令和3年 司法試験 再現答案構成

再現答案を作っていたのですが、挫折したので箇条書きのメモだけ載せておきます。相場はよくわからないけど、A-A-B/C-A-B-A-Aくらいだと思っています。民法民事訴訟法は本当に混乱しました。知財は別にあります(令和3年 司法試験 再現答案 知的財産法)。短答は140-150くらいになりそうです。

 

 

憲法

  • 規制1
    • 制約がない?→方法の規制。吉祥寺駅、立川テント村、大阪市広告物条例、大分市広告物条例でも一応利益衡量を行っている。
    • 権利は重要(堀越)。規制態様は非内容規制・非事前規制で強度ではない。新潟公安条例事件、泉佐野市民会館事件のような厳格な審査基準は妥当しない。
    • しかし、萎縮効果が強度。そういう発言をしているし、政治的見解による採用・雇用における差別は往々にしてある。また、顔は常にさらされているが、万人不同性・終生不変性があり、AIを利用したバイオメトリクス技術の発達によりプロファイリングが容易となっている。重要な公益目的ー必要かつ合理的な手段。
    • 目的は重要。関連性はある。しかし著しく均衡を欠き、必要な限度を超える。
    • 香港の立法、韓国のネット実名制、「匿名表現の自由」などが浮かんだがよくわからなかった。京都府学連は引用しなかったが、顔といえばあれなのでどこかで引用したほうがよかったのかもしれない。「匿名表現の自由」は萎縮効果ゆえに保障されるという議論があるようなので(情報法概説2版15頁)、それほど間違っていなかったかも。
  • 規制2 
    • 結社の自由。結社としての活動の事由も含む。
    • 制約なし?→萎縮効果、「自覚ある行動」(とは?)=行動の変革を意図しているからあり。
    • 権利は重要。しかし規制態様が重大ではない。萎縮効果も規制1と違ってそれほど強くはない。正当な公益目的ー必要かつ合理的な手段。
    • 目的は正当。しかし必要性・合理性がない:①10%が過去に行ったというだけではでは団体が助長したとはいえないし、③対象メディアが広すぎ(助長を本来的目的とする団体ではないのだから)、②対象アカウントが広すぎ(代表者・幹部以外)。
    • 「団体規制」と言っているのでオウム解散命令事件と成田新法事件が浮かんだがよくわからなかった。制約のところで書いた「行動の変革を意図している」というのは、今考えるとオウム決定が「信仰に容喙する意図ではない」みたいなことを言っているのと対照的だった。

 

行政法

  • 設問1
    • 小問1
      • 裁量審査の中で使われる概念が法的地位なのか?→北海道パチンコ事件から法的地位→それを否定するから処分性あり。
      • ひたすら誘導に従った。
    • 小問2
      • 同一主体が同時に同一基準に従って審査する場合には、一方が違法とされれば他方も当然に再考すべき関係にあるから、訴えの利益あり。
      • 東京12チャンネル事件だなとは思ったけど、内容は思い出せなかった。キーワードの「表裏一体」は書けなかったけどそれっぽいことは書いたので加点してほしい。
  • 設問2
    • 他人名義営業者への配慮
      • 判断過程審査。
      • 市長は他人名義営業は法的保護に値しないと考えているが、職探しは難しい、トラブルもなかった、配偶者等との均衡から保護に値する。過小評価で違法。
      • ひたすら誘導に従った。
    • 本件申合せの合理性
      • 19条各号の文言と趣旨からそれぞれ合理的。一律加点の幅も20%にすぎないから新規参入者との関係でも不当ではない。
      • ひたすら誘導に従った。
    • 手続的瑕疵
      • 手続は手段的なものだが、制度の根幹・信頼に関わる手続の瑕疵は直ちに違法事由となる。
      • わざわざ合議体の委員会を設置して推薦をさせているのは、中立・公正を確保するものだから、市長は、それが合理性を欠くことが明白などの特段の事情がない限り、それを尊重すべき義務がある。この仕組は制度の根幹・信頼に関わる。
      • 群馬中央バス事件だなとは思ったけど、内容は思い出せなかった。制度の根幹・信頼は調査官解説のワード。調査官解説の該当箇所は手続的瑕疵の一般論として参照されることが多いので覚えていたが、肝心の判決をよく読んでおらず、「運輸審議会陸運局とは違うんだよな」くらいの認識しかなかった。学術会議っぽいなとか思いながら書いた。
      • 判決を見たところ、前提として「処分行政庁が,諮問機関の決定(答申)を慎重に検討し,これに十分な考慮を払い,特段の合理的な理由のないかぎりこれに反する処分をしないように要求することにより,当該行政処分の客観的な適正妥当と公正を担保する」と述べており、それっぽいことは書いたので加点してほしい。

 

民法

  • 設問1
    • 主張ア=正当
      • 所有権取得:即時取得
      • 借り受け:前主から借り受けた。契約上の地位の移転が合意されたと解釈できる。
    • 主張イ=不当
      • 占有代理人は占有改定における直接占有者と異なりインフォメーションセンターを期待できる、倉庫業者等に預けたまま取引するのは一般化していて取引コストを引き上げる。
    • 主張ウ=正当
      • 盗品だから。
    • 請求1=認められる
    • 請求2=認められない
      • 所有権は被害者に留保されるが、果実取得権(使用収益権)は占有者にある。
    • 唯一ちゃんと書けた。
  • 設問2
    • 小問1
      • 業務に裁量性があり、成功報酬は結果保証ではないので、準委任。
      • Eの債務は合格させるために出張講座を行うこと。
    • 小問2
      • 請求3
        • 委任事務の履行がない?
        • 裁量性があるから要求に応じなくても不履行とはいえない。
      • 請求4
        • 随意解除?
        • 診療契約や訴訟委任契約と異なり、生命・身体等の重要な法益や、権利義務を直接に左右するような業務を内容とするものではなく、通常の取引だから、それによって損害賠償を免れることはできない。
        • 専念するため他の依頼を受けない、代替講師手配、これらをAに伝え、Aはこれを受け入れていたことから、120万円は予見可能な損害。
        • ただし15万円は非両立の利益だから控除する。
        • 105万円の限度で認められる。
    • 今だに出題趣旨がわからない。丸ごと飛ばした。40万円部分とか、何も評価を加えられていない。
  • 設問3
    • 小問1
      • 分別の利益があるから債務は250万。
      • 主債務者の抗弁の援用で50万は履行拒絶できる。
      • 連帯保証だけど保証人間の連帯特約があるわけではないから分別の利益があるだろうと考えてしまったが、連帯保証だと分別の利益はないという判例があるらしい。普通に考えて、資力不安から追加したのだからそうだし、そこから黙示の連帯特約があると解釈することもできた。丸ごと飛ばした。
    • 小問2
      • 対A
        • 250万は保証債務の弁済、50万は非債弁済。免除は他の債務者にも効力を及ぼす意思があるなら絶対効だが、そうでないから相対効。
        • 250万は無委託保証人の求償権に基づいて求償できる。
        • 50万は善意者に対する不当利得返還請求権に基づいて求償できる。
      • 対G
        • 250万は弁済による代位により125万円について保証債務履行請求権に基づいて請求できる。
        • 50万は善意者に対する不当利得返還請求権に基づいて求償できる。
      • 免除の判例を思い出した段階で連帯債務じゃないかと疑うべきだった。丸ごと飛ばした。

 

商法

  • 設問1
    • 間接利益相反。該当するが善意無過失なので主張できない。
    • 多額の借財。該当するが善意無過失なので主張できない。
  • 設問2
    • 実質的な出捐者。Cの貯金で賄ったからC。その後の取扱いは、その認識がAC間で共有されていたことを推認させ、その評価を補強する。
  • 設問3
    • Gに議決権を行使させなかったこと
      • 定めは正当な目的・相当な程度。
      • Gに適用するのは、①子と孫の対立に関わりたくないというのは合理的、②他に撹乱しようという意図はない、③閉鎖会社で他に依頼できる株主はいない(丙社はどっちかに肩入れするかもしれないし、そもそも一人で結論を決められる株主が現れることになって対立の状況を一変させてしまい本末転倒)、④弁護士は懲戒制度で規律されていることから、実質的に議決権行使の機会を奪うもので、相当な程度を超える。
    • Fの議決権行使
      • 代表取締役の代表権制限は善意だから対抗できない。
      • 代表権濫用。Cは自ら持ちかけているし、大企業だから何らかの内規があるのが通常で、知りえた。

 

民事訴訟

  • 設問1
    • 課題1
      • 全部棄却判決。正当な理由がないことに帰するから。
      • 処分権主義の趣旨→意思に反しなければよい。特段の意思が示されていない場合には「格段の相違ない範囲」だが、それがある場合には「格段の相違ない範囲」を超えても、意思に反しない限り違法とならない。引換給付は強制執行開始要件に過ぎず、そこまでの額を払ってまで引渡しを受けようとは思わないのであれば、行使しないこともでき、原告の不利益は小さい。被告に不利益はない。
      • 今だに出題趣旨がよくわからない。再訴可能性とかはあんまり考えなかったけど、考えるべきだったと思う。
    • 課題2
      • できる。あくまで請求は明渡し。一部自認の債務不存在確認訴訟で「〜を超えて」と判決してはいけないこととの整合性が問題となるが、既判力が生じない。被告の不利益も、他の要素から正当事由が認められ、申出額の満額と引換給付とする必要はないような場合を考えれば、不意打ちではない。
      • よくわからない。
  • 設問2
    • 依存関係説で書いた。
    • 「紛争の主体たる地位」の判決は浮かんだものの、よく思い出せなくてスルーしてしまった。焦っていると判断能力が下がる。
  • 設問3
    • 課題1
      • 最終期日だから時機後れ。
      • 今後通帳の書証、近隣の相場の書証、Bの証人尋問などが考えられ、訴訟の簡潔を遅延させる。
      • 重過失:①重要性や更新に関連することを知っていた、②1500万円は多額、③通帳だから信用性が高いから、提出すべきことは容易に認識でき、そうしなかったのは重過失。
      • 却下決定を容易にする訴訟行為:理由の説明の求め。
      • 「Yに対してすることができる訴訟法上の行為」がわからなくてかなり焦った。「裁判所に対して」ではないので申立てではないし、単なる主張であればわざわざ「訴訟法上の行為」などと言うだろうかと思いながらいろいろ探して、そういえば弁論準備を経ているので何かあるのでは?と思って見つけた。
    • 課題2
      • X側:①手伝ってたんだから知ってるでしょ、②最終期日指定直後だから執行妨害目的が窺われ、新主張も同様と考えられる。
      • Z側:②通帳はセンシティブだし、X自身証拠としての価値に気づいてなかったのだから知り得ない、②本人訴訟等で体調を崩したためで執行妨害目的ではない、③Zとしてはできる限り迅速に対処した、④Xは本人訴訟だったから多少稚拙でもやむをえず、Zは弁護士に委任しておりより合理的な主張ができるのでその機会が与えられるべき、⑤信用性が高く、結論を左右しうる重要な証拠、⑥Xは自ら訴訟承継を申し立てており、訴訟物自体の移転である以上何らかの新主張は考えられ、少なくとも重要な証拠についての審理に付き合わされても不当ではない。

 

