刑事訴訟法の基本書、演習書等と使用法(2021年1月最終更新)

刑事訴訟法は条文が本当にダメですよね。目次がざっくりしすぎだし、今だに見出しがないし、枝番多すぎだし、職権主義・糾問主義時代の残滓が至るところに残っています(そもそも「総則」の規定を「第一審」の「搜査」のところで準用する構造自体そうだし、「公訴事実」と「訴因」が同居してるところとか、取調受忍義務の規定とか…)。しかも裁判所が伝統的に検察・警察に甘く、被告に厳しい直感的判断を優先させてきており、原理的には理解不能な場面が多いです(絶望)。

まあそれはさておき、刑事訴訟法は捜査法、公訴公判法、証拠法に分かれます。このうち捜査法と公訴公判法は行政法との連続性が強いです(そもそも刑罰の執行とそのための搜査は国家の最も原始的な機能の一つ)。同じ訴訟法だし民事訴訟法と共通の部分があるのかと思いきや、ほぼないです(上訴くらい?そもそも民事訴訟法が複雑化するのは「刑罰権の発動の可否」みたいに扱う紛争が単一じゃないからだし)。そういうわけで、最も独立した個別行政法の一つだと思うとやりやすいのかもしれません。

 

目次

 

基本刑事訴訟法I

論点編を別冊とすることで、手続の理解にフォーカスし、図・表を使って丁寧に説明してくれています。刑事訴訟法は手続の実態がわからないことにはどうしようもないと思うので(会社訴訟・紛争実務の基礎に近い感じ)、こういう分け方は有用であるように思います。刑事実務の教科書としても使えます。

執筆者は元検察官(現弁護士兼大学教員)、研究者、弁護士、裁判官。このうち研究者の緑先生は後掲の『刑事訴訟法入門』を書かれていて、それがかなりいいので、同書とセットで使うとよいのではないかと思います。

(2020年9月最終更新)

 

緑・刑事訴訟法入門

刑事訴訟法入門 第2版 (法セミLAW CLASSシリーズ)

刑事訴訟法入門 第2版 (法セミLAW CLASSシリーズ)

 

論点解説集。「刑事訴訟法入門」というよりは、「刑事訴訟法解釈入門」という感じ。

かなり丁寧に議論をまとめてくれていて(刑法の道しるべに近い)、とても好きです。リークエと違ってちゃんと引用してくれるし…

最近の重要テーマはだいたい網羅してくれているので、基本刑事訴訟法Iとあわせればこれをメインにして司法試験を突破することもできる、かもしれません。

(2020年9月最終更新)

 

三井=酒巻・入門刑事手続法

入門刑事手続法 第8版

入門刑事手続法 第8版

  • 作者:三井 誠,酒巻 匡
  • 発売日: 2020/04/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

入門書として各所でおすすめされている本。そこで読んでみたのですが、10時間寝たあとで読んでも眠くなると思います(なりました)

基本的に役割が基本刑事訴訟法Iとかぶるので、今はそっちでいいんじゃないかな〜と思います。

(2020年9月最終更新)

 

リークエ刑事訴訟法

刑事訴訟法 第2版 (LEGAL QUEST)

刑事訴訟法 第2版 (LEGAL QUEST)

 

当初使っていた基本書。オーソドックスなスタイルで、今でも論点ごとに参照していますが、たまによくわからないことが書いてあります(先生に見せてみても「よく分かりませんね」と言われてしまったり)。

それをカバーする意味でも、やっぱり引用をしっかりしてほしかったところです(リークエや基本シリーズに共通ですが)。

(2020年10月最終更新)

 

刑事訴訟法〔第2版〕

刑事訴訟法〔第2版〕

  • 作者:匡, 酒巻
  • 発売日: 2020/07/10
  • メディア: 単行本
 

もう一つの伝統的なスタイルの基本書(?)。買ってはみたんですが、他説をあまり引用しないようであり、これ一冊というわけにはいかないのでは…?という気になって使っていません。

(2020年9月最終更新)

 

判例講座刑事訴訟法

判例講座 刑事訴訟法〔捜査・証拠篇〕

判例講座 刑事訴訟法〔捜査・証拠篇〕

 
判例講座 刑事訴訟法(公訴提起・公判・裁判篇)

判例講座 刑事訴訟法(公訴提起・公判・裁判篇)

 

搜査・証拠篇(上巻と呼ぶことにします)は、警察学論集(立花書房)紙上の「搜査の現場に携わっておられる警察官の方を主たる読者として想定した」(上巻はしがき)連載を単行本化したもので(はしがき)、公訴提起・公判・裁判篇(下巻と呼ぶことにします)は、刑事法ジャーナル(刑事法ジャーナル)紙上の、上巻で扱っていなかった部分を扱う連載を単行本化したものです。

上巻と下巻の分量はおよそ2:1ですが、おそらくまず警察官が興味を持ちそうなテーマに絞って上巻(に当たる連載)を執筆し、その後に残りについて執筆したという感じなのだと思います。警察学論集のメインの読者層は幹部警察官+関係法曹という感じで、それに対して刑事法ジャーナルは関係法曹+研究者という感じです(ちなみに立花書房はほぼ警察専門の出版社で、より現場レベルの警察官向けの雑誌として警察公論を出されています)。
さて、本書の特徴ですが、一人判例百選という感じです(白石先生の『独禁法事例集』に近いかも)。このページの最後に『刑事訴訟法判例百選』を紹介していますが、百選はクオリティが一貫せず、しかも読んでみないとそれがわからないという、とても心を折ってくる欠点があります。それでもいいものはいいのですが(今のところだと会社法知財はよかったです)、刑訴はなかなかアレでした(後述)。そのため本書を読むことにしたのですが、川出先生の文章が本当に読みやすく、とても救われています

