Haruwasブログ

予備試験(2018)、法科大学院入試(2018)の記録など。

法学部でのリサーチと発表のしかた

この投稿は、学部で判例あるいは一定の問題について議論するときの作法的なものを述べるものです。学部ゼミの指導教員や共同発表者から教えてもらったものや、自らが経験的に獲得した知識を言語化したものなので、一般的でないものが含まれている可能性があります。

 

資料を集める

どんな資料があるか

  • 扱う資料として、①学生に書かれた概説書(教科書)、②学者・実務家に向けて書かれた概説書(体系書)、③コンメンタール、④調査官解説、⑤判例評釈、⑥論文、などがある。
  • ①教科書は、特定の法分野の概要を簡潔に、かつ教育的配慮をもって説明したもの。学生を想定して書かれており、自説は控えめ(なものが多い)。
  • ②体系書は、特定の法分野について理論的な解説をするもの。単著が多く、実務家や研究者を想定して、一貫して筆者の視点から書かれている。他説については、自説の前提として議論を整理することはあっても、それ自体を目的としていない。
  • コンメンタールは、特定の法律について、一条ごとに解説を加えたもの。編著が多く、実務家や研究者を想定して、判例や議論を客観的に、かつきわめて詳細に整理している(その上で執筆者の見解が明らかにされることはある)。
  • ④調査官解説は、最高裁判例について、最高裁調査官(最高裁裁判官の職務を補助する職員。裁判官が身分を変えてこれになる。これになるのは裁判官の中でもエリート)が書いた解説。理論的に重要な裁判がされると、まず判例時報判例タイムズの「囲み解説」として匿名で短いコメントがされ、翌年に最判解(最高裁判所判例解説平成n年度民事篇)として加筆されたものが公開される。最高裁は、裁判官数に比して膨大な件数を処理しているため、一部の判決については調査官の起案したものがほぼそのまま判決になっており、そうでない場合でも裁判官の議論に影響を与えていると言われている。そのため、判例の内在的分析、つまり、最高裁が何を考えてそのような判決をしたのかを推論する上で、重要な資料になる(もっとも、これ自体は判例ではない。また、ときに判例(多数意見)を批判することがあるし、少数意見とはよく対立している)。
  • 判例評釈は、特定の最高裁判例・下級審裁判例について、学者や実務家が意見を述べたもの。最もメジャーな判例評釈が百選解説。短いものは1ページ(法学教室の「判例セレクトMonthly」など)、長いものだと30ページくらい(大学紀要に掲載されるものが多い、気がする)。
  • ⑥論文は、特定の問題について、学者や実務家が意見を述べたもの。
  • 判例評釈と⑥論文は、実務家向けの雑誌(判例タイムズ判例時報、ジュリストなど)、アカデミックな雑誌(民商法雑誌、金融法務事情、民事訴訟雑誌など)、学生向けの雑誌(法学教室、法学セミナーなど)、献呈論文集(高橋宏志先生古希記念祝賀論文集「民事訴訟法の理論」など)、その他の単行論文集、大学紀要(法学協会雑誌〔東京大学〕、法学論叢〔京都大学〕、早稲田法学〔早稲田大学〕、法學研究〔慶応大学〕など)などに収録されている。

 

資料をどうやって見つけるか

  • 与えられた資料(百選や重判の記事など)がある場合は、それを起点に、引用された資料を芋づる式にたどっていく。ただし、この方法では、その資料の執筆時以降の資料は見つけられないことに注意する。
  • LEX/DB*1の「評釈等所在情報」は判例評釈をまとめてくれている。
  • 教科書、体系書、コンメンタールの関連箇所を探す。

 

資料をコピーし、共有する

  • 資料をコピーするときは、背表紙の上下を手で押さえるとよい(コピー機の蓋だけで押さえると、手前が浮いて黒く写り、読めなくなるので結構大事)。
  • 資料をコピーするときは、コピーした紙に書誌情報(資料を特定するために必要な情報。引用したり、再検討するときに必要。具体的には、執筆者、著者、編者、論文名、出版物名、出版社、出版年、版、巻数など)を最初のページに書き込んでおく。単行本の場合、奥付をコピーしてもよい。この場合、共著書・編著書で論文集の形式を取っていないものは、執筆者が巻頭などに記載されており、章の始めや奥付には記載されていないことが多いので、注意する。
  • コピーした資料は、スキャンして、クラウドストレージで共有する*2。スキャンには、ドキュメントスキャナ(ADF; automatic document feederがついたスキャナ)を使うと楽。
  • 資料のリストを作っておく。

 

原稿にまとめる(Microsoft Wordを使う前提)

構成

  • 最初に「問題の所在」を書く。「問題の所在」とは、どのような条文があり、どのような問題が生じるのか(典型的には、素直に条文を適用すれば〇〇という不都合が生じるため、どのように調整するかが問題となる、など)を簡潔に示したもの。百選の解説にも最初に「問題の所在」が書かれているものが多いので、それを見ると参考になるかも。
  • 次に、学説と判例・裁判例を整理する。
  • 最後に、私見を示す。どの見解を前提にして、どのような理由でどのような結論を支持するのか。