刑法

  • 設問1
      • 強盗罪=不成立
        • 財物奪取に向けられていない。
      • 窃盗罪=成立
        • 乙が占有者なら乙に業務上横領が成立し、65条1項、2項で甲には単純横領罪。
        • 占有なし。店内で取り扱う権限があったにすぎない。
      • 暴行罪=不成立
        • 同意による違法性阻却?
        • 判例の事案とは危険性が全く異なり、不当な目的・動機を考慮してもなお同意の効果が認められる。
      • 甲との共同正犯による窃盗罪=成立
        • 共謀共同正犯。
        • 強盗だと思っているが抽象的錯誤で窃盗。
      • 背任罪成立の可能性は終わってから気づいた。確かに銀行員が不正融資に協力する場面(会社法で出てくる銀行取締役の善管注意義務は、拓殖銀行の特別背任事件)と似ている気がする。
      • 甲との関係
        • 共同正犯による窃盗罪=成立
      • 乙との関係
        • 窃盗罪の共同正犯=不成立
          • 順次共謀かつ片面的共同正犯の問題。前者は認められるが後者は認められない(意思連絡要件)。
        • 窃盗罪の幇助犯=不成立
          • 甲の行為を促進しているが、乙の行為を促進していない。
          • 甲の行為は60条により乙のものとみなされるが、それは一部実行全部責任が認められるというだけのことで、幇助犯の範囲を拡張するものではない。
      • 盗品保管。知情後は成立。業務上横領だと思っているが具体的事実の錯誤。
  • 設問2
    • 小問1(2つの論拠はAND)
      • 共同正犯が成立しない。
        • 押さえておく役割で積極的な加害は予定されていない、甲も驚くほどの勢い、共謀者だった甲すらも殴り気絶させそのことを認識している、警察に話させないという独自の動機に基づいているから、射程外(基づく実行ではない)。
      • 207条(同時傷害の特例)の適用はない。
        • 頭部裂傷と顔面打撲等は同一の機会に生じたから一つの傷害。207条は誰も責任を負わない不都合を回避するものだが、その一部(顔面打撲等)につき丙が責任を負う以上、207条の適用はない。
    • 小問2(2つの論拠はOR)
      • 共同正犯が成立する。
        • 因果性の除去によって判断すべき。嫌がる乙を説得して暴行に参加させたのは甲で、決定的なきっかけを与えているから、上記の事情を考慮してもなお因果性が除去されていない。
      • 同時傷害の特例の適用がある。
        • 部位の危険度、距離などを考慮すると一つの傷害とはいえない。顔面打撲等について、誰も責任を負わないという207条の典型的状況が生じているから、207条の適用がある。

 

刑事訴訟法

  • 設問1
    • 共通
      • 差押えは、①関連性、②「差し押さえるべき物」該当性、③必要性。
    • 差押え1
      • 専ら別件の証拠とする目的ならば違法。
      • 本件に関連し(甲の発言は調書化されていないが考慮を妨げない)、かつ、専ら別件利用目的もないから、適法。
    • 差押え2
      • 関連性はその場で確認すべきだが、蓋然性があり、かつ、破壊されるなどの特段の事情がある場合には適法。
      • 蓋然性あり:USBメモリに入っているとの情報あり。プリントされたメモがあるからどこかにオリジナルデータがあるはず。初期化・暗号化が容易なフラッシュメモリに入れることは一定の合理性。
      • 特段の事情あり:初期化プログラムとの情報あり。初期化プログラムをセットすることは容易で、重要情報だから合理性。申し出ているが初期化プログラムを発動させるためかも。
  • 設問2
    • 小問1
      • 非伝聞。作成者の意識を述べたものだから。
    • 小問2
      • 伝聞。作成者の意識を述べたものだが、それは乙に由来し、乙に由来することを証明するために用いられているから。
      • 321条1項3号該当性。
        • 供述不能。同程度に固定的であればよい。一貫して拒絶しているし、それには合理的理由があるから満たす。
        • 不可欠性。甲が強固に拒絶し、乙も全面的に否認しており、メモ1のような代替証拠もなく、共謀共同正犯で物的証拠も考え難く、連絡に使われていそうな携帯電話も未発見だから満たす。
        • 特信性。原則として状況だが、補充的に内容を考慮してもよい。鍵をした引き出しの手帳から見つかっていること(自己使用目的で虚偽を記入するとは考えがたい)、実際の犯行状況と細部まで一致するから満たす。
        • 証拠能力あり。

令和3年 司法試験 再現答案 知的財産法

再現答案

(第1問=特許法
1 設問1
(1) 特許権の侵害には、原則として、業として特許発明の実施をすることが必要である(68条本文)。
 A製品は、樹脂製の針を用いており、金属製の針とする構成要件αを充足しないから、文言侵害は成立しない。
(2) そこで、均等侵害を検討する。
 特許発明の構成の一部を置換した場合でも、①置換されたのが発明の本質的部分ではなく、②置換によっても同一の効果を奏し、③置換が侵害時に当業者にとって容易に推考でき、④置換後の構成が出願時の公知技術と同一かそこから当業者が容易に想到できたものではなく、⑤置換後の構成を意識的に除外したなどの特段の事情がない場合には、特許発明と均等なものとして、侵害が成立する。①〜③の場合に侵害を認めなければ、先願主義による時間的制約の下で出願しなければならない特許権者に酷である一方、相手方は容易に侵害を免れうることとなり、公平に反し、発明のインセンティブを阻害して特許制度の目的(1条)に反する。一方、④の場合には、その技術は特許を受けることができなかったものであり、また、⑤の場合には禁反言に反するからである。
 ①は、構成要件を分節するのではなく、同一の技術的思想の範囲に属するかによって判断すべきである。⑤は、単に出願時同効材があったというだけではこれに当たらないが、明細書に記載するなどした場合には、これに当たる。
 A製品は、樹脂製の針を用いているが、X発明の効果を奏し、そのことに当業者が容易に想到できたから、①〜③を満たす。④にあたる事情もない。⑤について、明細書にその他の硬い針を用いてもよいとの記載がこれに当たるかが問題となりうるが、樹脂製の針が硬い針であることは当業者にとって自明だったから、禁反言の前提である第三者にとっての信頼が生じうるといえ、これを満たす。したがって、均等侵害が成立しない。
 以上から、侵害が成立しない。
2 設問2
(1) Bは、X製品を分解・再組み立てしているから、業として実施としての生産(2条3項1号)を行っている。
(2) もっとも、消尽の成立が問題となる。
ア 特許権者が国内で特許製品を譲渡した場合には、特許権はその特許製品につき消尽し、もはや権利行使をすることはできない。①特許製品の流通の安全を図る必要があるし、②特許権者は対価回収の機会があり、二重の利得の機会を与える必要はないからである。
 Bが販売しているのはX製品の使用済み品を処理したものであるから、原則として消尽が認められる。
イ もっとも、当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたといえる場合には、消尽は成立しない。このような場合には、上記趣旨①②が妥当しないからである。新たな製造に当たるかは、特許製品・特許発明の性質に照らした加工の態様および取引の実情を総合的に考慮して判断すべきである。
 Bは、部品交換を行っていないが、分解・洗浄・組み立て・滅菌処理により、X製品の技術的特徴を再現しているし、医療用器具として最も重要と思われる衛生を確保している。また、添付文書には再使用禁止と明記されており、再使用が容認されていたという事情はない。これらを考慮すると、Bの加工は新たな製造に当たり、消尽は成立しない。
 以上から、侵害が成立する。
3 設問3
(1) 小問1
ア C製品の一体化同時穿刺が文言侵害となることは明らかであるが、C製品は一体化機構を備えていないから、Cにおいて文言侵害は成立しない。
イ そこで、間接侵害(101条)が問題となる。
(ア) 1号について。
 物の生産に「のみ用いる物」とは、その物の生産以外の経済的・実用的用法がないことをいう。
 C製品は、本来独立して使用するものであるから、これに当たらない。このことは、一体化同時穿刺が行われているのが全使用症例数の3割にすぎないことからも明らかである。
 したがって、1号に該当しない。
(イ)
a 生産に用いる物でその課題の解決に「不可欠なもの」とは、それによって初めて課題が解決できるような構成をいう。
 製品Cは、固定部材によって一体化されていない点を除いてX発明の構成要件を充足するが、固定部材のみで課題を解決することはできないから、「不可欠なもの」に当たる。一体化同時穿刺が行われているのは全使用症例数の3割にすぎないが、本号の要件は「用いるもの」であり、「のみ用いるもの」ではないから、結論を左右しない。
b 「知りながら」とは、その発明が特許発明であることと被疑侵害品が特許製品の生産に用いられていることについての悪意であり、重過失を含まない。もっとも、差止請求との関係では、口頭弁論終結時までに充足すればよい。
 Cは、Xの調査結果を含む警告書を受領しているから、悪意である。
c 非汎用(広く一般に流通しているものではないこと)について、これに当たる事情はない。一体化同時穿刺に用いられているクリップは汎用品だが、汎用品であってはならないのは被疑侵害品であり、組み合わせる物ではない。
d CはC製品を業として生産・譲渡している。
 したがって、2号に該当する。
 以上から、差止請求は認められる。
(2) 小問2
ア 推定覆滅事情の主張が考えられる。
 102条2項は、all-or-nothingを回避し、柔軟な解決を可能にするものであり、効果も推定にとどまることから、同項の「利益」とは、限界利益(売上原価は控除するが、サンクコストである販売管理費は控除しない)の全てをいうと解するべきであり、相当因果関係を阻害する事情を主張・立証してこれを覆滅できると解するべきである。
 推定を覆滅する事情として、①市場の非同一性、②競合品の存在、③ブランド、営業などの努力、④侵害品の他の特徴が考えられる。このうち、①は認められず、④もX製品・C製品が実用品であり、また、需要者が医療機関であることからすれば、考えがたい。②③については、問題文からは直ちに明らかでないが、そのような事情があれば、それを主張することが考えられる。
イ 悪意となった時期に関する反論が考えられる。
 101条2号においては、悪意が侵害の要件となっているから、損害と評価されるのも、悪意となって以降のものに限られる。
 Cは、添付文書に一体化同時穿刺を行わないように記載していたから、警告書の受領によって初めて悪意となったものであり、それ以前の利益については、102条2項の推定は及ばない。
(2669字)

(第2問=著作権法
1 設問1
 Aは、複製権(21条)に基づき印刷の、譲渡権(26条の2)に基づき売却の差止め(112条1項)を請求し、侵害の予防に必要な措置(同条2項)としてデータの廃棄を請求することが考えられる。その前提として、著作物性および職務著作が問題となる。
(1) 著作物とは、①思想又は感情を②創作的に③表現したもので、④美術等の範囲に属するものをいう。①は何らかの精神活動の産物であればよい。②は何らかの個性が発揮されていればよい。③はアイデアを、④は緩やかな要件による独占による弊害に着目して産業財産権法に委ねるべきものを除外する趣旨である。
 丙が撮影した写真は、丙が写真の構図、最高、露光、シャッタースピード等を調節して撮影したものだから、①〜③を満たす。④について、写真は作業に参考とするために撮影されたが、鑑賞の対象となりうるから、これを満たす。このことは、丙が売却を申し出を申し出ており、そうしたのは鑑賞の用に供する需要があると考えたためと考えられることからも推認できる。
 したがって、著作物性が認められる。
(2) 職務著作は、①法人等の発意に基づき、②その業務に従事する者が、③職務上作成する著作物で、④プログラムの著作物でなく、⑤特段の定めがない場合に成立する(15条1項)。
 丙はAの従業員だから、②を満たす。丙が写真を撮影したのは、Aの企画したαの制作のためだったから、①、③を満たす。④、⑤に当たる事情はない。
 したがって、職務著作が成立し、写真の著作者はAとなる。
(3) 複製とは、有形的再製をいう(2条1項14号)。印刷は紙という有形物に写真を再製するものだから、これに当たる。
(4) 譲渡とは、著作物を化体する有体物たる原作品または複製物の所有権を移転することをいう。上記印刷物の売却はこれに当たる。
 公衆とは、不特定または特定多数の者をいう(2条5項参照)。不特定多数者が閲覧できるホームページを通じて行われる売却の相手方はこれに当たる。
(5) 甲はいまだ上記侵害行為を行っていないが、ホームページ上でそれを行う告知をしているから、「著作権〔を〕侵害するおそれがある者」に当たり、「侵害の…予防」として差止めを請求できる。
(6) データの保持は侵害を構成するものではないが、差止めの実効性確保に必要であり、丙はデータをAの持ち出し禁止・廃棄命令に違反して持ち出したものであり、被写体との関係でも、甲はAの従業員としてその企画するαの制作のために肖像の利用を許諾したにすぎないと考えられるから、丙は何らデータを適法に利用しうる地位にないから、「専ら侵害の行為に供され〔る〕機械…の廃棄」に準ずる「侵害の…予防に必要な措置」として廃棄を請求できる。
 以上から、Aの請求は認められる。
2 設問2
(1) 小問1
ア 頒布権侵害(26条)について。「映画の著作物」は劇場用映画に限定らず、映像を利用した著作物をいう。コンピュータ用ゲームソフトであるαはこれに当たる。その複製物の中古販売はは、頒布(2条1項19号)に当たる。
イ もっとも、消尽が成立しないか。
 著作権者が国内で著作物の複製物を譲渡した場合、①流通の安全を図る必要があるし、②著作権者は対価回収の機会があり、二重の利得の機会を与える必要はないから、もはやその複製物には権利を行使できないと解するべきである。頒布権については、配給制度の対象となっている劇場用映画については、多額の投資がされること、個別の権利行使が困難であることから、消尽が成立しないが、そうではない、公衆に対する提示を目的としない家庭用メディアの譲渡については、消尽が成立すると解するべきである。譲渡権に関する26条の2第2項は、確認規定にすぎず、反対解釈すべきでない。
 Bが販売しているのはAが販売したαの中古品だが、αは公衆に対する提示を目的としない家庭用メディアだから、消尽が成立する。
 以上から、Aの請求は認められない。
(2) 小問2
 Bの割賦販売サービスは、6日間に返品することを解除条件とする売買契約であると解される。もっとも、このような特殊な売買が消尽の対象となるかは、上記消尽の根拠①②に照らして実質的に検討すべきである。
 まず、①については、売買である以上、妥当する。もっとも、②については、コンピュータ用ゲームソフトは6日間あればある程度遊び尽くすことができること、頭金は新品の価格よりも特に安価と考えられ、獲得できる需要者はより多く、その増加分だけ新たな複製が行われたのと同等の経済的打撃を競合品の販売者であるAにもたらすこと、ゲームはリセットが可能であり、容易には消耗しないことからすれば、対価回収の機会があったとはいえない。したがって、消尽は成立しないと解するべきである。
 以上から、Aの請求は認められる。
3 設問3
 丁はAに著作権を譲渡しているが(特掲につき61条2項)、著作権著作者人格権は別であるから(50条参照)、直ちに同一性保持権の行使ができなくなるものではない。また、不行使の合意がなされたと評価できるとしても、それは丁A間においてであり、乙を当事者とするものではない。
 しかし、①翻案・二次的著作物の著作権が特掲により譲渡されており、翻案は通常改変を伴うから、翻案のみを許諾することは合理的でなく、そうしたとの特段の事情もないから、黙示的に同一性保持権の不行使特約がされていたと評価できること、②丁がβ'を編曲したのは、αの続編ソフトのためであり、ゲーム内での使用態様も、βと同様にBGMとしてであり、十分に予測可能であること、③丁による改変は、乙の意に反するにせよ、名誉声望を害するようなものではないこと(113条11項参照)、④丁は不行使特約の当事者たるAから依頼を受けて、Aが企画するαの続編ソフトのために編曲をしており、A自身が編曲を行うのと同視できることからすれば、乙の請求は権利濫用である。
 したがって、乙の請求は認められない。
(2489字)

