行政法はあまり覚えることも考えることもない気がします(怒られそう)。
まず、どのような訴訟類型があり(各種の行政事件訴訟、国賠訴訟)、どういう場面でどの訴訟類型が適合的なのかを理解する必要があります。
その上で、行政事件訴訟については、原告適格、処分性、その他行政事件訴訟法の個別の条項に関するいくつかの判例を理解し、裁量の認定とその統制(判断過程審査、比例原則、平等原則etc)の考え方を理解する必要があります。
国賠訴訟については、国家賠償法の個別の条項に関するいくつかの判例を理解し、行政指導の統制方法を理解する必要があります。
そして、これらをうまくワークさせるため、演習を通じて、問題となる個別の法律のスキームとそれに関する利益状況をインスタントに分析できるようにする必要があります。
目次
ストゥディア行政法
新しい入門書。ブラウズしただけだけど、薄くて分かりやすいように感じました(安定のストゥディアシリーズという感じ)。
これまで行政法の入門書として、藤田・行政法入門が挙げられることが多かったように感じますが、それと比べると、こっちは淡々と、図式的に概念を整理していくようなところがあります。司法試験・予備試験受験者にとっては、行政法は、わりと後に(というか最後に)着手する科目だと思われるので、こちらのほうがよいのではないかと思います。
(2019年最終更新)
大橋・行政法
基本書。とにかく説明が丁寧であり、しかも章立てがしっかりしているため迷子になりにくく、通読もそれほど苦痛ではありませんでした。
2巻の端書に続く「ゼミ生との対話から」の記述に共感しました。
私も薄いテキストほど魅力的で,夢のあるものはないと思います。学生時代には,そうした夢にとりつかれて,書店の店頭で,何冊もコンパクいな教科書を買った経験をもっています。しかし,初学者で飲み込みの悪い私には説明が不足していて,挫折することが多かったように記憶しています。たしかにテキストは薄いのだけれども,結局,行と行との間を自分でつなぐことができず,長時間考え込んでしまい,読み通すことを断念した経験も多かったのです。当時は自分の頭の悪さを嘆きましたが.今から思うと,多少厚くても,説明が尽くされている本を選んだほうが,結局,読む進むことができて理解が深まったのではないかと反省しています。こうした経験から,丁寧な説明に努めることとしました。
(2019年最終更新)
基本行政法
1冊で済ませたいならこの本。
受験者の間では基本行政法が人気のようであり、私も当初これを使っていましたが、あんまり薄すぎて理解が得られない気がした&(基本シリーズに共通ですが)文献引用がないため、大橋・行政法を使っています。
入門書としてもストゥディアが出たのであまり使う場面はないような…
(2020年9月)
基礎演習行政法
演習書。設問と噛み合った解説で、しかも薄くてサクサク進みます。
特に行政事件訴訟の類型選択と、裁量・処分性・原告適格という基本的な問題が書けるようになりました。これらの論点は、「書ける」と「分かる」の距離がだいぶある一方、これらの論点が分かれば行政法の半分は分かったようなものなので、まずはこれで基礎を作るとよいと思います。
(2020年9月最終更新)
事例研究行政法
演習書(第1部:8問、第2部:17問、第3部:7問)。『基礎演習行政法』をやって、過去問をやった後にやるとよいと思います。ただ、過去問が膨大なので、そんな余裕があるかというと…?
(2019年最終更新)
行政判例百選
百選はどうせみんな使うので紹介しない方針だったのですが、どこを読むべきかといったところでコメントを付しておきたいものについては、紹介していくことにしました。
行政法の百選は、あまりいい感じではないものの、結局百選を使わざるをえない気がしています。さしあたり解説まで読むべきなのは、次の箇所です。
- I巻(31/130件)
- 「71 裁量と権利侵害行為」〜「91 行政行為の付款」
- 「92 水道供給契約」
- 「98 指導要綱による開発負担金」
- 「108 行政上の強制徴収と民事手続きによる執行」
- 「109 条例上の義務と民事手続による執行」
- 「114 合議体の議事と利害関係者の関与」
- 「118 運輸審議会の審理手続」〜「121 理由の提示(3)」
- 「123 申請に対する応答の留保(1)」
- 「124 申請に対する応答の留保(2)」
- II巻(88/125件)
- 「132 不服申立適格」
- 「138 懲戒処分と人事院の修正裁決」
- 「148 ごみ焼却場の設置」
- 「152 土地区画整理事業計画」〜「161 登録免許税還付通知拒絶通知」
- 「162 原子炉設置許可と第三者の原告適格」〜「183 出訴期間」
- 「188 処分理由の差替え(1)」
- 「189 処分理由の差替え(2)」
- 「192 行訴法10条1項による主張制限」
- 「193 違法判断の基準時」
- 「202 事情判決」
- 「204 取消判決の第三者効」
- 「205 無効確認判決の第三者効」
- 「206 義務付け訴訟」〜「208 在外邦人の選挙権に関する確認訴訟」
- 「215 学校事故と国家賠償責任」〜「243 国家賠償法3条2項に基づく求償」
- 「246 破壊消防に伴う損失補償の要件」〜「254 在外資産喪失と国に対する補償請求」
国家賠償法はざっくり全部入れましたが、もう少し削ることができるかもしれません。
ちなみに新宿たぬきの森事件はIIではなくIに入っています。実体法的観点と手続法的観点を見るので必ずしもIIに入れるべきというわけでもないのですが、出訴期間制限から説き始めるのが普通なので、なんとなく救済法の問題としてイメージしています
(2020年11月最終更新)
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