重判4年分の民訴判例まとめ

昨日令和元年重判が届いたので、4年分の重判の民訴まとめ。4年分なのはたまたま手元に4年分があったから。司法試験に出そうかどうかは参考程度に。なお、支払督促、国際民訴、仲裁、民事執行、民事保全、倒産に関するものは除外した(国際民訴だとH28-6, R1-6がかなり重要そう。倒産はまだよく読んでないけどそのうちまとめるかも)。

 

管轄・移送

  • 最決平成30年12月18日民集72巻6号1151頁(R1-5)民事訴訟法324条は、「上告裁判所である高等裁判所は、最高裁判所規則で定める事由があるときは、決定で、事件を最高裁判所に移送しなければならない。」と規定し、これを受けた民事訴訟規則203条は、「法第三百二十四条(最高裁判所への移送)の規定により、上告裁判所である高等裁判所が事件を最高裁判所に移送する場合は、憲法その他の法令の解釈について、その高等裁判所の意見が最高裁判所判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは控訴裁判所である高等裁判所判例)と相反するときとする。」と規定している。この規定に基づく移送がされたとき、最高裁は移送決定を取り消すことができるか(民事訴訟法22条1項が規定する受移送裁判所の拘束の対象となるか)が問題となった。最高裁は、法例解釈の統一という趣旨から、取り消すことができるとした。出ない
  • 最決平成31年2月12日民集73巻2号107頁(R1-10)人事訴訟法8条1項は、「家庭裁判所に係属する人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟の係属する第一審裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより、当該訴訟をその家庭裁判所に移送することができる。この場合においては、その移送を受けた家庭裁判所は、当該損害の賠償に関する請求に係る訴訟について自ら審理及び裁判をすることができる。」と規定している。夫婦の一方が横浜家裁民法770条1項5号(「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」)に基づく離婚訴訟を提起したところ、被告が、原告は不貞行為をした有責配偶者であるとして請求棄却を求めるとともに、横浜地裁に損害賠償(慰謝料)請求訴訟を提起した。横浜地裁が、被告(離婚訴訟原告)の申立てに基づき、損害賠償請求訴訟を離婚訴訟の係属する横浜家裁に移送する決定をしたところ、原告(離婚訴訟被告)が不貞は離婚訴訟の請求原因になっていないと主張した。最高裁は、人訴法8条1項の趣旨(立証の便宜と訴訟経済)から、離婚訴訟の被告が不貞行為を主張している場合には移送ができるとした。出ない。

 

当事者適格

  • 最判平成28年6月2日民集70巻5号1157頁(H28-1)…アルゼンチン政府は、国債を発行するにあたり、日本のメガバンとの間で債券管理委託契約を締結していた。しかしアルゼンチン政府がデフォルトしたため(アルゼンチン政府はよくデフォルトする)、時効成立を阻止するために訴えを提起する必要が生じた。しかし、個々の国債保有者が訴えを提起することは現実的でない。そこで、メガバンがアルゼンチン政府を訴えた。当事者適格が問題となったが、管理委託契約の条項、経済的実態、原告が銀行であることなどから、任意的訴訟担当に必要な授権と合理的必要性(最大判昭和45年11月11日民集24巻12号1854頁参照)を認めた。めちゃめちゃ出そう。

 

重複起訴

  • 最判平成27年12月14日民集69巻8号2295頁(H28-3)…過払金事案で、原告が不当利得返還請求を、被告が貸金返還請求をしたところ、本訴請求債権の一部の時効消滅が問題となった。そこで、原告が、当該一部が時効消滅したと判断されることを条件として、当該一部をもって反訴請求債権を相殺すること(民法508条「時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。」)を主張した。最判平成3年12月17日民集45巻9号1435頁が、別訴先行型について原則禁止としていることとの関係で、このような相殺の主張が許されるかが問題となった。最高裁は、民事訴訟法142条の趣旨(判断の矛盾抵触、審理の重複〔訴訟経済〕)から、許されるとした。めちゃめちゃ出そう。

 

