商法(会社法等)の基本書、演習書等と使用法(2020年11月最終更新)

会社法は民事実体法ですが(共有、組合、委任の延長上)、産業法・手続法的要素が強く、条文が膨大であり、かつ、かなり細かく書かれています。そのため、まずは条文の構造(全体の構造、各条の構造)をよく理解する必要があります。逆にこの段階をクリアしてしまえば、解釈はそれほど錯綜していません。

集団的な利益衡量が要求されますが、初学者段階ではそもそも企業活動のステークホルダーにはどのような人がいるのかが理解できないことが多く、このことが会社法を難しくしている主要な原因である気がしています(産業規制権限、刑罰権、捜査権etcの行使を含む国家活動、契約、生命・身体・有体財産の侵害、訴訟などは生活感覚で理解できますが、企業活動だけはそうではありません)。そのため、先に簿記3級くらいはやっておくと楽かもしれません(LS生のための会計と簿記)。

なお、金融商品取引法などは分離しました(金融法の基本書等と使用法)。

 

目次

 

ストゥディア会社法

会社法 (有斐閣ストゥディア)

会社法 (有斐閣ストゥディア)

 

入門書。薄くてわかりやすいです。会社法は膨大であり、最初はとにかく薄い本で全体像を把握する必要があると思うので、通読できる薄さの本はありがたいです。ロー入試やWLSの2年次必修科目くらいまではこれだけでいけるのではないかと思います。会計や倒産の知識を入れた後に読むとまた新しい発見があります。

(2019年最終更新)

 

田中・会社法

会社法 第2版

会社法 第2版

 

基本書。とにかく丁寧わりと自説も出ています。個人的には、周辺の諸法や諸学との接続を意識しているところがポイント高いです。あるいは最近の会社法学の研究手法からすると、それらは当然のもので、むしろ特別な意識していない(司法試験受験者向けに意識して法律学の枠を超える議論を排除することをしていない)というのが正しいのかもしれません。なお、そのような説明が好きな人向けの文献として、田中編・数字でわかる会社法

(2019年最終更新)

 

会社法(紅白)

会社法 第3版

会社法 第3版

 

リークエは薄すぎ、田中・会社法は厚すぎということで買ってみました。論点を説明するとき、第一文が太字の「なぜ〜か。」「〜とはどういう意味か。」「どのように〜か。」「〜はできるか。」といった文章で始まるのが好きです。もうちょっと読んだら追記します。

(2020年8月最終更新) 

 

江頭・株式会社法

株式会社法 第7版

株式会社法 第7版

 

1000頁。いわゆる用法上の凶器自習室での護身用。実務家も困ったらまずはこれを手に取るそうです

試験のために必要というわけではありませんが、文章自体は読みやすく(ただし縦書きで物理的に読みにくくはあります)、細かいことについても一応言及はしていることが多いので、あると便利です。

会社法の先生も言っていましたが、辞書であり、通読するものではないです。

(2019年最終更新)

 

会社訴訟・紛争実務の基礎

会社訴訟・紛争実務の基礎 -- ケースで学ぶ実務対応

会社訴訟・紛争実務の基礎 -- ケースで学ぶ実務対応

 

NOTのパートナー・アソシエイトによる入門書。研究者の手による基本書(法文の体系に従ったもの)と比べて、次のような特徴があり、研究者による基本書と補完的に利用するのがよいと思います。

制度から始めるではなく、おそらく実際の事件をベースにしたCaseから始めて、各制度を一定の目的を達成するための手段として系統立てて整理していきます会社法では、会社法自体が膨大なこともあって、「結局この制度は何のために使うのか」という状態に陥りがちなので、このような説明の仕方をしてくれるテキストがあるのはありがたいです。なお、Caseは、初学者には複雑かもしれませんが、図表を書いて整理することで、情報を整理する(これは事例問題を解くときにも必要)よいトレーニングになると思います。

解釈問題については、判例や通説の結論を紹介する程度にとどめることが多いです。引用も、会社法コンメンタール、江頭・株式会社法東京地裁商事研究会の書籍など、実務家向けの文献がほとんどです。しかし、初学者の段階では、森に迷い込まないという意味で、逆によい気がします。

