令和元年 予備試験 論文式 再現答案 刑事訴訟法

(評価:D)

1 違法な逮捕と勾留*
 裁判官は、被疑者について、検察官から勾留の請求を受けたとき、勾留の理由及び必要性があると考えるときは、勾留をする(207条1項・60条)。もっとも、先行する逮捕に重大な違法があるときは、将来の違法捜査の抑止のため、勾留を却下すべきである。
2 本件における逮捕の適法性
 そこで、本件における対応の適法性を検討する。
(1) Pらは、6月6日午前3時5分ごろ、俺は行かないぞと言い、パトカーの屋根を両手でつかんで抵抗する甲を、Qが先にパトカーの後部左席に乗り込み、甲の片腕を車内から引っ張り、Pが甲の背中を押し、後部座席中央に行座らせて、その両側にPとQが甲を挟むようにして座った上で、パトカーを出発させ、H警察署まで移動させた。この行為は、直接的な有形力の行使によって、甲の移動の自由を制約したものであり、実質的には逮捕に当たる。
 逮捕には、現行犯逮捕の場合を除き、令状が必要であるが(憲法33条。刑事訴訟法199条以下もこの趣旨に解するべきである)、このときPらは逮捕状の発布を受けていなかったから、実質的に現行犯逮捕等の要件を満たしていたと考えられる場合を除き、上記実質的逮捕行為は違法である。
(2) 現行犯逮捕は、「現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた」と認められる場合にすることができる。これは、犯罪の発生および犯人性が明らかであり、かつ、時間的場所的接着性があることをいうものと解される。しかし、甲が発見されたのは、本件事件の発生から12時間30分後の、犯行現場から8キロメートル離れた隣町の路上においてである。したがって、時間的場所的接着性が認められない。したがって、実質的な準現行犯逮捕として違法性が治癒されることはない。
(3) 準現行犯逮捕は、212条2項各号のいずれかを満たし、「罪を行い終つてから間がないと明らかに認められる」場合にすることができる。同項各号の事由が、時間的場所的接着性を担保するため、時間的場所的接着性を緩和する趣旨である。1号、3号、4号を満たさないことは明らかである。
 2号について検討する。甲は、V名義のクレジットカードを所持していた。このクレジットカードは、部位が被害品として通報したものと同一であると考えられる。したがって、甲は、贓物を所持していたものである。
 もっとも、甲が発見されたのは、本件事件の発生から12時間30分後の、犯行現場から8キロメートル離れた隣町の路上においてであるから、なお時間的場所的接着性が認められない。したがって、実質的な準現行犯逮捕として違法性が治癒されることはない。
(4) 緊急逮捕は、司法警察職員等が、一定の重大な犯罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときにすることができる(210条1項第1文)。しかし、緊急逮捕は、直後に逮捕状審査を経ることにより(210条1項第2, 3文)、初めて令状主義の例外として許容されるものであるから、直後に逮捕状請求をしていない場合には、その要件を満たしていたとしても、実質的な緊急逮捕として違法性が治癒されることはない。
 本件では、Pらが逮捕状を請求したのは、実質的な逮捕から4時間55分が経過した後の6月6日午前8時であるから、直後に逮捕状請求したものとはいえない。したがって、実質的な緊急逮捕として違法性が治癒されることはない。
したがって、上記実質的逮捕行為は違法である。
3 本件における勾留の違法性
 逮捕がされた場合、司法警察職員は、身体拘束から48時間以内に検察官に送致しなければならない。また、検察官は、送致を受けた時から24時間以内、かつ、身体拘束の時から72時間以内に、勾留請求をしなければならない。
 Pらが甲を検察官に送致したのは、逮捕状の執行から23時間20分後で、かつ、実質的逮捕から29時間25分後の、6月7日午前8時30分であった。また、検察官も、送致の時から4時間30分後で、かつ、実質的逮捕から32時間55分後の、6月7日午後1時に勾留請求をした。
 そうすると、実質的逮捕は、適法な逮捕状によって認められる身体拘束の期間が前倒しされたにすぎないということができるから、その違法は重大ではない。
 したがって、勾留は、却下しなければならないものではなく、適法である。
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*規範が全然わからなくて面食らった。適当にひねり出したけど意外と一番まともかもしれない…