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LS生の判例との向き合い方(?)

憲法は特に判例が大事です。ある先生がTwitterで紹介されていた、『憲法判例の射程』の「第0章」(横大道執筆)にそのことがよく書かれています。

 

さて、私は、学部ゼミで多くの判例批評を読み、自分でもそれらしきものをいくつか書いたりしてきましたが、最近になって初めてそれを試験勉強に「転用」できるようになってきた気がしています。そのため、あまり確かなことは言えませんが、各学習段階での感覚というのは各段階で記録しておかなければ失われてしまいがちなので(生存バイアスもその一つ)、書いておきます。

 

はじめに

まず、判例研究について。

 

判例は学説によって意味を与えられる

判例は、個別の事実関係と切り離すことはできません。そのため、判例を構成する命題が、どのような場合に妥当し、どのような場合に妥当しないのか(射程)は、判例自体からはわからないこともよくあります。

そこで、学説は、類似の事案や共通の/隣接する論点に関する判例を集め、どこが同じでどこが違うのかを見極めるという作業を行います。「判例を構成する命題が、どのような場合に妥当し、どのような場合に妥当しないのか」は、学説による整理を経て初めて明らかになることも多いです。

「学説は必要ない」と言われがちですが、ある判例判例法理あるいは法体系の中に位置づけるのは学説であり、学説抜きに判例を理解することはできません。例えば、行政事件の原告適格や裁量の判例だけを読んで何か書けるようになる人が果たしているのか、ということです。

もちろん、全く不可能ではないですが、研究者が何人も集まって積み重ねた議論の結果と同等のものを自力で作り上げることになるわけで、あまりに非効率です。

 

内在的研究と外在的研究

判例研究には、内在的研究(分析)と外在的研究(批判)があります。

前者は、判例のテキストを丁寧に読み込み、判例はどのような事実があるときにどのような判断をするのかを明らかにするものです。判例はどうあるSeinかを研究する、記述的descriptiveな作業です。

後者は、外国法研究を含む学説の観点から、判例が妥当であるかを論ずるものです。判例はどうあるべきSollenかを研究する、規範的normativeな作業です。

評釈を読むときには、そのどちらなのかを意識する必要があります。

 

試験場でやらなければならないこと

じゃあ我々はどうすればよいのかということになりますが、その前に、我々は何を求められているのかを知る必要があります。

そのためには、採点実感を見るのが手っ取り早いです。

 

平成30年

問題文において「参考とすべき判例...を踏まえて」論じるように求めているにもかかわらず,全く判例に言及しない答案が少なからず見られた。問題文にそのような要求が明示されていなくとも,本来必要なところでは関連する判例に言及するなど,それを意識した論述をすべきであろう。なお,判例に言及する場合には,単に事件名や結論を提示するのみでは十分とは言い難い。

条例案は,例えば,岐阜県青少年保護育成条例事件と比べて,規制対象の範囲,対面式販売に対する規制であること,規制目的が青少年保護にとどまらないことなどの違いがあり,上記事件の判例で直ちに合憲とできる射程を超えている可能性がある。こうした条例案判例の事例との異同を指摘して論じている答案は,論述に説得力を感じられた

 

平成29年

本問は,マクリーン事件等幾つかの参考となる判例を想起すべき事例であり,これらの判決の趣旨を理解し,その射程を意識しながら本事例について論証しようとする答案は説得的であり,高い評価となった。他方,これらの重要判例がおよそ意識されていないもの,あるいは,本事例の特性を意識した論述とは言い難く,淡白な記述にとどまるものは,低い評価とならざるを得なかった。

 

平成28年

本問は,全面的に直接に依拠できる判例が存在する事案ではないが,参考となる判例の射程を正確に理解し,本問事例との相違を指摘しつつ議論の展開を可能な限り判例に基づいたものにしようとする答案は,論述も説得的なものとなり,評価が高かった。

 

平成26年

…職業の自由の規制の合憲性をめぐる判例の変化に注意を払わず,安易に従前の特定の判例の考え方に引き付けて論証している答案には,厳しい評価をせざるを得なかった。

司法試験は,法曹となるべき者に必要な知識・能力を判定する試験であるので,検討の出発点として判例を意識することは不可欠であり,判例をきちんと踏まえた検討が求められる。したがって,判例に対する意識が全くない,あるいは,これがほとんどない答案は,厳しい評価とならざるを得なかった。判例に対しては様々な見解があり得るので,判例と異なる立場を採ること自体は問題ないが,その場合にも,判例の問題点をきちんと指摘した上で主張を組み立てていくことが求められる。

