Haruwasブログ

予備試験(2018)、法科大学院入試(2018)の記録など。

法学部でのリサーチと発表のしかた

この投稿は、学部で判例あるいは一定の問題について議論するときの作法的なものを述べるものです。学部ゼミの指導教員や共同発表者から教えてもらったものや、自らが経験的に獲得した知識を言語化したものなので、一般的でないものが含まれている可能性があります。

 

資料を集める

どんな資料があるか

  • 扱う資料として、①学生に書かれた概説書(教科書)、②学者・実務家に向けて書かれた概説書(体系書)、③コンメンタール、④調査官解説、⑤判例評釈、⑥論文、などがある。
  • ①教科書は、特定の法分野の概要を簡潔に、かつ教育的配慮をもって説明したもの。学生を想定して書かれており、自説は控えめ(なものが多い)。
  • ②体系書は、特定の法分野について理論的な解説をするもの。単著が多く、実務家や研究者を想定して、一貫して筆者の視点から書かれている。他説については、自説の前提として議論を整理することはあっても、それ自体を目的としていない。
  • コンメンタールは、特定の法律について、一条ごとに解説を加えたもの。編著が多く、実務家や研究者を想定して、判例や議論を客観的に、かつきわめて詳細に整理している(その上で執筆者の見解が明らかにされることはある)。
  • ④調査官解説は、最高裁判例について、最高裁調査官(最高裁裁判官の職務を補助する職員。裁判官が身分を変えてこれになる。これになるのは裁判官の中でもエリート)が書いた解説。理論的に重要な裁判がされると、まず判例時報判例タイムズの「囲み解説」として匿名で短いコメントがされ、翌年に最判解(最高裁判所判例解説平成n年度民事篇)として加筆されたものが公開される。最高裁は、裁判官数に比して膨大な件数を処理しているため、一部の判決については調査官の起案したものがほぼそのまま判決になっており、そうでない場合でも裁判官の議論に影響を与えていると言われている。そのため、判例の内在的分析、つまり、最高裁が何を考えてそのような判決をしたのかを推論する上で、重要な資料になる(もっとも、これ自体は判例ではない。また、ときに判例(多数意見)を批判することがあるし、少数意見とはよく対立している)。
  • 判例評釈は、特定の最高裁判例・下級審裁判例について、学者や実務家が意見を述べたもの。最もメジャーな判例評釈が百選解説。短いものは1ページ(法学教室の「判例セレクトMonthly」など)、長いものだと30ページくらい(大学紀要に掲載されるものが多い、気がする)。
  • ⑥論文は、特定の問題について、学者や実務家が意見を述べたもの。
  • 判例評釈と⑥論文は、実務家向けの雑誌(判例タイムズ判例時報、ジュリストなど)、アカデミックな雑誌(民商法雑誌、金融法務事情、民事訴訟雑誌など)、学生向けの雑誌(法学教室、法学セミナーなど)、献呈論文集(高橋宏志先生古希記念祝賀論文集「民事訴訟法の理論」など)、その他の単行論文集、大学紀要(法学協会雑誌〔東京大学〕、法学論叢〔京都大学〕、早稲田法学〔早稲田大学〕、法學研究〔慶応大学〕など)などに収録されている。

 

資料をどうやって見つけるか

  • 与えられた資料(百選や重判の記事など)がある場合は、それを起点に、引用された資料を芋づる式にたどっていく。ただし、この方法では、その資料の執筆時以降の資料は見つけられないことに注意する。
  • LEX/DB*1の「評釈等所在情報」は判例評釈をまとめてくれている。
  • 教科書、体系書、コンメンタールの関連箇所を探す。

 

資料をコピーし、共有する

  • 資料をコピーするときは、背表紙の上下を手で押さえるとよい(コピー機の蓋だけで押さえると、手前が浮いて黒く写り、読めなくなるので結構大事)。
  • 資料をコピーするときは、コピーした紙に書誌情報(資料を特定するために必要な情報。引用したり、再検討するときに必要。具体的には、執筆者、著者、編者、論文名、出版物名、出版社、出版年、版、巻数など)を最初のページに書き込んでおく。単行本の場合、奥付をコピーしてもよい。この場合、共著書・編著書で論文集の形式を取っていないものは、執筆者が巻頭などに記載されており、章の始めや奥付には記載されていないことが多いので、注意する。
  • コピーした資料は、スキャンして、クラウドストレージで共有する*2。スキャンには、ドキュメントスキャナ(ADF; automatic document feederがついたスキャナ)を使うと楽。
  • 資料のリストを作っておく。

 

原稿にまとめる(Microsoft Wordを使う前提)

