フェイクニュース規制法について

司法試験令和元年で出ていたので。なお、民事から解いているのでその問題はまだ解いていない。

 

シンガポール

シンガポールでは、昨年、フェイクニュース規制法が制定された。

シンガポール政府は、フェイクニュースが宗教的不和をもたらす可能性があるため厳しい法律が必要だと説明。また、当局には虚偽情報が急速に拡散するのを防ぐ権限が必要だとしている。
今回承認された「オンライン虚偽・改ざん予防法」は、向こう数週間で施行される予定だ。
政府は、法の対象となるのは損害が証明できる虚偽情報だけで、特定の意見を標的にはしないとしている。
K・シャンムガム法務相は議会で、「表現の自由がこの法律の影響を受けてはならない」と述べ、この法律の目的は「虚偽情報やボット、荒らし行為、偽アカウント」に対処することだと説明した。
同法では、政府が公益に反すると判断した情報の拡散を防ぐ。虚偽情報を拡散した者には重い罰金が科せられるほか、最大5年の禁錮刑となる場合もある。
また、フェイクニュースを拡散するためにボットや偽アカウントを使用した場合、最大100万シンガポールドル(約8100万円)の罰金と、最大10年の禁錮刑が科される。
さらに、オンラインプラットフォームやソーシャルメディア、ニュースサイトなどにも適用され、虚偽情報の削除や訂正文の掲載に従わなかった場合には運営側に罰金が科せられるという。

シンガポールでフェイクニュース禁止法、表現の自由への懸念も - BBCニュース

 

しかし、シンガポールは、独裁・監視国家として有名であり、濫用のおそれが強い。

公用語は英語、中国語、マレー語、タミール語だが、基本的には英語でやりとりが行われている。また国内では特定の民族が結束しすぎて対立しないよう、人口の8割が暮らす公営住宅などでも、住民の民族バランスが考慮されている。政府が国民生活をかなりコントロールしている国としても知られる。

一党独裁を守るため? シンガポール政府に「不利なニュース」は違法に | 【世界を見渡すニュース・ペリスコープ】 | クーリエ・ジャポン

 

実際、反体制的なブロガーについて、Facebookがアクセスのブロックを命じられ、懸念を表明している。

シンガポール政府は今週、フェイスブックに対し、ブロガーのアレックス・タン氏が運営するフェイスブックページ「ステーツ・タイムズ・レビュー」が繰り返し虚偽の内容を掲載し、POFMAに基づいた指示に全く従っていないとして、国内でアクセスをブロックするよう命じた。
(中略)
タン氏のブログは反体制的な内容で知られており、昨年10月に施行されたPOFMAに基づいてこれまでに3回訂正文の掲載を命じられているが、同氏は応じていない。

フェイスブック、シンガポール政府のブログ遮断命令に「深い懸念」 - ロイター

 

ドイツ

ドイツでも、刑法に違反するような書き込みの削除を命じることができる法律が成立している。プラットフォームが自ら審査することを求めるもので、仕組み的にはデジタルミレニアム著作権法っぽい(オーバーブッキングが生じるおそれがあることも含めて)。

ネットワーク執行法(NetzDG)という名の同法律は、各プラットフォームに法に反するおそれのあるコンテンツを24時間以内に削除することを求めている。違反内容によっては削除までに7日間の猶予が与えられる場合もあるが、いずれにせよ期間内に削除できなかった場合は5000万ユーロ(約64億円)という重い罰金が課せられる可能性がある。さらにプラットフォームは半年ごとに違反コンテンツの報告義務を負うこととなっている。

ネットワーク執行法 、ドイツの新法律に 政治家たちが注目:各プラットフォームが違法投稿を削除 | DIGIDAY[日本版]

なお、より詳しい解説として、次のものがある:フェイクニュースに対する適切な対処法とは――ドイツのネットワーク執行法をめぐる議論 / 穂鷹知美 / 異文化間コミュニケーション | SYNODOS -シノドス-

 

フランス

フランスでは、選挙関係限定で削除などを命じることができる法律が成立している。司法審査が前置される。

この法案が可決されれば、SNS上のスポンサー付きコンテンツはその旨が表示され、裁判官がフェイクニュースと判断した場合には削除やアクセス遮断を命じることができるようになる。マクロン氏は露系メディアのRTやスプートニク、米ブライトバート・ニュースらによる情報工作が選挙結果を左右しかねないとして、19年の欧州議会選挙に間に合うように施行したい考えだと、同氏に近い仏政府関係者は話している。

仏大統領、偽ニュース対策で法整備 (1/3ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)。なお、ブルームバーグの提供記事)

 

フランスでは、2017年の選挙で、情報操作が行われた(ただし、奏功しなかったようである)。

フランス大統領選では、5月7日の決選投票直前に、マクロン新大統領に対する「隠し口座疑惑」やメールなどの大量流出といった立て続けの〝攻撃〟があった。
怪文書サイバー攻撃ネット掲示板、右派の拡散など、道具立ては米大統領選そのままの構図だ。
だがフランスでは、それらの揺さぶりがほとんど効果を示さなかったようだ。
決選投票の得票率はマクロン氏66%、ルペン氏34%で、マクロン氏は直前の世論調査の支持率をむしろ上回っている。
その背景には、マクロン陣営の周到なサイバー攻撃対策や、米仏のメディア環境の違いなどもあったようだ。

フェイクニュースはなぜフランス大統領選を揺るがさなかったのか | ハフポスト

 

虚偽の風説の流布というのは、市場における需要者の判断を歪める行為であり、商品やサービスの取引であれば、民事上不正競争行為とされ、独占禁止法上も不公正な取引方法の一つとして規制される(証券取引の場合、市場操縦という面に着目した規制だから、また違うけど)。選挙も市場だから、規制の必要性は同等である。違うのは、取引市場については政府には中立的な立場が期待できるのに対して、選挙についてはそうではなく、常に濫用の危険があるという点である。

 

日本では自主規制に任せる方針のようである(アメリカと同じ)。「海外と比べれば深刻な問題になったケースが少ないうえ」というのはどうなのかと思わなくもないが。

日本での対策は法規制ではなく、IT企業に自主的な取り組みを促すことが柱となった。海外と比べれば深刻な問題になったケースが少ないうえ、表現の自由を萎縮させるとの懸念が多くの関係者から強く指摘されたことから「最初から規制をつくって前のめりになる必要はない」(総務省担当者)との判断だ。

だが、「自主規制のみではうまく機能しないのではないか」(有識者)との意見もある。5日に有識者会議がまとめた最終報告書には自主的な取り組みが不十分だったり、効果がないと認められる場合には「行政からの一定の関与も視野に入れて検討を行うことが適当」と明記された。

偽ニュース対策、各国が法制化 国内の自主規制は実効性が課題に - ITmedia エグゼクティブ