(合計5158字)

 

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第1問 - 設問1

1 設問1
(1) 特許権の侵害には、原則として、業として特許発明の実施をすることが必要である(68条本文)。
 A製品は、樹脂製の針を用いており、金属製の針とする構成要件αを充足しないから、文言侵害は成立しない。
(2) そこで、均等侵害を検討する。
 特許発明の構成の一部を置換した場合でも、①置換されたのが発明の本質的部分ではなく、②置換によっても同一の効果を奏し、③置換が侵害時に当業者にとって容易に推考でき、④置換後の構成が出願時の公知技術と同一かそこから当業者が容易に想到できたものではなく、⑤置換後の構成を意識的に除外したなどの特段の事情がない場合には特許発明と均等なものとして、侵害が成立する。①〜③の場合に侵害を認めなければ、先願主義による時間的制約の下で出願しなければならない特許権者に酷である一方、相手方は容易に侵害を免れうることとなり、公平に反し、発明のインセンティブを阻害して特許制度の目的(1条)に反する。一方、④の場合には、その技術は特許を受けることができなかったものであり、また、⑤の場合には禁反言に反するからである。
 ①は、構成要件を分節するのではなく、同一の技術的思想の範囲に属するかによって判断すべきである。⑤は、単に出願時同効材があったというだけではこれに当たらないが、明細書に記載するなどした場合には、これに当たる。
 A製品は、樹脂製の針を用いているが、X発明の効果を奏し、そのことに当業者が容易に想到できたから、①〜③を満たす。④にあたる事情もない。⑤について、明細書にその他の硬い針を用いてもよいとの記載がこれに当たるかが問題となりうるが、樹脂製の針が硬い針であることは当業者にとって自明だったから、禁反言の前提である第三者にとっての信頼が生じうるといえ、これを満たす。したがって、均等侵害が成立しない。
 以上から、侵害が成立しない。

均等侵害の一般的な問題です(ボールスプライン事件、マキサカルシトール事件控訴審、同上告審)。

ボールスプライン事件はだいたい書けましたが(第2要件と第3要件の「容易に想到」「容易に推考」を逆にしてしまいましたが、あの違いに意味はあるんでしょうか)、マキサカルシトール事件の例外規範(「客観的,外形的にみて,同製品等に係る構成が特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながらあえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたといえる」)はよく覚えていなかったので適当に書きました。あてはめ中で「信頼を生じさせる」っぽいことを書いてるから加点してくれたりしないかなという感じです。

 

第1問 - 設問2

2 設問2
(1) Bは、X製品を分解・再組み立てしているから、業として実施としての生産(2条3項1号)を行っている。
(2) もっとも、消尽の成立が問題となる。
ア 特許権者が国内で特許製品を譲渡した場合には、特許権はその特許製品につき消尽し、もはや権利行使をすることはできない。①特許製品の流通の安全を図る必要があるし、②特許権者は対価回収の機会があり、二重の利得の機会を与える必要はないからである。
 Bが販売しているのはX製品の使用済み品を処理したものであるから、原則として消尽が認められる。
イ もっとも、当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたといえる場合には、消尽は成立しない。このような場合には、上記趣旨①②が妥当しないからである。新たな製造に当たるかは、特許製品・特許発明の性質に照らした加工の態様および取引の実情を総合的に考慮して判断すべきである。
 Bは、部品交換を行っていないが、分解・洗浄・組み立て・滅菌処理により、X製品の技術的特徴を再現しているし、医療用器具として最も重要と思われる衛生を確保している。また、添付文書には再使用禁止と明記されており、再使用が容認されていたという事情はない。これらを考慮すると、Bの加工は新たな製造に当たり、消尽は成立しない。
 以上から、侵害が成立する。

消尽の一般的な問題です(インクタンク事件)。

だいたい書けました。「新たな製造」の考慮事情は最高裁のものは未整理な感じがして覚えにくかったので、田村先生の整理を参考にしています(百選解説、プラクティス特許法)。結局消尽の2つの根拠が妥当するかを見ているんだということも含めて、とても参考になります。

 

第1問 - 設問3

3 設問3
(1) 小問1
ア C製品の一体化同時穿刺が文言侵害となることは明らかであるが、C製品は一体化機構を備えていないから、Cにおいて文言侵害は成立しない。
イ そこで、間接侵害(101条)が問題となる。
(ア) 1号について。
 物の生産に「のみ用いる物」とは、その物の生産以外の経済的・実用的用法がないことをいう。
 C製品は、本来独立して使用するものであるから、これに当たらない。このことは、一体化同時穿刺が行われているのが全使用症例数の3割にすぎないことからも明らかである。
 したがって、1号に該当しない。
(イ)
a 生産に用いる物でその課題の解決に「不可欠なもの」とは、それによって初めて課題が解決できるような構成をいう。
 製品Cは、固定部材によって一体化されていない点を除いてX発明の構成要件を充足するが、固定部材のみで課題を解決することはできないから、「不可欠なもの」に当たる。一体化同時穿刺が行われているのは全使用症例数の3割にすぎないが、本号の要件は「用いるもの」であり、「のみ用いるもの」ではないから、結論を左右しない。
b 「知りながら」とは、その発明が特許発明であることと被疑侵害品が特許製品の生産に用いられていることについての悪意であり、重過失を含まない。もっとも、差止請求との関係では、口頭弁論終結時までに充足すればよい。
 Cは、Xの調査結果を含む警告書を受領しているから、悪意である。
c 非汎用(広く一般に流通しているものではないこと)について、これに当たる事情はない。一体化同時穿刺に用いられているクリップは汎用品だが、汎用品であってはならないのは被疑侵害品であり、組み合わせる物ではない。
d CはC製品を業として生産・譲渡している。
 したがって、2号に該当する。
 以上から、差止請求は認められる。

間接侵害の一般的な問題です(医療用器具事件)。事例は同事件のものがベースになっています。

小問1については、同事件のことは知っていたのですが、専ら「知りながら」要件のことが頭に残っており(百選のタイトルが「15 知りながら」なので…)、「用いる」要件の規範を(そもそもそれで一つの論点なのだということも含めて)忘れていました。同判決は、「〔当該製品〕の使用態様として格別特異なものではなく、通常行われる〔当該製品〕の使用態様の一つである」場合には、「用いるもの」に当たるとしています。論点だということがわかっていれば「のみ用いるもの」(こっちを知らない人はいないでしょう)の規範からなんとか導けた気もします。

(2) 小問2
ア 推定覆滅事情の主張が考えられる。
 102条2項は、all-or-nothingを回避し、柔軟な解決を可能にするものであり、効果も推定にとどまることから、同項の「利益」とは、限界利益(売上原価は控除するが、サンクコストである販売管理費は控除しない)の全てをいうと解するべきであり、相当因果関係を阻害する事情を主張・立証してこれを覆滅できると解するべきである。
 推定を覆滅する事情として、①市場の非同一性、②競合品の存在、③ブランド、営業などの努力、④侵害品の他の特徴が考えられる。このうち、①は認められず、④もX製品・C製品が実用品であり、また、需要者が医療機関であることからすれば、考えがたい。②③については、問題文からは直ちに明らかでないが、そのような事情があれば、それを主張することが考えられる。
イ 悪意となった時期に関する反論が考えられる。
 101条2号においては、悪意が侵害の要件となっているから、損害と評価されるのも、悪意となって以降のものに限られる。
 Cは、添付文書に一体化同時穿刺を行わないように記載していたから、警告書の受領によって初めて悪意となったものであり、それ以前の利益については、102条2項の推定は及ばない。

小問2は、最初何が聞かれているのか分からず混乱しました。102条2項なので、とりあえず損害推定覆滅事情について書いてみましたが(二酸化炭素含有粘性組成物事件)、事情があまり挙がっていなかったので出題趣旨に含まれているのかどうかはわかりません。需要者が医療機関だから〜というくだりは令和元年経済法第2問を解いたときに、市場画定(競争が行われている範囲の認定)の関係でそんなことを書いたような気がします(は?って感じですよね。趣味なので書けなくて大丈夫です)。限界利益説はとりあえず書きましたが蛇足ですね。

後半の悪意と損害額の関係は、少なくとも主たる出題趣旨となっているものと思います。問題文に「これまでに販売した…全数量」とあり、わざわざこう書く意味は何だろうと考えたらわかりました。なお、悪意要件の機能については、医療用器具事件の百選解説に説明があります。

 