条例の規制目的が消極目的・積極目的のいずれかに割り切ることのできないものであるにもかかわらず,安易に,あるいは半ば強引に,消極目的規制の条例と捉えて,形式的に厳格な合理性の基準を適用している答案が目立った。その意味で,新たな問題について自分の頭で考えようとせず,安易に従前の判例の事案等に引き付けて論述しようとする姿勢が見受けられた。

判例「内側」に入ろうとせずに「外在的な批判」に終始することも,他方で,判例をなぞったような解説に終始することも,適切ではないであろう。判例を尊重しつつ,「地に足を付けた」検討が必要であるように思われる。判例の正確な理解,事案との関係を踏まえた当該判例の射程範囲の確認,判例における問題点を考えさせる学習の一層の深化によって,学生の理解力と論理的思考力の養成がますます適切に行われることを願いたい。

 

結局、求められているのは、「判例に言及し、射程を議論すること」であると考えられます。覚えていないのはネガティブ評価ですし、強引に引きつけて射程内に入れるのもネガティブ評価を受けます。もちろん最終的に全ての関係判例の射程外になることはあるのでしょうが、その場合にも、そのことを丁寧に論証してから学説あるいはその場で考えたことを書く必要があります。

 

試験場外でやっておくべきこと

そうすると、我々がやっておくべきなのは、さしあたり、①判例のテキストをよく読み、②判例がどのような事実を取り上げ、それをどのように評価したのか(どのような意味を持つものとして取り扱ったのか)を理解し、③それがどう変わったとき、射程が及ばなくなるのかを考えておく、といったあたりでしょうか。

 

何を読むか(試行)

ここはまだあまり試行錯誤できていません。

判例百選は多すぎ&解説にばらつきがありすぎで、どうにもならないことが多いです(百選を捨てて判例ノートを作る)。個別に見る分にはそれなりに使えることも多いですが、一気に読むと萎えます。

憲法は、さしあたり、『憲法判例の射程』か『精読憲法判例[人権編]』がよいのしょうか。『判例レーニン憲法』というのも最近教えてもらいました。

民訴考査委員の関心分野:審判権の限界、文書提出命令、将来給付の訴え

直近2回の司法試験で、文書提出命令(平成30、令和1)、管轄・移送(令和1)が出題されています。これらは、考査委員である安西先生の関心が強い分野です(移送については最近の論考は見当たりませんでしたが、2002年の「当事者間の衡平を図るための移送」判タ1084号があります)。

 

審判権の限界

安西先生による審判権の限界についての最近の論考として、次のものがあります。

  • 民事訴訟における争点形成』の第1部
  • 「審判権の限界」『基礎演習民事訴訟法 第3版』
  • 「宗教団体の内部紛争に関する近時の裁判例検討:争点形成の観点から」栂・遠藤古稀
  • 「審判権の限界:審理・判決の限界から、当事者の争い方の規律へ」 実務民事訴訟講座3期2巻
  • 「団体内部紛争の法律上の争訟性に関する近時の裁判例検討」石川傘寿

また、最近、東京高裁で、日本舞踊の「名取」の除名処分に関する判決がされています(東京高判平成28.12.16:日本舞踊の名取の除名処分無効確認の法律上の争訟性)。上告・上告受理申立てがされましたが、最高裁は三行決定で上告棄却・上告不受理としました(最決平成29.5.9)。なお、評釈として、我妻学「判批」重判平成30年度があります。

 

文書提出命令

さすがに3連続はないと思いますが、判例法理が発展している分野なので、適当なものを読んでおいてもよいのではないかと思います。

まず、安西先生によるものとして、民事訴訟における争点形成』の第2部があります。
また、伊藤眞「民事訴訟における秘密保護」民事訴訟法の争点は、2009年と少し古いですが、証言拒絶、インカメラ審理(知的財産訴訟におけるものを含む)など、周辺の問題も含めて問題を概観するのに役立ちます。

文書提出命令は、(特にDiscoveryを有するアメリカと比べて)証拠収集機能が弱いと言われる日本の民事訴訟手続において、唯一(?)機能している強制的証拠収集手段であり、また、立法論的にも、プロ責法上の発信者情報開示に関する議論と関わっており、個人的に関心があるところです。

 

将来の訴え

将来の訴えについては、近時議論が盛んです。

安西先生によるものとして、「判批(最判平成28.12.8)」重判29年度があります。なお、この事件については、別の考査委員による名津井吉裕「判批(最判平成28.12.8)」私法判例リマークス56号があります。

また、最新の議論として、勅使川原和彦「将来の権利関係の確認請求訴訟における確認対象適格に関する覚書」 高橋古稀があります。

文献:中川丈久「取消訴訟の原告適格について(1)―憲法訴訟論とともに」

中川丈久「取消訴訟原告適格について(1)―憲法訴訟論とともに(論点講座 公法訴訟 第10回)」法学教室379号67頁以下

原告適格について、「法効果テスト」「保護利益侵害テスト」という2種類の判断枠組みを区別し、後者についてさらに「保護法益性」「個別的利益性」「侵害現実性」に分けて分析を加える。