 

日本語の問題

  • 明文の規定があるときは条文番号を、判例があるときは判例の年月日・判例集を表示する。条文、判例、学説(争いがないもの)、学説(争いがあるもの)、あなたの意見を区別する。
  • 主語は、文脈から明らかである場合を除き、省略しない。また、主語と述語が対応しているかどうかを確認する。
  • 複文をできる限り避ける。

 

スタイル・段落

  • 番号つきの見出しをつける。番号つきの見出しは手動でつけるのではなく、スタイル機能を使って自動でつける。

    growthseed.jp

  • 段落分けをする。段落の始めは字下げする。字下げは全角スペースではなくスタイルで行う。

    www.tipsfound.com

  • 空白行を作らない。
  • 本文は明朝体、強調はゴシック体の太字を使う。太字は、太字を内蔵しているフォントを使う(MSゴシックなどは太字を内蔵していない)。長い強調はアンダーラインを使う。イタリックは使わない。最新のWindows/OS X(Mac)の場合、游明朝、游ゴシックを使うときれいで扱いも楽。

 

引用

  • 孫引き(オリジナル以外からの引用。例えば、Aが自説を述べる前提として、Bの説を含む既存の学説を整理している場合に、あなたがB説を紹介するためにAの論文を引用すること)をしない。
  • 条文、判例、資料の引用は「法律文献等の出典の表示方法」に従う。
  • 同じ資料を2回以上引用する場合、自動で処理させる(同じ脚注や文末脚注を繰り返し参照する)。
  • 脚注でも、句点を省略しない。

 

レビュー

  • 共同発表者のドラフトをレビューするときは、変更履歴を使う。

    support.office.com

 

その他

発表を準備する

レジュメを統合して、共有する

  • 各執筆者のファイルからコピペし、スタイルなどを調整する。ここでの工程を少なくするために、初めから同じスタイルが設定されたファイルに書いておく。
  • タイトル、発表者、目次、行番号、ページ番号を入れる。
  • メールなどで共有する。Wordでは(フォントがあるかどうか、Wordのバージョンの違いなどで)ページ数がずれる可能性があるためPDFを共有し、また、書き込み用にWordドキュメント(.docx)を共有している。

 

スライドを作る

  • 上部にレジュメの見出しに対応したタイトルと、ページ数を入れる。しかし、実質的な情報ではないため、これにスペースを使いすぎない。
  • 積極的に図表を使う。しかし、どうしても必要な場合でない限り、イラストは使わない(イラストを使わなくても図表は作れる)。
  • 色は黒+テーマカラー+アクセントカラーのみ。
  • 説明することを全てスライドに記載する必要はない。むしろ情報はできるだけ削る。スライドの役割は、①口頭の説明のインデックス、②ビジュアライズしたほうが伝わりやすいもの(図表)の表示。スライドはあくまであなたの説明を補うものであって、スライドそれ自体から全てを読み取ることができる必要はない。
  • アニメーションは、出現と消滅だけ(奇抜なアニメーションに注目させても意味がない)。
  • スクリプトは作って棒読みしてはいけない。どうしても不安ならトピックだけメモしておく(それで説明できる程度の理解がなければ、どうせ伝わらない)。
  • この2冊のいずれかを読んでおくのがおすすめ(内容はほぼ同じなのでどちらでもよい)。
    伝わるデザインの基本 増補改訂版 よい資料を作るためのレイアウトのルール
     

*1:判例データベース。早稲田大学の場合、LEX/DBには、学術情報検索で、「おすすめのデータベース」→「15. 判例(国内):LEX/DB」と進むとアクセスすることができる。

*2:著作権法30条1項柱書は、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするとき」に限り、複製を認めています。「これに準ずる限られた範囲」について、文化庁著作権審議会第5小委員会(録音・録画関係)報告書(昭和56年)は、「「これに準ずる限られた範囲内」とは、人数的には家庭内に準ずることから通常は4~5人程度であり、かつ、その者間の関係は家庭内に準ずる親密かつ閉鎖的な関係を有することが必要とされる。したがって、例えば、親密な特定少数の友人間、小研究グループなどについては、この限られた範囲内と考えられるが、少人数のグループであってもその構成員の変更が自由であるときには、その範囲内とはいえないものと考える。」としています。

早稲田大学法科大学院入試を受けてきた(再現答案へのリンクあり)

8月25日〜26日に、早稲田大学法務研究科(法科大学院)入試を受けてきました。合格はできるんじゃないかと思いますが(できなければ来年は無職ですね)、全額免除を受けることができるかはわかりません。ゼミの先輩はみんな取っていたけど、推薦状なしで取った人はいなかったような…