判例を理解するための前提知識としての、基本的な条文や制度の内容についても解説を加えた」(上巻はしがき)というのも助かっています。論点がどの条文のどの文言から生じるかの把握が極めて重要であることは、この記事の読者の皆さんには改めて説くまでもないと思います。

章立てが判例ごとではなくテーマごとというのも好きな点です。百選は「一判例一解説」が原則なので、解説の重複が生じたり、関係する重要判例が脱落することが避けられないことが多いですが、テーマごとにすることで、それを避けることができ、また、判例の流れ・判例どうしの関係を分かりやすく示すことができます。

「学説については、判例を理解するために必要なかぎりで言及するにとどめている」ため(上巻はしがき)、外在的な批判や理論的なところをカバーする本は別に選ぶべきです(その意味で基本書の代替にまではなりません)が、「刑事訴訟法は、…現行法の制定以来、ほぼ半世紀にわたって、実質的な改正がほとんどなされなかったこともあり、他の法分野以上に、判例のはたしている役割が大き」く(上巻はしがき)、司法試験でも判例の内在的理解が問われがちなので、とても有益な一冊だと思います。

(2021年1月最終更新)

 

刑事手続法の論点

刑事手続法の論点

刑事手続法の論点

  • 作者:川出 敏裕
  • 発売日: 2019/08/08
  • メディア: 単行本
 

判例講座刑事訴訟法』の著者による続編(?)。

同書よりもより新しく、実務的な論点を扱っていますが、「GPS搜査」(『判例講座刑事訴訟法』には未収録)、「偽計を用いた証拠収集」、「採尿のための留め置き」、「おとり捜査」は司法試験受験者的にも重要だと思います。

逆に「サイバー犯罪の搜査」、「接見の際の電子機器の使用」、「被告人の訴訟能力」、「刑事手続における証人の保護」、「量刑と余罪」はそれほどではないかも。

「取調べの録音・録画記録媒体の証拠としての利用」は、2016年改正(裁判員裁判対象事件・検察独自搜査事件でのいわゆる全面可視化)が施行されたことから、今後重要になるのではないかと思います。

(2021年1月最終更新)

 

刑事訴訟法の思考プロセス

刑事訴訟法の思考プロセス (法セミLAWCLASSシリーズ)

刑事訴訟法の思考プロセス (法セミLAWCLASSシリーズ)

  • 作者:斎藤 司
  • 発売日: 2019/10/01
  • メディア: 単行本
 

思考プロセスがわかるらしい(こなみ)。周囲で強そうな人たちが絶賛していたので紹介(これから読みます)。 

(2020年8月最終更新)

 

エクササイズ刑事訴訟法

エクササイズ刑事訴訟法

エクササイズ刑事訴訟法

  • 作者:粟田 知穂
  • 発売日: 2016/03/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

検察官による入門的な演習書(16問)。薄くて最初の一冊としてよさそう。

(2020年8月最終更新)

 

事例演習刑事訴訟法

事例演習刑事訴訟法 第2版 (法学教室ライブラリィ)

事例演習刑事訴訟法 第2版 (法学教室ライブラリィ)

 

応用的な演習書。33問。演習書という体裁ですが、中身は対話篇の論点解説集といったところです。リークエがごまかしている/こんな説がありますと書いて終わっているところを掘り下げてくれるので、「リークエじゃどう書いたらいいのかわからない」というときの補完に使えます。

かなり高度な議論をしていると言われていますが、かなりわかりやすく適宜学習段階の人でも読める文献を紹介してくれるので、わりと初期段階から使っています。

(2020年10月最終更新)

 

刑事訴訟法判例百選

刑事訴訟法判例百選 第10版〈別冊ジュリスト232号〉

刑事訴訟法判例百選 第10版〈別冊ジュリスト232号〉

  • 発売日: 2017/05/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

途中まで読んでいたのですがやめました。知財について次のように書きましたが、これは全部刑訴のことです(本書の前に会社法の百選を通読しましたが、そっちはそんなことはありませんでした)。

他の科目にありがちな、これは何の話をしているんだろうとか(大家である研究者にありがち)、関連裁判例を並べるだけで何も言ってないじゃないかとか(検察官にありがち)、学生や実務家にとってはどうでもいいし研究者は元の論文を読むだろうし誰が読むんだろうかとか(***の研究者にありがち)、そもそも日本語がおかしくて5,6回反復しないと解読できないとか(……)、そういう解説がほぼないのがとてもよいです。

一般的には実務的でわかりやすいと持ち上げられており、基本書が乏しかった頃(2010年代前半まで?)は基本書として使う人もいたようなのですが、個人的には信じられません。

もちろん通読に向かないというだけで、特定の判例をよく知りたいという場合に読む場合には使えることもあるとは思います。

(2021年1月最終更新)

 

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