行政法には、租税法・社会保障法みたいな行政と個人が一対一で対立するタイプと、都市計画法建築基準法・環境法みたいな行政が多数の個人の利益を調整するタイプがあるよなと思っていたが、はっきりそう書いてあった。「保護利益侵害テスト」は、後者のタイプで処分の名宛人(とこの論文にいう「準名宛人」)以外が提起する場合に使われる。

処分性、原告適格、訴えの利益の重なりというのも面白かった。答案では処分性が認められる場合、その相手方はには処分の定義上当然に原告適格が認められると考えていたが、間違っていなかったよう。

なお、原告適格は3回にわたって連載されており、(1)は内在的分析、(2)は批判(最初の4ページくらいは分析としても役に立つかも)、(3)に憲法上の権利の主張適格・主張制限の問題が書かれている。

この論文の発表後に出た最判平成26.7.29[宮崎県産業廃棄物等処分業許可]は、行政判例百選には掲載されていないが、平成26年重判、環境法判例百選3版(平成30(2018)年)に掲載されている。

人口妊娠中絶について

転記。

中絶については、胎児に人格はないと考えているので、基本的には女性のプライバシー=自己決定権を確保すべきだと思います。ただ、マジョリティが各自の価値観に従った選択をした結果、社会全体として優生学的選択がされることが想定され、それをどうすべきかはまだよくわかりません(生命倫理の議論を参照して考えたいと思っています)。
同性婚と妊娠中の中絶に賛成ですか?またその理由は何でしょうか? | Peing -質問箱-

この前こういう質問に答えた(初めての考えさせられる質問だったかもしれない)。

 

ググって出てきた情報は信用性の判断は、オフラインの体系的な知識がない限り極めて困難である。というのは百も承知なのだが、それらしき論文が出てきて嬉しくなってしまったので、メモしておく。

 

麦倉泰子「中絶の倫理問題についての考察」

USでは「堕胎決定権は女性の憲法上のプライバシー権に属し、厳格な堕胎禁止は憲法に違反する」との1973年の判例がある(Roe v. Wade)。

それを正当化する理論として、次の3つを紹介する。

  • 母親の身体に対する自己決定権
  • パーソン(人格)論:「生物学的なヒトとしての人間」と「道徳的主体として生存する権利を持った人格」の区別。
  • 「生命の質」概念による中絶:功利主義。「胎児が価値ある生を送る可能性」がないなら許される。Roe v. Wade事件は、サリドマイドを服用した妊婦たち(当時その害は明らかになっていなかった)が、障害を持って生まれてくることが避けられない胎児について、中絶をすることを認めるよう求めた結果だった。

もっとも、自己決定権には、「世界とその意味を説明する様式について反省することができるのはパーソンだけであるため、すべての説明は必然的にパーソンの理性的な言葉のなかで発展せざるを得ず、それゆえ理性的存在とその関心は再び道徳的説明において中心的にならざるをえない」という問題がある(Engelhardt)。

レッセ・フェール優生学:「出生前診断による選択的中絶〔先天的異常が見つかった場合にされる中絶〕の問題性とは、「障害者に対する差別」という政治的・社会的な問題が女性の個人的な自己決定の問題、すなわち「私は障害者を産みたい/産みたくない」となってしまう点である。結果として起こっている現象とは、先天的障害児の出生率の大幅な減少である。…国家による強制的な断種は行なわれなくなっても、個々の自己決定の集積が結果的に優生学的効果をもたらしうる」

レッセフェール優生学は、リベラル優生主義と呼ばれることもある(桜井徹『リベラル優生主義と正義』)。

 

中絶の問題は、最近、アラバマ州が特に厳格な中絶禁止法を制定し、特に注目されている。保守派はトランプ政権下で保守化した最高裁の下で判例変更を狙っている(全米で最も厳しい中絶禁止の州法が成立 アラバマ州 - BBCニュース米イリノイ州、「中絶は基本的権利」 他州女性も受け入れへ 写真1枚 国際ニュース:AFPBB Newsアメリカで広がる「中絶禁止」州。なぜ再び妊娠中絶問題は政治の争点になったのか | BUSINESS INSIDER JAPAN腹撃たれ流産した母親に胎児の過失致死罪、中絶禁止の米アラバマ州 写真3枚 国際ニュース:AFPBB NewsCNN.co.jp : 腹部撃たれた妊婦、胎児を死亡させた罪で起訴 中絶禁止のアラバマ州『撃たれて流産』が罪に問われた女性、起訴が取り下げられる | ハフポスト)。

