株主代表訴訟と信託

バイトで(といっても労働ではなく業務委託)投資信託についてのテキストを書いているのですが、考えていたら面白かったのでメモ。

  • 所有と経営が分離している会社においては、経営は、株主から預かった資産を運用するという側面があります。この点で、会社経営者(取締役)は、投資信託の運用会社(受託者)と同様の地位にあります。自ら何らかの事業を行うのか(事業会社)、他人の事業に投資するのか(受託者)という違いは、資産の運用の方法の違いとして位置づけることができます。
  • 取締役は、会社に対して善管注意義務を負い(会社法330条が準用する民法644条)、これを怠った場合には、会社が責任を追及します。しかし、実際には会社の意思決定をし、会社を代表するのは取締役であるため、利益相反が生じており、実際には適切な責任追及を期待するのは困難です。そこで、株主代表訴訟という特別の制度により、株主が会社の権利を行使して(法定訴訟担当)、取締役の責任を追及することになります。
  • 信託の受託者は、受益者に対して直接に善管注意義務を負い(信託法29条2項)、これを怠った場合には、受益者が自らの権利の行使として(固有適格)、受託者の責任を追及することができます。
  • 会社も信託も、投資家から財産を分離し(出資の履行/信託譲渡)、独立した財産の集団を作り出します。しかし、その財産の集団の帰属が異なり、会社においては会社という擬制された権利主体に帰属し、信託においては受託者に帰属します(ただし、固有財産と異なる責任財産を構成し、倒産隔離がされます)。株主代表訴訟という制度が必要になるのは、このように、株主と取締役との間に会社という擬制された権利主体を観念するためです。

会社は、法律関係を簡明にするために作られたフィクションです。しかし、それが民事訴訟法を難しくしているんだなあと思いました(こなみ)。