第2問 - 設問1

1 設問1
 Aは、複製権(21条)に基づき印刷の、譲渡権(26条の2)に基づき売却の差止め(112条1項)を請求し、侵害の予防に必要な措置(同条2項)としてデータの廃棄を請求することが考えられる。その前提として、著作物性および職務著作が問題となる。
(1) 著作物とは、①思想又は感情を②創作的に③表現したもので、④美術等の範囲に属するものをいう。①は何らかの精神活動の産物であればよい。②は何らかの個性が発揮されていればよい。③はアイデアを、④は緩やかな要件による独占による弊害に着目して産業財産権法に委ねるべきものを除外する趣旨である。
 丙が撮影した写真は、丙が写真の構図、最高、露光、シャッタースピード等を調節して撮影したものだから、①〜③を満たす。④について、写真は作業に参考とするために撮影されたが、鑑賞の対象となりうるから、これを満たす。このことは、丙が売却を申し出を申し出ており、そうしたのは鑑賞の用に供する需要があると考えたためと考えられることからも推認できる。
 したがって、著作物性が認められる。
(2) 職務著作は、①法人等の発意に基づき、②その業務に従事する者が、③職務上作成する著作物で、④プログラムの著作物でなく、⑤特段の定めがない場合に成立する(15条1項)。
 丙はAの従業員だから、②を満たす。丙が写真を撮影したのは、Aの企画したαの制作のためだったから、①、③を満たす。④、⑤に当たる事情はない。
 したがって、職務著作が成立し、写真の著作者はAとなる。
(3) 複製とは、有形的再製をいう(2条1項14号)。印刷は紙という有形物に写真を再製するものだから、これに当たる。
(4) 譲渡とは、著作物を化体する有体物たる原作品または複製物の所有権を移転することをいう。上記印刷物の売却はこれに当たる。
 公衆とは、不特定または特定多数の者をいう(2条5項参照)。不特定多数者が閲覧できるホームページを通じて行われる売却の相手方はこれに当たる。
(5) 甲はいまだ上記侵害行為を行っていないが、ホームページ上でそれを行う告知をしているから、「著作権〔を〕侵害するおそれがある者」に当たり、「侵害の…予防」として差止めを請求できる。
(6) データの保持は侵害を構成するものではないが、差止めの実効性確保に必要であり、丙はデータをAの持ち出し禁止・廃棄命令に違反して持ち出したものであり、被写体との関係でも、甲はAの従業員としてその企画するαの制作のために肖像の利用を許諾したにすぎないと考えられるから、丙は何らデータを適法に利用しうる地位にないから、「専ら侵害の行為に供され〔る〕機械…の廃棄」に準ずる「侵害の…予防に必要な措置」として廃棄を請求できる。
 以上から、Aの請求は認められる。

著作物性・職務著作・差止請求および予防措置請求の一般的な問題です。

ミスりました。問題文には「新潟鐵工事件」というメモがあるのに、「法人の名義の下に公表するもの」要件について書いた覚えがありません。条文はちゃんと見ましょう。書くとしたら次のように書いたと思います。

 「法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの」は、創作後の事情によって左右されるのは不合理だから、公表するとすれば法人等の名義の下でするものを含む。
 写真は公表されていないが、Aは、写真の持ち出しを禁じ、αの完成後の廃棄を命じるなど写真を厳重に管理していたから、仮に公表するとすれば自己名義によったと考えられ、これを満たす。

差止請求・措置請求については、特許権に関するカリクレイン事件を参考にするなどして、明示的に規範を定立したほうがよかったかもしれません(要素は書いてありますが)。

 

第2問 - 設問2

2 設問2
(1) 小問1
ア 頒布権侵害(26条)について。「映画の著作物」は劇場用映画に限定らず、映像を利用した著作物をいう。コンピュータ用ゲームソフトであるαはこれに当たる。その複製物の中古販売はは、頒布(2条1項19号)に当たる。
イ もっとも、消尽が成立しないか。
 著作権者が国内で著作物の複製物を譲渡した場合、①流通の安全を図る必要があるし、②著作権者は対価回収の機会があり、二重の利得の機会を与える必要はないから、もはやその複製物には権利を行使できないと解するべきである。頒布権については配給制度の対象となっている劇場用映画については、多額の投資がされること、個別の権利行使が困難であることから、消尽が成立しないが、そうではない、公衆に対する提示を目的としない家庭用メディアの譲渡については、消尽が成立すると解するべきである。譲渡権に関する26条の2第2項は、確認規定にすぎず、反対解釈すべきでない。
 Bが販売しているのはAが販売したαの中古品だが、αは公衆に対する提示を目的としない家庭用メディアだから、消尽が成立する。
 以上から、Aの請求は認められない。

小問1は消尽の一般的な問題です(中古ゲームソフト事件)。設問1(特許法)と設問2(著作権法)は、ファーストドラフトの分担はあるのかもしれませんが、最終的には同じメンバーで話し合って作っているはずで、それなのに両方で消尽が出たのは少し驚きました。

(2) 小問2
 Bの割賦販売サービスは、6日間に返品することを解除条件とする売買契約であると解される。もっとも、このような特殊な売買が消尽の対象となるかは、上記消尽の根拠①②に照らして実質的に検討すべきである。
 まず、①については、売買である以上、妥当する。もっとも、②については、コンピュータ用ゲームソフトは6日間あればある程度遊び尽くすことができること、頭金は新品の価格よりも特に安価と考えられ、獲得できる需要者はより多く、その増加分だけ新たな複製が行われたのと同等の経済的打撃を競合品の販売者であるAにもたらすこと、ゲームはリセットが可能であり、容易には消耗しないことからすれば、対価回収の機会があったとはいえない。したがって、消尽は成立しないと解するべきである。
 以上から、Aの請求は認められる。

上記に対して、小問2は応用問題です。今年の知財で一番考えさせる問題だった気がします。消尽の根拠から組み立てましたが、譲渡と貸与の性質決定の問題として組み立てることもできたと思います(頒布権には譲渡と貸与が含まれ、貸与は消尽しません。もっとも、なぜそう解するべきなのかという文脈で、やはり根拠に言及することになる気はします)。

なお、田村先生のプラクティスシリーズは、特許法のほうだけ読んでいたのですが、消尽の例外(「新たな製造」)は根拠論の限界に当たるかの判断なのだということを、多くの具体例を挙げて説明してくれており、ここでもかなり役に立ちました。

 

第2問 - 設問3

3 設問3
 丁はAに著作権を譲渡しているが(特掲につき61条2項)、著作権著作者人格権は別であるから(50条参照)、直ちに同一性保持権の行使ができなくなるものではない。また、不行使の合意がなされたと評価できるとしても、それは丁A間においてであり、乙を当事者とするものではない。
 しかし、①翻案・二次的著作物の著作権が特掲により譲渡されており、翻案は通常改変を伴うから、翻案のみを許諾することは合理的でなく、そうしたとの特段の事情もないから、黙示的に同一性保持権の不行使特約がされていたと評価できること、②丁がβ'を編曲したのは、αの続編ソフトのためであり、ゲーム内での使用態様も、βと同様にBGMとしてであり、十分に予測可能であること、③丁による改変は、乙の意に反するにせよ、名誉声望を害するようなものではないこと(113条11項参照)、④丁は不行使特約の当事者たるAから依頼を受けて、Aが企画するαの続編ソフトのために編曲をしており、A自身が編曲を行うのと同視できることからすれば、乙の請求は権利濫用である。
 したがって、乙の請求は認められない。

著作者人格権の制限の一般的な問題です。

翻案権を譲渡した著作者が著作者人格権を行使してきた場合、黙示の不行使合意が認められるという方向に持っていくのが一般的だと思いますが、今回は翻案権(を含む著作権)の譲受人から依頼を受けた者が翻案=改変行為を行っているので、もうワンステップ踏む必要があります。答案では権利濫用として構成しましたが、やむを得ない改変として構成することもできたと思います。

なお、権利濫用というと首里城事件(ひいてはApple v. Samsung事件)が想起されますが、β'の使用がαの製作にとって不可欠というわけではないので、事案が異なります。

最決令和3年4月14日裁判所website(共同事務所所属弁護士が職務を行い得ない事件についての訴訟行為の排除―消極)

対象判例最決令和3年4月14日裁判所website

 

報道

利益相反を抱える弁護士と同じ事務所だった相手方弁護士を、裁判から強制的に外すことは可能か――。こうした点が争われた許可抗告審で、最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は16日までに、「具体的に禁止する法律は見当たらない」として、排除の申し立て自体ができないと判断した。

対象となったのは、エイズウイルス(HIV)の治療薬をめぐり特許権侵害があったとして、塩野義製薬などが米医薬大手、ギリアド・サイエンシズの日本法人に損害賠償を求めた裁判。塩野義で提訴準備に関わった社内弁護士が、別の法律事務所に移籍し、その事務所で同僚だった弁護士がギリアドの代理人を務めることの是非が問題になった。

塩野義側は「事務所内に利益相反を抱える弁護士がいた場合、対象事件を担当できない」とする日本弁護士連合会の規定に違反すると主張。社内弁護士の移籍先事務所がギリアドの代理人を務めるのは不当だとして地裁に申し立てた。

一審の東京地裁決定は「塩野義の社内弁護士だった人物について、移籍先事務所は対象の裁判での情報共有を防ぐ措置を講じていた。漏洩などの形跡もうかがえない」として、規定が適用されない例外事由にあたると判断。一方、二審の知財高裁決定は「情報交換の遮断には一定の限界がある」などの理由で塩野義側の主張を認めた。

第2小法廷は、利益相反を抱える弁護士本人については弁護士法に基づき裁判から排除するよう申し立てられるが、同僚弁護士については「(裁判への関与を)具体的に禁止する規定はない」と指摘した。知財高裁決定を破棄し、排除は認められないと判断した。

決定は14日付。裁判官4人全員一致の意見。裁判長を務めた草野裁判官(弁護士出身)は問題となったケースについて「いかなる条件で関与が禁止、容認されるのかを具体的な規則で規律することは日弁連に託された喫緊の課題の一つだ」とする補足意見をつけ、分かりやすいルールづくりを促した。

利益相反の同僚弁護士、裁判から「排除」できず 最高裁: 日本経済新聞

  

関係法令等

弁護士法25条

(職務を行い得ない事件)
第二十五条 弁護士は、次に掲げる事件については、その職務を行つてはならない。ただし、第三号及び第九号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
一 相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件
二 相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの
三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
四 公務員として職務上取り扱つた事件
五 仲裁手続により仲裁人として取り扱つた事件
六 弁護士法人(第三十条の二第一項に規定する弁護士法人をいう。以下この条において同じ。)の社員若しくは使用人である弁護士又は外国法事務弁護士法人(外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法(昭和六十一年法律第六十六号)第二条第三号の二に規定する外国法事務弁護士法人をいう。以下この条において同じ。)の使用人である弁護士としてその業務に従事していた期間内に、当該弁護士法人又は当該外国法事務弁護士法人が相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件であつて、自らこれに関与したもの
七 弁護士法人の社員若しくは使用人である弁護士又は外国法事務弁護士法人の使用人である弁護士としてその業務に従事していた期間内に、当該弁護士法人又は当該外国法事務弁護士法人が相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるものであつて、自らこれに関与したもの
八 弁護士法人の社員若しくは使用人又は外国法事務弁護士法人の使用人である場合に、当該弁護士法人又は当該外国法事務弁護士法人が相手方から受任している事件
九 弁護士法人の社員若しくは使用人又は外国法事務弁護士法人の使用人である場合に、当該弁護士法人又は当該外国法事務弁護士法人が受任している事件(当該弁護士が自ら関与しているものに限る。)の相手方からの依頼による他の事件

 

弁護士職務基本規程28, 29, 57条

(職務を行い得ない事件)
第二十七条 弁護士は、次の各号のいずれかに該当する事件については、その職務を行ってはならない。ただし、第三号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
一 相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件
二 相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの
三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
四 公務員として職務上取り扱った事件
五 仲裁、調停、和解斡旋その他の裁判外紛争解決手続機関の手続実施者として取り扱った事件
(同前)
第二十八条 弁護士は、前条に規定するもののほか、次の各号のいずれかに該当する事件については、その職務を行ってはならない。ただし、第一号及び第四号に掲げる事件についてその依頼者が同意した場合、第二号に掲げる事件についてその依頼者及び相手方が同意した場合並びに第三号に掲げる事件についてその依頼者及び他の依頼者のいずれもが同意した場合は、この限りでない。
一 相手方が配偶者、直系血族、兄弟姉妹又は同居の親族である事件
二 受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供を約している者を相手方とする事件
三 依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件
四 依頼者の利益と自己の経済的利益が相反する事件
(職務を行い得ない事件)
第五十七条 所属弁護士は、他の所属弁護士(所属弁護士であった場合を含む。)が、第二十七条又は第二十八条の規定により職務を行い得ない事件については、職務を行ってはならない。ただし、職務の公正を保ち得る事由があるときは、この限りでない。
〔注:57条は7章「共同事務所における規律」中の規定。弁護士法人における規律については63条以下〕

 

