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手形・小切手法@予備試験

短答まで2週間、論文まで2ヶ月と2週間、いかがお過ごしでしょうか。

 

なぜ手形・小切手法を勉強したくないか

手形・小切手法を勉強するのは、(主に気持ちの)ハードルが高いです。マイナー分野と言われることのある(?)統治機構家族法と比べると、次のような違いがあります。

まず、馴染みがない概念が多い。振出、裏書、引受、満期など。これから法律を学習しようとする人は、統治機構法・家族法を知らなくても、その規律対象たる事象がどのようなものなのかくらいは知っているのが普通です。これに対して、手形・小切手を使った取引というのは、知らないのが普通です(この馴染みのなさが実質的意義の商法に属する諸法の理解を難しくする共通の原因であることは、以前書いたとおりです:法律学習者はなぜ会計を勉強する必要がないか?:岩谷誠治『会計の基本』 - Life is Beautiful)。「あー、あの金持ちがペラってサインして渡すアレね」くらいのイメージ。

出るとはいっても短答では配点が小さく、論文ではそもそも出ないことのほうが多い。論文での出題頻度はおそらく家族法統治機構>手形小切手。しかも司法試験ではほぼ出ないのが確定している。

条文が書き下し文で、しかも長い。条約を日本語化したものだかららしいけど。

こんなところじゃないでしょうか。

手形取引自体が今まさに衰退している経済現象である(暮らしととうけい2011 O金融(東京都の統計)のうち、特に「東京手形交換所の手形交換高と手形交換枚数の推移」。また、【60秒解説】え? まだ手形で支払ってるんですか?!中小企業庁)、中小企業庁:下請代金の支払手段について下請代金の支払手段について:公正取引委員会)。電子記録債権や振込のほうが現物の証券を管理する手間がかかりませんし、大企業が下請けの中小企業に手形で支払いをすることは、中小企業の資金繰りを困難にし、(独禁法・その補完法である下請法による)優越的地位濫用規制の観点から問題があるため、廃止の方向に向かっています。(こんなのを出すくらいなら保険、金商法、信託、消費者法とかを出したほうがよっぽど有意義なのでは…)

 

どう出題されるか

とはいえ、勉強するにせよしないにせよ、出題の実態を知った上で判断したほうがよいでしょう。

短答では、手形・小切手は、初回から昨年(平成30年)まで、一貫して商法第29問・第30問として出題されていて、4点が配点されています。聞かれるのは、条文、百選判例、学説を提示してその帰結を考えさせる問題、特定の規定の目的を考えさせる問題(e.g. 〜という目的と関係があるものを選びなさい)などです。

論文では、平成28年平成24年に出題されています(配点はおそらく1/4〜1/3くらい)。
平成28年は、偽造(無権限の機関方式代理)でした。手形法には、無権代理に関する規定はありますが(8条)、機関代理方式では代理人の名前が表示されないので適用がなく(外形的には偽造と区別できない)、結局民法表見代理規定で解決することになります。これは手形法を知らなくても何とかなるかもしれません。
平成24年は、人的抗弁の切断(17条。いわゆる河本フォーミュラ)でした。一応民法にも抗弁の切断の規定はありますが(468条)、特殊性が強く、手形法を知らなければどうにもなりません。

 

結局勉強すべきか

試験までの日数、残っているタスク、上記のような手形・小切手の出題傾向などの事情を総合考慮して決定するべきものと解するのが相当です。

 

私はせっかくなのでやりました。

まず、『現代商法入門』(レビュー:基本書・演習書・副読本・2019 - Life is Beautiful)の手形・小切手の箇所(51ページ)を読みました。メモを取りながらで4時間くらいでした。

そのあと、予備試験短答の手形・小切手法部分を解きました。選択肢5個×2問×8年分で80問分があります。8割当たったので、ガチャ要素は消えないにしても(判例とか出されたらね…)、少しはマシになるんじゃないでしょうか。

もちろん、これだけで平成24年のような条文だけで解決しない問題に対処できるかは分かりません。しかし、そもそも24年は予備試験自体が2回目で試行錯誤していた時期で、商法典・会社法・手形法をすべて出題するという回だったので、今後ああいう出題はあまりないんじゃないかと思います。

 

参考資料

全銀協(一般社団法人全国銀行協会。東京手形交換所を運営しているほか、統一手形用紙などを策定しているのもここ)が作っている資料で、手形・小切手による取引という経済現象のイメージを持つための役に立ちそうなものを見つけたので、リンクを張っておきます。

 

なお、次のページに、条文の現代語版と、予備試験短答の手形・小切手法部分だけまとめたものを上げてあります。

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