最判平成31.1.18:デフォルトジャッジメントの送達と外国判決承認要件としての手続的公序

対象判例は、最判平成31・1・18民集73巻1号1頁

最近思ったんだけど、判例解説って、解説(検討以外)を全部読んでから事案・判旨を読んだほうがわかりやすくない…?

 

事案と判旨

1 本件は,上告人らが,被上告人に対して損害賠償を命じた米国カリフォルニア州の裁判所の判決について,民事執行法24条に基づいて提起した執行判決を求める訴えである。
2 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1)カリフォルニア州民事訴訟制度の下においては,判決は裁判所において登録され,原則として当事者の一方が他方に対し判決登録通知を送達することとされ,判決に対する控訴期間は遅くとも判決登録の日から180日を経過することにより満了するものとされている。
(2)上告人らは,平成25年(2013年)3月,米国カリフォルニア州オレンジ郡上位裁判所(以下「本件外国裁判所」という。)に対し,被上告人外数名を被告として損害賠償を求める訴えを提起した。
(3)被上告人は,弁護士を代理人に選任して応訴したが,訴訟手続の途中で同弁護士が本件外国裁判所の許可を得て辞任した。被上告人がその後の期日に出頭しなかったため,上告人らの申立てにより,手続の進行を怠ったことを理由とする欠席(デフォルト)の登録がされた。
(4)本件外国裁判所は,上告人らの申立てにより,平成27年(2015年)3月,被上告人に対し,約27万5500米国ドルの支払を命ずる,カリフォルニア州民事訴訟法上の欠席判決(デフォルト・ジャッジメント。以下「本件外国判決」という。)を言い渡し,本件外国判決は,同月,本件外国裁判所において登録された。
(5)上告人らの代理人弁護士は,平成27年(2015年)3月,被上告人に対し,本件外国判決に関し,判決書の写しを添付した判決登録通知を,誤った住所を宛先として普通郵便で発送した。上記通知が被上告人に届いたとはいえない。
(6)被上告人は,本件外国判決の登録の日から180日の控訴期間内に控訴せず,その他の不服申立ても所定期間内にしなかったことから,本件外国判決は確定した。
3 原審は,要旨次のとおり判断し,上告人らの請求を棄却すべきものとした。
 敗訴当事者に対する判決の送達は,裁判所の判断に対して不服を申し立てる権利を手続的に保障するものとして,我が国の裁判制度を規律する法規範の内容となっており,民訴法118条3号にいう公の秩序の内容を成している。本件外国判決は被上告人に対する判決の送達がされないまま確定したから,その訴訟手続は同号にいう公の秩序に反する。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1)外国裁判所の判決(以下「外国判決」という。)が民訴法118条により我が国においてその効力を認められるためには、判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないことが要件とされているところ,外国判決に係る訴訟手続が我が国の採用していない制度に基づくものを含むからといって,その一事をもって直ちに上記要件を満たさないということはできないが,それが我が国の法秩序の基本原則ないし基本理念と相いれないものと認められる場合には,その外国判決に係る訴訟手続は,同条3号にいう公の秩序に反するというべきである(最高裁平成5年(オ)第1762号同9年7月11日第二小法廷判決・民集51巻6号2573頁参照)。
(2)我が国の民訴法においては,判決書は当事者に送達しなければならないこととされ(255条),判決に対する不服申立ては判決書の送達を受けた日から所定の不変期間内に提起しなければならず,判決は上記期間の満了前には確定しないこととされている(116条,285条,313条)。そして,送達は,裁判所の職権によって,送達すべき書類を受送達者に交付するか,少なくとも所定の同居者等に交付し又は送達すべき場所に差し置くことが原則とされ,当事者の住所,居所その他送達をすべき場所が知れないなど上記の送達方法によることのできない事情のある場合に限り,公示送達等が例外的に許容されている(98条,101条,106条,107条,110条)。他方,外国判決が同法118条により我が国においてその効力を認められる要件としては,「訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達」を受けたことが掲げられている(同条2号)のに対し,判決の送達についてはそのような明示的な規定が置かれていない。 
 さらに,以上のような判決書の送達に関する手続規範は国ないし法域ごとに異なることが明らかであることを考え合わせると,外国判決に係る訴訟手続において,判決書の送達がされていないことの一事をもって直ちに民訴法118条3号にいう公の秩序に反するものと解することはできない。
 もっとも,我が国の民訴法は,上記の原則的な送達方法によることのできない事情のある場合を除き,訴訟当事者に判決の内容を了知させ又は了知する機会を実質的に与えることにより,当該判決に対する不服申立ての機会を与えることを訴訟法秩序の根幹を成す重要な手続として保障しているものと解される。
 したがって,外国判決に係る訴訟手続において,当該外国判決の内容を了知させることが可能であったにもかかわらず,実際には訴訟当事者にこれが了知されず又は了知する機会も実質的に与えられなかったことにより,不服申立ての機会が与えられないまま当該外国判決が確定した場合,その訴訟手続は,我が国の法秩序の基本原則ないし基本理念と相いれないものとして,民訴法118条3号にいう公の秩序に反するということができる。
5 以上と異なる見解の下,本件外国判決の内容を被上告人に了知させることが可能であったことがうかがわれる事情の下で,被上告人がその内容を了知し又は了知する機会が実質的に与えられることにより不服申立ての機会を与えられていたか否かについて検討することなく,その訴訟手続が民訴法118条3号にいう公の秩序に反するとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな違法がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。