構成

  • 最初に「問題の所在」を書く。「問題の所在」とは、どのような条文があり、どのような問題が生じるのか(典型的には、素直に条文を適用すれば〇〇という不都合が生じるため、どのように調整するかが問題となる、など)を簡潔に示したもの。百選の解説にも最初に「問題の所在」が書かれているものが多いので、それを見ると参考になるかも。
  • 次に、学説と判例・裁判例を整理する。
  • 最後に、私見を示す。どの見解を前提にして、どのような理由でどのような結論を支持するのか。

 

日本語の問題

  • 明文の規定があるときは条文番号を、判例があるときは判例の年月日・判例集を表示する。条文、判例、学説(争いがないもの)、学説(争いがあるもの)、あなたの意見を区別する。
  • 主語は、文脈から明らかである場合を除き、省略しない。また、主語と述語が対応しているかどうかを確認する。
  • 複文をできる限り避ける。

 

スタイル・段落

  • 番号つきの見出しをつける。番号つきの見出しは手動でつけるのではなく、スタイル機能を使って自動でつける。

    growthseed.jp

  • 段落分けをする。段落の始めは字下げする。字下げは全角スペースではなくスタイルで行う。

    www.tipsfound.com

  • 空白行を作らない。
  • 本文は明朝体、強調はゴシック体の太字を使う。太字は、太字を内蔵しているフォントを使う(MSゴシックなどは太字を内蔵していない)。長い強調はアンダーラインを使う。イタリックは使わない。最新のWindows/OS X(Mac)の場合、游明朝、游ゴシックを使うときれいで扱いも楽。

 

引用

  • 孫引き(オリジナル以外からの引用。例えば、Aが自説を述べる前提として、Bの説を含む既存の学説を整理している場合に、あなたがB説を紹介するためにAの論文を引用すること)をしない。
  • 条文、判例、資料の引用は「法律文献等の出典の表示方法」に従う。
  • 同じ資料を2回以上引用する場合、自動で処理させる(同じ脚注や文末脚注を繰り返し参照する)。
  • 脚注でも、句点を省略しない。

 

レビュー

  • 共同発表者のドラフトをレビューするときは、変更履歴を使う。

    support.office.com

 

その他

発表を準備する

レジュメを統合して、共有する

  • 各執筆者のファイルからコピペし、スタイルなどを調整する。ここでの工程を少なくするために、初めから同じスタイルが設定されたファイルに書いておく。
  • タイトル、発表者、目次、行番号、ページ番号を入れる。
  • メールなどで共有する。Wordでは(フォントがあるかどうか、Wordのバージョンの違いなどで)ページ数がずれる可能性があるためPDFを共有し、また、書き込み用にWordドキュメント(.docx)を共有している。

 

スライドを作る

  • 上部にレジュメの見出しに対応したタイトルと、ページ数を入れる。しかし、実質的な情報ではないため、これにスペースを使いすぎない。
  • 積極的に図表を使う。しかし、どうしても必要な場合でない限り、イラストは使わない(イラストを使わなくても図表は作れる)。
  • 色は黒+テーマカラー+アクセントカラーのみ。
  • 説明することを全てスライドに記載する必要はない。むしろ情報はできるだけ削る。スライドの役割は、①口頭の説明のインデックス、②ビジュアライズしたほうが伝わりやすいもの(図表)の表示。スライドはあくまであなたの説明を補うものであって、スライドそれ自体から全てを読み取ることができる必要はない。
  • アニメーションは、出現と消滅だけ(奇抜なアニメーションに注目させても意味がない)。
  • スクリプトは作って棒読みしてはいけない。どうしても不安ならトピックだけメモしておく(それで説明できる程度の理解がなければ、どうせ伝わらない)。
  • この2冊のいずれかを読んでおくのがおすすめ(内容はほぼ同じなのでどちらでもよい)。
    伝わるデザインの基本 増補改訂版 よい資料を作るためのレイアウトのルール
     

*1:判例データベース。早稲田大学の場合、LEX/DBには、学術情報検索で、「おすすめのデータベース」→「15. 判例(国内):LEX/DB」と進むとアクセスすることができる。

*2:著作権法30条1項柱書は、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするとき」に限り、複製を認めています。「これに準ずる限られた範囲」について、文化庁著作権審議会第5小委員会(録音・録画関係)報告書(昭和56年)は、「「これに準ずる限られた範囲内」とは、人数的には家庭内に準ずることから通常は4~5人程度であり、かつ、その者間の関係は家庭内に準ずる親密かつ閉鎖的な関係を有することが必要とされる。したがって、例えば、親密な特定少数の友人間、小研究グループなどについては、この限られた範囲内と考えられるが、少人数のグループであってもその構成員の変更が自由であるときには、その範囲内とはいえないものと考える。」としています。