法的手段(非訟、仮処分、訴え)を取ることができるか、取る意味があるのか、取った後の帰結や処理などを丁寧に書いてくれています。例えば仮処分であれば、被保全権利、保全の必要性、権利保護の必要性はどのような場合に認められるか、どのような手続か(双方審尋など)、時間的余裕はどれくらいあるか、証拠はどのようなものをどうやって集めておくか、仮処分を勝ち取ったとして、それには紛争全体(経営権争奪など)の中でどこまでの意味があるかなど。イメージを持つための役に立ちます。

なお、元は法学教室連載ですが、「買収防衛策を巡る紛争」「企業買収関係の紛争」の章が書き下ろされているほか、各章にコラムが追加されています。買収防衛策は令和元年司法試験、企業買収における独占交渉義務は平成30年東京大学法科大学院入試で出題されており、また、MBOの章に追加されたスクイーズアウトについてのコラムは、平成26年改正で大きく変わった実務をフォローするものであるため、Westlawなどで法学教室を見ることができる人も単行本を買ったほうがよさそうです。

(2019年最終更新)

 

START UP 会社法判例40!

会社法判例40! (START UP)

会社法判例40! (START UP)

 

とにかく優しい判例集。授業の予習をしながらでも2日で読めました。

ガバナンス、ファイナンス、MA/設立の3章構成になっています。各章は、さらにいくつかのセクションに分かれていて、各セクションの冒頭ではIntroductionとしてフレームワーク(≒条文の知識)を説明してくれています。例えばChaper 3, 2「組織再編・事業譲渡」では、組織再編スキームの種類、手続、反対株主保護、無効などが説明されており、また、そのどこからどの(判例が判断を示した)問題が生じるのかが説明されています。

判例のページは、「事案をみてみよう」「読み解きポイント」「判決文を読んでみよう」「この判決が示したこと」「解説」という構成になっています。

会社法判例の事案はしばしばスキームが複雑ですが、本書は図を使って説明してくれているのでかなり分かりやすいです(特に16事件。最近の司法試験でも出た内部統制システムに関する判例で、百選だと52事件ですが、文字だけだと本当にわけがわかりません)。

「読み解きポイント」は、「問題の所在」に相当するものだと思いますが、これが判旨の前にあるのがいいところで、問題提起→最高裁の回答という自然な流れで頭に入ってきます。

「この判決が示したこと」は、判旨の一般論のまとめです。判旨とかぶるのではと思われるかもしれませんが、古い判例、事例判例、下級審裁判例など、どう応用したら(=答案でどういう規範にすればいいのか)いいのかわからなくなりがちなスタイルの判例・裁判例で効果を発揮します。

共著者の松元先生が「学部生がいきなり百選を読んでわかるかというと、実際は十分に理解できない学生も少なくなくて、そうすると、難しいから結局あまり判例を勉強しないといったことになってしまう」とおっしゃっています(書斎の窓2020年3月号4頁)。本書だけで司法試験をクリアするのは難しそうですが(ちなみにロー入試は東大以外はいけるんじゃないかと思います)、(私のように)そういう状態に陥ってしまった学部生・ロー生が、それを克服する第一歩としておすすめです。

(2020年10月最終更新)

 

会社法判例百選

会社法判例百選(第3版) 別冊ジュリスト

会社法判例百選(第3版) 別冊ジュリスト

  • 発売日: 2016/11/04
  • メディア: Kindle
 

百選はどうせみんな使うので紹介しない方針だったのですが、どこを読むべきかといったところでコメントを付しておきたいものについては、紹介していくことにしました。

事案・解説を読むべきか。結論として、読むべきだと思います。判例は文脈の中にあります。つまり、①当該事案と②それまでの判例・学説を前提に、③当事者が一定の主張をし、④それに対する「応答」として判例が出され、⑤それを受けて学説が、判例がどのような論理でその判断を導いたのか、当該事案におけるその判断は正しかったのか、その論理はどこまで通じるのか(=どのような事実が変わったら通じなくなり、どのような事実が変わっても通じるのか。いわゆる射程)といったことを議論し、⑥次に類似の(=共通部分があるけれども同じではない)事案が出てきたときは、①〜⑤を前提に①以降の流れを繰り返す、ということが行われます。司法試験で求められているのは⑥なので、①〜⑤は当然に知っておく必要がありますが、判旨から分かるのは④だけであり、①③は事実、②⑤⑥は解説からしか分かりません。