 

承認と執行

外国裁判所の確定判決は、次の要件を満たす限り、日本でも当然にその効力を有するとされています(民事訴訟法118条。承認)。すなわち、①当該外国裁判所に裁判権が認められること、②敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと、③判決の内容及び訴訟手続が日本における公序良俗に反しないこと、④相互の保証があることです(番号は号番号に対応)。民事執行法24条には、「外国裁判所の判決についての執行判決を求める訴え」が規定されています。これらの関係は、次のように整理されています(民事執行法24条2項〜4項参照)。すなわち、外国裁判所の確定判決は、承認の要件を満たす場合、日本でも当然に既判力・形成力を有するが(自動的承認)、執行力を得るためには執行判決を得なければならない。そのため、承認要件を満たすかどうかは、典型的には執行判決請求事件で問題となりますが、それ以外の類型の事件で既判力抵触の前提問題などとして問題となることもあります。

 

公序要件の趣旨、手続的公序

各国の法制度は異なるものであり、承認制度を採用した以上、ある程度異なる法制度に基づく判決が日本においても効力を持つことを認めざるを得ません。3号は、このことを前提に、その外国判決を承認すれば日本における法秩序に抵触することとなるといえるような例外的な場合に承認を拒むという、安全弁としての役割を持ちます。この意味で、本号は、法の適用に関する通則法42条と同質です。なお、中西康ほか・国際私法(LEGAL QUEST)5頁は、準拠法選択と外国判決の承認の関係について、「抽象的な法規範であるか具体的な法規範であるかの違いはあるが、両者はいずれも、外国の法規範をわが国に受け入れるかを問題としている点で共通している」と述べています。

また、現行法下では、公序には実体的公序と並んで手続的公序が含まれることが、文言上明らかです。手続的公序について、本間靖規ほか・国際民事手続法2版191頁(中野俊一郎執筆)は、被告の防御権保障や裁判官の独立・公正などにつき、日本の手続法的基本原則と相容れない手続が行われた場合に、承認を拒絶することによって、当事者の事後的な手続保護を図るものと説明しています。

なお、2号(呼出し等)は、本号により要請される手続的公序のうち、被告の防御権保障のために最も重要である呼出し等を、特に明文で規定したものと位置付けることができます。

 

