最判平成26.4.14:子が再婚家庭で虐待されている場合に非親権者親が取りうる手段

次のようなケースを考えます。

AとBは、婚姻関係にあり、その間には子Cがある。AとBが離婚するにあたり、Aが親権者と指定された。その後、AはDと再婚し、CとDが養子縁組を行った。ところが、DはCを虐待しており、Aもそれを傍観しているという。

このケースにおいて、Bはどのような手段を取りうるでしょうか。親権を中心に、調べたことを書いておきます。なお、この記事中の条文は断りがない限り民法のものです。

 

養子縁組をしていない場合

前提ですが、このケースと異なり、CDの養子縁組が行われていない場合、民法819条6項により親権者変更の申立てをすることになります(手続は家事事件手続法167条以下、別表第二第8項)。ADが再婚しても、CD間に親子関係は生じませんし、したがってAの親権も影響を受けません。

819条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
2項〜5項省略
6項 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。

 

養子縁組をした場合の親権者

養子縁組をすると、養子は養親の親権に服します。

連れ子養子の場合は後に述べるとおり特殊な扱いがされますが、例えば母方の祖父と養子縁組をした場合(簡略化のため、祖母は離婚あるいは死亡しているものとします)、親権者は母方の祖父です。つまり、実父母は親権者でなくなります。

818条 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2項 子が養子であるときは、養親の親権に服する。

これに対して、父母の婚姻中は、父母が共同親権者となります。父母というのは、実親か養親かを問いません。連れ子養子の場合、実親である母と養父(実親である父と養母)が婚姻関係にありますから、この規定により、共同親権となります。

818条3項 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

なお、そもそも虐待をするような再婚相手なら、養子縁組自体を阻止し、あるいは法的手段によって消滅させればよいのではないかと思われるかもしれません。しかし、養子縁組は法定代理人(親権者である実親A)が本人に代わって承諾することでできますし(797条)、縁組の無効・取消しは婚姻と同様にきわめて例外的にしか認められません(802条〜808条)。養子縁組にも、離婚の訴えと同様に、離縁の訴えというものがあり(814条)、虐待は3号事由「その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき。」に該当しうるところですが、仮に勝訴したとしても、親権者とされた実親の単独親権に戻るだけですし、親権者とされた実親と養親の婚姻関係まで消滅するわけではありませんから、あまり意味がありません。

 

養子縁組をした場合の親権者変更

養子縁組をした場合も、親権者変更申立てをすればよいように思われます。しかし、判例はそれを否定しています(最判2014(平成26)年4月14日 LEX/DB 25446367)。

 民法819条は,1項から5項までにおいて,子の父母が離婚する場合等には,子は父又は母の一方の単独の親権に服することを前提として,親権者の指定等について規定し,これらの規定を受けて,6項において,親権者の変更について規定して,親権者を他の一方に変更することができるとしている。このような同条の規定の構造や同条6項の規定の文理に照らせば,子が実親の一方及び養親の共同親権に服する場合,子の親権者を他の一方の実親に変更することは,同項の予定しないところというべきである。他方,上記の場合において,親権者による親権の行使が不適切なもので子の保護の観点から何らかの措置をとる必要があるときは,親権喪失の審判等を通じて子の保護を図ることも可能である。
 そうすると,子が実親の一方及び養親の共同親権に服する場合,民法819条6項の規定に基づき,子の親権者を他の一方の実親に変更することはできないというべきである。

理由として挙げられたのは、①819条6項は条文構造・文理上親権者の再婚相手との縁組がされた場合を想定していない、②819条6項によらなくても親権喪失・親権停止によって子を保護することができる、というものです。

実質論としては、次のような議論がされていました。すなわち、養親子関係は実親子関係に優先するのだから、Aの親権はCD間の養子縁組で本来行使できなくなるべきものである。にもかかわらずそれを存続させているのは、ADがたまたま婚姻関係にあり、協力が期待できるからである。ところが、BDは婚姻関係になく(同性なので現行法下では当然ですね…)、その趣旨が妥当しないので、BDを共同親権者とするような変更は認められない。もちろん、親権者変更は養親の親権を奪うものではないから、Bの単独親権とすることもできない。

 

親権喪失・親権停止

最高裁は、そのような場合には親権喪失・親権停止を申し立てればよいと考えているようです(手続は家事事件手続法167条以下、別表第一第67項)。

834条 父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる。ただし、二年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。

834条の2 父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権停止の審判をすることができる。
2項 家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、二年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める。 

親権停止は、2011年に導入された制度です。かつては親権喪失しかありませんでしたが、無期限で親権を剥奪する制度であったため、裁判所は慎重な運用をせざるを得ず、子の利益が十分に確保されないという現状がありました。そこで、柔軟な運用をするために、2年以内の期限付きで親権を剥奪する親権停止が導入されました。

 

親権喪失・親権停止の場合のBの地位

ADの親権が剥奪された場合、Bは親権者となることができるのでしょうか。親権と親子関係は別物であり、親権の剥奪によっては養子縁組は消滅しないことから、そうはならないものと考えられます前田陽一ほか『民法6 親族・相続(LEGAL QUEST)第3版』(有斐閣、2015)169頁〔本山敦〕参照)

この場合、Bとしては、838条1号に基づき、自らを未成年後見人に選任することを申し立てることが考えられます(手続は家事事件手続法176条以下、別表第一第71項)。

838条 後見は、次に掲げる場合に開始する。
1号 未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
2号省略

BはCの親であり、このことは、離婚により親権を失ったことや、CがDと養子縁組したことの影響を受けませんから、「親族」として申立権を有します。

840条 前条の規定により未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも、同様とする。
2項、3項省略

成年後見人は、親権者と同一の権利義務を有します。

857条 未成年後見人は、第八百二十条から第八百二十三条までに規定する事項について、親権を行う者と同一の権利義務を有する。ただし、親権を行う者が定めた教育の方法及び居所を変更し、営業を許可し、その許可を取り消し、又はこれを制限するには、未成年後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。

もっとも、裁判所の監督を受ける(863条1項。さらに後見監督人が選任されることもある)点で、親権者と完全に同じ扱いがされるわけではありません。