再現答案は次のページに掲載しています:民法刑法憲法民事訴訟法刑事訴訟法。成績は送られてきたら追記しようと思います。

追記(9/14):合格(全額免除)でした。順位や科目ごとの成績は開示されてきませんが、合格者の定員140に対して全額免除の定員は20人です。

 

やったこと

7月の予備論文の翌週に定期試験があり、その翌週にバイトで夏期講習会をやっていたので、実質的に勉強を始めたのは8月の1週目。

まずどうしようもなかったのが憲法。「合格思考 憲法」の新司法試験以外の部分をやりました。

8月の2週目までにこれを終えました。

読み解く合格思考 憲法―予備試験・司法試験短期合格者本 (予備試験・司法試験短期合格者本 1)

読み解く合格思考 憲法―予備試験・司法試験短期合格者本 (予備試験・司法試験短期合格者本 1)

 

8月の3週目はまたバイトで夏期講習会があったのですが、午前中は空けていたので、過去問を4年分解きました(13:00-21:20バイト、8:00-12:00勉強みたいな暮らし、もうしたくない)。

この時点で刑法各論に手が出ないことがわかりました。早稲田の刑法は、総論が事例問題(60点)、各論が一行問題(30点)です。

対策として、塩見淳『刑法の道しるべ』を読みました。論点解説本で、総論8テーマ、各論6テーマが収録されています(各論は、住居侵入罪の保護法益・「侵入」の意義/奪取罪における不法領得の意思/不法原因給付と詐欺罪・横領罪/公共危険犯としての放火罪/偽造の概念/賄賂罪における職務行為)。

2013年から2017年までの出題テーマで、カバーされていないのは2013年の名誉毀損における真実性の錯誤だけだったので、これさえ読めば書けるはずと思い、前日と1日目の刑法の前の昼休みを使ってこれを読みました(が、カバーされてないところから出ました。もっとも、これ自体はかなりよい本なので、東大までに総論も読んでおこうと思います)。

なお、「刑法の道しるべ」というタイトルですが、帯にあるとおり「刑法の"頂"」への「道しるべ」なので、それなりに自信がついてきてから読んだほうがいいです。

刑法の道しるべ (法学教室ライブラリィ)

刑法の道しるべ (法学教室ライブラリィ)

 

刑訴は、以前に「えんしゅう本」を解いたときのノートを見返しました。

他は特に何もしませんでした。早稲田だからやる気が出なかった。

 

当日のこと

1日目が、民法 10:00~12:00(120分)、刑法 13:30~15:00(90分)、憲法 16:30~17:30(60分)。2日目が、民事訴訟法・刑事訴訟法 10:00~12:00(120分)。会場が早稲田だったので特に感慨も迷うこともありませんでした。受験票があまりに簡素なので、単なる願書受領通知と勘違いして捨てそうになったり、2日目に持っていくのを忘れたりしましたが、特に問題はありませんでした。

民法

1問目は、親権者の利益相反・代理権濫用。2018年度の問題を解いたときにリークエで確認していたのでなんとかなった気がします。

2問目が動産・不動産の譲渡担保。一通りのことしか書けていませんが、担保は放置の人が多そうなので相対的にはプラスなんじゃないでしょうか。もっとも、集合動産譲渡担保じゃなかっただけマシではあります(いつかの定期試験)。

刑法

1問目は、女性が、自分や連れ子を虐待していた同棲相手の男を間違って刺し、やばいと思ったが自業自得だと思い直して放置し、また、たまたま被害者の母親も訪ねてきたが、やはりかつて家庭内暴力を振るわれていたことを思い出して放置し、結局男は死亡したという事案。よくわかりませんでしたが、女性については刺した行為は誤想防衛ということにして、放置行為に殺人罪を認め、母親については無罪としました。救命可能性の書き方があからさまでした。こんなの見たら誰だって「十中八九」の判例を思い出しそう。

その結果、Bは出血多量で数時間後に死亡したが、甲が闘争する段階で救急通報していればBをほぼ確実に救命することができた。また、乙がBを発見した段階で救急通報していれば、確実とはいえないが、救命できる可能性があった。

2問目は、二重譲渡と横領でした(初登場)。塩見淳『刑法の道しるべ』に載っていなかったので絶望しましたが、横領罪の一般的解釈について述べたあと、譲渡人について刑法の謙抑性がどうとかいう話をしました。

終わってから教科書を読んだところ、譲渡人に横領罪が成立することに争いはなく、問題は第二譲受人にその共犯が成立するかが争いになっているようです。すなわち、判例によれば、(1)善意の第二譲受人は、故意がないから共犯は成立せず、(2)悪意の譲受人は、単なる悪意の場合、民法177条の解釈との関係上共犯は成立しないが(最判昭和31・6・26刑集10巻6号874頁)、(3)背信的悪意者の場合、共犯が成立する(山口厚『刑法』333頁(有斐閣、2015))。言われてみるとそうだなあと思いますが、完全に忘れていました(必要的共犯でそうなりがち)。なお、僕は磯村先生の単純悪意者排除説を支持しています。