公序要件に関する判例

最判平9・7・11民集51巻6号2573頁

今回の最高裁判決が引用する判例。懲罰的損害賠償を認めるカリフォルニア州裁判所の判決について、(実体的)公序違反として、承認を認めませんでした。

(一) 執行判決を求める訴えにおいては、外国裁判所の判決が民訴法二〇〇条各号に掲げる条件を具備するかどうかが審理されるが(民事執行法二四条三項)、民訴法二〇〇条三号は、外国裁判所の判決が我が国における公の秩序又は善良の風俗に反しないことを条件としている。外国裁判所の判決が我が国の採用していない制度に基づく内容を含むからといって、その一事をもって直ちに右条件を満たさないということはできないが、それが我が国の法秩序の基本原則ないし基本理念と相いれないものと認められる場合には、その外国判決は右法条にいう公の秩序に反するというべきである。

(二) カリフォルニア州民法典の定める懲罰的損害賠償(以下、単に「懲罰的損害賠償」という。)の制度は、悪性の強い行為をした加害者に対し、実際に生じた損害の賠償に加えて、さらに賠償金の支払を命ずることにより、加害者に制裁を加え、かつ、将来における同様の行為を抑止しようとするものであることが明らかであって、その目的からすると、むしろ我が国における罰金等の刑罰とほぼ同様の意義を有するものということができる。これに対し、我が国の不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し、加害者にこれを賠償させることにより、被害者が被った不利益を補てんして、不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものであり(最高裁昭和六三年(オ)第一七四九号平成五年三月二四日大法廷判決・民集四七巻四号三〇三九頁参照)、加害者に対する制裁や、将来における同様の行為の抑止、すなわち一般予防を目的とするものではない。もっとも、加害者に対して損害賠償義務を課することによって、結果的に加害者に対する制裁ないし一般予防の効果を生ずることがあるとしても、それは被害者が被った不利益を回復するために加害者に対し損害賠償義務を負わせたことの反射的、副次的な効果にすぎず、加害者に対する制裁及び一般予防を本来的な目的とする懲罰的損害賠償の制度とは本質的に異なるというべきである。我が国においては、加害者に対して制裁を科し、将来の同様の行為を抑止することは、刑事上又は行政上の制裁にゆだねられているのである。そうしてみると、不法行為の当事者間において、被害者が加害者から、実際に生じた損害の賠償に加えて、制裁及び一般予防を目的とする賠償金の支払を受け得るとすることは、右に見た我が国における不法行為に基づく損害賠償制度の基本原則ないし基本理念と相いれないものであると認められる。

(三) したがって、本件外国判決のうち、補償的損害賠償及び訴訟費用に加えて、見せしめと制裁のために被上告会社に対し懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分は、我が国の公の秩序に反するから、その効力を有しないものとしなければならない。

 

最判平10・4・28民集52巻3号853頁

香港高等法院の弁護士費用を含む訴訟費用全額の分担を命じる裁判について、訴訟費用分担は各国の法制度の問題であるとした上で、当該裁判が「インデムニティ・ベイシスの基準」を適用した懲罰的な評価を伴うものであるものの、実際に生じた費用の額を超える費用の分担を命じるものではなかったことを前提に、公序違反はなく、その他の承認の要件も満たすとして、執行を認めました。

 訴訟費用の負担についてどのように定めるかは、各国の法制度の問題であって、実際に生じた費用の範囲内でその負担を定めるのであれば、弁護士費用を含めてその全額をいずれか一方の当事者に負担させることとしても、民訴法一一八条三号所定の「公の秩序」に反するものではないというべきである。

 本件においては、上告人らに不誠実な行動があったことが考慮されて、いわゆるインデムニティ・ベイシスの基準が適用され、弁護士費用を含 む訴訟費用のほぼ全額が上告人らの負担とされたものであるところ、香港の裁判所においてこのインデムニティ・ベイシスの基準が適用されるのは特別の場合であり、懲罰的な評価が含まれていることが認められるが、他方、本件命令等により上告人らに負担が命じられた訴訟費用の額は実際に生じた費用の額を超えるものではないから、本件命令等の内容が我が国の公の秩序に反するということはできない。これと基本的に同趣旨の原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、いわゆる懲罰的損害賠償と対比してインデムニティ・ベイシスの基準による訴訟費用負担の違法をいう論旨は、採用することができない。