先例

  • 最大判昭和38年10月30日民集17巻9号1266頁:弁護士法第25条第1号違反の訴訟行為であつても、相手方がこれを知り又は知り得たにもかかわらず異議を述べることなく訴訟手続を進行させ、第二審の口頭弁論が終結したときは、相手方は、後日に至りその無効を主張することは許されないものと解するのが相当である。
  • 最決平成29年10月5日民集71巻8号1441頁
    • 弁護士法25条1号に違反する訴訟行為及び同号に違反して訴訟代理人となった弁護士から委任を受けた訴訟復代理人の訴訟行為について,相手方である当事者は,裁判所に対し,同号に違反することを理由として,上記各訴訟行為を排除する旨の裁判を求める申立権を有する。
    • 弁護士法25条1号に違反することを理由として訴訟行為を排除する旨の決定に対し,自らの訴訟代理人又は訴訟復代理人の訴訟行為を排除するものとされた当事者は,民訴法25条5項〔注:裁判官の除斥・忌避を理由がないとする決定に対する即時抗告〕の類推適用により,即時抗告をすることができる。
    • 弁護士法25条1号に違反することを理由として訴訟行為を排除する旨の決定に対し,当該決定において訴訟行為を排除するものとされた訴訟代理人又は訴訟復代理人は,自らを抗告人とする即時抗告をすることはできない。

 

判旨

多数意見

 基本規程は,日本弁護士連合会が,弁護士の職務に関する倫理と行為規範を明らかにするため,会規として制定したものであるが,基本規程57条に違反する行為そのものを具体的に禁止する法律の規定は見当たらない。民訴法上,弁護士は,委任を受けた事件について,訴訟代理人として訴訟行為をすることが認められている(同法54条1項,55条1項,2項)。したがって,弁護士法25条1号のように,法律により職務を行い得ない事件が規定され,弁護士が訴訟代理人として行う訴訟行為がその規定に違反する場合には,相手方である当事者は,これに異議を述べ,裁判所に対しその行為の排除を求めることができるとはいえ,弁護士が訴訟代理人として行う訴訟行為が日本弁護士連合会の会規である基本規程57条に違反するものにとどまる場合には,その違反は,懲戒の原因となり得ることは別として,当該訴訟行為の効力に影響を及ぼすものではないと解するのが相当である。
 よって,基本規程57条に違反する訴訟行為については,相手方である当事者は,同条違反を理由として,これに異議を述べ,裁判所に対しその行為の排除を求めることはできないというべきである。

 

草野補足意見

 本件に関する私の見解は法廷意見記載のとおりであるが,これは阿部弁護士らがA弁護士の採用を見合わせることなく本件訴訟を受任したことが弁護士の行動として適切であったという判断を含意するものではない。
 ある事件に関して基本規程27条又は28条に該当する弁護士がいる場合において,当該弁護士が所属する共同事務所の他の弁護士はいかなる条件の下で当該事件に関与することを禁止または容認されるのかを,抽象的な規範(プリンシプル)によってではなく,十分に具体的な規則(ルール)によって規律することは日本弁護士連合会に託された喫緊の課題の一つである。日本弁護士連合会がこの負託に応え,以って弁護士の職務活動の自由と依頼者の弁護士選択の自由に対して過剰な制約を加えることなく弁護士の職務の公正さが確保される体制が構築され,裁判制度に対する国民の信頼が一層確かなものとなることを希求する次第である。

 

ノート

  • 先例の整理
    • 弁護士法・弁護士職務基本規程の「職務を行い得ない事件」の規律のエンフォースメントは、第一次的には弁護士会による懲戒に委ねられるが、それが訴訟行為である場合、訴訟行為としての効力を制限すべきではないかという問題がある。
    • 絶対的無効説、有効説、追認説なども主張されたが、昭和38年大法廷判決は異議説(相手方が異議を述べ、その訴訟行為の排除を求めることができる)を採用した。学説もこれを支持している。
      • なお、当該事案では事実審口頭弁論終結後に無効を主張しており、そのような主張は許されないとした。いわゆる責問権喪失による瑕疵の治癒と整理されている)。
    • その後の平成29年決定は、これを前提に、異議(訴訟行為排除申立て)の手続について、①相手方当事者(≒旧依頼者)は訴訟行為を排除する裁判を求める権利(申立権)を有すること、②排除の決定がされた場合、その訴訟代理人の行為を排除するとされた当事者(≒現依頼者)は、その決定に即時抗告をすることができる(根拠は裁判官の除斥・忌避を理由がないとする決定に対する即時抗告に関する民事訴訟法25条5項)、③その訴訟行為を排除するとされた訴訟代理人は、自ら即時抗告をすることはできないことを判示した。
  • 本判決と先例の事案の違い
    • 先例はいずれも弁護士法25条1号違反(「相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件」)の事案であった。
    • これに対して、本件は、弁護士職務基本規程57条違反の事案であった。
      • 弁護士職務基本規程は、法律の委任に基づく法規命令としての性質を有しない、「弁護士の職務に関する倫理と行為規範を明らかにするため」の「会規」である(本判決)。
    • 弁護士職務基本規程27条1号は、弁護士法25条1号と同一文言であるから、これに違反する行為は、弁護士法違反行為とも構成できる。しかし、弁護士職務基本規程57条に相当する規定は弁護士法にはないため、同条違反の行為は弁護士法違反と構成することはできない。
    • 本判決は、弁護士法(による職務執行制限)違反は訴訟行為の瑕疵(異議により排除可能)をもたらすが、弁護士職務基本規程違反は瑕疵行為の違法をもたらさないと考えているものと思われる。
      • これに対して、一審・抗告審は弁護士職務基本規程違反が訴訟行為の瑕疵をもたらすと考えたものと思われる。両決定の判断が分かれたのは、それを前提としたときの、弁護士職務基本規程57条ただし書の「職務の公正を保ちうる事由」の適用においてである。
  • 草野補足意見について
    • 草野補足意見は、当該弁護士の行動が「弁護士の行動として適切であったという判断を含意するものではない」とした上で、日弁連に「十分に具体的な規則(ルール)によって規律すること」を求めている。
    • 報道に接した段階では、①弁護士法違反の改正を提案するように要求しているのか、それとも、②職務基本規程違反が排除事由になることを前提に弁護士職務基本規程の改正を要求しているのかと考えたが、いずれでもなく、③単に弁護士職務基本規程の規定の明確化を要求しているようである。訴訟行為の瑕疵をもたらすのが弁護士法違反のみであり、したがって、単なる弁護士職務基本規程違反のエンフォースメントは弁護士会の懲戒によるほかないことは、草野裁判官を含む多数意見が前提とするところなので(前述)、排除とは関係なしにあるべき規律を語っているのだと思われる。
    • 一審と抗告審の判断が分かれているので、弁護士職務基本規程57条が明確性を欠いていることは明らかであるとはいえ、そのように決定の本筋とはかなり遠いこと(本判決からすれば無意味な判断であった)を草野裁判官が語ったのは…?

 

文献

  • 昭和38年大法廷判決の解説として、手賀寛・民事訴訟判例百選第5版46頁(2015)、平成29年決定の解説として同・平成29年度重要判例解説144頁(2018)。
  • 仲裁人の開示義務(仲裁法18条4項)に関するものであるが、共同事務所の利益相反に関わるものとして、最決平成29年12月12日民集71巻10号2106頁。解説として山田文・平成30年度重要判例解説140頁(2019)。
  • 弁護士職務基本規程57条について、日本弁護士連合会弁護士倫理委員会編著『解説 弁護士職務基本規程(第3版)』(2017)163頁〜175頁。

租税法の基本書、演習書等と使用法

(まだ)レビューではないです。試験が終わったら簿記の続きと一緒に勉強します。

 

目次

 

よくわかる税法入門

よくわかる税法入門 第14版 (有斐閣選書)

よくわかる税法入門 第14版 (有斐閣選書)

  • 作者:三木 義一
  • 発売日: 2020/03/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

392頁。対話篇と解説が交互に出てくる感じだったけど対話篇が合わなかった。

(2021年3月最終更新)

 

日評ベーシック租税法

租税法 (日評ベーシック・シリーズ)

租税法 (日評ベーシック・シリーズ)

 

だいぶ前から執筆者の一人をTwitterでフォローしているので勝手に親近感を抱いており、最初に読みたいと思っている本。

(2021年3月最終更新) 

 

基礎から学べる租税法

 

基礎から学べるシリーズ。会社法と金商法は途中で寝ちゃったけど今度は読めるかな…?

(2021年3月最終更新) 

 

スタンダード〇〇税法

スタンダード所得税法 第2版補正2版

スタンダード所得税法 第2版補正2版

  • 作者:佐藤 英明
  • 発売日: 2020/03/16
  • メディア: 単行本
 
スタンダード法人税法 第2版

スタンダード法人税法 第2版

  • 作者:渡辺 徹也
  • 発売日: 2019/03/18
  • メディア: 単行本
 

司法試験のデファクトスタンダードっぽい本。

(2021年3月最終更新)  

 

中里ほか・租税法概説

租税法概説 第3版

租税法概説 第3版

  • 発売日: 2018/12/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

???

(2021年3月最終更新)  

 

税法基本講義

税法基本講義 第6版

税法基本講義 第6版

 

???(なぜか購入済み)

(2021年3月最終更新) 

 

増井・租税法入門 

租税法入門 第2版 (法学教室ライブラリィ)

租税法入門 第2版 (法学教室ライブラリィ)

  • 作者:増井 良啓
  • 発売日: 2018/07/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

???(なぜか購入済み)

(2021年3月最終更新) 

 

租税法演習ノート

 ???

(2021年3月最終更新) 

 

金子・租税法

租税法 第23版 (法律学講座双書)

租税法 第23版 (法律学講座双書)

  • 作者:金子 宏
  • 発売日: 2019/02/21
  • メディア: 単行本
 

用法上の凶器(cf. 株式会社法、菅野・労働法、伊藤・破産法・民事再生法)。

(2021年3月最終更新) 

早稲田大学法科大学院 定期試験 2020年秋学期 倒産法IIB

期末試験と併せてA+。素点は24/30。レポート形式で、1日程度かけて検討した。

1 本件解除条項による解除の可否(設問1)

 契約によって解除原因を定めることは、原則として有効である(民法540条1項はそのことを前提としている)。もっとも、倒産手続開始申立てがされたことを原因とする解除特約(以下「倒産解除特約」という)は、倒産手続との関係でその効力が制限されうる。

(1) 判例(所有権留保およびファイナンス・リース)との関係

 判例は、動産(機械)の所有権留保売買の倒産解除特約を会社更生手続との関係で最判昭和57年3月30日民集36巻3号484頁)、また、フルペイアウトのファイナンス・リースの倒産解除特約を民事再生手続との関係で最判平成20年12月16日民集62巻10号2561頁)、それぞれ手続の趣旨・目的を害することから無効とする。

 もっとも、両判決は、目的物が担保としての意義を有することを前提としている。すなわち、所有権留保売買契約における売買目的物およびファイナンス・リース契約におけるリース物件は、担保としての意義を有しており、本来担保権実行中止命令(民事再生法31条、会社更生法24条1項2号)や担保権消滅請求(民事再生法148条以下、会社更生法104条以下)などによるコントロールの対象となるべきところ、倒産解除特約は、そのコントロールの可能性を奪ってしまう。

 これに対して、本件契約は請負契約であり、Yは本件解除条項によって工事未完成部分についての履行請求権を失い、報酬債務を免れ、違約金請求権を取得するにすぎず、Xに引き渡した物の返還を請求できるなど、何らかの方法で債権を回収できることとなるものではないから、上記趣旨は妥当しない。

 したがって、担保権実行中止命令、担保権消滅請求等との関係で本件解除条項を無効とすべきとはいえない。

(2) 双方未履行双務契約の解除権の保障との関係

 もっとも、倒産解除特約が担保としての意義を有しない場合であっても、再生債務者に与えられる双方未履行双務契約の解除権(解除または履行・履行請求の選択権。民事再生法49条)を保障するため、無効とすべきではないかとも考えられる(伊藤眞『破産法・民事再生法 第3版』357頁以下(有斐閣、2014)、三木浩一「判批」別ジュリ216号(倒産判例百選第5版)153頁(2013))

