最決平成29.9.12:主債務者の破産後に物上保証人が弁済した場合、誰に配当すべきか?

この文章は、去年の6月に書いたオリジナルに、加筆修正を加えたものです。

 

開始時現存額主義(前提)

破産手続においては、配当の原資となるべき破産財団と、配当を受けるべき破産債権は、破産手続開始時のものに固定される(破産財団の固定主義・破産債権の開始時現存額主義)。

破産法104条 数人が各自全部の履行をする義務を負う場合において、その全員又はそのうちの数人若しくは一人について破産手続開始の決定があったときは、債権者は、破産手続開始の時において有する債権の全額についてそれぞれの破産手続に参加することができる。
2 前項の場合において、他の全部の履行をする義務を負う者が破産手続開始後に債権者に対して弁済その他の債務を消滅させる行為(以下この条において「弁済等」という。)をしたときであっても、その債権の全額が消滅した場合を除き、その債権者は、破産手続開始の時において有する債権の全額についてその権利を行使することができる。
3 第一項に規定する場合において、破産者に対して将来行うことがある求償権を有する者は、その全額について破産手続に参加することができる。ただし、債権者が破産手続開始の時において有する債権について破産手続に参加したときは、この限りでない。
4 第一項の規定により債権者が破産手続に参加した場合において、破産者に対して将来行うことがある求償権を有する者が破産手続開始後に債権者に対して弁済等をしたときは、その債権の全額が消滅した場合に限り、その求償権を有する者は、その求償権の範囲内において、債権者が有した権利を破産債権者として行使することができる。
5 第二項の規定は破産者の債務を担保するため自己の財産を担保に供した第三者(以下この項において「物上保証人」という。)が破産手続開始後に債権者に対して弁済等をした場合について、前二項の規定は物上保証人が破産者に対して将来行うことがある求償権を有する場合における当該物上保証人について準用する。 

 

事案の概要

A社は、平成23年9月に破産手続開始決定を受け、Y(相手方・相手方・抗告人)が破産管財人に選任された。債権者X(申立人・抗告人・相手方)は、その求償権等約5000万円を破産債権として届け出た(本件破産債権)。

Cは、XのAに対する本件破産債権を被担保債権とする物上保証人となっていたところ、破産手続開始後に、抵当不動産の売却代金から本件破産債権のうち約2000万円について代位弁済した(本件破産債権の残額は約3000万円となった)。Cは、本件破産債権の代位弁済による求償権2000万円を、予備的に破産債権として届け出た。

破産管財人Yは、債権調査において、Xの届け出た本件破産債権を認め、Cの求償権については、「本件破産債権の残額が配当によって全額消滅することによる、破産法104条4項に基づく求償権の範囲内での原債権の代位行使という性質において認める」旨の認否をした。最後配当許可後の配当表において、Xに約3000万円、Cに超過部分の約1400万円を配当するものとされた。Xが配当表について異議申立て。原々審はこれを却下。Xが即時抗告。原審は超過部分はその他の破産債権に配当すべきであるとして、原々決定を取り消し、原々審に差し戻した。Yが許可抗告。

 

決定要旨

 同一の給付について複数の者が各自全部の履行をする義務を負う場合(以下,全部の履行をする義務を負う者を「全部義務者」という。)について,破産法104条1項及び2項は,全部義務者の破産手続開始後に他の全部義務者が弁済等をしたときであっても,破産手続上は,その弁済等により債権の全額が消滅しない限り,当該債権が破産手続開始の時における額で現存しているものとみて,債権者がその権利を行使することができる旨を定め,この債権額を基準に債権者に対する配当額を算定することとしたものである。すなわち,破産法104条1項及び2項は,複数の全部義務者を設けることが責任財産を集積して当該債権の目的である給付の実現をより確実にするという機能を有することに鑑みて,配当額の計算の基礎となる債権額と実体法上の債権額とのかい離を認めるものであり,その結果として,債権者が実体法上の債権額を超過する額の配当を受けるという事態が生じ得ることを許容しているものと解される(なお,そのような配当を受けた債権者が,債権の一部を弁済した求償権者に対し,不当利得として超過部分相当額を返還すべき義務を負うことは別論である。)。
 他方,破産法104条3項ただし書によれば,債権者が破産手続開始の時において有する債権について破産手続に参加したときは,求償権者は当該破産手続に参加することができないのであるから,債権の一部を弁済した求償権者が,当該債権について超過部分が生ずる場合に配当の手続に参加する趣旨で予備的にその求償権を破産債権として届け出ることはできないものと解される。また,破産法104条4項によれば,債権者が配当を受けて初めて債権の全額が消滅する場合,求償権者は,当該配当の段階においては,債権者が有した権利を破産債権者として行使することができないものと解される。
 そして,破産法104条5項は,物上保証人が債務者の破産手続開始後に債権者に対して弁済等をした場合について同条2項を,破産者に対して求償権を有する物上保証人について同条3項及び4項を,それぞれ準用しているから,物上保証人が債権の一部を弁済した場合についても全部義務者の場合と同様に解するのが相当である。
 したがって,破産債権者が破産手続開始後に物上保証人から債権の一部の弁済を受けた場合において,破産手続開始の時における債権の額として確定したものを基礎として計算された配当額が実体法上の残債権額を超過するときは,その超過する部分は当該債権について配当すべきである。

 

ノート

学説は次のように分かれる。①超過部分を含めて原債権者に配当する、②残存部分は原債権者に、超過部分は求償権者に配当する、③超過部分は破産財団に帰属し、他の債権者への配当原資とするべきである。

原々審は②を、原審は③を採用したのに対して、本決定は①を採用したもの。これに従えば、破産債権が実体法上消滅した場合でも、配当は(物上保証人の求償権や他の破産債権ではなく)消滅したはずの破産債権に行うことになる。もちろんその配当は実体法上正当化されないが、物上保証人は倒産手続外で求償するほかない。開始時現存額主義を貫徹する結果である(②や③のようにすれば倒産手続が複雑化してしまうという配慮も働いているのだろう)。

なお、木内道祥裁判官が補足意見を述べている。

 

参考文献

  • 河野正憲・名古屋大学法政論集278号295頁
  • 齋藤毅・ジュリ1514号95頁、法時70巻7号211頁(調査官解説)
  • 佐藤鉄男・リマークス57号128頁
  • 杉本和士・金法2078号34頁
  • 田頭章一・金法2097号44頁
  • 山本研・重判平成29年度140頁(民訴8)