 

なお、インデムニティ・ベイシスというのが何なのかよくわかりませんが、次のような説明を見ました。UKについての説明ですが、この事件で問題となった香港高等法院の裁判は香港返還前のものなので、だいたい同じなんじゃないでしょうか。英語はよくわからないので、私の訳は括弧書きで併記しておくことにします。

…the amount of costs one party must pay to another is to be assessed so that the court will resolve any doubt which it may have as to whether the costs were reasonably incurred or were reasonable in amount in favour of the receiving party(一方当事者が他方当事者に支払わなければならない費用の額は、その費用が合理的に生じたものであるか、それとも支払いを受けるべき当事者にとって有利な金額であるのかについて、裁判所が抱きうるいかなる疑いをも解決するように定められなければならない(?)). There is no requirement for the costs to be proportionate…(費用に比例性は要求されない). This has the effect of putting the onus on the paying party to show that the costs claimed are unreasonable(これは、支払いをすべき当事者に主張された費用が合理性を欠くことを証明する責任を負わせる効果がある). This generally means that the receiving party is likely to obtain an order for a higher percentage of their costs on assessment than would be the case if costs were assessed on the standard basis(このことは一般に、支払いを受けるべき当事者が、標準的な基準で評価された場合よりも高い割合の費用の支払いを受けることができる可能性が高いことを意味する).(Practical Law UK Signon

要するに、相手方の訴訟費用についての主張を認めるということでしょうか(民訴224条1項(当事者が文書提出命令に従わない場合の制裁)的な?)。

 

最判平19・3・23民集61巻2号619頁

日本人夫婦(相手方ら)の精子卵子を用いた生殖補助医療により、ネバダ州在住の米国人女性が双子の子を懐胎し、出産しました(代理出産)。夫婦は、ネバダ州裁判所に親子関係確定の申立てをし、夫婦が血縁上及び法律上の実父母であることを確認する等の裁判を得ました(本件裁判)。帰国後、夫婦は、子らについて、品川区(抗告人)に対し、夫婦を父母とする嫡出子としての出生届を提出しましたが、品川区は、母とされる者による分娩の事実が認められず、相手方らと本件子らとの間に嫡出親子関係が認められないことを理由として、本件出生届を受理しない旨の処分をしました。これにつき、夫婦が、戸籍法118条(現121条?)に基づき、本件出生届の受理を命ずることを申し立てました。

一審は、生殖補助医療の発達という民法が当初予定していなかった状況の変化を踏まえても、分娩者=母説が合理性を有しており、また血縁主義を採用することにつき社会的に許容されていない状況にある以上、法律上の母子関係については、従前通り、分娩者を母とするという考え方によることが相当であり、本件処分は適法であるとして、申立てを却下しました。

抗告審は、ネバダ州裁判所による本件裁判は、本件子らが抗告人らと血縁上の親子関係にあるとの事実等を参酌して、本件子らを抗告人らの子と確定したのであり、本件裁判が公序良俗に反するものではなく、本件裁判を承認することは実質的に公序良俗に反しないとし、原審を取り消し、出生届の受理を命じました。これに対して品川区が許可抗告を申し立て、許可されたのが本件です。最高裁は、原決定を破棄し、抗告棄却の自判をしました(=一審支持)。

外国裁判所の判決が民訴法118条により我が国においてその効力を認められるためには,判決の内容が我が国における公の秩序又は善良の風俗に反しないことが要件とされているところ,外国裁判所の判決が我が国の採用していない制度に基づく内容を含むからといって,その一事をもって直ちに上記の要件を満たさないということはできないが,それが我が国の法秩序の基本原則ないし基本理念と相いれないものと認められる場合には,その外国判決は,同法条にいう公の秩序に反するというべきである(最高裁平成5年(オ)第1762号同9年7月11日第二小法廷判決・民集51巻6号2573頁参照)。

