令和元年 予備試験 論文式 再現答案 民事訴訟法

(評価:F)

1 設問1*
(1) 訴訟承継の類推適用
 訴訟承継の類推適用が考えられる。しかし、Aは、自ら訴訟に関与しておらず、また、X2に何らかの授権を行ったものでもないから、仮にこれが解釈上認められたとしても、Yに対する有効な反論とならない。
(2) 選定当事者の類推適用
 選定当事者の類推適用が考えられる。
ア 「共同の利益を有する多数の者」で、法人格なき社団として当事者能力が認められない者は、「その中から、全員のために原告…となるべき一人…を選定することができる。」(30条1項)。X1は、訴訟係属(138条1項)前に死亡しているから、原告の地位に就いたことはなく、選定はありえない。しかし、選定当事者の制度は、共同の利益を有する者であれば、任意的訴訟担当を認めても差し支えなく、むしろ、送達などの点で便宜であることから、認められたものである。そして、本件のように、訴え提起(訴状提出時。133条1項)まで生存しており、原告に、後述のように黙示の選定をしていた者については、これらの趣旨が及ぶ。また、本件のように、争点整理手続終了近くになって、死亡の事実が判明した場合には、訴訟追行に積極的に関与する意思のなかったもののために、それまでの訴訟行為を覆滅することとなり、訴訟経済に反する。したがって、このような場合には、30条を類推適用すべきである。
イ 共同の利益について。X1らは、共同して、Yとの間で本件土地の売買契約を締結したものであるから、その契約に基づく所有権移転登記手続を求めるについて、共同の利益を有する。
ウ 選定について。選定は、通常、明示的な意思表示によってされるが、黙示でもよいと解される。X1は体調がすぐれなかったこともあり、X2に訴訟への対応任せることとしていた。また、X2も、X1から、自分に訴訟対応任されたと言う意識があった。実際にも、X2が、X1らの訴訟代理人である弁護士得るとの打ち合わせを行っている。したがって、黙示の選定が認められる。
 したがって、Xは、単独で当事者適格が認められる。
2 設問2
(1) 既判力は、「主文に包含するものに限り」生じる(114条1項)。これは、訴訟物に関する判断をいい、理由中の判断を含まない趣旨であると解される。そうすることで、審理順序にとらわれない、弾力的な審理が可能になり、訴訟経済に資する。
 前訴の訴訟物は、売買契約に基づく所有権移転登記請求権であると考えられる。前訴判決は、請求を全部認容するものであるから、その既判力は、前訴口頭弁論終結時における、X1らの売買契約に基づく所有権移転登記請求権の存在について生じている。
(2) 既判力は、当事者間についてのみ及ぶのが原則である。既判力による拘束は、原則として、当事者として主張立証の機会その他の手続保障を受けた者との関係でのみ正当化できるからである。
 もっとも、口頭弁論終結後の承継人には、既判力が拡張される**。一般承継に関する限り、この規定は、当然のことを確認したものである。これに対して、特定承継に関しては、次のような趣旨に基づく政策的規定である。すなわち、承継人に既判力が拡張されないとすれば、本件のように、登記等を移転して、強制執行を妨害にすることが容易になり、紛争の実効的解決の要請を害する。また、承継人は、実体法上、前主のした処分を受け入れざるを得ない地位にあり、訴訟法上も、その訴訟追行の結果を引き受けさせられてもやむを得ない。また、前主は、承継が生じるまでは、最も密接な利害関係を有するものだったのであり、前主に対する手続保障によって、承継人に対する手続保障を一定程度代替することができる。
 この趣旨から、3号の承継人とは、訴訟物に関する実体法上の地位を承継したものをいうと介するべきである。
 Zは、所有権移転登記を受けたものであるから、これにあたる。
 したがって、前訴判決の既判力は、Zに及ぶ。
(3) 前訴判決の既判力が、後訴に及ぶのは、訴訟物が同一あるか、両者が先決関係にあるか、矛盾関係にある場合である。
 X1らとZの間には、契約関係はないから、後訴の訴訟物は、X1らの甲土地所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記請求権であると考えられる。これは前訴の訴訟物とは、異なる。
 売買契約の成立は、X1らの所有権取得原因(請求原因)として、後訴の先決問題である***。そして、X1らとYの間の売買契約が成立していないとの主張は、前訴判決の既判力が生じている、前訴の口頭弁論終結時においてX1らに売買契約に基づく所有権移転登記請求権が存在するとの判断と矛盾する。
 したがって、この主張は、排斥されるべきである。
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*ある民訴ゼミ同期は、Aに訴訟告知し、共同訴訟参加してもらうと書いたようだった。
共同訴訟参加は、参加により必要的共同訴訟が成立する場合にすることができる。参加により類似必要的共同訴訟が成立する場面を想定した制度だが(e.g. 株主代表訴訟に他の株主が参加する場面。別個に訴訟提起しようとしても重複起訴で不適法となる)、固有必要的共同訴訟において当事者適格の欠缺(=当事者が「足りない」状態)を治癒するためにも使われている。
本件訴えが固有必要的共同訴訟なのかよくわからないが(入会、共有など物権的な請求についてしか考えたことがなかった)、そうなのかもしれない(ただ、所有権移転登記請求権は不可分債権であり、不可分債権は単独で全全員のために全部の履行を請求できるという点が気になる)。
共同訴訟参加の要件が満たされるとすると、当事者適格も訴訟要件(=本案判決をするのに必要な要件)の一つであり、口頭弁論終結時までに満たされればよいので、これで当事者適格の問題は解決できる。民事訴訟法は手続法であり、予測可能性がより強く要請されるので、類推適用は望ましくない。そのため、訴訟告知で解決できるならそのほうが望ましかったと思う。
問題も、「どのような対応をすべきであるか」を問うており、必ずしも「既に適法である」と言う必要はなく、現時点では不適法であることを前提に、それを治癒する手段を提示することが可能である。むしろ「どのような主張をすべきであるか」とせずに、このように書いていることからすると、そういう答えを期待していたのかもしれない。
私自身は、固有必要的共同訴訟となる可能性には気づいたが(そうでなければ、本件訴えはX1との関係では適法であり、Yの主張には意味がない)、共同訴訟参加には思い至らなかった。平成23年(訴訟承継の類推適用)とは違うということに気づいたつもりで、「ここまでやったんだから適法だったことにしなきゃ」的な観点で、なお囚われていたのかもしれない。
**完全にミスった。仮装譲渡は弁論終結前なので、3号(当事者等の口頭弁論終結後の承継人)に当たらない。仮装譲渡においては実質的な譲渡の意思がないから4号(当事者等のために請求の目的物を所持する者。所持ではなく登記名義保有だから類推)に当たる、と言うのが正しい。実は最初3号と4号の選択適用にしようとしていたが、時間の関係で3号だけにした(3号は25年に出題されている一方、4号は書いたことがなかった)。書いておけばよかった。
***ここに飛躍がある。売買契約とそれに基づく所有権移転登記請求権は一応別だから。「Zの主張を排斥する理論構成を展開しなさい」と結論が指定されているので、結論は決まっており、こうするほかに思いつかなかった。