ところで、唯一時間が足りなくなったのが刑法でした。余計なことを書いたのかもしれません。あるいは二重譲渡に面食らってしばらく考え込んだのが原因かも(先に各論を解きました)。

憲法

神道関係者が、しめ縄・神具に使うために大麻の栽培の免許を申請したが、拒否され、無免許のまま栽培したため、起訴された事案。よくわかりませんでした。被告人はいつもの審査基準論、私見は(苦し紛れに)A県知事の主張を手がかりに書きました。

なお、牧会活動事件くらいしか思い浮かばなかったんですが、アメリカにはEmployment Division v. Smithという類似の事件があります(もっとも覚えていたのは事案だけで、あまり役に立ちませんでした)。Wikipediaからの引用ですが、Native American Churchの信者であるSmithが、強力な幻覚作用を持つ禁止薬物であるpeyoteを使用としたところ、解雇されたという事案です。判決は、「if prohibiting the exercise of religion is not the object of the [law] but merely the incidental effect of a generally applicable and otherwise valid provision, the First Amendment has not been offended」として、制約を否定しています(Employment Division v. Smith - Wikipedia)。

民事訴訟

T教授のいう「後決関係」と、先決関係についての問題。何を書けばよいのかよくわからず、既判力の定義、客観的範囲、主観的範囲、時的限界、それぞれの事案で抵触があるかを書きました。

刑事訴訟法

証言と矛盾する(別人の)供述録取書の証拠能力。何を書けばよいのかよくわからず、伝聞禁止にあたること、3号書面であること、328条について限定説を取った上でそれにあたらないことを書きました。17行で終わりました。

民訴・刑訴は併せて2時間なのですが、1時間で終わってしまい、六法に入ってた大日本帝国憲法と、退位特例法の1条ポエムを読んでたら終わりました。ちなみに退位特例法1条は本当にポエムです。

この法律は、天皇陛下が、昭和六十四年一月七日の御即位以来二十八年を超える長期にわたり、国事行為のほか、全国各地への御訪問、被災地のお見舞いをはじめとする象徴としての公的な御活動に精励してこられた中、八十三歳と御高齢になられ、今後これらの御活動を天皇として自ら続けられることが困難となることを深く案じておられること、これに対し、国民は、御高齢に至るまでこれらの御活動に精励されている天皇陛下を深く敬愛し、この天皇陛下のお気持ちを理解し、これに共感していること、さらに、皇嗣である皇太子殿下は、五十七歳となられ、これまで国事行為の臨時代行等の御公務に長期にわたり精勤されておられることという現下の状況に鑑み、皇室典範…第四条の規定の特例として、天皇陛下の退位及び皇嗣の即位を実現するとともに、天皇陛下の退位後の地位その他の退位に伴い必要となる事項を定めるものとする。

なお、デイリー六法をもらえました。抄録の法律は目次が掲載されてないのと、知財が全部抄録なの以外は気に入ったので、常用しようと思います。特に民法現行規定や執行・保全・破産が民法なみの扱い(大きいフォント、参照条文)なのは、予備試験・司法試験的にも、民訴ゼミ的にもポイント高いです。知財知財六法あるからいいかな。

これからやること(全般)

まずは明日から1週間、ある投資銀行インターンに行ってきます。楽しみ。

次にゼミ。11月初週の合同ゼミのための準備が始まっていて、9月の初週の合宿で中間報告があります。4年生は基本的には3年生を見守るだけだし楽だろうと思っていたのですが、指導教授に(ゼミメーリスで、ひとり名指しで)テーマを追加されたので、そうもいかなそうです。なお、もともと担当していたのがシートカッター事件(最判平成29(2017)・7・10 判タ1444号113頁。特許侵害訴訟において、上告理由として訂正の再抗弁を主張することができるか)、追加されたのが諫早差止訴訟の控訴審判決(福岡高判平成30(2018)・3・19 LEX/DB 25449441。【民訴】諫早開門判決の請求異議認容判決などの「開門差止請求訴訟における独立当事者参加」の部分で紹介したもの)です。

最後にTOEIC。先日、7月29日に受けた試験の結果が返ってきました。Listening 360 (50%), Reading 365 (71%), Total Score 725 でした。Listeningのほうがはるかに平均スコアが高いんですね。知りませんでした。

9月9日に2回目の受験を予定しています。東京大学一橋大学への出願に間に合う最後の回なので、とりあえずリスニング対策にSuitsを見ようと思います。

これからやること(法律に関して)

東大に過去問を買いに行く。憲法会社法行政法を強化する。しばらく余裕があるので、演習書でも解こうかと思います。

2019年度早稲田大学法科大学院 再現 刑事訴訟法

1 Bの供述録取書を証拠とすることは,「公判期日における供述に変えて書面を証拠と」することにあたるから,伝聞例外の各規定に当たらない限り,証拠調べを認めることはできない(320条1項).

2 Bの供述録取書は,「被告人以外の者…の供述を録取した書面」で「前二号に掲げる書面以外の書面」にあたるから(321条1項柱書,3号), (1)Bの署名または押印があり,(2)Bが公判期日等において供述不能であり,(3)犯罪事実の証明に不可欠であり,(4)絶対的特信情況がある場合にのみ,証拠調べを認めることができる.