 実親子関係は,身分関係の中でも最も基本的なものであり,様々な社会生活上の関係における基礎となるものであって,単に私人間の問題にとどまらず,公益に深くかかわる事柄であり,子の福祉にも重大な影響を及ぼすものであるから,どのような者の間に実親子関係の成立を認めるかは,その国における身分法秩序の根幹をなす基本原則ないし基本理念にかかわるものであり,実親子関係を定める基準は一義的に明確なものでなければならず,かつ,実親子関係の存否はその基準によって一律に決せられるべきものである。したがって,我が国の身分法秩序を定めた民法は,同法に定める場合に限って実親子関係を認め,それ以外の場合は実親子関係の成立を認めない趣旨であると解すべきである。以上からすれば,民法が実親子関係を認めていない者の間にその成立を認める内容の外国裁判所の裁判は,我が国の法秩序の基本原則ないし基本理念と相いれないものであり,民訴法118条3号にいう公の秩序に反するといわなければならない。このことは,立法政策としては現行民法の定める場合以外にも実親子関係の成立を認める余地があるとしても変わるものではない。

 

 

手続的公序に関する学説・裁判例

手続的公序については、判例がありませんでした。

学説は、判決内容の公序違反性を審査するにあたっては、実体的公序と共通して(ただし手続的公序については後者の重要性が低下するものとして)、外国判決を承認・執行した場合に日本でもたらされる結果の異常性・重大性、事案と内国との牽連性の強さを衡量することを求めていました(前掲本間ほか192頁)。また、外国判決の手続保障に欠けるところがあっても、当該国で不服申立ての可能性があり、合理的な理由なくそれが尽くされていなければ、日本で手続的公序違反を問うことはできないとしていました(同前)。

この点につき、関連する裁判例が3件公表されています。

 

名古屋地判昭62・2・6判タ627号244頁

ドイツ・ミュンヘンの裁判所で、日本法人である被告が、送達を受けながら応訴せず、欠席のまま請求認容判決がされ、その後判決正本が送達され、原告が日本でこれに基づく執行判決請求訴訟を提起した事案です。被告は、①本件ライセンス契約においては、契約地、契約当事者の住所等、本件管轄合意以外には、西ドイツに何らの連結点も存しない、②日本の中小企業である被告が、西ドイツの裁判所で応訴するのは、地理的にも、経済的にも容易でない上、西ドイツは、弁護士強制主義かつ地域的制限主義を採用しているため、本件管轄合意に従ってミュンヒェンで応訴するためには、ミュンヒェンで適切な弁護士を選任する必要があり、これは、被告に不可能を強いるに等しい、③他方、原告はスイスに住所を有するとはいえ、ミュンヒェンまでは距離も近く、ドイツとは共通の言語を持つ同一文化圏に属するから、ミュンヒェンでの訴訟は原告にとって極めて容易であるという、応訴を著しく困難にする事情があり、そのような場合には「自国民の保護を目的とする同条二号の要件は厳格に解すべきである」という主張をしましたが、裁判所は次のように述べて執行を認めました。

被告はハンブルク市に駐在事務所を設置していたのであるから、右事務所を通じて二週間以内に催告された手続をとることは不可能ではないし、ドイツ民訴法二三三条、二三四条によれば、被告が障碍事由により右二週間の不変期間を遵守できなかったときは、右二週間の終了から一年間は、原状回復の申立てとともに、催告された手続の追完が可能だったのである。のみならず、原本の存在及び成立につき争いのない甲第七、第八号証によれば、昭和五四年八月二八日に本件外国判決が被告に送達された際には、故障の申立てによって、欠席前の訴訟状態に復することができる旨の教示文書が送達されたことが認められる(その方式及び趣旨により外国の公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定される甲第一号証、第二号証によれば、本件外国判決は、外国に送達すべき欠席判決に対する故障申立て期間の特別な決定(ドイツ民訴法三三九条二項)により、一九八〇年(昭和五五年)二月六日に至るまで確定しなかったことが認められる。)。

