早稲田大学法科大学院 2019年度入試(2018年8月実施) 民事訴訟法 再現答案

(評価:51/60点)

1 既判力 

既判力とは,確定判決の有する,裁判所と当事者に対する実質的確定力である. 

既判力の客観的範囲は,原則として「主文に包含するもの」(114条1項)に限られる.判決主文は,原告の裁判所に対する申立てたる訴えに対する応答であるから,「主文に包含するもの」とは,訴訟物,すなわち原告の被告に対する権利関係の主張であると解される.このように限定するのは,裁判所の審理対象を徒に拡大しないためである. 

既判力の主観的範囲は,原則として「当事者」(115条1項1号)に限られる.既判力による拘束は,手続保障を受けた者との関係でのみ正当化されるからである. 

既判力の時的限界は,事実審の口頭弁論終結時である.当事者は,この時までに生じた事実を主張することができるのに対し,これより後に生じた事実は主張することができないからである(321条参照).民事執行法35条2項は,このことを前提としている. 

2 後訴1における主張 

前訴1における訴訟物たる権利関係は,XのYに対する,甲土地所有権に基づく返還請求権としての,甲土地明渡請求権である.したがって,前訴1の既判力は,XのYに対する甲土地明渡請求権について,XY間で,前訴1の事実審の口頭弁論終結時を基準時として生じている. 

これに対して,後訴1の訴訟物たる権利関係は,Yの甲土地所有権である.甲土地所有権と,その物権的請求権は,実体法上別個であり,一物一権主義を考慮しても,何ら矛盾するものではない.したがって,前訴1の既判力は後訴1に及ばない. 

したがって,Yの主張は,何ら妨げられるものではない.前訴1の基準時前の事由であっても,信義則上主張が制限される場合は格別,既判力との関係で主張が制限されることはない. 

3 後訴2における主張 

前訴2における訴訟物たる権利関係は,Xの甲土地所有権である.したがって,前訴2の既判力は,Xの甲土地明渡請求権について,XY間で,前訴1の事実審の口頭弁論終結時を基準時として生じている. 

これに対して,後訴2の訴訟物たる権利関係は,XのYに対する,甲土地所有権に基づく返還請求権としての,甲土地明渡請求権である.Yは,抗弁として自らの甲土地所有権取得を主張するものと考えられるが,それが前訴1の基準時前のものである場合,実体法上の一物一権主義を媒介として,前訴1の既判力と矛盾する. 

したがって,Yの主張自体は許されるが,前訴2の基準時前の事由を主張することは許されない.

 

受験時・出題趣旨公表後のコメント:2019年度早稲田大学法科大学院入試(再現答案へのリンクあり)