入管法に基づく収容・仮放免の手続

退去強制手続

ほぼ引用であるが、適宜まとめたり条文を引用したりした。条文を引用していないのは、条文を見られるとまずいような運用でもしているのだろうか。強制的手続としての側面を見ていきたいので、出国命令、退去強制令書が発布された場合の自費出国については省略する。

 

違反調査

違反調査は、退去強制手続の第一段階であり、退去強制事由に該当すると思われる外国人に対して、入国警備官が行う(27条〜38条。違反調査・出頭 | 出入国在留管理庁)。 特に臨検・捜索・押収については、裁判所の許可を得なければならない(31条)。

なお、入管法は、入国警備官が第二十四条各号の一に該当すると思料する外国人を「容疑者」と呼んでいる(27条)。

 

収容・引渡し

違反調査の結果、容疑者が退去強制事由に該当すると疑う相当の理由があれば、地方出入国在留管理局の主任審査官が発付する収容令書により容疑者を収容することができる(39条〜43条。収容、面会・差入れ、仮放免 | 出入国在留管理庁)。収容令書の収容期間は30日であるが、主任審査官は、やむを得ない事由があると認めるときは、30日を限り延長することができる(41条1項)。「第24条各号の一に明らかに該当する者が収容令書の発付をまつていては逃亡の虞があると信ずるに足りる相当の理由があるとき」には、収容令書の発布すら受けずに収容できる(43条。緊急収容。ただし、事後に収容令書を請求し、発布を受けられなければ放免)。

入国警備官は、違反調査により容疑者を収容したときは、身体を拘束した時から48時間以内に、調書及び証拠物とともに、その容疑者を入国審査官に引き渡さなければなりません(引渡し。入管法44条)。引渡しを受けた入国審査官は、入国警備官の行った違反調査に誤りがなかったかどうかなどについて審査する(入管法45条。引渡し・違反審査・口頭審理・異議申出・裁決・在留特別許可につき、引渡・違反審査・口頭審理・異議申出・裁決・在留特別許可 | 出入国在留管理庁)。

 

違反審査

入国警備官から容疑者の引渡しを受けた入国審査官は、容疑者が退去強制対象者(退去強制事由のいずれかに該当し、かつ、出国命令対象者に該当しない外国人をいう)に該当するかどうかを速やかに審査しなければならない(45条)。

違反審査の結果、その容疑者が退去強制事由のいずれにも該当しないことが分かり、入国審査官がそのことを認定した場合は、入国審査官は直ちにその者を放免しなければならない(47条1項)。

入国審査官が、容疑者が退去強制対象者に該当すると認定し、容疑者がそれを認めるときは、主任審査官によって退去強制令書が発付され、退去強制される(47条5項)。

 

口頭審理

容疑者が入国審査官の認定が誤っていると主張したり、あるいは、誤ってはいないが、在留特別許可を希望するときは、通知から3日以内に、口頭審理を請求することができる(48条1項)。

容疑者が口頭審理を請求すると、特別審理官が口頭審理を行い、入国審査官の行った認定に誤りがあるかどうかを判定する(48条1項)。

口頭審理の結果、退去強制事由のいずれにも該当しないことが分かり、特別審理官がそのような判定をした場合は、特別審理官は直ちにその者を放免しなければならない(48条6項)。

特別審理官が入国審査官の認定に誤りがないと判定し、容疑者がそれを認めるときは、主任審査官によって退去強制令書が発付され、退去強制される(48条9項)。

 

異議の申出・法務大臣の裁決

容疑者が特別審理官の判定が誤っていると主張したり、あるいは、誤ってはいないが在留特別許可を希望するときは、通知から3日以内に、主任審査官に書類を提出して、法務大臣への異議の申出を行うことができる(49条1項)。

異議の申出を受理した法務大臣は、直接容疑者を取り調べることはしないが、入国警備官の違反調査、入国審査官の違反審査、そして特別審理官の口頭審理という一連の手続で作成された証拠(事件記録)を調べて裁決する(49条3項。おそらく実質的な審査は出入国在留管理庁の職員が行う)。

法務大臣は、裁決を主任審査官に通知する(49条4項)。主任審査官は、裁決に従い、放免し、あるいは退去強制令書を発付する(49条5項、6項)。

 

在留特別許可

法務大臣は、異議の申出に理由がないと認める場合でも、次のような場合には、在留を特別に許可できる(在留特別許可。50条1項)