 

ところで、何についてだったか忘れたが、こんな発言をしたことがある。人の尊厳の根源を「思考できる/理性を持った主体である」というところに求めると、思考力・理性において劣る人(幼児、知的障害者、認知能力の低下した老人など)はそれに値しない(あるいはより尊厳の程度が低い)という結論に至る危険があるように思う。

 

早稲田大学法科大学院入試刑法第2問について

わせロー刑法第2問は、刑法各論の一行問題(学説問題?)が出題され、刑法全体の3分の1、全科目の7.1%の配点があります。

対策ですが、私は「刑法の道しるべ」を読みました(刑法の基本書、演習書等と使用法)。

しかし、去年カバーされていない新しい問題が出てしまいました(2019年度早稲田大学法科大学院入試(再現答案へのリンクあり))。理解の役には立つと思いますが。

そこで、過去問に対する解答を用意したあとは、基本刑法各論の「論点」部分を読むか、山口判事が勧められているとおり、コアカリキュラムに掲載された論点を、お持ちの教科書で潰していくのがよいと思います(法科大学院コアカリキュラムが論点集として便利)。

 

もっとも、出題趣旨から全く外れた記述でも、30点中26点がきたので、優先度は低くてよいように思います(再現答案:早稲田大学法科大学院 2018年 刑法 再現答案、出題趣旨:2019年度 早稲田大学大学院法務研究科 法学既修者試験 論述試験 刑法 (出題の趣旨)、出題趣旨が想定する答え:2019年度早稲田大学法科大学院入試(再現答案へのリンクあり))。

国際私法への跳躍

国際私法のレポートを書き終わりました。

 

思えば3月、必修で埋まっていない2単位を何かで埋めなければならないと勘違いし、学部ゼミでやった国際民訴の延長で理解できるだろうと思って、シラバスもよく見ずに「国際私法」を履修したのがすべての始まりでした(暗闇への跳躍)。24時間前には単位法律関係・連結点・反致すらよくわかってなかったので、本当に奇跡みたいです。

 

やり終わってみて思ったんですが、国際私法って国際民訴とかなり関係がありますね。リーガルクエスト5頁にこんな記述がありました。

 

国際裁判管轄について

まず、国際裁判管轄は、準拠法選択の処理を大きく左右する。…それぞれの法廷地が自らの法である法廷地法を常に適用するならば、事案の解決がたまたま法廷地となった地の法に左右される、という不都合がある。しかしながら、実は、各国が常に法廷地法を適用するとの立場をとらなかったとしても、離婚の可否のような実体問題に与えられる解決は、どこの国の立場から考えるかによって異なりうる。というのは、ある実体問題について判断基準となる法、すなわち準拠法を定める(狭義の)国際私法のルールは、条約がなければ国際的に統ーされていないからである…。このような状態では、[引用部分より前の部分に挙げられたケース]について、わが国の裁判所が国際裁判管轄を認めて日本で判断がされるのか、それとも国際裁判管轄を否定して外国で判断されるのかによって、離婚の可否に適用される準拠法は異なる。以上の理由から、国際裁判管轄は準拠法選択と密接に関連している。

 

外国判決の承認執行について

次に、外国判決の承認執行は、準拠法選択とどのような関係にあるのだろうか。訴訟法的な説明は後述するが…、ここでは、訴訟の世界を離れて、両者の関係を考えてみよう。

渉外的法律関係において、ABの離婚が認められるか、というような実体法上の問題は、…関係する諸国の法のうちから、「もし3年間の別居があれば〔法律要件〕、離婚請求は認められる〔法律効果〕」というような外国の抽象的な法規範が準拠法として選択され、事案に適用されることで、具体的結論が導き出される。これが準拠法選択である。

これに対して、すでに外国判決がある場合には、実体法上の問題にすでに外国において抽象的な法規範が適用されている。そのあてはめの結果「AB夫婦を離婚する」という決定(離婚判決)が外国でなされている。外国判決の承認とは、外国で下されたこの決定をわが国で認めるかという問題である。

準拠法選択と外国判決の承認を対比してみると、抽象的な法規範であるか具体的な法規範であるかの違いはあるが、両者はいずれも、外国の法規範をわが国に受け入れるかを問題としている点で共通している。したがって、外国判決の承認執行と準拠法選択は密接に関連している。

 

興味が湧いてきたので[遅い]、試験[どの?]が終わったらやってみたいと思います。

演習国際私法 CASE30

演習国際私法 CASE30

 
国際私法 第2版 (LEGAL QUEST)

国際私法 第2版 (LEGAL QUEST)