3 もっとも,検察官は,Aの証言の証明力を争うために,Bの供述録取書を証拠調べ請求しているから,「公判期日における…証人…の供述の証明力を争うため」にあたり,証拠調べを認めることができるのではないか(328条).

 確かに,同条は,証明力を争うための証拠について,何ら限定を加えていない.しかし,およそ証明力を争うためであればいかなる伝聞証拠も証拠調べをすることができるとすれば,伝聞証拠禁止の原則や,厳格な伝聞例外の規律は無意味になり,不当である.同条によって証拠調べをすることができるのは,その証拠によって争おうとする供述をした者がした,これと矛盾する供述に限られると解するべきである.

 本件では,争われるのはAの供述であるから,同条によってBの供述録取書の証拠調べを認めることはできない.

 したがって,2に述べた4要件を満たさない限り,証拠調べを認めるべきではない.

2019年度早稲田大学法科大学院 再現 民事訴訟法

1 既判力

 既判力とは,確定判決の有する,裁判所と当事者に対する実質的確定力である.

 既判力の客観的範囲は,原則として「主文に包含するもの」(114条1項)に限られる.判決主文は,原告の裁判所に対する申立てたる訴えに対する応答であるから,「主文に包含するもの」とは,訴訟物,すなわち原告の被告に対する権利関係の主張についての判断であると解される.このように限定するのは,裁判所の審理対象を徒に拡大しないためである.

 既判力の主観的範囲は,原則として「当事者」(115条1項1号)に限られる.既判力による拘束は,手続保障を受けた者との関係でのみ正当化されるからである.

 既判力の時的限界は,事実審の口頭弁論終結時である.当事者は,この時までに生じた事実を主張することができるのに対し,これより後に生じた事実は主張することができないからである(321条参照).民事執行法35条2項は,このことを前提としている.

2 後訴1における主張

 前訴1における訴訟物たる権利関係は,XのYに対する,甲土地所有権に基づく返還請求権としての,甲土地明渡請求権である.したがって,前訴1の既判力は,XのYに対する甲土地明渡請求権について,XY間で,前訴1の事実審の口頭弁論終結時を基準時として生じている.

 これに対して,後訴1の訴訟物たる権利関係は,Yの甲土地所有権である.甲土地所有権と,その物権的請求権は,実体法上別個であり,一物一権主義を考慮しても,何ら矛盾するものではない.したがって,前訴1の既判力は後訴1に及ばない.

 したがって,Yの主張は,何ら妨げられるものではない.前訴1の基準時前の事由であっても,信義則上主張が制限される場合は格別,既判力との関係で主張が制限されることはない.

 なお、Xとしては、このような事態を避けたければ、中間確認の訴え(145条1項)を申し立てるべきであった。

3 後訴2における主張

 前訴2における訴訟物たる権利関係は,Xの甲土地所有権である.したがって,前訴2の既判力は,Xの甲土地明渡請求権について,XY間で,前訴1の事実審の口頭弁論終結時を基準時として生じている.

 これに対して,後訴2の訴訟物たる権利関係は,XのYに対する,甲土地所有権に基づく返還請求権としての,甲土地明渡請求権である.Yは,抗弁として自らの甲土地所有権取得を主張するものと考えられるが,それが前訴1の基準時前のものである場合,実体法上の一物一権主義を媒介として,前訴1の既判力と矛盾する.

 したがって,Yの主張自体は許されるが,前訴2の基準時前の事由を主張することは許されない.

2019年度早稲田大学法科大学院 再現 憲法

1 被告人の主張

(1) Xは,宗教上の信念から,しめ縄や神具に用いるために大麻を栽培し,起訴されている.宗教上の信念に従って行為することは,信教の自由(20条1項前段)として保障されているから,宗教上の信念に従った栽培を理由にXを処罰することは,その信教の自由を制約する.

(2) 信教の自由は,信仰が信者の人格と深く結ぶついていることから保障されているもので,重要である.もっとも,規制態様は,専ら大麻の栽培から生ずる弊害に着目したもので,宗教上の信念に対して中立であるから,強力であるとはいえない.そこで,規制としては,規制を正当化する程度に重要な目的のための,実質的関連性を有する手段が正当化されると解する.

