早稲田大学法科大学院 2019年度入試(2018年8月実施) 憲法 再現答案

(評価:42/60点)

1 被告人の主張 

(1) Xは,宗教上の信念から,しめ縄や神具に用いるために大麻を栽培し,起訴されている.宗教上の信念に従って行為することは,信教の自由(20条1項前段)として保障されているから,宗教上の信念に従った栽培を理由にXを処罰することは,その信教の自由を制約する. 

(2) 信教の自由は,信仰が信者の人格と深く結ぶついていることから保障されているもので,重要である.もっとも,規制態様は,専ら大麻の栽培から生ずる弊害に着目したもので,宗教上の信念に対して中立であるから,強力であるとはいえない.そこで,規制としては,規制を正当化する程度に重要な目的のための,実質的関連性を有する手段が正当化されると解する. 

(3) 本件についてこれをみるに,目的は,大麻の公衆衛生上の弊害を防止することにあり,重要である.しかし,そのために,宗教上の信念に従って大麻を栽培する行為を規制する必要はない.実際に,医療上学術上の必要から大麻を栽培する場合には免許を付与しているのだから,宗教上の信念から栽培する場合も,免許による規制で足りる.したがって,実質的関連性を欠く. 

したがって,本件においてXを処罰することは,20条1項前段に違反する. 

2 当否についての考え 

(1) まず,検察官から,しめ縄や神具に大麻の茎から取れる繊維を使用することは,神道の核心的な教義とは言えず,信教の自由によって保護されるものではないから,その制約もないとの反論がされうる. 

確かにそれは神道の核心的な教義ではないと考えられる.しかし,信教の自由の保護範囲を,一定の宗教における核心的な教義に限れば,社会的に,あるいは宗教界において公認された信仰しか保護されないことになり,信仰の人格との深い結びつきに鑑みての信教の自由を保護した趣旨に反する.むしろ,真摯な信仰があればよいと解する.この反論は妥当ではない. 

(2) 次に,検察官から,医療上学術上の必要がある場合と異なり,宗教上の信念から大麻を栽培する場合に免許を付与することはできず,免許による規制はLRAとはなりえないとの反論がされうる. 

大麻取締法が医療上学術上の必要がある場合に免許を認めている趣旨は,同法は先に述べたとおり公衆衛生条の弊害防止を目的とし,究極的には国民の健康の確保を目的としているところ,医療上学術上の必要がある場合にまで大麻の取扱いを禁止しては,却ってその目的を損なってしまうことにある.それに対して,宗教上の必要がある場合に大麻の取扱いを禁止しても,その目的は損なわれない.したがって,LRAにはなりえない.この反論は妥当である. 

したがって,Xを処罰することは,目的との関係で実質的関連性を欠くとはいえず,20条1項前段に違反しない.

 

受験時・出題趣旨公表後のコメント:2019年度早稲田大学法科大学院入試(再現答案へのリンクあり)