 右のとおり、被告には、本件訴訟の訴状が送達された昭和五三年一一月二四日から、本件外国判決が確定した同五五年二月六日に至るまでの間に、十分防禦の機会が与えられていたにもかかわらず、前記1の争いのない事実及び弁論の全趣旨に照らして、防禦のために何らの措置も講じなかったものと認められるから、前記主張の失当なことは明らかである。

単に送達があったかどうかではなく、防御の機会を与えられていたかどうかが判断基準とされています。

なお、被告代理人の主張は、2号の趣旨を自国民の保護としていたり、(先に引用した主張とは別に)①〜③を理由に、ミュンヘン地方裁判所を管轄裁判所とする合意について、「原告の利益に偏し、被告の防禦の機会を実質的に奪うものであるから、国際的な裁判管轄権の公平な分配という理念に照らせば、著しく不合理で無効である」と、突然管轄配分説らしきものを持ち出していたり、ちょっとよくわからないところがあります(なお、後者については、この6年前にマレーシア航空事件判決がされており、最高裁も、一般論として管轄配分説のようなことを述べながら、具体的判断にあたっては逆推知説のようなことを述べるというよくわからないことをしています)。

 

水戸地龍ケ崎支判平11・10・29判タ1034号270頁

US・ハワイ連邦地方裁判所で、日本法人である個人が、一旦は代理人により応訴したが、代理人が辞任し、その後代理人を選任せず、欠席判決(今回の最高裁判決で問題となっているのと同じ制度であるデフォルトジャッジメント)がされたという事案です。被告らは、訴状等に日本語訳が添付されておらずその内容を理解できなかったから、防御の機会が与えられていたとはいえない旨主張しましたが、裁判所は次のように述べて執行を認めました。

 被告らは、受領した英文の本件外国訴訟の訴状等写しに日本語の翻訳文が添付されていなかったためその内容を理解できなかったと主張するが、被告らはクニユキ弁護士を訴訟代理人に選任したのであるから、右翻訳文が添付されていたか否かにかかわらず、本件外国訴訟の内容を理解していたと推認されるし、そうでなくとも本件外国判決がされるまでの間には理解する機会が十分にあったのであるから、右主張は理由がない。また、被告らは、クニユキ弁護士の受任の範囲が和解交渉の範囲に限定されていた旨主張し、被告拓也の供述及び陳述書(乙第一六号証)には右主張に沿うかのような部分があり、証拠(乙第八号証、第一五号証の2及び3、第一六号証及び被告拓也)によれば、本件外国訴訟の原告ら訴訟代理人アイラ・ライテル弁護士から平成六年八月三日に和解交渉の目的について被告らの代理をすると連絡をしていたクニユキ弁護士に対し本件外国訴訟に関する紛争解決のための和解案が提案されたこと、被告らは同年七月一一日頃クニユキ弁護士に対し本件外国訴訟が妥当な条件で和解解決できるのか本件外国訴訟の原告らと最初の交渉をすることを委任したこと、平成七年三月頃から同年五月頃までの間クニユキ弁護士から被告らに対し本件外国訴訟の原告らとの間における和解案が何度か提案されたことが認められる。しかし、前提事実3によれば,被告らはクニユキ弁護士の受任の範囲を和解交渉の範囲に限定されない訴訟追行全般と認識していたのであるし、クニユキ弁護士は被告らの訴訟代理人を受任した後、答弁書を提出したり、原告及び被告らなどの宣誓供述録取に関する日程調整に係る連絡などの訴訟活動を行っていることなどに照らすと、右認定の事実から被告らの主張を推認することはできない。

やはり防御の機会が与えられていたかどうかを判断基準としています。

なお、原告の陳述書のほかには何らの証拠も提出されていないのに、領収書その他の実質的証拠の有無を検討しないまま審理を尽くさないで認定した上、制裁として行われたデフォルトジャッジメントは、民事判決ではなく、あるいは手続的公序に反するとも主張していますが、排斥されています。

