令和元年 予備試験 論文式 再現答案 刑法

(評価:F)

1 業務上横領(253条)
(1) 「業務上」とは、行為者が、当該行為を社会生活上の地位に基づき反復・継続して行うものであることをいう。
 甲は不動産業者であるから、不動産取引を、営業という社会生活上の地位に基づき、反復・継続して行っていたものであるから、これを満たす。
(2) 「自己の占有する他人の物」とは、遺失物等横領罪との区別のため、事故が他人の委託に基づいて占有する他人の物をいう。本罪の保護法益には、委託関係が含まれるから、占有は、事実上または法律上濫用の可能性のある支配があればよい。
 甲は、所有者で登記名義人であるVから、本件土地に抵当権を設定し、Vのために1500万円を借りることを依頼された。また、これにあたって、本件土地の登記済証や印事項欄が白紙の委任状を預かっているから、濫用可能性のある支配が認められる*。
(3) 「横領した」とは、不法領得の意思、すなわち、委託の趣旨に背いて、所有者でなければできないような処分をする意思を発言する一切の行為をいう。
 甲が、Aとの間で、本件土地の所有権をAに移転させる旨の合意をしたことは、これを満たす**。
 したがって、業務上横領が成立する。
2 強盗殺人(240条・236条2項)
(1) まず、基本犯である強盗利得を検討する。
ア 「暴行又は脅迫を用いて」とは、暴行又は脅迫が、後述の財産上の利益の移転の手段としてされることを言う。これらは、不可罰な利益窃盗および遺失物等横領との区別のため、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものでなければならない。
 甲は、電話でVを呼び出し、Vの首を背後から力いっぱいロープで締めるという暴行を行った。この行為は、通常、反抗を抑圧することを不可能にするものであるから、これを満たす。
イ 「財産上不法の利益を得た」とは、何らかの財産上の利益の移転があればよい。もっとも、処罰に値する実質を備えるものでなければならないから、メルクマールとして、具体性及び確実性が必要である。
 甲は、Vを死亡させることにより、横領に係る損害賠償債務の免脱または猶予という具体的利益を***、一定程度確実に得たものであるから、これを満たす。
(2) 次に、強盗殺人を検討する。強盗殺人が成立する場合には、強盗利得は吸収される。
ア 240条は、死亡結果について声がある場合を含むか。「死亡させた」という文言からは、消極に解すべきようにも思われる。しかし、同条の趣旨は、強盗が、犯行の際に、被害者の身体または生命を害することが多いという事態に鑑み、そのような事態を抑止することにあると解される。そうすると、死亡結果について故意がある場合とそうでない場合を区別する必要はないから、同条は強盗殺人を含むものと解するべきである。
イ Vは死亡した。
ウ もっとも、Vの死因は溺死であるから、因果関係が問題となる。
 因果関係は、ある結果を、行為者に帰責することができるかという、法的な客観的帰属の判断である。そこで、事実的な条件関係を前提に****、行為に内在する危険が結果に現実性といえない場合には、因果関係を否定すべきである。危険の現実化があるかどうかは、介在事情の結果に対する寄与度や、実行行為と介在事情との関係を考慮して判断すべきである。
 本件では、上記首絞め行為の後に、甲が、Vがが死亡したものと誤信して、Vを海中に投棄したという介在事情が存在する。Vの死因は溺死であるから、上記投棄行為の死亡結果に対する寄与度は大きい。もっとも、上記投棄行為は、上記首絞め行為によって死亡したはずのVの死体を隠滅するために行われたものであり、殺人犯人が証拠隠滅のため死体遺棄行為に及ぶことは通常あることである。したがって、上記首絞め行為に内在する危険が、上記投棄行為を介して、死亡結果に現実化したものということができる。
 したがって、因果関係が認められる*****。
 したがって、強盗殺人が成立する。
3 死体遺棄(190条)
 上記投棄行為の時点でVは死亡しておらず、その身体は「死体」ではなかったから、本罪は成立しない。
4 罪数******
 業務上横領と強盗殺人が成立するが、後者は前者によって得られた利益を確保するものであり、実質的に同一の法益に向けられた行為であるから、殺人行為についての評価を含む後者に前者が吸収される。
(1812 characters)


*「登記あれば占有あり」ということは知っていたが、「登記なければ占有なし」とまではいえないのではないかと思い、実質的に考えたところ、こうなった。否定したところで、背任は「図利加害目的は本人の利益を図る以外の全て」「損害は経済的に」くらいしか覚えてないが…
**横領行為について、思い出しはしたはずだが、書いた記憶がない。眠くて書き忘れたのか、眠い中半自動的に書いたから記憶がないのか。刑事がこの日一番眠かったことは確か。よい子は試験前はよく寝よう。
***ここはちょっとアクロバットかも
****条件関係のあてはめ書くの忘れた…
*****故意(錯誤)書き忘れた
******文書偽造は、代理人名義である以上、成立しないだろうと考えて、書かなかった。どっちの結論が正しい(あるいは妥当)なのかよくわからないが(濫用だから不成立とでも書くのか?)、ともかくそう書いた方がよかった気がしている。書かなかったのは、去年、脅迫して債務免除の念書を書かせた行為について、文書偽造にならないのになると書いてしまったことが強く記憶に残っていたからかもしれない。