2019年度早稲田大学法科大学院入試(再現答案へのリンクあり)

8月25日〜26日に、早稲田大学法務研究科(法科大学院)入試を受けてきました。合格はできるんじゃないかと思いますが(できなければ来年は無職ですね)、全額免除を受けることができるかはわかりません。成績は送られてきたら追記しようと思います。

 

追記・WLS関係のアップデート

 

やったこと

7月の予備論文の翌週に定期試験があり、その翌週にバイトで夏期講習会をやっていたので、実質的に勉強を始めたのは8月の1週目でした。

まずどうしようもなかったのが憲法でした。「読み解く合格思考 憲法」の新司法試験以外の部分をやりました。

8月の2週目までにこれを終えました。

8月の3週目はまたバイトで夏期講習会があったのですが、午前中は空けていたので、過去問を4年分解きました(13:00-21:20バイト、8:00-12:00勉強みたいな暮らし、もうしたくない)。

次に、刑法各論に手が出ないことがわかりました。早稲田の刑法は、総論が事例問題(60点)、各論が一行問題(30点)です。

対策として、塩見淳『刑法の道しるべ』を読みました。論点解説本で、総論8テーマ、各論6テーマが収録されています(各論は、住居侵入罪の保護法益・「侵入」の意義/奪取罪における不法領得の意思/不法原因給付と詐欺罪・横領罪/公共危険犯としての放火罪/偽造の概念/賄賂罪における職務行為)。

2013年から2017年までの出題テーマで、カバーされていないのは2013年の名誉毀損における真実性の錯誤だけだったので、これさえ読めば書けるはずと思い、前日と1日目の刑法の前の昼休みを使ってこれを読みました(が、カバーされてないところから出ました。もっとも、これ自体はかなりよい本なので、東大までに総論も読んでおこうと思います)。

なお、「刑法の道しるべ」というタイトルですが、帯にあるとおり「刑法の"頂"」への「道しるべ」なので、それなりに自信がついてきてから読んだほうがいいです。

追記(2020.9.3):第2問は、刑法判例百選IIのタイトルがそのまま出ているらしいです。掲載判例とその周辺(問題の所在、批判)を整理しておくのがよいかもしれません。

刑法の道しるべ (法学教室ライブラリィ)

刑法の道しるべ (法学教室ライブラリィ)

 

刑訴は、以前に「えんしゅう本」を解いたときのノートを見返しました。

他は特に何もしませんでした。早稲田だからやる気が出なかった。

 

各科目

1日目が、民法 10:00~12:00(120分)、刑法 13:30~15:00(90分)、憲法 16:30~17:30(60分)。2日目が、民事訴訟法・刑事訴訟法 10:00~12:00(120分)。会場が早稲田だったので迷うことはありませんでしたし、感慨もありませんでした。受験票があまりに簡素なので、単なる願書受領通知と勘違いして捨てそうになったり、2日目に持っていくのを忘れたりしましたが、問題はありませんでした。

 

民法

1問目は、親権者の利益相反・代理権濫用、無権代理と相続。2018年度の問題を解いたときにリークエで確認していたのでなんとかなった気がします。

2問目が動産・不動産の譲渡担保。あまりうまく書けませんでしたが、集合動産譲渡担保じゃなかっただけマシではあります(いつかのA先生の定期試験)。

追記(2018.12.14):問題2(2)で、(無理筋だなあと思いながらも他に思いつかずに)94条2項類推適用を書いたのですが、出題趣旨によれば、清算金請求権を被担保債権とする留置権の抗弁、権利濫用の抗弁を書いてほしかったようです。清算や受戻しは完全に忘れていたので、譲渡担保だけ勉強し直そうと思います…

(60/75点[80%], 42/75点[56%])

 

刑法

1問目は、女性が自分や連れ子を虐待していた同棲相手の男を間違って刺してしまったが、自業自得だと思い直して放置し、その後、たまたま被害者の母親が訪ねてきたが、やはりかつて家庭内暴力を振るわれていたことを思い出して放置したため、結局男が死亡したという事案。よくわかりませんでしたが、女性については刺した行為は誤想防衛ということにして、放置行為に殺人罪の成立を認め、母親については無罪としました。問題文の救命可能性の書き方があからさまなのが印象的でした。こんなの見たら誰だって「十中八九」の判例を思い出すんじゃないですかね(規範的要件なのでそう書かざるを得ないのでしょう)。

その結果、Bは出血多量で数時間後に死亡したが、甲が闘争する段階で救急通報していればBをほぼ確実に救命することができた。また、乙がBを発見した段階で救急通報していれば、確実とはいえないが、救命できる可能性があった。

2問目は、二重譲渡と横領でした(初登場)。塩見淳『刑法の道しるべ』に載っていなかったので絶望しましたが、横領罪の一般的解釈について述べたあと、譲渡人について刑法の謙抑性がどうとかいう話をしました。

終わってから教科書を読んだところ、譲渡人に横領罪が成立することに争いはなく、問題は第二譲受人にその共犯が成立するかが争いになっているようです:

  • 善意の第二譲受人は、故意がないから共犯は成立しない。
  • 悪意の譲受人は、単なる悪意の場合、民法177条の解釈との関係上共犯は成立しない(最判昭和31・6・26刑集10巻6号874頁)。
  • 背信的悪意者の場合、共犯が成立する。
    山口厚『刑法』(有斐閣、2015)333頁)

