形態模倣行為(3号不正競争)と他の知的財産権の関係について

メモ。

 

条文

不正競争防止法2条1項3号(「3号」)は、デザインについての不正競争行為を規定している(形態模倣行為などと呼ばれる)。

他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

なお、不正競争防止法は、2条1項で不正競争行為を定義し(現在のところ1号から22号までがある)、3条で差止請求を、4条で損害賠償を規定している。

「商品の形態」については、2条4項に規定がある。

この法律において「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいう。

「模倣」については、2条5項に規定がある。

この法律において「模倣する」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう。

 

実質的同一性

3号はデッドコピー(分かりやすく言うと丸パクリ)を禁止するものと言われるが、それはこの要件ゆえである。意匠権侵害や著作権侵害が、同一性または類似性でよいとされており、実際にはもっぱら類似性のみが使われることと比較すると、厳格な要件である。

(そのため、3号の形態模倣による訴訟は、1号、2号の商品等表示などと比べると少ない。なお、意匠権侵害に基づく請求について無効の抗弁、例えば新規性欠如が認められそうな場合に、予備的請求として主張されることがある。)

なぜそのように厳格な要件を要求するかであるが、3号が意匠法を補完するものだからである。

不正競争防止法が形態模倣を不正競争であるとした趣旨は,商品開発者が商品化に当たって資金又は労力を投下した成果が模倣されたならば,商品開発者の市場先行の利益は著しく減少し,一方,模倣者は,開発,商品化に伴う危険負担を大幅に軽減して市場に参入でき,これを放置すれば,商品開発,市場開拓の意欲が阻害されることから,先行開発者の商品の創作性や権利登録の有無を問うことなく〔注:意匠法ではこれらが要求される〕,簡易迅速な保護手段を先行開発者に付与することにより,事業者間の公正な商品開発競争を促進し,もって,同法1条の目的である,国民経済の健全な発展を図ろうとしたところにあると認められる。(知財高判平成28年11月30日判時2338号96頁[加湿器])

 

依拠性

依拠性は、意匠権を含む産業財産権侵害の成立には要求されていないが、著作権侵害については要求されている。著作権や3号によって保護される形態は、産業財産権と異なり、その範囲が査定・登録という行政処分によって事前に確定され、公示されているわけではないため、同一性・類似性があることのみをもって侵害成立とすべきではないのだと考えられる。

(この点を捉えて、著作権は、相対的独占権であると言われる。たまたま似たのでは侵害にならないということである。これに対して、産業財産権は、たまたま同一性・類似性が認められれば、あるいは特許であればクレームにヒットすれば侵害になるし(絶対的独占権)、それどころか、過失が推定されてしまう)。

著作権侵害については、依拠性は、同一性・類似性と並立の要件として、独自に立証が必要であるが(なお、特許権侵害訴訟におけるのと同様の書類提出命令の制度はある。著作権法114条の3)、3号では、実質的同一性が認められる場合、依拠性が事実上推認されているようである。実質的同一性という要件の厳格さゆえであると考えられる(類似であるにすぎない場合、たまたま似たということはあるかもしれないが、実質的に同一であるに至っている場合、たまたまということは基本的にはないはず)。