 しかし、リース契約、賃貸借契約、フランチャイズ契約におけるユーザー、賃借人、フランチャイジーと異なり、工事請負契約における請負人は、①倒産解除特約を無効としたとしても、報酬請求をするために必要な履行の能力を失っていると考えられること(請負人は先履行義務を負う。民法633条)、②請負契約を請負契約たらしめているのは、注文者が有する履行請求権であり、請負人は金銭債権としての報酬請求権を有するにすぎないことからすれば、選択を保障する必要は小さく、注文者の契約の拘束力からの解放(平成29年改正民法542条は、債務者に帰責事由がないことを抗弁として認めない)が制約されてもやむをえないとまではいえない。

 したがって、担保権実行中止命令、担保権消滅請求等との関係で本件解除条項を無効とすべきとはいえない。

 以上から、倒産手続開始申立てがされたことのみを理由に、Yが、本件解除条項によって契約を解除することは、可能である。

2 α/β債権による相殺の可否(設問2)

(1) 原則としての相殺可能

 相殺権について、再生債権者が再生手続開始当時再生債務者に対して債務を負担する場合において、債権および債務の双方が債権届出期間満了前に相殺に適するようになったときは、再生債務者は、当該債権届出期間内に限り、再生計画の定めるところによらないで、相殺ができる(民事再生法92条1項)。再生債権の意義は同法84条、相殺適状は民法505条に規定されている。

 α債権は、再生債務者Xに対し、再生手続開始前の原因たるP棟に係る請負契約の本件違約金条項に基づいて生じた財産上の請求権であり、再生債権である。また、β債権は、再生債務者Xに対する財産上の請求権であり、R棟に係る請負契約上の履行請求権が、その不履行によって損害賠償請求権に転化したものであるから(民法415条1項)、再生手続開始前の原因に基づいて生じたものといえ、再生債権である。Q棟に係る報酬債務(5000万円)は、Q棟に係る請負契約に基づき、再生手続開始当時既に負担されていた。そして、α債権、β債権、報酬債権はいずれも金銭債権という同種の債権であり、再生手続開始時すでに弁済期にあった。

 したがって、相殺は認められるのが原則である。

(2) 例外としての相殺禁止

もっとも、再生債務者に対して債務を負担する者は、支払停止後に再生債権を取得した場合で、その取得の当時、支払停止を知っていたときは、支払不能でなかった場合を除き、相殺が禁止される(民事再生法93条の2第1項3号)。

 本件で、支払停止は平成30年3月31日になされている。α債権は、同年4月15日、支払停止のためP棟の完成は不可能であるとの報告を受けたYが、本件解除条項に基づきP棟に係る請負契約を解除したために、本件違約金条項に基づいて生じたものであるから、支払停止後に悪意で取得した再生債権であるといえる。Xが支払不能になかったとする事情は認められない。

 一方、β債権は、P棟の工事の履行請求権の不履行を原因として、民法415条1項の規定に基づき生じたものであるから(工事には多額の資金を要することを考慮すると、支払停止はそれ自体が社会通念上履行不能と評価できるし、履行拒絶の意思の明確な表示(同条2項2号)として社会通念上の履行不能と評価することもできる)、遅くとも支払停止と同時に生じたものであり、支払停止後に生じたものとはいえない。なお、Yは「R棟の契約を解除せざるを得なくなったことから生じた」損害賠償債権としているが、解除と損害賠償は別個の制度であり(民法545条4項参照)、解除によって損害が新たに生じるものではないし、Yの発言も、Yが法律の専門家ではないことからすれば、厳密なものではなく、日常的な意味においてR棟に係る工事が完遂されなかったことを指すものと解釈できる。

 したがって、民事再生法93条の2第1項3号によれば、β債権に基づく相殺は認められるが、α債権に基づく相殺は認められない。

(3) 例外の例外としての相殺禁止の適用除外

ア 「前に生じた原因」

 もっとも、再生債権の取得が支払停止を知った時より前に生じた原因に基づく場合には、相殺禁止規定の適用が除外される(民事再生法93条の2第2項2号)。α債権が支払停止時(本件では平成30年3月31日)より「前に生じた原因」といえるかを検討する必要がある。

 本号の趣旨は、「前に生じた原因」に基づく場合には、相殺の担保的機能に対する相殺権者の期待は合理的なものであって、これを保護するとしても、債権者平等原則を害することがないことによるものである最判平成26年6月5日民集68巻5号462頁。再生債務者Xが、銀行YからMMF受益権を購入し、同行の口座で管理していたところ、Yが、Xの支払停止後に、債権者代位権に基づき信託会社に対して解約実行請求をし、解約金返還債務(解約金は信託会社からY経由でXに交付される)を別口の保証債務履行請求権で相殺した事案。最高裁は、①受益権は全ての再生債権者が等しく責任財産としての期待を有しており、解約金は実質的に同等の価値を有すること、②解約実行請求が支払停止後になされたこと、③受益権はYの口座で管理されていたが、別の口座に振り替えることもできたこと、④解約実行請求のためには他の債権者と同様に債権者代位権によるほかなかったことを挙げて、合理的が認められないとした。)。すなわち、再生債権者は原則として個別に権利を行使できないが(民事再生法85条1項)、担保権者は原則として別除権者として個別に権利を行使でき(同法53条1項、2項)、相殺の担保的機能に対する合理的期待が認められる場合には、相殺権の行使は、別除権の行使と同視することができる。そうすると、「前に生じた原因」が「前に生じた原因」といえるためには、単に時間的に「前に生じた原因」であるだけでなく、相殺の担保的機能に対する合理的期待が生じていたといえるのでなければならない。参考判例最判令和2年9月8日裁判所WebsiteおよびXの反論(参考判例の原審(福岡高判平成30年9月21日金法2117号62頁)の判断に依拠するものと考えられる)は、この合理的期待の有無に関わる。

イ 参考判例・その原審について

(ア) 事案の概要

 参考判例の事案は、次のようなものであった。福岡県が建設業者である破産者と、4件の工事請負契約(いずれについても違約金条項があった。締結された順に「第*契約」と呼ぶこととする)を締結した。破産者は、第3契約に係る工事を完成させたが、第3契約について報酬未払い、第1, 2, 4契約について工事未完了の間に破産した。破産管財人が福岡県に対して、第1, 2, 4契約の出来高報酬および第3契約の報酬の支払いを求めたところ、福岡県は、違約金債権および第4契約(前払金が出来高報酬を上回っていた)の前払金返還請求権等を自働債権とする相殺を主張した。

(イ) 参考判例原審

 参考判例原審は、各報酬債権を、それぞれそれと同一の契約に基づいて生じた違約金債権で相殺することについては、合理的期待が認められるとしたが、異なる契約に基づいて生じた違約金債権で相殺することは、対価的牽連関係がないことから、直ちには合理的期待は認められないとした上で、第1, 2, 4契約(いずれも工事未完了)について、報酬債権・違約金債権が相互に引当てとされた事情がないこと、第3契約(唯一引渡し済み)について、その報酬債権が他の契約に基づく違約金債権の引当てとされた事情はないこと、他の契約について解除権の行使による違約金債権の発生の蓋然性が高かったという事情はないこと、相殺ができたのは資金繰りに関して相談を受けたことによるものであること(判決ではこのことが摘示されているにすぎないが、偶然の結果にすぎないという趣旨であると考えられる。前掲最判平成26年6月5日(特に注4にいう③の事情)を参照)を述べて、やはり合理的期待が認められないとした。

(ウ) 参考判例

 これに対して、参考判例は、「本件各違約金債権は,いずれも,破産会社の支払の停止の前に上告人と破産会社との間で締結された本件各未完成契約に基づくものであ」り、「本件各未完成契約に共通して定められている本件条項は,破産会社の責めに帰すべき事由により工期内に工事が完成しないこと及び上告人が解除の意思表示をしたことのみをもって上告人が一定の額の違約金債権を取得するというものであって,上告人と破産会社は,破産会社が支払の停止に陥った際には本件条項に基づく違約金債権を自働債権とし,破産会社が有する報酬債権等を受働債権として一括して清算することを予定していた」として、同一の請負契約に基づいて発生したものであるか否かにかかわらず、各請負契約締結時に違約金債権による相殺について合理的期待が認められるとした。

(エ) 分析・評価

 参考判例原審は、対価的牽連性を重視し、それがある場合には合理的期待を認めるが、それがない場合には、報酬債権を違約金債権の「引当て」とした事情がなければ、合理的期待を認めていない。そして、契約締結時の交渉経過まで検討しているわけではないことからすれば、「引当て」関係は、明文の契約条項から読み取れるものでなければならないとという立場であると考えられる。しかし、そのような明文の契約条項がない場合でも、当事者の合理的意思解釈から、「引当て」関係が認められ、合理的期待が認められる場合はあるように思われる(福井俊一「判批(参考判例原審)」新・判例解説Watch, Vol. 26, 234頁(2020))

 参考判例は、必ずしもはっきり述べているとはいえないが、そのような合理的意思解釈として、「本件各未完成契約」に共通して「本件条項」が定められているという事情から、「破産会社が支払の停止に陥った際には本件条項に基づく違約金債権を自働債権とし,破産会社が有する報酬債権等を受働債権として一括して清算する」との合意を読み取ったものと考えられる。

ウ 本件について

 本件では、Xが述べるとおり、α債権(P棟に係る請負契約に基づく違約金債権)と報酬債権(Q棟に係る請負契約に基づくもの)は、別個の契約に基づくものであり、対価的牽連性がない。もっとも、その場合でも、合理的期待が認められることはありうる。

 しかし、本件では、「本件解除条項」はP, Q, R棟に係る各請負契約の全てで合意されていたものの、「本件違約金条項」はP棟に係る請負契約でのみ合意されている。そうすると、参考判例における事案のように、「破産会社が支払の停止に陥った際には本件条項に基づく違約金債権を自働債権とし,破産会社が有する報酬債権等を受働債権として一括して清算する」との合意を読み取ることはできない。

 また、X, Yが他にQ棟に係る報酬債権をα債権の担保としたという事情は認められない。

 したがって、α債権をもってQ棟に係る報酬債務を相殺することについて、合理的期待は認められない。

 したがって、α債権は「前に生じた原因」とはいえず、相殺は認められない。

 以上から、α債権による相殺は認められないが、β債権による相殺は認められる。

3 S土地についての虚偽表示を理由とする所有権移転登記請求(設問3)

Aは、Xに対して、S土地所有権(民事再生法上、取戻権として保護される。同法52条1項)に基づく妨害排除請求権の行使として、移転登記請求をするものと考えられる。本件売買契約(民法555条)が抗弁、虚偽表示(同法94条1項)が再抗弁、Xが第三者(同条2項)に当たることが再々抗弁となる。請求原因から再抗弁までについては争いはないと考えられる。

(1) 第三者

Xは、「善意の第三者」に当たるか。「第三者」とは、虚偽表示の当事者およびその一般承継人以外の者で、虚偽表示の目的について利害関係を有するに至った者をいう。Xは、通謀虚偽表示によってなされた本件売買契約の当事者であったことから、少なくとも再生手続開始前はこれに当たらない。しかし、再生手続が開始されていることから、別異に解する余地がある。

破産手続が開始された場合、破産財団所属財産の管理処分権は、破産管財人に専属し(破産法78条1項)、破産管財人は、その権限の行使について、破産債権者その他の利害関係人に対して善管注意義務を負う(破産法85条)など、破産債権者の利益を代表する地位にある。そのため、破産債権者と同様に、民法94条2項にいう「第三者」に当たると解される。民事再生手続において、管理命令が発令され、管財人が選任された場合における管財人も同様に解される(民事再生法66条(管財人の専属的財産管理処分権)、78条・60条(善管注意義務)参照)。

もっとも、本件は、管理命令は発令されていない民事再生手続であるから、再生債務者がなお再生債務者財産の財産管理処分権を有している(民事再生法38条1項)。しかし、このような場合でも、再生債務者は、債権者に対し、公平かつ誠実にその管理処分権を行使すべき義務を負い、再生債権者の利益を代表する地位を併有するといえるから、管理命令が発令された場合の管財人と同様に、「第三者」に当たると解するべきである。