訴えの利益・法律上の争訟

  • 最判平成28年12月8日訟月63巻5号1321頁(H29-1)厚木基地騒音訴訟の一つ。将来の損害賠償請求が民事訴訟法135条(「あらかじめその請求をする必要がある場合」)を満たすかが問題となった。原審は将来の損害賠償請求を一部認めていたが、最高裁は全部却下した。この事件自体は出なそうだけど、大阪空港事件以来の一連の議論は出そう。
  • 東京高判平成28年12月16日判時2359号12頁(H30-1)…日本舞踊の流派である花柳流の名取として活動していた原告が、当時の家元から除名処分を受けたため、当時の家元と流派団体を被告として、名取の地位の確認および除名処分の無効確認を求めたところ、法律上の争訟性が問題となった。前者(名取の地位の確認)について、そこに結び付けられた権利利益を検討して、法律上の争訟性を認めた。後者(除名処分の無効確認)についても、懲戒処分についての一般的な判断枠組みである裁量権の逸脱・濫用という観点から審査できるとして、法律上の争訟性を認めた。この事件自体は出なそうだけど、種徳寺事件以来の一連の議論は出そう。

 

文書提出命令

  • 最判平成29年10月4日民集71巻8号1221頁(H29-4)香川県民が、香川県議会議員が政務活動費の一部を使途基準に違反して使用したとして、地方自治法242条の2第1項4号に基づく住民訴訟(提訴請求訴訟)を提起し、その中で、当該県議会議員が県議会議長に提出した政務活動費に係る領収書等についての文書提出命令を申し立てた。申立人は県を文書の所持者として相手方としたが、相手方は議長が所持者であると主張した。最高裁は、文書提出命令に基づく提出義務を負うのは地方公共団体であるとして、県を所持者として提出を命じた原々審・原審を支持した。行政法との関係もあって出ないと思う。
  • 最判平成31年1月22日民集73巻1号39頁(R1-4)…傷害事件で逮捕・起訴され、有罪判決を受けた原告が、大阪府警の違法捜査について、大阪府に対して損害賠償請求訴訟を提起し、その中で、大阪府警が所持する捜査記録等の写しの文書提出命令を申し立てた。 相手方は、当該捜査記録等の原本は検察官が保管しているところ、刑事訴訟法47条は「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。」と規定しており、この規定は、保管者である検察官に刑事訴訟に関する書類を公にするかどうかの裁量を与える趣旨であり、大阪府はその権限を有しないと主張した。最高裁は、刑事訴訟法47条が文書の保管者(検察官に限定していない)に裁量を与える趣旨であることを認めつつも、写しが引用文書・法律関係文書に該当し、かつ、写しの所持者(原本の所持者だけではない)が提出を拒否することが裁量の逸脱・濫用と認められる場合には、提出を命じることができるとした。刑事訴訟法との関係もあって出ないと思う。

 

判決の拘束力

  • 令和元年7月5日判タ1468号45頁(R1-1)…AがYに対して、本件建物売買に基づく本件建物明渡請求等を求める訴えを提起したところ、Yが金銭を受領したのは貸金としてであると主張し、Yの主張が認められて請求棄却となった。また、Aから貸金返還請求権を譲り受けたXがYに対して、本件建物明渡等を求める訴えを提起し、AがYとの間の譲渡担保設定予約の完結権を行使して本件建物を取得し、それをXに譲渡したと主張したところ、Yが、同日に締結されたのは金銭消費貸借契約であると主張するとともに、譲渡担保設定予約を否認し、Yの主張が認められて請求棄却となった。これらの前訴の後に、XがYに貸金返還請求訴訟を提起した。Yが金銭消費貸借契約の成立を否認した。原審は、信義則違反との主張を認めず、売買代金としての支払いを認め、請求を棄却した。最高裁は、貸金と主張したことによって両前訴が棄却されていたこと、その後にYが主張を一転させたこと、仮にYの主張が認められるとすれば、Xは明渡請求と貸金返還請求のいずれも認められなくなること、Xが金銭消費貸借契約の成立に係る事実を積極的かつ具体的に主張していたことに言及し、信義則違反に反することが強くうかがわれるとして、破棄差戻しとした。この事件自体は出なそうだけど、信義則違反による主張遮断の論証として参考になりそう。

 

