逮捕・勾留・保釈と類似の概念を整理する

刑事手続では、難解というか、テクニカルな概念が一般向けのニュースにも登場して、よくわからなくなりがちなので(記者ですらもよくわかっていないのではないかと思われることがよくある)、整理しておきます。

 

逮捕・勾留と懲役・禁錮の違い

懲役・禁錮は刑罰であり、裁判所の判決でそのような刑罰を科すと宣言された場合にのみ科されます。

これに対して、逮捕・勾留は捜査の手段であり、刑罰ではありません。言い換えれば、懲役・禁錮は犯罪行為に対する制裁であるのに対して、逮捕・勾留は犯罪が行われたかどうかを調べる過程で必要となるものであり、犯罪が行われたことを前提としません(犯罪の疑いが必要なのはもちろんですが)。

しかも、逮捕・勾留は、被疑者が証拠を破壊したり、改竄したり、隠したり、証人となるべき関係者と口裏合わせをしたり、逃亡したりするといった行動を防ぐための制度であり、一箇所にとどめ置いたほうが検察・警察の取り調べに便利だからという理由で作られた制度ではありません。また、自殺防止や自殺防止の制度でもありません。そのような本来の目的と異なる目的で逮捕・勾留をすることは、逮捕・勾留が身体の自由というきわめて重要な権利を制限するものであることから、重大な問題があります。

なお、逮捕・勾留中の被疑者が検察・警察の取り調べに応じなければならないかは議論があります。

また、逮捕・勾留ともに、特に必要な場合に限ってされるもので、身体を拘束されずに捜査が終わる(不起訴になるにせよ、起訴されるにせよ)ということはあります。

 

逮捕と勾留の違い

逮捕の後に勾留があります。逮捕がされたからといって必ずしも勾留がされるわけではありませんが、勾留をするには逮捕を経ていなければなりません(逮捕前置主義)。

「逮捕は72時間、勾留は10日間(さらに10日間延長可能)」が原則です。また、逮捕には被疑者国選がない、不服申立てができないなどの違いがありますが、捜査のための身体拘束という点では同じです。

2段階に分けたのは、2回にわたって裁判所の令状審査を受けさせ、逮捕段階の捜査でこれ以上の身体拘束が必要ないとわかった場合には、勾留をしないことで、被疑者の不利益をできるだけ小さくしようという考えに基づきます(ただし、最近はそうではないのではないかという議論があります)。実際にそうなっているかはまた別の話ですが。

 

逮捕・勾留はどのようにして行うか

逮捕は、通常逮捕、現行犯逮捕・準現行犯逮捕、緊急逮捕に分かれます。

通常逮捕では、警察官・検察官が、犯罪の発生・その者が犯人であると疑うに足りる理由があること、逮捕しなければ証拠隠滅などのおそれがあることを明らかにして、裁判官に逮捕状を請求ます。裁判官はそれを審査し、逮捕状を発布するか、請求を却下します。警察官が逮捕した場合、24時間以内に検察官に送致しなければなりません(身柄の引き渡し=送検。逮捕していない場合に事件を検察に送致するのが「書類送検」=身柄なしでの送検)。検察官は、送致から24時間以内かつ逮捕から72時間以内に、勾留請求をするか、被疑者を釈放しなければなりません。この間に警察官・検察官が取り調べをします(被疑者を取り調べることもできますが、それに限られません)。

逮捕・勾留は、一つの罪について一回しかすることができません。そうでなければ時間制限は無意味です。つまり、国会はその時間内に捜査を遂行せよと警察・検察に命じているわけです。もっとも、社会的に見て一つの犯罪であっても、法的には複数の犯罪に分割することができることが多く、そのような場合には別の罪名でまた逮捕・勾留をすることができることとなります(マスコミが再逮捕と呼んでいるのはこれです。なお、そのようなことを可能とする法制度には「人質司法」として批判があります)。

現行犯逮捕・準現行犯逮捕・緊急逮捕は、逮捕後の時間制限は通常逮捕の場合と同じでが、逮捕前に裁判官の審査を経ないという違いがあります。

現行犯逮捕は、現行犯(犯行との時間的・場所的隔たりが少ない場合)について、犯罪の発生・犯人性が明らかな場合に裁判官の審査を省略することができるものです。準現行犯逮捕は、犯人が凶器を持っているなど、法律に定められた一定の場合に、時間的・場所的隔たりを緩めて現行犯逮捕を認めるものです。

緊急逮捕は、一定の重大な犯罪(と言っても基準がゆるいのでほとんどの犯罪はここに含まれます)について、「犯人(と思われる者)に出会ったが逮捕状を請求している暇がない」という場合に、事前の裁判官の審査なしに逮捕した上で、直ちに逮捕状請求し、裁判官の審査を受けるものです。裁判官が緊急逮捕の要件を満たさないと判断した場合には、釈放することとなります。

 

起訴後勾留(被告人勾留)

勾留は、起訴後にも行われます。目的はほぼ同じですが、「捜査のため」から「裁判(判決が確定したときはその執行)のため」に変わります。期間は、起訴後2ヶ月、その後1ヶ月ごとに更新です(2回目以降の更新には条件がありますが、ほとんどの場合には認められます)。次に説明する保釈は、起訴後勾留でのみ認められます

 

保釈・保釈金

保釈は、起訴後勾留中に一定の条件を付けて身体拘束を解くことを言います。「一定の条件を付けて」というのが大事で、ここが勾留取消し・不更新と違うところです。

保釈にあたって、保釈金を納めさせることがあります。これは、逃亡できなくなるだけのお金を裁判所に預けさせるもので、罰金ではないですし、金にものを言わせて刑罰から逃れるものでもありません(そもそも勾留は刑罰ではないことは先に書いたとおりです)。金持ちほど保釈金の額は上がりますが、それは「それを捨てて逃げられないほどの大金」の金額が財産の額に比例するからにすぎません。

保釈は、一定の軽い犯罪で、一定の重い罪の前科がなく、証拠隠滅などのおそれがない場合には、必ず認めなければなりません(権利保釈。捜査は原則として起訴前に完遂せよということです)。そうでない場合にも、裁判官が認めてよいと思う場合には、認めることができます(裁量保釈)。先に書いたとおり、勾留は身体の自由というきわめて重要な権利を制限するものであることから、できる限りこれを少なくしようという趣旨です。

ちなみに、似た言葉ですが、「釈放」という言葉もあります。これは制度や法的概念などではなく、単に警察・検察が身体を拘束していた人を解放する行為を指します。例えば、警察が現行犯逮捕してみたが検察官から見るとその要件を満たしていないことが明らかだった、検察官が他に犯人がいる、逃亡などのおそれがないなど勾留の必要がないと判断した、勾留請求・更新請求をしたものの却下されたなどの場合に、被疑者・被告人を「釈放」することとなります。