したがって、Xは「第三者」である。

(2) 善意

この場合、善意かどうかは、総再生債権者のうちの一人でも善意の者がいないかによって決するべきである。再生債務者としたのでは、常に悪意となって、上記の第三者性に関する解釈の実益が失われるし、再生債務者の第三者性を基礎づける公平誠実義務は、全ての再生債権者に対するものである以上、再生債権者の中に一人でも保護に値する者(=善意の者)がいる場合には、虚偽表示の無効主張は制限されるべきだからである。

債権者は通常虚偽表示がなされたとしてもそのことを知らないと考えられるところ、Xの再生債権者の全員が虚偽表示を知っていたという事情はないから、少なくとも一人は善意であったと考えられる。

したがって、Xは「善意の」第三者である。

したがって、再々抗弁が認められるから、Aの請求は棄却されるべきである。

 

早稲田大学法科大学院 定期試験 2020年秋学期 知的財産法応用演習

(素点:不明, 評価:A+)

答案はWordで提出。

1 設問1

(1) 考えられる主張

 AはQの削除請求(112条1項)の根拠として、自己がQの著作者であることを前提に、公衆送信権(23条1項)および公表権(18条1項)の侵害を主張することが考えられる。

 これに対して、Bは、著作権に関して、Aは映画製作者たる自己に製作への参加を約束したとして、自己に著作権が帰属すること(29条1項)を主張し、それを前提に、公表権に関して、同意推定(18条2項3号)の適用があり、それを覆滅する事実はないことを主張することが考えられる。

 Qの著作物性(2条1項1号)およびAの著作者性(16条)に争いはないと考えられる。

(2) 公衆送信権侵害

 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む)を行う権利を専有する(23条1項)。公衆送信は2条1項7号の2、自動公衆送信は同項9号の4、送信可能化は同項9号の5で定義されている。

 Qのアップロードは、公衆によって直接受信されることを目的とした無線通信または有線電気通信の送信を可能にする行為で、同項9号の5イに当たると考えられるから、公衆送信権の侵害となる。

(3) 公表権侵害

 著作者は、その著作物でまだ公表されていないものを公衆に提供し、または提示する権利を有する(18条1項前段)。公衆とは、特定多数者を含むとされ(2条5項)、その前提として不特定者を含むと解される。公表は、発行され、または上映権、公衆送信権等を有する者もしくはその許諾を得た者にとって上映、公衆送信等されることをいう(4条1項)。発行とは、その性質に応じ公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物が、複製権者またはその許諾を得た者によつて作成され、頒布されることをいう(3条1項)。

 Qは、Pの製作のために撮影された映像であるが、Pには使用されなかったから、特定多数者または不特定多数者に上映、公衆送信等されたとはいえない。また、Qの複製物が作成・頒布されたこともない(このことは、著作権が29条の適用によりBに帰属するかどうかに関わらない)。したがって、Qは「まだ公表されていない」著作物である。

 Qのアップロードは、不特定者であり、したがって「公衆」であるBのブログ閲覧者に、有体物を媒体とせずにQを享受することを可能にするものだから、「提示」に当たる。

 したがって、Qのアップロードは、公表権の侵害となる。

(4) 映画製作者への参加約束

 映画の著作物の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する(29条1項)。

ア 映画の著作物

 「映画の著作物」とは、映像により創作的に表現したものを物に固定したものをいうと解され、また、映画の効果に類似する視覚的または視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含む(2条3項)。

 Qが通常の意味での「映画の著作物」に当たることに争いはないと考えられる。

 もっとも、29条との関係で、未使用フィルムは同条にいう「映画の著作物」に当たるかという問題がある。ある裁判例は、完成しなければ同条にいう「映画の著作物」に当たらず、したがって29条の適用はなく、映像著作物として独自に保護される余地があるにすぎないとする。しかし、29条は「映画の著作物」という、10条1項7号、16条、26条等と同様の概念を明示的に用いており、「映画の著作物」の意義を別異に解する理由はない。そして、例えばiPhoneで風景を撮影した映像にも「映画の著作物」性が認められることからすれば、未使用フィルムであっても、「映画の著作物」性が認められないと解する理由はない。したがって、未使用フィルムについても29条の適用はあると解するべきである。

イ 映画製作者

 映画製作者とは、映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいう(2条1項10号)。29条1項の趣旨は、とりわけ劇場用映画における巨額の投資を回収する必要と、映画製作には類型的に多数の著作者の関与が予想されるところ、その共有(共同著作)とした場合に円滑な利用が阻害されるおそれを回避することにある。ここから、「責任」とは、製作に関する権利義務の帰属主体であって、経済的な収入支出の主体となる者をいうと解される。また、「発意」とは、製作の意思をいうと解される。

 Bは新作映画の製作を企画しているから、製作の意思(発意)があると考えられる。また、2000万円に及ぶ製作資金全額を負担しているから、製作に関する権利義務の帰属主体であって、経済的な収入支出の主体となっていたといえる。

 したがって、Bは映画製作者である。また、Aがこれに参加約束したことに争いはないと考えられる。

 以上から、29条1項により、Qの著作権は、映画製作者であるBに帰属し、Aには帰属しない。

 したがって、公衆送信権侵害は成立しない。

(5) 公表の同意推定

 29条により映画の著作物の著作権が映画製作者に帰属した場合には、当該著作物をその著作権の行使により公衆に提供し、または提示することについて、同意が推定される(18条2項3号)。

 29条により映画の著作物の著作権が映画製作者Bに帰属することは先に述べたとおりであるから、推定の覆滅が問題となる。しかし、Qを含む未使用フィルムについて、Aが公表に同意していなかったと見られる事情はうかがわれず、推定は覆滅されない。

 以上から、公表権侵害は成立しない。

 以上から、Aの請求はいずれも認められない。

2 設問2

(1) 考えられる主張

 Aは行為①②の差止請求(112条1項)の根拠として、①について複製権侵害、②について公衆送信権侵害を主張することが考えられる。これに対して、Bは、①に関して私的複製(30条)および情報解析の非享受利用(30条の4第2号)を、②に関して引用(32条)および電子計算機による情報処理の結果の提供に付随する軽微利用(47条の5第1項2号)を主張することが考えられる。

 Aの小説10冊の著作物性(2条1項1号)およびAの著作者性に争いはないと考えられる。

(2) ①について

ア 複製権侵害

著作者は、その著作物を複製する権利を専有する(21条)。複製とは、有形的に再製することをいい(2条1項15号前段。印刷等は例示であり、効果との関係で区別する必要はない)、「公に」(22条以下)との同視可能性から、将来反復して使用される可能性が必要である。

 Aの小説10冊をスキャナーで電子化しパソコンに保存する行為は、小説のスキャン画像に係るデータをHDD等に有形的に固定するものであり、HDD等はメインメモリ等と異なり一時的な記憶媒体ではないから、複製権侵害となる。

イ 私的複製

 著作権の目的となっている著作物は、個人的にまたは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするときは、原則として、その使用する者が複製することができる(30条)。

 BはAの小説の分析結果を不特定多数者が閲覧できるインターネットで公開することを目的として複製を行っており、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」を目的としているとはいえない(なお、①行為の時点で②行為を目的としていたとの事情は、直接には認められないが、Aの気が変わるかもしれないと考えて①行為に出ており、そのためにはインターネットを通じてAが①行為を認識しなければならないから、①行為の時点で②行為を目的としていたと推認できる)。

 したがって、私的複製の権利制限の適用はない。

ウ 情報解析の非享受利用

 30条の4第2号は情報解析の非享受利用を定める。

 「情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう…)の用に供する場合」(同条2号)について、①行為は、「多数の著作物」といえるAの小説10冊において、「当該情報を構成する言語…の要素に係る情報」たる単語を抽出し、出現頻度を計測するという「解析を行うこと」に当たる。

 「その必要と認められる限度において」(同条柱書本文)について、①行為は出現頻度の計測を目的としているところ、その目的のためには小説の全部を複製(スキャン)し、解析(OCR)する必要があるから(頻度はサンプルの範囲が広ければ広いほど信頼性が向上する)、これを満たす。

 「当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合」(同条但書)について、Aの小説10冊の「著作物の種類」は言語の著作物であり、その本来的な(享受となる)「用途」はそれを読むことであるところ、①行為は解析を目的としており、その態様についても、Aに著しい経済的打撃を与えるものではないから、「著作権者の利益を不当に害することとなる」とはいえない。

 したがって、情報解析の非享受利用の権利制限の適用がある。

(3) ②について

ア 公衆送信権侵害

 公衆送信権の意義は先に述べたとおりである。

 ②行為は、Aの小説10冊の中から、不特定多数者が閲覧できるBのサイトにおいて、閲覧者が送信した検索ワードが登場する箇所を前後各2行の文章とともに表示することを可能にするものであり、公衆によって直接受信されることを目的とした無線通信または有線電気通信の送信を可能にする行為で、同項9号の5イに当たると考えられるから、公衆送信権の侵害となる。

イ 引用

 公表された著作物は、引用して利用することができる(32条1項前段)。引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない(同項後段)。

 「引用」は、その語義上、明瞭区別性と主従関係が必要である(パロディ第1次上告審)。

 「正当な範囲内」の判断にあたっては、利用目的、方法・態様、被引用著作物の種類・性質、被引用著作物の著作者への影響の有無・程度を考慮すべきである。

本条の趣旨は、新たな表現活動を促進する上で引用を認めることが有用であることにあると解されるところ、ここから引用物には著作物性が必要とする説があるが、旧法と異なり、条文上そのような限定はなく、解釈上そのような要件を課す必要はない。

 ②行為は、批評等を目的とするものではなく、専ら(機械的な解析の結果である)特定の検索ワードの出現頻度とその前後各2行の文章と共に表示することを可能にするものであり、「主」に当たるものが存在しないから、主従関係性を満たさず、したがって、「引用して」(32条1項前段)に当たらない。

 したがって、引用の権利制限の適用はない。

ウ 電子計算機による情報処理の結果の提供に付随する軽微利用

 47条の5第1項2号は情報解析の非享受利用を定める。

 「電子計算機による情報解析…の結果を提供すること」(同項2号)について、②行為は、特定の検索ワードの出現頻度とその前後各2行の文章と共に表示することを可能にするものであるから、これに当たる。

 「公衆への提供又は提示…が行われた著作物…(公表された著作物又は送信可能化された著作物に限る。)」(同項柱書本文)について、Aの小説10冊は、出版されているから、これに当たる。

 「当該各号に掲げる行為の目的上必要と認められる限度において、当該行為に付随して、…軽微利用…を行うことができる」(同項柱書本文)について、前後各2行の文章とともに表示していることが問題となるが、そのような表示は、当該検索ワードがどのような文脈で用いられているかを理解可能にするという、「情報解析…の結果を提供する」という目的上の必要最低限の範囲にとどまっていると考えられ、「付随して」行う「軽微利用」といえる。立法趣旨からも、典型例として想定されたGoogle Booksは、当該ページの全体を表示できるのが通常であるから、前後各2行の文章とともに表示する程度であれば、この要件を満たすと考えられる。

 「当該公衆提供提示著作物に係る公衆への提供又は提示が著作権を侵害するものであること…を知りながら当該軽微利用を行う場合その他当該公衆提供提示著作物の種類及び用途並びに当該軽微利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合」について、Aの小説10冊の「著作物の種類」は言語の著作物であり、その本来的な(享受となる)「用途」はそれを読むことであるところ、②行為は当該検索ワードがどのような文脈で用いられているかを理解可能にするという「情報解析…の結果を提供する」ことを目的としており、その態様についても、Aに著しい経済的打撃を与えるものではないから(前後各2行で小説を楽しむことはできない)、「著作権者の利益を不当に害することとなる」とはいえない。

 したがって、電子計算機による情報処理の結果の提供に付随する軽微利用の権利制限の適用がある。

 以上から、Aの請求はいずれも認められない。

付郵便送達による判決騙取と不法行為・再審

報道

 大分市の女性が、自身が訴えられたことも知らず、判決書さえ受け取らないまま敗訴判決の確定を知り、銀行預金を差し押さえられる被害に遭った。女性は訴えた男性が裁判所をだまして被害を与えたとして、大分地裁に賠償を求める訴訟を起こし、同地裁は10日、女性の請求を認めた。伊藤拓也裁判官は「虚偽の事実を主張して裁判所をだまし、本来ありうべからざる内容の確定判決を取得した」と男性を批判した。なぜ、こんな事態が起きたのか。