(3) 本件についてこれをみるに,目的は,大麻の公衆衛生上の弊害を防止することにあり,重要である.しかし,そのために,宗教上の信念に従って大麻を栽培する行為を規制する必要はない.実際に,医療上学術上の必要から大麻を栽培する場合には免許を付与しているのだから,宗教上の信念から栽培する場合も,免許による規制で足りる.したがって,実質的関連性を欠く.

 したがって,本件においてXを処罰することは,20条1項前段に違反する.

2 当否についての考え

(1) まず,検察官から,しめ縄や神具に大麻の茎から取れる繊維を使用することは,神道の核心的な教義とは言えず,信教の自由によって保護されるものではないから,その制約もないとの反論がされうる.

 確かにそれは神道の核心的な教義ではないと考えられる.しかし,信教の自由の保護範囲を,一定の宗教における核心的な教義に限れば,社会的に,あるいは宗教界において公認された信仰しか保護されないことになり,信仰の人格との深い結びつきに鑑みての信教の自由を保護した趣旨に反する.むしろ,真摯な信仰があればよいと解する.この反論は妥当ではない.

(2) 次に,検察官から,医療上学術上の必要がある場合と異なり,宗教上の信念から大麻を栽培する場合に免許を付与することはできず,免許による規制はLRAとはなりえないとの反論がされうる.

 大麻取締法が医療上学術上の必要がある場合に免許を認めている趣旨は,同法は先に述べたとおり公衆衛生条の弊害防止を目的とし,究極的には国民の健康の確保を目的としているところ,医療上学術上の必要がある場合にまで大麻の取扱いを禁止しては,却ってその目的を損なってしまうことにある.それに対して,宗教上の必要がある場合に大麻の取扱いを禁止しても,その目的は損なわれない.したがって,LRAにはなりえない.この反論は妥当である.

 したがって,Xを処罰することは,目的との関係で実質的関連性を欠くとはいえず,20条1項前段に違反しない.

2019年度早稲田大学法科大学院 再現 刑法

問題1

1 甲の罪責

(1) 傷害致死罪(205条)

a 「身体を傷害」するとは,身体の生理的機能を害することをいう.甲は包丁をBに突き刺し,倒れさせたから,これを満たす.

 「人を死亡させた」について,Bは死んだから,これを満たす.

 「よって」とは,法的因果関係と,責任主義の観点から加重結果についての過失をいうと解する.法的因果関係は,条件関係と,客観的帰属としての危険の現実化を要すると解する.Bは包丁で刺されたことが原因で死亡しており,条件関係がある.また,包丁で人を刺すことは,その人を死亡させる危険を内包しており,Bの死亡にとって決定的である.その後甲や乙がAを放置したことは,この危険が現実化するにあたって影響を与えたものではない.したがって,危険の現実化が認められる.また,甲はBを脅すにあたって包丁という危険な道具を用いるべきではなかったから,過失がある.

 故意について,甲はBを包丁で刺す意図はなかった.しかし,208条の文言上,傷害(204条,205条)は,暴行の結果的加重犯を含んでおり,その故意があれば足りると解する.暴行とは,人の身体に向けられた有形力の行使をいう.甲は,Bを脅すために包丁を向けるという認識があるから,暴行の故意がある.

 したがって,構成要件を満たす.

b 甲について「急迫不正の侵害」(36条1項)があったとはいえないから,正当防衛にあたらない.

c もっとも,甲は,BがAを殴打したと誤信している.故意の本質は,規範的障害があるにもかかわらずあえて犯罪行為に出たことに対する非難であるところ,違法性阻却事由にあたる事実を誤信した場合,規範的障害がないのだから,故意がないと解する.

 また,「急迫不正の侵害」を誤信した場合において,仮にそれが存在していたとしても,「やむを得ずにした行為」の範囲を超える防衛行為がされることがある.36条は,「急迫不正の侵害」が存在する場合に,そのような防衛行為について任意的減免を規定しており,その趣旨は,「急迫不正の侵害」に見舞われた者は,焦りや恐怖によって,相当な防衛手段を選択するという合理的な判断ができないことがあり,不相当な防衛手段を選択しても強く非難できないことにある.そうすると,「急迫不正の侵害」を誤信した場合においても,防衛行為者の内心は,それが存在する場合と変わらないと解されるから,同項を準用して,刑の任意的減免を認めるべきである.

 本件では,「急迫不正の侵害」について,甲はBがAを殴打したと誤信したから,その誤信がある.「他人の権利を防衛するため」,すなわち他人の権利についての防衛の意思について,甲はBをAから遠ざけるために脅そうとして包丁を向けたから,これにあたる.「やむを得ずにした」について,正当防衛において結果責任を問うことは妥当ではないから,手段としての相当性をいうと解する。甲は素手のAに包丁を向けているから,これにあたらないとも思われる.しかし,甲は女性であるのに対して,Aは男性であり,また,短期で気性が激しく,甲やAに対して殴る蹴るといった暴力を振るっており,30分前にもAを殴り,Bを蹴っているから,そのようなBに対抗するために包丁を用いたことは相当性を欠くものではない.

