに合わず、知財選択に切り替えるきっかけになりました(知財の演習では毎週事例を検討して答案を提出しています)。

設例は、ある程度量がありますが、事案と全く関係ない記述が多く、読む意味があまりありません。雑多な事実の中から意味のある事実を見つけ出すことは重要なスキルだと思いますが、関連性がないことが明白な事実を並べられても、そのトレーニングにはなりません。

Questionsは、量が多く、論点ごとに細分化されており、前提として何を確認するか、どの論点をどの文言との関係で取り上げるか、それらをどのような順番で論述するかを考えるトレーニングになりません。事例問題を検討したことがある人であれば、それらもまた重要な一つのスキルであるということは分かると思います。また、オープンクエスチョンが多く、何を聞きたいのか分からないものも多いです。

本書には解答が(その方向性すらも)ありませんが、それに加えて、資料も、引用者によるコメントが付されていないため、どういう趣旨で引用されたのかが基本的に分かりません。例えば論文なら通説なのか、通説に対する有力な批判なのかが分かりませんし、判例・裁判例(特に後者)なら判例法理全体との関係でどのような位置付けを与えられているものなのかが分からないことが多いです(評釈では必ず「本判決の意義」という欄がありますよね)。他の本を読めばわかりますが、だったら本書は不要です。

いずれも授業担当者が補えばいいということなのかもしれませんが、予習時点では何が何だか理解できず、理解できない以上授業時まで覚えておけるはずがなく、忘れた状態で授業を受けてもやっぱり理解できません

「解答なり解説なりをつけると勉強しなくなる」という田舎の/公立の高校教師並みのことを考えているのかもしれませんが、勉強しない人は解説なんか読まないので大丈夫です。

(2020年11月最終更新)

 

民事執行・保全法 

基礎からわかる民事執行法民事保全法

基礎からわかる民事執行法・民事保全法 第2版

基礎からわかる民事執行法・民事保全法 第2版

 

民事執行・保全法の入門書。薄いし、図がいっぱい。

(2019年最終更新)

 

アルマ民事執行・保全

民事執行・保全法 第6版 (有斐閣アルマ > Specialized)

民事執行・保全法 第6版 (有斐閣アルマ > Specialized)

 

民事執行・保全法の基本書。

和田先生のものと比べると、より詳しく、執筆者はいずれも研究者なので(ちなみに民事執行・保全判例百選の編者と同じ)、より理論的です。ただ、それゆえに最初に読むのにはつらく(旧版を学部生の頃に読みましたが、何度も寝てしまいました)、和田先生のものを先に読んでからにしたほうがよい気がします。

平成29年民法(債権関係)改正・令和元年民事執行法改正に対応しており、2020年1月の執行・保全百選3版に対応しています。執行・保全の教科書としては、本書と和田先生のもののほかは、リークエ平野先生のものがありますが、リークエは改訂の気配がなく(2010年が最終…)、和田先生・平野先生のものは予定はあるようですがしばらくかかりそうなので、現時点で最近の法改正に対応したものは、本書が唯一です。

(2020年5月最終更新)

 

関・民事保全手続

民事保全手続

民事保全手続

  • 作者:関 述之
  • 出版社/メーカー: きんざい
  • 発売日: 2018/08/31
  • メディア: 単行本
 

東京地裁民事9部(民事保全専門部)での部総括経験のある裁判官による解説書です。読者として第一に修習生が想定されています。民事保全は、執行・保全をまとめて説明する教科書では、最後の方でちょっと扱うだけということが多いので、ある程度詳しく、事件類型別の解説までしてくれている本書は貴重です。最近はインターネット関係仮処分が多いようであり、それについても一定の説明があります(なお、詳細については別に同時期に出された編著があります:インターネット関係仮処分の実務)。

(2020年1月最終更新)

 

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