(中略)

 大分地裁の判決などによると、女性は飲食店を経営しており2019年6月、元従業員の男性から金銭の支払いを求める訴訟を熊本簡裁に起こされた。

 熊本簡裁に係属する訴訟で、女性が住む場所と異なる、女性とは全く関係のない大分市内の住所を、男性は訴状の送達先に指定した。これを受けて熊本簡裁はその住所に訴状を送ったが、女性は住んでおらず、居住者もいないため、返送され、送達ができなかった。

 このため熊本簡裁が男性に確認を取ると、男性は「夜に電気がついている」「水道メーターも動いている」などと、送達先の住所に女性が住んでいると思わせる虚偽の報告書を提出したという。

 また、住民票記載の住所や職場である飲食店についても、男性側が「住民票の住所に女性は住んでいない」「店は閉店し、もう働いていない」などとうその報告をしたという。

 このため、熊本簡裁は「付郵便送達」という送達方法を決めた。

(中略)

 送達が完了したとみなした熊本簡裁は、司法手続きを続行。女性は男性から訴えられたことを知らず、反論の機会もないまま男性の訴えが認められる判決が言い渡された。

 男性は20年8月、熊本簡裁の確定判決に基づいて大分地裁に女性の債権の差押えを申し立てた。確定判決に基づいて大分地裁は20年9月、女性の銀行口座の預金を差し押さえた。

 銀行の預金通帳を見て女性がようやく気付いた。女性は被害者は自分だとして大分地裁に賠償請求訴訟を起こす流れとなった。

 10日の判決で伊藤拓也裁判官は「著しく正義に反し、確定判決の既判力による法的安定性を考慮しても容認できないような特別の事情がある」と男性の不正行為を批判した。

知らぬ間に敗訴、差し押さえ 原告が虚偽主張で裁判所だます - 毎日新聞

 

訴え・訴訟係属・送達

大事な部分が条文に書いてないので分かりにくいですが、訴え・訴訟係属・送達の関係は、次のようになっています。

「訴えの提起」とは、原告が裁判所に判決を求める意思表示のことで、「訴状を裁判所に提出して」行います(民事訴訟法133条1項)。訴えの提起があると、裁判長は訴状を審査し、瑕疵があれば補正を命じ(137条1項)、それに応じなければ却下します(137条2項)。

訴状審査をクリアした訴状は、被告に送達します(138条1項)。送達は職権で行い(98条1項)、送達に関する事務は、裁判所書記官が取り扱います(同条2項)。送達がされると、訴訟係属が生じます。

時効の完成猶予(民法147条1項1号)は訴えの提起に、二重起訴禁止(民事訴訟法142条)は訴訟係属に結び付けられた効果です。

 

付郵便送達について

付郵便送達とは、一般的な送達(通常送達(民事訴訟法103条1項)、就業先送達(103条2項)、補充送達(106条1項)、差置送達(106条3項))ができない場合に行われる送達方法です(107条1項)。

付郵便送達は、法文上は「書留郵便等に付する送達」と呼ばれており、の最大の特徴は、発送時に送達があったものと擬制されることです(107条3項)。これは、送達は受送達者に書類を交付してしなければならないという原則(101条)を修正するものです。

同様に一般的な送達ができない場合に行われる送達に、公示送達がありますが、付郵便送達が優先します(110条1項2号)。

なお、記事に「例外的に相手がずっと不在である場合などに書留郵便(付郵便送達)を送った時点で、住所が分からない場合に裁判所の掲示板に一定期間、公示することで送達が完了したとみなされる」という記述がありますが、付郵便送達と公示送達を混同するものです。付郵便送達は発送時に、公示送達は初回は掲示から2週間(外国においてすべき送達については6週間)、2回目以降は翌日に効力を生じます。

 

不法行為について

付郵便送達がされたが被告が事実上手続関与の機会を奪われたという事案として、最判平成10年9月10日集民189号743頁があります。

事案は、妻が夫(被告)のクレジットカードを利用し、立替金支払請求訴訟が提起され、通常送達不奏功、書記官が原告に就業場所を照会したところ、原告が誤解に基づいて被告は就業場所不明、家族は訴状記載の住所にいる旨回答し、書記官が付郵便送達(配達不能で返還)をし、裁判官が判決をし、妻が訴状を受領したものの被告に渡さなかったためそのまま確定したというものです。被告は、再審請求しましたが、補充性なしとして却下されたため、国とクレカ会社(=前訴原告)に対する損害賠償請求訴訟を提起しました(本件)。

対国請求については、就業場所の認定に必要な資料の収集に書記官の裁量を認め、それについての裁量の逸脱・収集した資料に基づく判断が合理性を欠くかを審査し、結論として適法としています。

対前訴原告請求については、次のように述べています。

 当事者間に確定判決が存在する場合に、その判決の成立過程における相手方の不法行為を理由として、確定判決の既判力ある判断と実質的に矛盾する損害賠償請求をすることは、確定判決の既判力による法的安定を著しく害する結果となるから、原則として許されるべきではなく、当事者の一方が、相手方の権利を害する意図の下に、作為又は不作為によって相手方が訴訟手続に関与することを妨げ、あるいは虚偽の事実を主張して裁判所を欺罔するなどの不正な行為を行い、その結果本来あり得べからざる内容の確定判決を取得し、かつ、これを執行したなど、その行為が著しく正義に反し、確定判決の既判力による法的安定の要請を考慮してもなお容認し得ないような特別の事情がある場合に限って、許されるものと解するのが相当である…。

 これを本件についてみるに、一審原告が前訴判決に基づく債務の弁済として一審被告に対して支払った二八万円につき、一審被告の不法行為により被った損害であるとして、その賠償を求める一審原告の請求は、確定した前訴判決の既判力ある判断と実質的に矛盾する損害賠償請求であるところ、前記事実関係によれば、前訴において、一審被告の担当者が、受訴裁判所からの照会に対して回答するに際し、前訴提起前に把握していた一審原告の勤務先会社を通じて一審原告に対する連絡先や連絡方法等について更に調査確認をすべきであったのに、これを怠り、安易に一審原告の就業場所を不明と回答したというのであって、原判決の判示するところからみれば、原審は、一審被告が受訴裁判所からの照会に対して必要な調査を尽くすことなく安易に誤って回答した点において、一審被告に重大な過失があるとするにとどまり、それが一審原告の権利を害する意図の下にされたものとは認められないとする趣旨であることが明らかである。そうすると、本件においては、前示特別の事情があるということはできない。

一方、判決騙取に関わる事案として、最判平成22年4月13日集民189号743頁があります(ただし最高裁は否定。損害賠償請求を認めた原判決を破棄しています)。一般論として、上記平成10年判決と同旨を繰り返した上で、次のように述べています。

原審の上記判断は,前訴において当事者が攻撃防御を尽くした事実認定上の争点やその周辺事情について,前訴判決と異なる事実を認定し,これを前提に上告人が虚偽の事実を主張して裁判所を欺罔したなどとして不法行為の成立を認めるものであるが,原判決の挙示する証拠やその説示するところによれば,原審は,前訴判決と基本的には同一の証拠関係の下における信用性判断その他の証拠の評価が異なった結果,前訴判決と異なる事実を認定するに至ったにすぎない。しかし,前訴における上告人の主張や供述が上記のような原審の認定事実に反するというだけでは,上告人が前訴において虚偽の事実を主張して裁判所を欺罔したというには足りない。他に,上告人の前訴における行為が著しく正義に反し,前訴の確定判決の既判力による法的安定の要請を考慮してもなお容認し得ないような特別の事情があることはうかがわれず,被上告人が上記損害賠償請求をすることは,前訴判決の既判力による法的安定性を著しく害するものであって,許されないものというべきである。

本判決は上記平成10年判決の下で損害賠償請求を認めた事案なのだろうと思います(報道だけなのでよくわかりませんが)。

ちなみに、記事には「伊藤拓也裁判官は「虚偽の事実を主張して裁判所をだまし〔注:おそらく原文は「裁判所を欺罔し」〕、本来ありうべからざる内容の確定判決を取得した」と男性を批判した」「伊藤拓也裁判官は「著しく正義に反し、確定判決の既判力による法的安定性〔注:おそらく「の要請」を省略している〕を考慮しても容認できないような特別の事情がある」と男性の不正行為を批判した」と書かれていますが、これらのフレーズは別に被告を批判する趣旨ではなく(批判したい気持ちではあるのでしょうが…笑)、単に平成10年判決の「かさ上げ」された不法行為の要件を充足する旨を述べたにすぎません。

 

再審について

再審事由

送達が適切に行われず、手続関与の機会が実質的に与えられなかった場合、民事訴訟法338条1項3号の再審事由があると考えられます。

3号は、「法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。」という規定ですが、「主張・立証の機会を実質的に保障するために必要な手続を欠いたこと」くらいに拡張して解釈されています。再審は既に確定した判決について、既判力の排除を求める訴訟法上の形成訴訟ですが、既判力による拘束は、それを受ける者が、訴訟当事者として主張・立証の機会を保障されたことによって正当化されるため(手続保障を前提とする自己責任)、それを欠く場合には、排除されてよいという考えに出たものです。

判例も、通常送達で、7歳の娘に書類を交付した事案に関するものですが、次のように述べています(最判平成4年9月10日民集46巻6号553頁。旧法に関する判断)。

有効に訴状の送達がされず、その故に被告とされた者が訴訟に関与する機会が与えられないまま判決がされた場合には、当事者の代理人として訴訟行為をした者に代理権の欠缺があった場合と別異に扱う理由はないから、民訴法420条1項3号の事由があるものと解するのが相当である。

 

補充性との関係

平成10年判決の事案では、それに先立つ再審請求が補充性により却下されています(再審請求は昭和62年)。しかし、その後の判例は、再審事由を現実に了知できなかった場合には、補充性は問題とならないとしています(前掲最判平成4年9月10日)。

民訴法420条1項ただし書は、再審事由を知って上訴をしなかった場合には再審の訴えを提起することが許されない旨規定するが、再審事由を現実に了知することができなかった場合は同項ただし書に当たらないものと解すべきである。けだし、同項ただし書の趣旨は、再審の訴えが上訴をすることができなくなった後の非常の不服申立方法であることから、上訴が可能であったにもかかわらずそれをしなかった者について再審の訴えによる不服申立てを否定するものであるからである。これを本件についてみるのに、前訴の判決は、その正本が有効に送達されて確定したものであるが、上告人は、前訴の訴状が有効に送達されず、その故に前訴に関与する機会を与えられなかったとの前記再審事由を現実に了知することができなかったのであるから、右判決に対して控訴しなかったことをもって、同項ただし書に規定する場合に当たるとすることはできないものというべきである。

 

訴訟係属はあるのか?

そもそも送達が適正に行われなかったなら、(送達は最も重要な手続保障の一つなのだし)訴訟係属は生じておらず、判決は再審請求するまでもなく無効なのではないか、不法行為においても、配慮すべき既判力(による法的安定性の要請)そのものがなく、要件を「かさ上げ」する必要はないのではないかと思われるかもしれません。しかし、そうではありません。付郵便送達は発送時に効力を生じるからです。言い換えれば、付郵便送達が発送時に送達を擬制するからこそ、本人が知らないところで有効に送達がされてしまい、訴訟係属が生じるという現象が起こりうるわけです。

 

前訴判決が外国判決だった場合

完全に蛇足ですが、今回の前訴判決が外国判決だった場合、間接管轄を欠くこと(日本の民事訴訟法の国際裁判管轄規定を適用した場合に当該外国に国際裁判管轄が認められない。民事訴訟法118条1号)または手続開始文書の送達を欠くこと(同条2号)により、当該外国判決が承認されず、日本において既判力を有しないこととなります。また、外国判決に基づいて日本で強制執行をしようとする場合、執行判決を得なければなりませんが(民事執行法24条)、承認要件を満たさない場合、請求が棄却されることになります(同条5項は却下としていますが)。外国の機関の処分である外国判決を、日本国の機関である裁判所が取り消すことはありえないため、再審ではなく、その効力の承認を拒絶するというやり方で国民を保護しているわけです。