 したがって,故意がなく,甲に傷害致死罪が成立しない.

(2) 殺人罪(199条)

 実行行為とは,構成要件に当たる結果を発生させる客観的・現実的危険性があり,構成要件に当たる行為をいう.不作為であっても,その主体に作為義務があり,かつ,その履行が容易であった場合には,作為と同視できるから,実行行為に当たると解する.甲はBと同棲しており,また,Bが倒れたのは甲が包丁で刺したことによるのだから,救急通報する義務がある.甲はBがAを殴打してその行為に出たのであるが,Bは倒れ込み,動かなくなっているのだから,救急通報する間に自己やAが暴行を受けるおそれは小さく,それを求めることが酷だとはいえない.したがって,容易性もある.したがって,実行行為がある.

 Bは死んだから,結果がある.

 因果関係について,不作為であっても1(1)aに述べたとおり条件関係と危険の現実化が必要であるが,それは,合理的な疑いを超える程度の救命可能性として具体化することができる.問題文中6から,これがあった.

 甲はBが死んでも自業自得だと思っていたから、未必的故意がある。

 したがって,構成要件を満たし,特段の違法性・責任阻却事由も認められないから,甲に殺人罪が成立する.

 以上より,甲には殺人罪のみが成立する.

2 乙の甲の罪責.殺人罪(199条).

 実行行為については,1(2)に述べたとおりである.乙はBの実母だから,救急通報する義務がある.Bはかつて乙に家庭内暴力を受けたことがあるが,Bは倒れ込み,動かなくなっているのだから,救急通報する間に自己が暴行を受けるおそれは小さく,それを求めることが酷だとはいえない.したがって,容易性もある.したがって,実行行為がある.

 Bは死んだから,結果がある.

 因果関係については,1(2)に述べたとおりである,問題文中6から,これがなかった.

 したがって,構成要件を満たさず,乙に犯罪が成立しない.

問題2

1 AがBに甲土地を譲渡したが,移転登記期日まで自己に登記が留められていることを奇貨として,さらにCに甲土地を譲渡した.この場合,Aに横領罪(252条)が成立するか.

2 横領罪は,委託信任関係を保護法益とするものと解される.

 「自己の占有する他人の物」は,保護法益との関係から,「他人の委託に基づいて自己の占有する物」をいうと解される.このように解することによって,遺失物等横領罪(254条)との区別も明らかになる.

 「横領した」は,保護法益との関係から,不法領得の意思,すなわち,占有物について,委託の趣旨に反し,所有者たる委託者でなければできない利用や処分をする意思を発現する一切の行為をいうと解される.

3 1に述べた事例について検討する.

 「自己の占有する他人の物」について.土地の占有については,登記がある場合,横領罪が抑止しようとする売却等の処分をすることができるから,登記を保持していることが「占有」にあたる.Aは売買の意思表示(民法175条)をしたあとに,Aは甲土地の登記を保持しているから,これにあたる.AはBとの契約により,移転登記手続をするために登記を保持しているから,その占有は「他人」の委託に基づいている.

 「横領した」について,AがCに甲土地を譲渡したことは,所有者であるBでなければできない処分であるから,これにあたる.

4 もっとも,二重譲渡は,民法上は対抗要件主義によって解決されており,適法である.刑法の謙抑性の観点からは,このような行為を処罰すべきではないのではないか.

 しかし,対抗要件主義は,互いに正当に権利を主張することができる者たちが出現してしまった場合を調整するルールである.それに違反した場合のルールが設けられているからといって,二重譲渡が正当化されるものではない.民法上も,AがB, Cに二重譲渡した場合,Aは所有権を取得できなかった者からの損害賠償請求を免れない.刑法上も,独自にAを横領罪によって処罰し,二重譲渡を抑止しようとすることは,合理的である.

 したがって,Aには横領罪が成立する.

2019年度早稲田大学法科大学院 再現 民法

問題1

現行法に基づいて解答する.

1 問題1(1)について

(1) Eは甲土地の抵当権を有するか.AはCの親権者であり,子Cの代理権を有する(824条本文)から,本件抵当権は有効に設定されたものとも思われる.

 しかし,本件抵当権は,Aを主債務者とする貸金債権を被担保債権とするものであるから,利益相反で代理権が制約される(826条1項)のではないか.同項は子の利益を図るものであるが,利益相反の判断において親権者の意図まで考慮するとすれば,相手方に不測の損害を与えるおそれがある.したがって,同項の利益相反は,客観的事情から明らかなもののみをいうと解するべきである.

 本件抵当権のような物上保証においては,一般に,主債務者は融資を受ける機会が増えるという利益を受けるのに対し,物上保証人は何ら利益を受けず,専ら不利益のみを受ける.したがって,Aを主債務者とする債務をBが物上保証することは,客観的に見て利益相反にあたり,Aはこれについて代理権を有しない.本件抵当権の設定は,無権代理(113条以下)によるものであり,Cに効果が帰属しない.

