景品表示法の沿革

景品表示法は、1962年に独禁法の特例として制定され、2008年改正で法文上も消費者法としての性質を持つようになり、2009年改正で消費者庁に移管されるとともに、独禁法から切り離され、2014年改正で課徴金の対象とされるに至った。

主に沿革について述べるが、エンフォースメントが中心となる(実体要件については末尾のリンクを参照)。

 

1962年・制定

景表法は、1962(昭和37)年に独禁法(不公正な取引方法の不当な顧客誘引)の特例法として制定された。その主眼は、独禁法に基づく排除措置命令は審決を経なければ発出することができなかった当時、不当景品・不当表示について、そのような手続を経ずに排除命令を発出することができるようにし、迅速な是正を図ることにあった(なお、不当景品・不当表示という実体要件の柱は現在まで変わっていない)。

もっとも、独禁法の特例法という性質上、基本的には事業者(不当景品・不当表示により顧客を奪われる競業者)の利益を保護するもので、消費者の利益は公益の中に吸収・解消されるものにすぎなかった(最判1978(昭和53)年3月14日民集32巻2号211頁〔主婦連ジュース事件〕)。

同法の規定にいう一般消費者も国民を消費者としての側面からとらえたものというべきであり、景表法の規定により一般消費者が受ける利益は、公正取引委員会による同法の適正な運用によつて実現されるべき公益の保護を通じ国民一般が共通してもつにいたる抽象的、平均的、一般的な利益、換言すれば、同法の規定の目的である公益の保護の結果として生ずる反射的な利益ないし事実上の利益であつて、本来私人等権利主体の個人的な利益を保護することを目的とする法規により保障される法律上保護された利益とはいえないものである。もとより、一般消費者といつても、個々の消費者を離れて存在するものではないが、景表法上かかる個々の消費者の利益は、同法の規定が目的とする公益の保護を通じその結果として保護されるべきもの、換言すれば、公益に完全に包摂されるような性質のものにすぎないと解すべきである。(前掲最判1978(昭和53)年3月14日)

なお、公正競争規約は、事業者(あるいは事業者団体)の間の規約等で、内閣総理大臣公正取引委員会の認定を受けることで、規約等に参加し、かつ、それを遵守していた者は、独禁法上の排除措置命令等の規定の適用除外を受けることができるというものである。

 

2008年改正―適格消費者団体の差止請求

2008(平成20)年改正においては、不当表示の一部である優良誤認・有利誤認行為が、適格消費者団体による差止請求制度(消費者契約法で先行導入)の対象に加えられた。これにより、景表法は消費者法としての性質を(も)有するようになった。

もちろん独禁法自体、究極目的の一つは「一般消費者の利益を確保する」ことだが、公正・自由な競争等を介するかどうかが異なる。

 

2009年改正―独禁法からの分離

さらに、2009(平成21)年の消費者法の改正時に、次の改正が行われ、独禁法の特例法としての性質を失い、消費者法としての性質を強めた(改正景品表示法の新旧。もっとも、仕組みとしてはなお独禁法に酷似しているし、不公正な取引方法と構成することで、独禁法に基づく排除措置命令・事業者による差止請求の対象となる。また、景表法の執行については、公取委への協議や委任が法定されており、事実上の協力も行われている)。

  • 目的規定から独禁法の特例を定めること、公正な競争を確保することが削除され、代わって一般消費者による自主的かつ合理的な選択が加えられた(1条)。
  • 所管行政機関が、公正取引委員会から新設の消費者庁に移った。内閣府の外局なので、主務大臣は内閣総理大臣であり、例えば措置命令(6条)の主語は、「内閣総理大臣は」であるが、この法律に基づく内閣総理大臣の権限は消費者庁長官に委任するものとされており(12条1項)、実際に措置命令書の名義も消費者庁長官になっている。
  • 表示規制・景品規制の実体要件(効果要件)として、不公正な取引方法に共通の公正競争阻害性が定められていたが、自主的合理的選択阻害性(?)に置き換えられた(3条、4条各号。改正景品表示法の概要では「改正後も規制の対象範囲は実質上変わらない」とされているが…)。
  • 以上の他にも、実質的な意味はないが、消費者法だと宣言したい気持ちが伝わってくる改正がされた。例えば、独禁法上定義されている「事業者」「事業者団体」を独自に定義する(2条1項、2項。もっともその内容はコピペ)、「排除命令」を「措置命令」に変える(6条。もっとも中身は変わっていない)、「公正競争規約」が法文上「公正競争規約」ではなくなり、単なる「協定又は規約」とになった(11条。もっとも、消費者庁も含めてみんな「公正競争規約」と呼び続けている…)。

 

2014年改正―課徴金制度の導入

2014(平成26)年改正では、課徴金制度が導入され、不当表示の法定類型(優良誤認、有利誤認)がその対象とされた(8条)。

なお、小畑先生の論考に、次のような記述がある(小畑徳彦「消費者庁移管後の景品表示法の運用と改正」ノモス(関西大学法学研究所)35号(2014) 17頁)。

不当表示については、従来、措置命令を受けた事業者が違反行為を繰り返しているという状況にはなく、違反行為の抑止のために課徴金を導入する必要があるとはいえない。

課徴金制度が導入された背景には、課徴金を徴収しないと不当表示をした者がやり得になるという考えがあるようだが、措置命令を受けた事業者の信用失墜による打撃は大きく、通常はやり得になることはないと考えられる。

独禁法違反はわりとがんがん再犯している印象があるが(独禁法:類型別・最近の排除措置命令など)、独禁法が基本的にB to Bであるのに対して、景表法は基本的にB to Cなので、需要者にとっての代替性が高い(=消費者の事業者に対する依存度が低い)ことが多いという違いは大きいのかもしれない。しかも、特にSNSが普及した現在、炎上は拡大しがちである。

減免制度には、自主申告による減免(9条)と、消費者に対する返金措置(10条)による減免がある。前者については、減免は50%であり、また、そもそも景表法違反は基本的に単独行為なので、果たして意味があるのかという気もする。

 

関連:薬機法の広告規制について

薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律。2013年に薬事法から題名変更)66条〜68条は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品の広告について、特別の規制をしている(医薬品等の広告規制について |厚生労働省薬事法違反はこれでチェック!薬事法ルール集|化粧品・健康食品などに関する広告・法令ガイドラインまとめ|薬事法ドットコム薬機法違反に関わる違反表現・広告事例集134選 | 薬事法ドットコム)。

 2019(令和元)年改正で、課徴金制度が導入されており、66条1項の類型(虚偽・誇大広告による医薬品等の販売)がその対象となる(75条の5の2。法律案の概要新旧対象条文)。

 

消費者法メモに記載していたものを分割。資料および関係記事についてはそちらを参照。)