もちろん、百選の解説はピンキリで、役に立たないものも多いです。ただ、少なくとも会社法については、ある程度安定しているので、あまりそういうことはないだろうと思います。

どの事件を読むべきか。下級審裁判例が一定数含まれていますが、解説に大事なことが書いてあったりするので、下級審裁判例であることをもって除外すべきでないと思います。Appendixはさしあたりは読まなくてよいのではないかと思います。本編で読む必要がないと思ったのは、次のものです(そうすると結局75/104件)。96と101は事件自体は割と大事だと思うので、適当な別の解説を読んでおくのがよいと思います。

  • 1-4(総則)
  • 25(株券)
  • 19, 86-90(株式の価格関係)
  • 68(株主代表訴訟における担保提供)
  • 74, 96, 101(解説がひどい)
  • 75(会計監査人)
  • 76(公正な会計慣行)
  • 79(債権者異議手続における「知れている債権者」)
  • 80-82(持分会社
  • 83, 84(社債
  • 94(労働契約承継法関係)
  • 95(解散判決)
  • 103, 104(刑事事件)

どの段階で読むか。司法試験に必要な法律学の理解として、まず基本的な原理の理解があり、その上に具体的な事例での処理があります。このうちの第2段階だろうと思います(法学部→LS既修ルートを前提にすると、LS2年次秋くらい?)。

もちろん、第1段階でも重要判例の一般論(や複数の事例判断の学説による整理の結果明らかになった一般論)を知る必要はあるとは思います。しかし、その段階では判例は教科書等を通じて知ればよく、百選まで(=事例・判旨そのもの・解説まで)読む必要はないだろうと思います。また、百選解説は省略が多く(紙幅の問題なのだろうということもあれば、執筆者の問題なのだろうと思うこともあります)、ある程度豊富な基礎知識がないと何の話をしているのかわからないという性質上、第1段階で読んでも、あまり得られるものがないだろうと思います。

(なお、Start Upシリーズはいわば第1段階の判例集を目指しているのだろうと思われます。)

 (2020年11月最終更新)

 

ひとりで学ぶ会社法

ひとりで学ぶ会社法

ひとりで学ぶ会社法

 

ぼっち会社法。Stage 1: 25問、Stage 2: 18問、Stage 3: 6問。設問と解説が対応しています(当たり前じゃんと思うかもしれないが貴重)。

Stage 1で徹底的に条文を引かされ、どこにどの条文があるかがわかるようになります会社法はとりわけ端から条文を読むのがつらいので、これをガイドに条文を読むとよいと思います。

Stage 2はいわゆる「論点」を考える、スタンダードな問題集です。このようにステップを踏むことは、条文のウェイトが大きい会社法ではとりわけ大切なのではないかと思います。

Stage 3は解説がありません。有斐閣のページに順次上げていくそうですが、今のところ6問中1問目だけです(ひとりで学ぶ会社法 | 有斐閣)。

(2019年最終更新)

 

事例で考える会社法

法教連載だったもの。評価が高いので、仕上げに使おうと思っています(難しいと聞くので、それまでは使わないほうがよさそう)。

(2020年11月最終更新)

 

現代商法入門

現代商法入門 第10版 (有斐閣アルマ > Basic)

現代商法入門 第10版 (有斐閣アルマ > Basic)

 

356頁。「実質的意義の商法」 に属する法律について概説する本です。商法総則31頁、商行為73頁、保険28頁、手形・小切手51頁と、とにかく薄いです。

商法総則・商行為法と手形・小切手法は、少なくとも司法試験ではもう出ないと考えられ、予備試験でも論文では数年に一度極めて基本的な問題が出る程度なので、予備前にさっと確認するのに向いていると思います。

(2020年6月最終更新)

  

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