平成30年 予備試験 論文式 再現答案 民法

(評価:F)

設問1(1) ①について.AとCは,契約関係にない.しかし,CはBに建物解体用の重機,器具等を提供し,Cの従業員に対するのと同様に,作業の場所,内容および具体的方法について指示を与えていたことから,実質的に指揮監督関係にあったものである.したがって,信義則(1条2項)上,安全配慮義務を負う.
 Cは,Aに対し,地上7メートルの3階ベランダという高所での撤去作業を指示していたにもかかわらず,Bに対し,Aの撤去作業が終了したことを確認した上で重機による破壊をするよう命じたのみで,他のCの従業員にダブルチェックを命じたり,命綱や安全ネットを用意するなどの,安全確保措置を怠っており,安全配慮義務の不履行があったといえる.
 ①の請求は,この安全配慮義務の不履行に基づく損害賠償請求(415条)であると解される.
(2) ②について.この請求は,不法行為(709条)に基づくものである.
 「他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した」について,Aの身体の安全は権利または法律上保護される利益にあたる.
 「故意又は過失」について,(1)で述べたとおり,Cは安全配慮義務を負っており,これを怠ったものであるから,過失がある.
 「これによって生じた損害」について,Aが転落し負傷したことは,上記過失と因果関係がある損害であるといえる.
(3) 両者の有利・不利.
a 時効.不法行為に基づく損害賠償請求については,短期消滅時効(724条)の規定の適用があり,時効期間は「被害者…が損害及び加害者を知った時から3年間」である.これに対して,債務不履行に基づく損害賠償請求については,そのような特別規定はないから,原則どおり,「権利を行使することができる時から」「10年間」である(166条1項,167条1項).
 もっとも,本件では,Aが加害者を知ったのは,平成26年10月1日,仕事仲間のDから経緯を聞いた時である.その後3年を経過しない平成29年5月1日,Cに裁判外で損害賠償を請求しており,時効が一応中断している(153条).その後6か月を経過しない平成29年6月30日,Aの代理人EがCに対し,損害賠償請求訴訟を提起しているから,時効は確定的に中断している(147条1号).したがって,①によっても不利ではなく,実際的な有利・不利はない.
b 主張立証責任.不法行為に基づく損害賠償請求については,故意過失は,法文の形式通り,原告がその存在について主張立証責任を負う.これに対して,債務不履行にもとづく損害賠償請求については,債務は履行されるのが通常であるから,被告が「責めに帰すべき事由がないこと」,つまり故意過失の不存在について主張立証責任を負うと解される.したがって,この点で②がAに有利である.
設問2(1) アについて.この主張は,離婚には離婚の実体が必要であるところ,これを欠くCとFの離婚は無効であり,したがってそれに伴う財産分与も無効であるというものであると考えられる.
 しかし,離婚は,未婚であるが婚姻の実体を備えている男女が,事実婚を保つか法律婚をするかは自由であることとの均衡上,婚姻と異なり,婚姻関係を解消する合意があれば足り,婚姻の実体を解消する合意を要しないと解される.本件では,執行逃れの目的であるとはいえ,CとFは婚姻関係を解消することを合意しているから,適式な離婚届がされている以上,離婚は有効である.
 もっとも,財産分与は離婚とは別個の財産法上の行為であるから,独自に虚偽表示(94条1項)の規定の適用がある.
「虚偽の意思表示」について,CとFは,執行逃れの目的で,Cの本件土地および本件建物についての持分をFに移転することを合意しているのであって,Cは以前と同様に本件土地・本件建物を使用する意思であるから,Cの譲渡の意思表示はこれにあたる.
 「相手方と通じてした」について,Fは,執行逃れのための持分譲渡を承諾しており,そのことを知っていたのであるから,これを満たす.
 したがって,本件財産分与は無効であり,アの主張は認められると回答するべきである.
(2) イについて.この主張は,詐害行為取消し(424条1項,2項)をいうものであると考えられる.
 「債権者を害する」について,本件財産分与としての本件土地および本件建物の持分の譲渡により,Aが引当てとすることができる財産は減少しているから,これを満たす.
 「債務者が債権者を害することを知ってした」について,Cは執行逃れのために本件財産分与を行ったものであるから,これを満たす.
 「その行為によって利益を受けた者…がその行為…の時において債権者を害すべき事実を知らなかった」ものではないことについて,Fは事情の説明を受けた上で本件財産分与を承諾しているのだから,これを満たす.
 「財産権を目的としない法律行為」ものではないことについて,本件財産分与は,アについて述べたとおり,財産分与は離婚とは別個の財産法上の行為であるから,これを満たす.
 さらに,詐害行為取消しは,債務者の財産管理処分権限に介入するものであるから,その必要,すなわち,取り消されるべき行為がされたことによって,債権者が引当てにすることができる財産が減少し,その債権が満足を受けることができなくなったことが必要であると解される.本件財産分与により,Cは他にめぼしい財産がなくなり,Aは損害賠償請求権の満足を受けることができなくなったものであるから,これを満たす.
 したがって,本件財産分与は取り消すことができ,イの主張は認められると回答するべきである.

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