独立当事者参加

  • 知財高判平成29年9月5日裁判所website(H29-2)…再審の訴え提起ととともに独立当事者参加の申出をしたが、補正命令に従わずに再審訴状が却下された場合、独立当事者参加は不適法である。この事件自体は出なそうだけど、このような再審を認めた最決平成25年11月21日民集67巻8号1686頁は出ないとはいえないと思うただ、再審も独立当事者参加も司法試験的にはマイナーなので、可能性はそれほど大きくなさそう。
  • 福岡高判平成30年3月19日裁判所website(H30-2)諫早開門差止訴訟。独立当事者参加の要件として、詐害防止参加について既存当事者の訴訟追行の自由の制限を正当化し得る法律上の利益(利害関係説的?)を、権利主張参加の権利の非両立性について法律上の非両立(請求の趣旨レベルの非両立でよいとする説の不採用)を求めた。この事件自体は出なそうだけど、独立当事者参加の要件自体は出そう近時40条準用の立法的当否まで含めて議論が盛んである。

 

上訴

  • 最決平成28年2月26日判タ1422号66頁(H28-4)…検察官を被告とする人事訴訟(死後認知の訴え)に参加した第三者で相続権を害される者は、被参加人の上訴期間経過後でも、適法に上訴を提起しうることを前提に、上告棄却・上告不受理としたもの。出ない。
  • 最判平成27年11月30日民集69巻7号2154頁(H28-5)…①訴訟上の和解の成立を理由に訴訟終了宣言判決をした第一審判決に対して、被告のみが控訴した場合、原判決を取り消し、請求を一部認容することは、不利益変更禁止の原則に違反して許されない。②この場合において、控訴裁判所が請求の一部に理由があると考える場合、控訴裁判所は、控訴の全部を棄却するほかない。出ない。
  • 阪高決平成29年7月25日判時2362号20頁(H30-3)最判昭和47年6月15日民集26巻5号1000頁によれば、「被告が、仮執行宣言付判決に対して上訴を提起し、その判決によつて履行を命じられた債務の存否を争いながら、同判決で命じられた債務につきその弁済としてした給付は、それが全くの任意弁済であると認めうる特別の事情のないかぎり、同法一九八条二項〔現行法260条2項〕にいう「仮執行ノ宣言ニ基キ被告カ給付シタルモノ」にあたる」。被告が請求債権の存在を争っていないことから、特別の事情を認めた。出ない。

 

弁護士・司法書士

  • 最判平成28年6月27日民集70巻5号1306頁(H28-10)…認定司法書士が裁判外の和解について代理することができる範囲は、債務者が弁済計画の変更によって受ける経済的利益の額や債務整理の対象となる債権総額ではなく、個別の債権額で決まる。出ない。
  • 最判平成29年7月24日民集71巻6号969頁(H29-9)…認定司法書士による弁護士法72条に違反して締結された和解契約は、公序良俗違反となる特段の事情がない限り無効とならない。出ない。
  • 最判平成29年10月5日民集71巻8号1441頁(H29-10)…弁護士法25条1号(「弁護士は、次に掲げる事件については、その職務を行つてはならない(「相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件」)に違反した場合、相手方(弁護士法25条1号にいうそれ)は異議を申し立てることにより、弁護士の排除を求めることができ、却下された場合は当該相手方が、認められた場合は相手方(弁護士法25条1号にいうそれ)の相手方当事者(=排除された弁護士を訴訟代理人としている当事者)が即時抗告を申し立てることができる。出ない。
  • 最判平成31年3月5日判時2421号21頁(R1-2)…養親の相続財産全部の包括受遺者が提起する養子縁組の無効の訴えは、原則として訴えの利益が認められない。出ない。
  • 最判平成30年12月21日民集72巻6号1368頁(R1-3)…弁護士法23条の2第2項に基づく照会に対する報告をする義務があることの確認を求める訴えは不適法。出ない。

 

訴訟費用等

  • 最決平成27年12月17日判時2291号52頁(H28-2)…抗告提起の手数料の納付を命ずる補正命令で定められた期間の経過後でも、不納付を理由とする抗告状却下命令が確定する前に納付すれば、抗告状は遡って有効となる。 出ない。
  • 最決平成29年9月5日判タ1143号56頁(H29-3)…受救助者の猶予費用の相手方に対する直接取立額の決定方法について、原則として差引計算をしなくてよいとしつつ、当該事案では差引計算をしないことが裁量の逸脱となるとした。出ない。