(2) もっとも,Aが死亡し,Cが単独で相続したため,CはAの地位を包括的に承継したから,Cは上記無権代理行為の自己への効果不帰属を主張できないのではないか.これについて,資格融合説は主張できないという.しかし,帰責事由もないのに,本人が無権代理人をたまたま相続したというだけで効果不帰属を主張できなくなるのは,本人たる相続人にとって酷であるし,また,相手方の取消権(115条本文)を奪うため,妥当でない.資格併存説のいうように,主張できると解するべきである.もっとも,主張が信義則に反するような事情がある場合には,個別的に,主張できないと解するべきである.本件では,そのような事情がないから,本件抵当権の設定について,Cは自己への効果不帰属を主張できる.

 もっとも,無権代理人は,履行または損害賠償の責任を負う(117条1項).Cはこの義務を相続するのではないか.しかし,前者については,本人たる相続人はこれを履行しなくれもよいと解する.これを肯定すれば,上記の資格併存とした解釈が無意味になるからである.これに対して,後者については,本人たる相続人もこれを履行しなければならない.Cがこれを免れたければ,相続放棄をすればよい.

2 問題1(2)について

 Cは,自らの甲土地に対する所有権に基づく妨害排除請求権として,Eに対する抵当権設定登記抹消請求権を主張するものと考えられる.これに対して,Eは,(1)の場合と異なり,客観的な利益相反がないから,Cに本件抵当権の設定の効果が帰属すると反論するものと考えられる.

 しかし,本件では,Aは,Dとの関係の維持という不当な目的のために代理権を行使している.このような,代理権濫用の場合,代理人の意思と,本人の合理的に推定される意思とが異なる点で,心裡留保に類似する.したがって,93条ただし書を類推するべきである.すなわち,相手方が代理人の不当な目的を知り,または知ることができた場合には,代理行為の効果は本人に帰属しないと解する.

 本件では,Dを主債務者とする貸金債権について,血縁関係もない未成年Cが,代理によって,物上保証をしており,いかにも不自然である.金融機関であるEは,当然,事情を調査すべきであって,それが困難であったという事情もない.そうであるにもかかわらず,Eは調査を怠ったものである.したがって,EはAの不当な目的を知ることができたものであるから,本件抵当権の設定の効果は,Cに帰属しない.

 したがって,Cの請求は認められる.

問題2

現行法に基づいて解答する.

1 譲渡担保の法的性質

 譲渡担保は,あくまで所有権移転の形式を取るものであるから,譲渡担保権者は,所有権を有すると解するべきである.もっとも,譲渡担保は,担保の目的でされるのだから,譲渡担保権者が私的実効として目的物を第三者に売却する場合,被担保債権以上の代金を保持することは正当化されない.したがって,被担保債権と代金の差額を設定者に引き渡すか,それがない場合にはその旨の意思表示をしなければならず,これをしない間は,当該第三者は完全な所有権を取得しないと解するべきである.

2 問題2(1)について

 Cは乙の所有権を有するか.

 乙について,Cへの譲渡時に,既にBへの譲渡担保がされていたから,二重譲渡にあたり,後に引渡しを受けたCは無権利なのではないか.しかし,乙は動産であるから,即時取得(192条)の適用がある.「取引行為によって」について,問題文から事情が明らかでないが,コーヒー焙煎機の譲渡であるから,通常は売買がされたものと考えられる.平穏,公然,善意について,186条によって推定されている.「過失がないとき」は,前主が所有権を有すると信じたことについて過失がないことをいうものと解されるが,188条によって占有者が権利を推定されているから,Cもそれを信じたことについて過失がないものと推定される.したがって,これらの推定を破る事情がない限り,即時取得が成立しており,Cは乙の所有権を有する.

3 問題2(2)について

 1に述べたとおり,譲渡担保権者は一応所有権を有するが,清算が未了のうちは,譲渡担保権者あるいはその譲受人は完全な所有権を取得できない.Bは被担保債権3000万円と代金3300万円の差額300万円をAに引き渡していないから,Dは完全な所有権を取得できない.

 もっとも,Dは,94条2項の類推適用を主張するものと考えられる.すなわち,同項は,真実に合致しない外観があり,その作出につき真の権利者に帰責事由があり,第三者がその外観を信頼した場合に,その第三者を保護するという,権利外観保護法理の現れであり,そのような場合には,同項を類推し、第三者は有効に権利を取得できるというのである.

 本件では,確かにAはBへの所有権移転登記をしたが,Dはそれが譲渡担保であることを含む経緯を熟知しており,外観を信頼したものではない.また,所有権移転登記は,譲渡担保という正当な目的のためのものであるし,登記原因として「譲渡担保」と記載する実務が定着しているから,帰責性がない.したがって,この反論は認められない.