 

東京地判平20・1・29 LLI/DB L06330404

同様にデフォルトジャッジメントの事案です(NY南部地区連邦地方裁判所)。この事件では、(手続的)公序違反が認められ、執行が認められませんでした。

b 次に,②被告は,本件決定の送達を受けていないから,控訴裁判所への再審理の請願や最高裁判所への上訴のいずれの手続を執ることもできなかったと主張する点についてみると,証拠(甲8)によれば,連邦控訴審手続規則36条(a)は,判決は事件記録に記載された時点で登録されると定めるとともに,同条(b)において,書記官は判決が出された日に,すべての当事者に対し,裁判官の意見の写し及び判決が出された日付けの通知を提供するものとされていることが認められる。上記の規定は,判決がされるとこれを登録するとともに当事者に送達がされることを予定しているものと認められ,これによって,不利益を受ける当事者に対し再審理の請願をして判決の執行力を停止する機会を与える趣旨のものと解される。

 ところで,前提事実(10)及び(11)によれば,本件決定がされたことの通知はD事務所にされたが,それは,既にD事務所は本件訴えに係る被告の代理人を離任することが許可された後であることが認められる(なお,他に,被告に対して本件決定が送達されたことを認めることのできる証拠は提出されていない。)。

 この点について,原告は,ニューヨーク州においては法人は弁護士によって代理され,かつ,裁判所の書類の送達も事件記録に記載された登録代理人にあててされる必要があったから,本件決定は被告の登録代理人であるD事務所に対してされたのであり,同事務所を通じて被告に有効な送達がされたものであると主張する(第2の2(2)ア(ウ)b(c))。

 そして,証拠(甲12)によれば,地域的規則46条(d)2において,「会社は自ら出廷することはできない。代理人弁護士を立てずに出廷した会社を代理して提出された文書は保管されない。」との規定があり,また,連邦控訴審手続規則45条(c)は,命令(決定)又は判決が出された場合の登録通知の送達について,「代理人弁護士が代理している当事者宛の送達は,代理人弁護士宛に行わなければならない。」と規定していることが認められる。

 しかしながら,上記の規定が,代理人が離任の許可を得た後においてもその代理人に本件決定を送達することを定めたものと解することはできない。

 本件において,裁判所書記官は,代理人弁護士が離任したにもかかわらず,被告が新たな代理人弁護士を付さないため,記録上の従前の代理人に通知をしたものとも考えられる。しかし,証拠上,そのような取扱いないし解釈が法律上の根拠を有するものとは認められず,被告に対して酷な結果を招くものであることから,採用することができない。

c そうすると,本件決定については,被告への送達が連邦控訴審手続規則36条(b)の規定どおりにされていないものといわざるを得ない。

 原告は,被告は控訴が棄却されるに至ることを予見していたから保護の必要がないと主張する。確かに,E弁護士らが離任の申立てに先立ち,被告に状況を伝えたことは前記aのとおりであるから,被告においては,新たな代理人を選任して控訴審に対応しなければ,控訴が棄却される可能性があるい(ママ)ことは承知していたものと認められる。

 しかしながら,そのことから,直ちに本件決定を被告に送達する必要がないということはできない。被告は,本件決定の送達を受けた後,一定の期間内に対応を検討する機会が与えられることを保障されるべきものであり,上記の事情は,その機会を奪うことについての合理的な説明とはならない。

 そして,証拠によれば,D事務所のD弁護士は,離任に際して,被告に対し,裁判所に被告の連絡先を提供する必要があること伝え(甲9の3),離任の許可申立書においても,控訴裁判所に対し,離任許可命令を求めるとともに被告に対するしかるべき代替的救済が付与されるように申し立てをし,かつ,被告の東京都内の住所及び代表者を明記していること(甲9の1),さらに,前記aのとおり,離任の許可後の2006年9月8日,控訴棄却の申立てをした原告側のF弁護士も,その申立書及び意見書を直接東京の被告に送達していること(甲13の1ないし3)が認められる。