言われてみるとそうだなあと思いますが、完全に忘れていました(必要的共犯でそうなりがち)。

ところで、唯一時間が足りなくなったのが刑法でした。余計なことを書いたのかもしれません。あるいは二重譲渡に面食らってしばらく考え込んだのが原因かも(先に各論を解きました)。

追記(12/14):問題1は時間がなくなった割には浅い傷で済んだのではないかと思います。問題2は、出題趣旨に書いてあることを一つも書いていないし、なんでこんなに点数をくれたのかわかりません。過去に一度も出題されていないし、みんな書けなかったんでしょうか。

(49/60点[81%], 26/30点[86%])

 

憲法

神道関係者が、しめ縄・神具に使うために大麻の栽培の免許を申請したが、拒否され、無免許のまま栽培したため、起訴された事案。よくわかりませんでした。被告人はいつもの審査基準論、私見は(苦し紛れに)A県知事の主張を手がかりに書きました。

なお、牧会活動事件くらいしか思い浮かばなかったんですが、アメリカにはEmployment Division v. Smithという類似の事件があります(もっとも覚えていたのは事案だけで、あまり役に立ちませんでした)。Wikipediaからの引用ですが、Native American Churchの信者であるSmithが、強力な幻覚作用を持つ禁止薬物であるpeyoteを使用としたところ、解雇されたという事案です。判決は、

if prohibiting the exercise of religion is not the object of the [law] but merely the incidental effect of a generally applicable and otherwise valid provision, the First Amendment has not been offended

として、制約を否定しています(Employment Division v. Smith - Wikipedia)。

追記(12/14)出題趣旨によれば、被告人の違憲主張→検察官の神道を除外することはかえって政教分離違反になるとの反論→剣道実技拒否事件を引用して違反しないとの再反論、という流れを想定していたようです。確かに信教の自由と政教分離が対立する場面ではあるのですが、様々な選択の可能性があるカリキュラム策定と、神道関係者を除くかどうかは別にしてもひとまず規制しなければならない大麻では、射程が及ぶのかどうかよくわかりません…(しかも剣道実技拒否事件は取消訴訟における裁量統制の中で信教の自由や政教分離に言及したに過ぎないし…)

(42/60点[70%])

 

民事訴訟

T教授のいう「後決関係」と、先決関係についての問題。何を書けばよいのかよくわからず、既判力の定義、客観的範囲、主観的範囲、時的限界、それぞれの事案で抵触があるかを書きました。

追記(12/14):本当に何のひねりもないド王道だったようですね。それはともかく、民訴の出題の趣旨は「採点講評」として「こういう記述はやめろ」という例を挙げてくれているのですが、その内容がとても味わい深いです。

114条1項の解釈が不十分であるにもかかわらず、争点効や信義則といった「論点」に重点を置く答案が多く見られた。このような答案は、基本をおろそかにした論点主義答案とみられ、評価は低くなる。なお、争点効を批判し、信義則を用いるべきという答案が大多数であったが、争点効に対して「要件があいまいである」という批判をする答案が多かった。しかし、信義則はその要件が争点効以上にあいまいであり、批判になっていないと思われる。このあたりも、ありきたりの「論証」を考えもなく丸覚えしているという印象を受けた。また、「(争点効を認めることは)114条の趣旨に反する」と書いている答案も多かったが、これもどのように趣旨に反するのか、具体的に展開していた答案はなく基本論点についての学修の浅さが目についた

 とか、

既判力が作用する場合は必ず書く、といったような受験指導をどこかで受けてきているのかもしれないが、それを検討することが真に必要なのかをきちんと自分で考えるという姿勢を身に付けてほしい。

とか。書いた人の顔が浮かびます。

なお、もちろんですが、指摘の内容はもっともなので、来年受験される皆さんはよくお読みになって、新訴訟物理論・争点効・成仏理論など、JK(Juten Kogi Minji Sosho-ho)に載っているようなことを意味もなく書かないようにしましょう。私は争点効については一言も触れず、信義則についても「信義則上主張が制限される場合は格別」としか書きませんでしたが、まあまあの点数はもらえました(減点はこれらを書かなかったためではなく、114条の論証が薄すぎたためだと思います)。

(51/60点[85%])

 

刑事訴訟法

証言と矛盾する(別人の)供述録取書の証拠能力。何を書けばよいのかよくわからず、伝聞禁止にあたること、3号書面であること、328条について限定説を取った上でそれにあたらないことを書きました。17行で終わりました。

追記(12/14):さすがに薄すました。伝聞の定義・該当性は明らかだったので省略したのですが、出題趣旨によれば、書くべきだったようです。

ところで、刑訴の出題趣旨の末尾には、毎年このような文章が書かれています。

本問で問われているのは,学部の刑事訴訟法の授業では必ず取り上げられ,教科書でも必ず触れられている基礎的事項である。したがって,入試のために特別な勉強をする必要は全くない。講義を聴き,教科書を丁寧に読んでいれば,解答を導くことができる問題である。

マジ?

(30/60点[50%])

 

追記 (2018.11.7):ロー入試を終えて

東京大学法科大学院は1次審査で落ちました(GPA 2.0, TOEIC 725。TOEICは並み、GPAは底辺だと思います)。