  • 永住許可を受けているとき(同項1号)
  • かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき(同項2号)
  • 人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき(同項3号)
  • その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき(同項4号)

「この在留特別許可は、本来であれば我が国から退去強制されるべき外国人に対して、法務大臣が在留を特別に許可することができるとされているものであり、許可を与えるか否かは法務大臣の自由裁量にゆだねられてい」るそうである(引渡・違反審査・口頭審理・異議申出・裁決・在留特別許可 | 出入国在留管理庁)。

在留特別許可がされた場合は、放免される(50条4項・49条4項)。

在留特別許可がされた事例・されなかった事例は、法務省が一覧にして公開している(法務省:在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について)。

 

退去強制令書の発付

主任審査官は、容疑者が入国審査官の認定又は特別審理官の判定に服したことの通知を受けるか、あるいは法務大臣への異議の申出に対して理由がない旨の裁決の通知を受けたときは、退去強制令書を発付する(51条1項)。

 

退去強制令書の執行

退去強制令書が発付されると、入国警備官は、退去強制を受ける外国人に退去強制令書又はその写しを示して、速やかにその外国人を送還しなければならない(52条1項、3項)。
また、退去強制令書の発付を受けた外国人である被退去強制者を直ちに我が国から送還することができないときは、送還可能のときまで、その者を入国者収容所、地方出入国在留管理局の収容場その他法務大臣又はその委任を受けた主任審査官が指定する場所に収容することができる(52条5項)。

 

送還

送還先は、その者の国籍又は市民権の属する国が原則であるが、国籍国等に送還することができないときは、本人の希望により、我が国に入国する直前に居住していた国、我が国に入国する前に居住していたことのある国、我が国に向けて船舶等に乗った港の属する国、出生地の属する国、出生時にその出生地の属していた国、その他の国のいずれかに送還される(53条1項、2項。ただし、相手国が受入れを認めなければ、送還することはできない)。なお、原則として、難民条約第33条第1項に規定する領域等には送還することができない(53条3項。ノン・ルフールマン原則)。

「送還には、大別して、自費出国、運送業者の負担による送還、国費送還の三形態があ」るところ、「当局では、国費送還が国民の皆様の貴重な税金によりまかなわれていることはもとより、不法就労を始め不法入国や不法残留等の入管法違反の防止を図る観点から、自費出国が可能な被退去強制者については、極力その努力を促し、帰国用航空券又は帰国費用の工面ができないため送還が困難となっている者、あるいは、特に人道的配慮から早期送還が必要不可欠と思料される者等についてのみ、国費送還の措置を執」っているそうである(退去強制令書の執行・送還・自費出国 | 出入国在留管理庁)。

 

仮放免 

仮放免請求

収容令書若しくは退去強制令書の発付を受けて収容されている被収容者について、被収容者本人又はその代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、入国者収容所長または地方出入国在留管理局の主任審査官に対して、仮放免を請求することができる(54条1項)。

 

仮放免許可

仮放免の請求があった場合は、入国者収容所長又は主任審査官が、被収容者の情状及び仮放免の請求の理由となる証拠並びにその者の性格、資産等を考慮して、300万円以下の保証金を納付させ、かつ、住居及び行動範囲の制限、呼出しに対する出頭の義務その他必要と認める条件を付して、仮放免を許可することができる(54条2項)。

なお、保証金については、入国者収容所長又は主任審査官が適当と認めたときに限り、被収容者以外の者が差し出した保証書をもって保証金に代えることを許すことができるが、保証書には、保証金額及びいつでもその保証金を納付する旨を記載しなければならない(54条3項)。

 

仮放免の取消し

仮放免許可を受けた外国人が、①逃亡した、②逃亡すると疑うに足りる相当の理由がある、③正当な理由がないのに呼出しに応じない、④仮放免に付された条件に違反したときは、入国者収容所長又は主任審査官は、仮放免を取り消すことができる(55条1項)。
仮放免が取り消された場合、仮放免されていた者は、収容令書又は退去強制令書により、入国者収容所、地方出入国在留管理局の収容場その他法務大臣又はその委任を受けた主任審査官が指定する場所に再び収容される(55条4項)。

仮放免が取り消されたときは、仮放免されたときに納付した保証金の全部又は一部が没取される(55条3項)。