 このような関係者の対応からすれば,E弁護士らが離任した後は,必要な送達は被告に対して直接すべきものと認識されていたことが明らかというべきであり,また,証拠上,被告に対して直接送達することが困難な事情があったものとも認められない。

d 以上によれば,本件決定については被告に対し所定の送達がされておらず,被告には不服申立ての機会が与えられていないものというほかなく,また,本件決定の被告に対する送達を不要とする事情があるとも認められない。したがって,被告に対する本件決定の送達をしないまま確定に至った本件外国判決は,その成立における正当性を主張することができないものというべきである。

 そして,上記のような判決の成立手続における瑕疵は,日本においては看過し得ないものであるから,公序良俗に反するものと認めるのが相当である。

そうすると,本件外国判決は,上記の点において,民事訴訟法118条3号の要件を満たさないものというほかない。

送達が適法にされておらず、不服申立ての機会が与えられていないことを前提として、本件決定の被告に対する送達を不要とする事情の有無を検討しています。

 

本判決の意義

手続的公序について判断した初めての判例。①実体的公序についての平成9年判決の判断枠組みは手続的公序についても妥当する。②外国判決に係る訴訟手続において、判決書の送達がされていないことの一事をもって直ちに民訴法118条3号にいう公の秩序に反するものと解することはできない。③外国判決に係る訴訟手続において、当該外国判決の内容を了知させることが可能であったにもかかわらず、実際には訴訟当事者にこれが了知されず又は了知する機会も実質的に与えられなかったことにより、不服申立ての機会が与えられないまま当該外国判決が確定した場合、その訴訟手続は、我が国の法秩序の基本原則ないし基本理念と相いれないものとして、民訴法118条3号にいう公の秩序に反するということができる。

 

検討(メモ)

    • 被告の判決内容了知可能性について、2号についての議論が参考になる。2号の送達について、個別具体的事件ごとに審査すべきという説と、個別具体的審査は送達制度の趣旨(後の紛争を防止するため特に厳格な方式を要請する)に反することから、一律に審査すべきであるという説がある。本判決は前者に親和的である。
    • 原審判決も本判決も共通して、防御権の保障を重視しているが、原審は「本件外国判決自体を入手」したかどうかを基準とし、本判決は「当該外国判決の内容を了知」したかどうかを基準とする。
    • 本判決の基準は、個別の事情(本件では、送達の不奏功にもかかわらず、被告が判決の内容を了知していた)に対応できる柔軟な枠組みである。
    • 送達は、客観的な証明が容易であり、法的安定性に優れる。しかし、3号が被告の防御権を保障するものであるとすれば、本件のような場合、送達を一律の基準とすると、原告の権利保護を必要以上に制限する可能性がある(了知していた以上、防御権の保障に欠ける=執行を拒否してでも被告を保護すべきとまではいえないのに…)。
    • 我が国の民訴法の基本原理の理解に疑問がある:日本での判決書の被告への送達は、判決確定時期を明確にするためのものであり、不服申立ての機会を与えることを主目的とするものではない。そもそも不服申立て制度の設計は、裁判を受ける権利とは直接関わらない立法政策の問題である。
    • 米国民訴制度の理解に疑問がある:米国民訴法では、第一審裁判所が判決を言い渡し、裁判所に登録されるだけで判決は確定する(118条の承認審査の対象となる)。他方で、本件のようなカリフォルニア州民事訴訟においては、180日の控訴期間が保障される。また、再審も緩やかに認められる。上訴・再審の手続は判決国の政策的判断に委ねられる問題であり、当事者への送付等による内容量地の必要を我が国の方の基本原則にまで高めて理解して、手続的公序の基準としたことは妥当でない。
    • 民訴法118条3号の手続的公序の要件の審査に疑問がある:「訴訟追行協力義務」を観念し、その違反を考慮して公序違反を判断するという見解がある。これは適切であるが、本判決はそれを度外視しており、問題がある。