任天堂のガイドライン:著作権を保持しつつ二次創作を促す方法

完全に自機に遅れたけど、まあいいや。

 

任天堂ガイドライン

昨年、任天堂YouTube等におけるプレイ動画の投稿について、ガイドラインを発表しています。

任天堂は、個人であるお客様が、任天堂著作権を有するゲームからキャプチャーした映像およびスクリーンショット(以下「任天堂のゲーム著作物」といいます)を利用した動画や静止画等を、適切な動画や静止画の共有サイトに投稿(実況を含む)することおよび別途指定するシステムにより収益化することに対して、著作権侵害を主張いたしません。ただし、その投稿に際しては、このガイドラインに従っていただく必要があります。あらかじめご了承ください。(ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン|任天堂

具体的な条項はリンクを開いてもらいたいのですが、このガイドラインのようなやり方は、コンテンツ産業にとって大きな可能性を秘めているように思います。

 

著作権の萎縮効果

著作権は、物権的な権利であり、誰に対しても主張できる強い権利です。著作権は文化の発展のために作られた権利ですが(特許に関してですが、米国特許庁にはリンカーンの「天才という炎に利益という燃料を注いだ」という言葉が刻まれています)、その強さゆえに、二次創作を萎縮させてしまう効果を伴います。

もちろん、意に反する利用を防ぎたい場合には、それは正しい作用なのですが、二次創作が必ずしも一次創作者の不利益になるわけではありません。むしろ、コンテンツを補い、ファン層を広げたり、コンテンツへの愛着を深めたりしてくれることもあります。

そのように考える一次創作者は、萎縮効果を取り除きたいと思うのであり、ガイドラインはその一つの方法です。

 

ガイドラインの意味

ガイドラインは、それに従う限り差止め・損害賠償請求をしないというものであり、契約ではありません。

特許の分野では、FRAND宣言というものがあります。Fair, Reasonable, Non-Discriminatoryな条件でライセンスをしますという宣言です。あるメーカーが優れた技術を開発し、それを普及させたいと思うとき、FRAND宣言をすることにより、他社は(一定の利用料のもとで)安心してその技術を使えるようになり、メーカーはライセンス料とマーケットシェアを得ることができるという仕組みです(実際には標準化機関の方から標準化の条件としてそれを求めることも多いようです)。宣言自体は契約でもその申込みでもありませんが、FRAND条件におけるライセンス料を超えて損害賠償を請求することが権利の濫用になるという形で法的な意味を持ちえます(知財高判平成25.5.16〔サムスン v. アップルジャパン〕)。

著作権におけるガイドラインも、これと類似の効果が認められるのではないかと思います。もちろん、FRAND宣言はライセンス契約を予定するのに対して二次創作はそうではない、FRAND宣言により権利濫用とされるのは宣言したライセンス料を超える場合だが、二次創作においてそのようなフィーは観念できないという違いはありますが。

 

なお、馬場貞幸先生(話題の任天堂「著作物ガイドライン」、ファンや法曹関係者の評価とは(井上理) - 個人 - Yahoo!ニュース)、水野祐先生(任天堂「著作物のガイドライン」が持つ、グレーゾーンに花咲く2次創作の可能性)がコメントをされていますので、紹介しておきます。